株式会社エッジコネクション様の育成論カイシャの育成論について————はじめに育成論についてお伺いします。社員の育成について、大村様の想いやお考えについて教えてください。社員には「当社には物理的な商品が無いので、社員一人ひとりが商品のようなもの、つまり当社の企業価値だ」と伝えています。当社のメインは営業支援なので、当社の社員一人ひとりの能力やスキルをクライアント様に販売しているようなものです。ですから、個人のスキルを高めることが大切だと思っています。————個人のスキル向上を実現するために会社として行っている具体的な取り組みはございますか?2点ございます。1つは、書籍購入制度がある点です。「お金がないから勉強できない」という状況はあってほしくないと思っています。社員の折角の成長機会を無駄にしてしまうことは避けたいため、仕事にまつわる勉強のための書籍代は全て会社負担で購入しています。2つ目は、2週間に1回のペースで1on1を実施している点です。ただ、社員のためにという想いを込めて、1on1という名称ではなく当社では「成長セッション」と呼んでいます。一般的な1on1は、ただ仕事に対する愚痴を言うだけの時間になってしまっているということをよく聞いていました。それでは本来の目的とも違いますし、せっかくの上司部下の時間がもったいないので、「成長セッション」として、成長するための時間とわかりやすく認識できるようにしています。悩みや課題を共有しつつ、成長できる機会の一つになるよう設定しています。————その他に研修などは実施されていますか?中途入社した社員に、はじめの1ヵ月間みっちり研修を受けてもらっています。研修は実務に関わる部分だけではなく、当社が大切にしている理念や社風について深く知ってもらい、共感してもらうための時間にしております。会社の理念や社風について————理念や社風について、しっかり時間をとって伝えていこうと思われたきっかけはございますか?当社は東京だけではなく宮崎にもオフィスがあるのですが、昔は、私がいないと現場が回らないという状態をさけるため、宮崎に直接行く機会を頻繁に設けていませんでした。そのため、私の意向がうまく伝わっていないことから宮崎の現場で混乱を招いていることがありまして。改善に向けて動き出すべくその原因を突き止めたところ、宮崎の社員をまとめる立場にある役職者が私のやりたいこと、メッセージを他の社員たちに適切に伝えていないことがわかりました。その時、「ちゃんと理念を全社的に伝えなければ、こうも会社は混乱するのか」と実感しましたね。それから新入社員に対しての研修の中でも、全社としても、理念について伝える機会をたくさん設けました。理念を語っていくことで、社員のみんなに今の仕事にちゃんと納得感を持って働いてもらえるようになって欲しいと思っています。また私自身もしっかりと理念を体現し、より責任を持って行動している姿を見せていかなくてはならないと強く感じますね。————そのようなきっかけがあったのですね。実際にどのようなことを伝えていらっしゃるのですか?細かくお話するとキリがないくらい様々なことを伝えているのですが、中心となる考え方としては、言うならば「働かざるもの食うべからず」です。私のポリシーとして、精一杯目の前のやるべきことに向き合えば必ず人は成長しますし、そのときに相応の見返りがあれば非常に大きな達成感を得られる、そして、そういう環境を本質的に人は求める、と考えています。実際に当社は自身の売上や成果が翌月の給与にタイムリーに還元される仕組みがあるので、目に見える成果が出た社員の努力にきちんと応えていく会社である、ということを実感してもらえるようにしていますね。会社の仕組みと社員への支援について————給与に還元される仕組みは魅力的ですが、営業以外の方もそのような仕組みがあるのでしょうか?はい。全社員対象です。当社は社内売上という仕組みがあり、全社員が数字を追っている会社です。毎月、営業社員の売り上げだけではなく、内勤の社員の付加価値も定量的に出すようにしています。お客様先から案件を頂いてくる営業社員だけでサービス提供は完結しませんよね。内勤社員と一緒にサービスを提供しているわけです。よって、内勤社員は営業社員から仕事を貰ってくる、という仕組みになっており、そこで売上が分配されます。内勤社員も自分のスキル向上、成長を続けていかないとニーズに応えていけないという、成長していくための健全な文化が根付いていますね。————全社員が数字を追っている、というのは会社としてとても強いですね。ほかに研修で伝えていることはございますか?先程も少し述べた内容になるのですが、当社のサービス品質は社員のスキルと直結してますので、一人ひとりのレベルアップが会社のレベルアップにも繋がる、ということです。一人ひとりが成長すると、会社としてもチャレンジするレベルが上がる。そういった状況が私としても、会社としても理想だと考えています。もちろん社員にとって選択肢が増えることにも繋がります。企業が成長していくことで新しい施策が生まれ、その施策を通して給与面や働きやすさ、やりがいや成長実感など、より多様性のある還元が社員へできるようになります。