⌖ Detail
はじめに
一人のお客様が、取引の始まりから終わりまでの間に、自社へどれだけの価値をもたらしてくれるのか。それを捉える指標が、LTV(顧客生涯価値)です。新規顧客の獲得が難しくなる中で、既存のお客様との関係を大切にする経営への注目とともに、この指標の重要性も高まっています。本記事では、LTVの意味や使われる場面、押さえておきたいポイントを整理してご紹介します。マーケティングの指標にとどまらず、経営全体の物差しとして使われる場面が増えています。
LTVとは?
LTVとは、Life Time Value(ライフタイムバリュー)の略で、日本語では「顧客生涯価値」と訳されます。一人の顧客、または一社の取引先が、取引を開始してから終了するまでの期間全体を通じて、自社にもたらす利益の総額を表す指標です。
算出の方法はいくつかありますが、平均的な購入単価、購入の頻度、取引の継続期間を掛け合わせる考え方が基本となります。たとえば、一回あたりの購入額が小さくても、長く取引が続くお客様は、LTVの観点では大きな価値をもたらしていることになります。目先の売上だけでなく、時間軸を長く取って顧客との関係を評価する点が、LTVという指標の本質です。サブスクリプション型のサービスが広がったことで、継続率がそのまま収益を左右するようになり、LTVは経営の重要な指標として定着してきました。なお、売上で捉えるか利益で捉えるかなど、何をもって価値とするかは、活用の目的に応じて定める必要があります。
広告
LTVがよく使われるシーン
LTVは、マーケティングや営業の投資判断の場面でよく使われます。たとえば、新規顧客を一人獲得するためにかけられる費用の上限を考える際、その顧客が将来もたらすLTVと比較して判断します。獲得にかける費用がLTVを上回っていれば、その施策は見直しが必要だと分かります。広告費の配分を顧客層ごとのLTVにもとづいて見直すなど、データを根拠とした投資判断の物差しとしても使われています。
また、既存顧客との関係を深める施策の場面でも使われます。解約率を下げる取り組みや、アップセル・クロスセルといった提案活動は、いずれもLTVを高めるための代表的な手段です。さらに、人事の領域でも、採用や育成への投資を従業員が長期的に生み出す価値と対比して考えるなど、LTVの発想を応用する場面があります。一度きりの成果ではなく、長期的な関係から生まれる価値に目を向けるという考え方は、部門を問わず役立ちます。
LTVを理解することの重要性
LTVを理解することは、限られた経営資源をどこに投じるべきかを判断するうえで役立ちます。新規顧客の獲得には、既存顧客の維持と比べて大きな費用がかかるといわれています。LTVを把握していれば、目先の売上を追うだけでなく、長期的な利益につながる投資へと判断の軸を移すことができます。
一方で、注意点もあります。LTVは将来の予測を含む指標であるため、算出の前提が変われば数値も大きく変わります。数値の精密さにこだわりすぎるよりも、関係者が共通の物差しとして使えることが大切です。また、LTVの高い顧客だけを優遇しすぎると、新しい顧客層の開拓がおろそかになることもあります。指標はあくまで判断の助けであり、顧客一人ひとりとの信頼関係を築く日々の活動が土台にあることを忘れない姿勢が求められます。LTVの視点は、価格の引き下げ競争から離れ、提供価値を高める方向へ組織の目を向けさせる効果もあります。
実務で活かすためのチェックポイント
✺ Editor’s Memo
現場での運用は、業界・規模・組織文化によって大きく変わります。記事内のインタビュー事例も併せて参考にしてください。
— SHARE with カイシャの育成論 編集部