こんにちは。WONDERFUL GROWTH編集部です。AIの発達、働き方改革などによって、人材への考え方は日々変化する時代にあります。この変化の時代に対応し、既に研修体系や人事制度の見直しを行っている企業様も多いかと思います。伊東泰司氏の著書「やり抜く技術」によると人材育成における脳科学は、「人がより良く生きるためのトリセツ」。家電に取扱説明書があるように、会社における人材にもより扱い説明書は存在します。今回は、脳科学の観点から見た人材育成を紹介していきます。①脳科学とは皆さん知っている「脳科学」という言葉。しかし、「じゃあ、具体的に脳科学って何?説明してよ」と言われると困ってしまう方も多いのではないでしょうか?脳科学は、最近精神疾患の改善やメンタルケアなど医学分野で高い注目を得ています。生物学、医学、薬学、化学、工学、情報学等の自然科学、哲学、心理学、教育学、社会学、倫理学、法学、経済学等の人文・社会科学、ひいては芸術的な分野とのつながりも非常に強く脳科学の研究者の方はこれらの多くの分野に精通している必要があると言われています。上記でも書いたようにこの多くの分野の中には教育学も含まれています。今回この記事で紹介するのは脳科学の中の教育分野のお話です。②コロナ化で変化した人材育成とセルフケアの重要性コロナ化で在宅ワークが進み、対面での会議や同僚との会話は激減しました。コミュニケーションの低下から、情報伝達、意思の疎通ができず精神的に負荷がかかってしまうことも多くありますが、この精神的な負荷を軽減するヒントが脳科学にあります。健康的な食事を心がける当たり前のように聞こえますが、とても重要なことです。ストレスと暴飲暴食は切っても切り離せない関係があります。ストレスがかかると脳の生存本能が働き、過剰な栄養を摂取してしまうことがあります。健康的な献立を意識したうえで、よく噛むことを意識しましょう。『感覚』は考えすぎている状態から開放してくれます。たくさん噛むことでより多くの感覚を脳に伝達し、考えすぎからくる負担の軽減をしましょう。情報源を制限する脳みそにはミラーニューロンと呼ばれる他人の心を理解する能力のもととなっている機能が存在します。人と関係を構築するために重要なミラーニューロンですが、ニュースなどを見ている際にも活動します。その際に様々な情報に感情が揺り動かされ、大きなストレスにつながってしまいます。そのため信頼できる情報源から時間を制限して情報収集を行いましょう。趣味を見つける脳の神経系を落ち着ける=気分転換になるものを見つけましょう。テレビ、ゲーム、読書、ランニングなど自分に合うものを探していく必要はありますが、健康的に仕事と向き合っていくためにはとても重要なことです。感謝をする気の持ちよう、嘘のように聞こえるかもしれませんが感謝をすることはストレスの緩和に大きな効果があるといわれています。1日に3回程度、自分が感謝している人や事を考えてみましょう。十分な睡眠をとる質のいい十分な睡眠は不安や抑うつ状態に対する免疫を構築するために必要不可欠です。睡眠前のスマートフォンなどの使用は控え、睡眠に備えましょう。心配事・ストレスと上手に付き合うコツを知る心配事、ストレスと上手に付き合うコツ『SCARF』というものが存在します。・Status(地位):他者と相対して、自分の地位は高いか低いか。・Certainty(確実性):将来の確かさ。脳はパターン認識で常に近い未来のことを予測し、円滑な動作や行動を可能にしています。そのためパターンと異なるものは、脳にとっては「エラー」であり脅威と認識されます。・Autonomy(自律性):環境や自分の身に起こることを統制できているか、さまざまな選択肢を自らが持っているか。・Relatedness(関係性):人とつながっているという感覚があるか。・Fairness(公平性):人と何かを交換するときに公平であるか。本来、正常に機能しているはずの『SCARF』もソーシャルディスタンスの影響でバランスが崩れてしまいます。しっかりと自分自身について考える時間を作りましょう。③『感謝』と脳科学実は多くの脳科学者が「感謝」についての研究を行っています。感謝された人は2つの段階で認知する過程があります。1つ目は「自分がポジティブな結果をもらったという認識」2つ目は「感謝をしてきた人物に対して自分がいいことをしたという認識」これにより、感謝する方、されるほうの両者にいい効果をもたらします。さらに感謝には3つの種類が存在します。・物事に感謝する感謝・突発的に発生する気分による感謝・贈り物を貰ったり親切な行為を受けたりする時に感じる一時的な感謝感謝は人間関係構築の際の緩衝材になってくれます。上記の効果だけではなく、自分自身の体にも大きく影響し、睡眠の質を高め、ストレスを軽減させ、幸福感を高めます。さらには、抑うつ状態や自殺的思考・行動を低減させることも証明されています。では、この「感謝」を職場で有効活用するためにはどうすればいいのか、例をいくつか確認しましょう。朝礼や終礼で感謝を述べようプロジェクトの進捗確認や共有事項と一緒に感謝を伝えましょう。これにより感謝した側もされた側もよりストレスの少ない状態になります。血圧を下げる、ドーパミンやオキシトシンを放出させるなどの様々な効果により健康的な身体状況を作ってくれます。チャットなどの連絡媒体で感謝を伝えようソーシャルディスタンスの影響でコミュニケーションの機会は確実に減少しました。日常会話は激減し、業務上の確認や連絡のみがチャット上に飛び交う中、私たちは意識的にチャットで感謝を伝える必要があります。脳科学の研究を行っているCamille Preston博士によれば、「感謝は積極性と信頼を構築し、勤続率を高め、より高品質な仕事の成果につながる」そういった効果があります。在宅業務が進んだ状態だからこそ、積極的に現状使っているツールやミーティングの機会を活用しましょう。