これからも育成環境をもっと充実させていきたいですね。————経験のある中途社員の方だと、なかなか新しい会社の文化を受け入れづらいという方もいらっしゃるのではないかと思いますが、工夫されていることはございますか?そうですね。おっしゃる通りで、中途入社で実績のある方だと、もちろんそれまでに積み上げてきた自分自身の努力や実績があるので、当然ですが、健全なプライドを持っています。入社してしばらく経ち、理念の不一致やいろんなことに気づいてモチベーションが低下するケースは一般的によくあることですが、結果が残せる優秀な人物なのに、文化が合わないというだけで辞めていってしまうのはそれこそお互いにとってもったいない。そうならないためにも、入社して間もないはじめのうちに「こういう会社なんだ」という意識を持ってもらってから仕事に打ち込んでもらいたいと思っているので、理念や社風についてはしっかり伝えるようにしています。————では皆様、入社されて理念や会社の想いにしっかり共感された上で働かれているのですね。もともと、そういった研修は実施されていたのですか?いいえ。現在の水準で研修を始めたのは3年前あたりですね。先程申し上げた宮崎での件がきっかけになっていることは間違いないですが、会社を経営していく上で、理念を伝える機会をもっと仕組みとして作らなければいけないな、という思いは前々からぼんやりと考えている部分ではありました。なので、ようやくここ最近その想いをちゃんと形にすることができたなという実感があります。————実際に実施される前と後で変化はございましたか?変化はとてもありました。研修を実施する前は、一部の社員はチャレンジする人もいましたが、一方でやらない言い訳を並べる人も多かったように思います。会社が何を求めているか見えにくい状況だったのかもしれません。だからこそ、できなかったり、壁にぶつかったりしたときに辞めてしまう人も多く、恥ずかしながら離職率は高かったです。研修を実施してからは、離職率は大幅に下がりましたし、ステップアップしたいという想いがない人も減ってきていると感じます。離職率については、研修以外にも当社に合う人材や早く育成できる人材がわかってきたことで、採用の段階でマッチする人と出会うことができている、というのもあるとは思いますね。————はじめの研修が大きく影響しているように感じたのですが、研修以外で考えられる要因もありそうですね。そうですね。入社し、研修が終わった後も、ただ個々に営業を任せっきりにするというよりはフォローする体制があることも大きいです。フォローがあることで、社員個人のキャリアイメージや目標も明確になってきていると感じます。そうすると、ステップアップしやすくなりますね。ただステップアップした後には昇進や昇給があるわけで、その分多くの仕事を任されるようになったり、マネジメントする立場になったりなど責任が重くなるので、必然的に負担も増えてしまいます。せっかくステップアップしたのに業務負担が増える一方では、どこかでその成長にも陰りが出てしまうかもしれません。そうならないために、当社ではステップアップに応じて、しっかりとフォローアップするように体制を構築しています。————昨今、世間的には昇進したくないという人も増えてきている中で、会社からのフォローアップがあるとキャリアも築いていきやすそうですね。そうですね。ただ、全員にどんどん上を目指していってほしいと思っているかと言うと、そういうわけではありません。全員が全員、出世を目指している状況だと、必ずその出世の競争の中で敗北してしまう人が出てきてしまいますよね。ある意味では椅子の取り合いをしてしまっている状況になると思うので、折角優秀でもその競争に負けた事がきっかけで辞めてしまう人が出てくると思うんです。ですから、上(出世)を目指す人と目指さない人のバランスが取れているくらいがちょうど良いと考えています。出世に興味ない人がいることで大きな問題はないですね。社員への期待について————キャリアの選択肢が多いのは魅力的ですね。キャリアという部分以外にも、社員にこんな姿であってほしいという理想などはございますか?社員には「自責の精神」と「素直さ」を持っていて欲しいと思っています。問題が起こったときや壁にぶつかったときに他人を責めるのではなく、自分を責める、そして自分の課題に素直でいる。そうすることで「努力」ができるので、壁にぶつかっても立ち直ることができる人になれると思うんです。立ち直ることができれば、また壁に挑戦できますよね。他人のせいで挑戦できないと思っている人はやはり成長していけない。その先で壁を乗り越えられれば、できることがまた一つ増えるわけで、自責の精神と素直さは成長にとても必要な力だと考えています。それから、社員には会社が無くなっても、一人でも進んでいけるようになっていて欲しいと思っています。当社で働いたことで、一人でも生きていける力が身につけば、本人にとっても良い成長を実感できると思いますし、そうやって一人ひとりのレベルが上がることで会社のレベルも上がります。そういった成長環境を提供し続けることができれば、社員たちも居心地の良さを感じてくれて人が定着し、結果的に潰れない会社になっていくと思っています。