はじめに:営業組織に求められる “変化” と “再現性” 営業の現場では長らく「個人の努力と根性」が成果の鍵とされてきました。しかし今、私たちは新たな常識に直面しています。 SNSや口コミサイトの台頭により、金融商品やサービスの選択基準は「誰から買うか」へと移行。 営業担当者一人ひとりの提案力や信頼性が、企業ブランド力と直結するようになりました。 一方、少子高齢化が進み、採用の競争も激化。これまでのように “辞めたら補充” という人材戦略は限界を迎えています。 いま必要なのは、「今いる人材を育て、活かしきる」ための仕組みづくりです。 本稿では、私たちリヴトラストがこの背景のもとで取り組んだ営業組織の変革と、その中心にある「人を育てる力」について紹介します。 組織課題:成果が属人化していた営業現場 かつての当社の営業組織では、成果が一部のベテラン社員に集中し、それ以外の層は伸び悩んでいました。 ・成功ノウハウは暗黙知のまま共有されず ・「見て覚えろ」という育成風土 ・指導者によって教育内容に大きなバラツキがある ・配属直後の新人が孤立し、育つ前に離職 中途社員の離職率は高く、新卒社員も「やり方がわからない」「成果が出ない」という壁にぶつかり、早期に自信を失う—— そんな悪循環が広がっていました。 解決の鍵:人材育成を “仕組み” にする この課題に対して私たちは、育成を「属人性」から「再現性」のある仕組みに変えるための複数の制度改革を実行しました。 ①教育は “業務の一部” にする 「育成は余裕のある人だけがやるもの」という考え方を捨て、全営業社員が育成を担う体制へシフト。週1回の固定研修を導入し、ロールプレイやフィードバックを通じて、教育の質と頻度を担保しています。 ②レイヤー教育制度の導入 営業社員を「レイヤー1~4」に分類し、それぞれに必要な【役割・目標・スキル・行動】を明文化。従来は売上実績だけで評価されていた役職制度を見直し、”何をできるか・どう成長するか” が明確になる設計に刷新しました。この制度により、 ・キャリアパスの不透明感が解消 ・組織内の期待値が可視化 ・自身の現在地と成長課題を定期的にすり合わせ といった効果が生まれました。 ③メンター制度の導入 若手社員が悩みを相談できるよう、年齢の近い先輩がメンターとして定期面談を実施。指導だけではなく心理的安全性の確保にもつながり、「何かあっても一人ではない」という安心感が根付いています。 ④新卒向けフォロー研修の実施 入社3ヶ月以降の新卒社員を対象に、月1回の定期フォロー研修を実施。現場の振り返り、同期と対話することで「自分の目的」「理想の営業像」を再確認する場としています。 成果:営業成績の向上と組織の変化 これらの取り組みは、数値と風土の両面で目に見える変化をもたらしました。 ①若手社員の早期戦力化 制度導入後、新卒社員が入社から数カ月で契約獲得を実現。成果を出せることで自信がつき、次の成長にも意欲的に取り組むようになりました。 特に2025年4月に入社した新卒営業社員の成長は著しく、7月23日時点で昨年度同時期の2倍為の成果を記録。これは、単に研修の実施回数を増やしたのではなく、「考えさせる」質の高い研修設計と、現役営業社員による実践的なデモンストレーション(体現)を積極的に取り入れた結果です。 ②営業部の売上が過去最高を更新 2025年3月、営業部の売上が過去最高を記録。成果が一部に偏るのではなく、組織全体の底上げが進んだ結果です。 ③組織に「育てる文化」が根付いた 先輩社員が後輩を育てることを自然な業務と捉えるように変化。若手の成功体験が、育成側のやりがいや誇りにもつながる、育成の好循環が生まれています。 なぜ成果が出たのか—— 3つの成功要因 1.育成を現場業務に組み込んだ “育成担当” を一部に任せるのではなく、全営業社員の役割として明文化。時間・予算・人材のリソースをしっかり割いたことが、継続可能な仕組みづくりにつながりました。 “成果を出せる組織”はこうつくる—— 教育制度から始まる成長戦略 2.「考えさせる」営業育成 単なる営業トークの型を教えるのではなく、「なぜその提案をするのか」「お客様にとっての価値は何か」といった営業マインドの本質部分まで伝えることで、若手が “自走” できるようになりました。 3.成長の可視化 レイヤー制度により、社員は「次に求められる行動やスキル」を明確に理解できるように。評価の納得感も高まり、内発的な成長意欲を支える土台となっています。 まとめ:人材育成は、企業の未来を変える “戦略投資” である 営業組織において、「成果」や「数字」は重要な指標です。しかし、それを持続的に生み出すのは、属人的な手法ではなく育成という仕組みの力です。 属人化から脱却し、組織全体で育てる文化を築くこと。人が育ち、やりがいを持って働ける土壌が整えば、自ずと成果は後からついてくる—— 私たちはそのことを、自社の営業部改革を通じて実感しました。 人材育成は、”今” の成果を上げるためだけではありません。 未来の組織力を築く、企業にとって最大の戦略投資です。 著:株式会社リヴトラスト HR戦略部 課長 川上鉱介 株式会社リヴトラスト HR戦略部 大澤芽生株式会社リヴトラスト様への問い合わせはこちらから