④グループワークでのピンチを打開する方法研修でのグループ学習やミーティングなど大人数で作業を行う際に「ファシリテーター(司会役)」は非常に重要なポジションです。ファシリテーターの能力が高ければグループワークは個人作業よりも多くの収穫を得ることができます。しかし、どんなに優秀なファシリテーターがいても問題が発生してしまうのが集団行動の難しい部分です。この章では、代表的なグループワークの際に発生する問題点とその問題の解決策を紹介します。メンバーが誰も話さない場合自己表現が苦手とされる日本人には、多く見受けられる状態だと思います。意見して否定されたらどうしよう、ついついネガティブに考えてしまい行動が委縮してしまう傾向があります。対策としては意外かもしれませんが、「待つこと」が有効です。具体的には深呼吸をして頭の中で20秒を数えましょう。普通であれば誰かが話し始めます。それでも話さない場合は、チャットなどに会話の内容をまとめる時間を作りましょう。これにより、参加している人は自分の意見を整理することができます。また準備をしたという労力が発生するので、使った時間や労力を無駄にしたくないという心理が働き多少なりとも発表に対する抵抗がなくなります。他にはさらに小規模(2人など)のグループを作り意見交換をしてもらうことも有効な手段です。誰か一人ばかり話をしている場合この場合はいつも以上に話している人以外に意識を向ける必要があります。これには2人ペアなどの小グループを作って他の人の意見を吸いだしやすい状態を作ることが効果的です。それでも、一人の人が発言し続ける場合は休憩時間などに「○○さんには他の人の意見を聞くためのサポートをしてほしい」とポジティブな理由を使ったうえでの協力を仰ぎましょう。大前提のルールを破る人がいる場合決まっているルールがあると進行はとても楽になります。全体でルールがない場合は自分たちのグループだけでもルールを作っていいかもしれません。ルールがあった上で参加をしている人がルールを無視している場合、指摘をしやすくなります。これは、自分のする指摘に根拠が生まれるからです。ルールを破っているという明確な要因があればデリケートな指摘も行いやすくなります。それでもルールを破る人がいる場合は、個別でヒアリングを行いましょう。行動の意図が分かれば話し合いをすることができ、問題は解決に向かいます。攻撃的な参加者がいる場合参加者を執拗に傷つける人がいる場合は、休憩をとって当事者を落ち着かせましょう。それでも攻撃を続ける場合は、他のファシリテーターや主催者に介入してもらうことを検討する必要もあります。他にも様々な問題が発生するのがグループワークの難しいところ。その時は、弊社の問い合わせフォームで是非解決策を聞いてみてください。⑤反復練習の重要性日本では「見て学ぶ」という言葉がよく使われます。学生時代の部活動や会社でもよく耳にしたことでしょう。実際に観察学習は非常に重要です。理由は前述したミラーニューロンにあります。ミラーニューロンの働きによって、他者の行動を見ると、体の中で同じ種類の神経細胞が活性化します。ただし、ミラーニューロンの働きを効果的に使うためには2つの条件が存在します。1つ目は、見る側の人間が注意を払ってみているということです。皆さんは飛行機で説明される酸素マスクのつけ方や、救命胴衣の着用方法を覚えていますでしょうか。複数回乗ったことがあるという人でも覚えている人は少ないと思います。理由は至極単純で、一生懸命聞いていないからです。音楽を聴いている人、飛行機の中でどの映画を見ようか考えている人、一緒に乗った友人や家族と話している人、そういった状態ではミラーニューロンは当然働きません。何かを学び、それを記憶に留め、実際に行動に影響させるには、しっかりとした集中が必要になります。2つ目は、実際に動作を行ってみるということです。ミラーニューロンは実際に真似をすることで効果を高めます。さらには、同じ動作を反復する行為は知識の定着につながり、定着した知識はスキルになります。研究によれば、しっかりと集中して詳細に行動を思い描くだけでも、神経系を発達させ、習慣を形作ることができるとされています。私も昔、営業研修で何度も何度も営業のトークスクリプトを読んだ経験があります。ただ読むだけではなく、当時の上司がお客様役をし何度も反復して練習を行いました。実際に現場でトラブルが起こり、パニックになったとき口から出てくる言葉はトークスクリプトの内容でした。このように、ミラーニューロンを効果的に使用すると、いざというときに自分を助けてくれる強力な武器を得ることができます。⑥研修を定着させるにはいい研修だった!と満足して帰った研修の内容を日々の業務に活かせる人はいったい何人いるでしょうか?学んだことがそれきりになってしまい、研修が単なる業務をしない日になってしまうことは多々あります。研修の終え方が始め方と同じくらい重要だということを、気づいていない人は一定数存在します。研修の終わりは、時間が押してしまった時などは焦って混乱した状態にもなりがちです。アンケートを取るなどの事務的段取りもこなさなくてはなりません。研修の終わりの場面で印象に残る締めくくりができるよう、設計には十分に注意を払う必要があります。そこで、抑えるべきポイントをいくつか紹介します。・参加者に研修での気づきを書き出させましょう・参加者にアクション・プランを作らせましょう・参加者に、最初に取り組む課題をカレンダーに記入してもらいましょう・時間内に事務的な作業を済ませましょう・ポジティブな雰囲気で研修を終えましょうここまでご紹介してきたように、脳科学には人材育成と密接な関係性を持っている点が多いです。研修をプログラムされる際、脳科学の観点からも取組事例の参考にしてみてはいかがでしょうか。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。「脳科学から見る人材育成 part.2」に続きます。Part.2 はこちらから。WONDERFUL GROWTH へのお問い合わせはこちらから。