————自責でいること、素直でいることはとても大切だと思うのですが、普段から社員の方にそのような考えを持ってもらうために大村様が意識されていることはございますか?当然かもしれませんが、基本的には社員から相談を受けたら、それに対して真摯に答えるようにしています。ですがその際にも「こうしなさい」と答えを指示するようなことはあえてしていません。最後は自分達で考え抜いて、解決してもらいたいと思っているからです。その考え抜くためのヒントを与えるように意識はしています。というのも、私は社長という立場もあり、今は現場に出ることも少なくなりました。そんな現場から遠い私が、実際の現場の状況を一番理解している人を差し置いて荒唐無稽な指示をしてしまったら、折角の相談も無駄になってしまうかもしれません。ですから、決定までするような関わり方はしないほうがいいと思っています。————答えを教えるのではなく、ヒントを与えるだけに留めるような育成方法を実践するようになったきっかけはございますか?人は育てようと思って育つわけではないと思ったことですかね。これまで社員を飲みに連れて行って「営業とは」を語ってみたり、心理学を熱心に学んで接してみたりもしましたが、ほとんどが思ったように育つことはありませんでした。人から言われたことを鵜呑みにして動ける人はそんなに多くないということです。一人ひとり納得できる尺度は違いますし、それこそ見て理解する、実践して理解する、聞いて理解するなど人によっても状況によっても変化するペースは全然異なると思うんです。そこで、社員が勝手に動けるような仕組みを作る事がいいと気づきました。それからあまり入り込まない方がいいとも思いましたね。なるべく一人ひとりの自発性を尊重するようにも意識しています。————入り込まない方がいいというのは?これはマネージャー層にも言っていることなのですが、「マネジメントするときは少し外側から部下の様子を見るようにして、自分は必要とされたときだけ手をかけるくらいの距離感でいるのがいい」と考えています。私達は少し離れたところから部下の様子を見て、その社員たちがのびのび生き生きと勝手に動けるように、仕組みを作ってあげるんです。それが近くにずっといすぎてしまうと、部下の行動の全体像が見えにくくなったり、本質を見抜けなくなったりしてしまうリスクもあると思います。どうしても、部下と上司とでは見ている景色が違うものですし、距離感はとても大切ですね。活躍されている社員の方について————大村様の「自責であってほしい」という想いがいろいろな仕組みや働きかけで社員の皆様にも伝わっているのだなと感じたのですが、社員の方々が出した成果で期待以上だったことはございますか?期待以上なことが多いですね。例えば今回、このインタビューのフロントを担当してくれた趙には広報活動や採用活動を任せているのですが、今月はこれくらいメディアに露出してほしいだとか、毎月何名採用してほしいだとか、全て達成してくれています。————せっかく隣に趙様もいらっしゃるのでお話しをお伺いしたいのですが、今大村様がおしゃっていたように期待を超え続けられる理由は何でしょうか?そうですね、目標値を出された時に不可能な数値だとは思わないことだと思います。不可能な目標を掲げさせるはずがありませんので、うまく見えないことや、この目標値の達成はどこに繋がるのかなど知りたいことは質問して、まずは何も疑問を持たずに進められる状態にしています。そうすることで本心から「やれないわけない」というマインドになれますので、「やりきれる」という意識がチームに伝播して達成に繋がっていると思います。もちろん迷うときは社長に相談しますが、先述のように基本的には判断を任せてもらえるので、目標を見据え責任をもって動いています。————ありがとうございます。他の社員の皆様は如何でしょうか?宮崎のある社員の話になるのですが、その社員はもともと主婦でして、うちで働きはじめたことで、クライアントのマーケティング責任者にマーケティング戦略の大きな提案ができるようにまで成長しました。オンライン化が進み、地方に住む社員でも大企業と対等に商談する機会ができたことも大きいですね。その結果、「私にもこんなことができるんだ!」とやりがいを感じているようでした。会社の制度について————働きがいの部分以外にも会社の魅力がありそうですね。そうですね、例えば誕生日には5千円相当のプレゼント、勤続2年以上の社員には旅行券、毎月一人3千円分のレクリエーション付与という制度などは社員にとって魅力的なのではないでしょうか。————どうしてそのような制度を?営業目標の達成はもちろん簡単ではありません。目標が厳しい分、心が休まるような仕組みもあった方がいいと思っての制度です。目標が達成できないとやっぱり辛いじゃないですか。そういった時に、「この会社いいな」って思ってもらえるような仕組みって大事だと思いまして、色々な制度を作っています。大村様のご経験について————まだまだこれから新しいことに挑戦されると思うのですが、これまで経営されてこられた中で難しかったところはございますか?ここまでで起業家がする失敗は全部経験したんじゃないかなと思います。1つは創業時の意思決定に関する心持ちですね。今17期目で私が社長をしていますが、元々は4人で立ち上げた会社でした。前職の繋がりで仲のいい友達って感じだったので、いろんな意思決定がノリで決まってしまい、サークルのようになってしまったんですよね。今ではとても考えられないですが。そこに少しずつ、違和感をもつようになりました。このままではいけないなという時に東日本大震災が起き、経営が傾いてしまったのでそのタイミングで実力主義に変えたんです。すると、会社らしくなる一方で、社員が一気に辞めてしまうという出来事がありました。サークル的な雰囲気が当たり前だったところが急に実力主義になったら、それは辞めていきますよね。 それからも色々ありました。ある銀行員の甘い話に乗ってしまい、「大丈夫です!大丈夫です!」という言葉で融資の申込みをして、その融資も事業計画に織り込んでいたのですが、最終的に想定していた金額で借りられないような出来事もあり、一気に資金繰りがギリギリになりました。その後しばらくは前金じゃないと事業を進めていけないというくらいとても大変でしたね。————そのような大変な状況の中、ここまで続けてこられたのはどうしてだとお考えでしょうか?経営者って、自分の人生を全部自分でコントロールできるじゃないですか。それがいいと思ってるからだと思います。全て自己責任で自分の人生に一切言い訳が効かない状況というのが一周回って気持ちいいな、と感じていました。他には、ゲームがすごく好きで、攻略法を考えることがとても向いているというのもあるかなと思います。仮説を立てて、戦略を構築して、それを実行に移した時に成果が得られるのはとても嬉しいです。————とてもリスクのある選択をされていらっしゃると感じたのですが、何かに「いける」という自信があったのでしょうか?自信ではないですが、私、もともと集団行動が得意ではないんです。サラリーマンだと上司に反対されたり、受け入れてもらえなかったりすることって多いじゃないですか。それだとストレスが溜まるだろうなと予感していたのかもしれませんね。それから、もともとリーダーなど前線に立つ人間に推薦されるようなタイプではありましたね。だからこそ、自分を追い込み、その分自由に選択できる道を選んだのかもしれません。戦略などもゲームで企業運営みたいなシミュレーションゲームをしたことから、キャッシュフローや設備投資をはじめ、経営の基本観を得ることができたように思います。事業内容と今後のビジョンについて————いろいろな歴史を経て現在があると思うのですが、現在の事業のお取り組みも教えてください。最初にも申し上げたように、営業支援がメインの事業です。支援させていただいている企業様としては大きく2種類ありまして、1つ目は、営業を始めたばかりでどう進めていくべきかわからないという企業様、2つ目は、営業の仕方は理解しているが商談数が少ないという企業様です。そして、営業コンサルティングだけの会社だと、どうすればいいかを伝えて終わりですが、当社はテレマーケティングも行なっているので、営業戦略が見えてきた後、最終的には宮崎支社の社員がテレマーケティングサービスを継続的に提供しているという状況ですね。————ありがとうございます。これから会社として実現したいことはございますか?今の「営業支援」の事業を「経営支援」に変えていきたいと考えています。優秀な人が取り組んだ方が上手くいく仕事や、人に由来する仕事ってたくさんあると感じています。デザイナーとか職人とかいろいろありますが、その中でも多くの課題は社長(経営)の近くにあると気づいたんです。例えば、当社が手掛けている営業もそうですし、採用戦略なんかもそれに携わる人に由来します。当社は社員のポテンシャルを引出す仕組みに強みがありますので、そんな人に由来するお困りごとを包括的、総合的に支援する会社になれないかと考えています。————すでに経営支援の事業に向けて進めていらっしゃるのでしょうか?私個人に入ってきている案件はありますが、会社としてはまだ動いていないです。これからですね。ですが、3月には福岡にも拠点を開きました。東京、宮崎、福岡と、数カ所に拠点があることで、社員が仕事でのキャリアを築きつつも、好きな場所で暮らすことができる可能性が広がると考えています。社員が成長を味わい、好きな場所に住んで、好きな生活をして、生き生きとして、だからこそ商品の魅力が上がって、仕事も入ってくるし、新しい人材も集まってくる。そんな会社でありたいですね。————大村様が考えてらっしゃる会社の在りたい姿、とても素敵ですね。最後にこれからどんな方と仕事をしていきたいか教えてください。これは、社員に対してもですし、クライアント様に対してもですが、素直で成長意欲のある方と接点が持てるとお互いがハッピーになるのでは、と思っています。生きている限り成長していく自分を見てみたいというのは、人間としての本質的な欲求なんじゃないかと思います。そんな本質的な欲求に素直に向き合える人たちと、お客様としても、当社社員としても一緒に仕事をしていきたいですね。