ZenGroup株式会社様の育成論カイシャの育成論について————最初に、現在人材育成についてどのようなお取り組みをされているのかを教えてください。ヨシムラ様:当社では入社後3〜4日間オンボーディングを実施しながら当社の歴史や企業文化についての話や実務で使用するツール、社内のルールを説明しています。その後、OJTに移っています。ただ、当社は現在急成長中ということもあり、研修により力を入れていきたいと考えています。そのため、新たな研修を作り上げている最中でもあります。「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」の研修を導入したり、企業文化だけでなく会社の「プレイブック」も作成したりしています。しかし、当社の採用方針として多岐にわたる人材を採用していることもあり、社内のメンバーには日本語をあまり話せないメンバーや反対に日本語しか話せないメンバーもいます。当社の公用語は英語と日本語の両方としていますが、中には英語が第三言語、第四言語のメンバーもいるので様々なパターンの研修を考える必要があることが1番の課題となっています。また、外国籍の社員の業務としては海外営業などを担当としている企業が多いと思いますが、当社では私のような日本人ではないメンバーも人事やオフィスマネジメント、管理職などを担当するため、色んな言語スキル・バックグラウンドがあるメンバーと協働する機会が多くあります。そのため、入社時点で日本人で10年以上日本の国内営業経験がある人が入社することもありますし、母国の大学を卒業後すぐに日本に来て当社に入社する人もいます。そんな多岐にわたるメンバーに対応するための研修を現在作成しています。————職種だけでなく、国籍や言語が異なると他社に比べてより研修の内容も細分化されていくと思うのですが、その中でも貴社の中で共通して育成していきたいと重視しているポイントはありますか。ヨシムラ様:「1つの組織」であることを理解してもらうことを重視していますね。多岐にわたるメンバーがいるといいつつも、例えばポーランドから来日をしてすぐに当社に入社する人も日本国内で営業経験を培いビジネススキルを高めて来た人もみんな一丸となって協働して欲しいということは理解してもらえるように研修を作っています。————実際に研修を作る中で組織的な課題を感じた瞬間はありますか。ヨシムラ様:私は約3年前に入社したのですが、当時は本社の従業員数は50人ほどという、中小企業にしては大きめな企業規模でした。そこからハイスピードで成長した結果、現在は本社の従業員数は約140人となり、組織図も複雑となりました。元々は代表直下だったメンバーも組織が大きくなるにつれ、徐々にその距離も開き始めました。そこで多岐にわたるメンバーにもマネジメントを理解して欲しいというところに課題を感じ始め、現在は管理職研修のテスト導入も開始しています。今後の組織課題として非常に大きな部分なので特に力を入れているポイントでもあります。スロヴェイ様:当社はまだまだスタートアップ企業ということもあり、常に解決しなければならない課題がたくさんあるため、時間をかけてじっくり人材を育てるという余裕はあまりないのが正直なところです。しかし、当社では活躍しているメンバーを管理職やチームリーダー、ユニットリーダーに抜擢しているため、過去にマネジメント経験がない人もいます。そういうメンバーのためにも会社からのサポートは必要だと考えています。また、当社は能力に応じて異動が多い会社でもあります。例えば、海外から業務委託として働いていたメンバーを日本に呼び、カスタマーサポートとして働いたのち、マーケティング部門に移りそこでチームリーダーを務めたメンバーもいます。そういうメンバーのためにも管理職研修などの研修を通じた会社からのサポートは必要不可欠だと思っていますね。中途採用を行いスキルが高い人が入社することが理想的ではありますが、最近は組織規模が大きくなってきたこともあり、スキルだけではなく会社の文化にマッチした人材に入社していただく方が社員と会社双方にとってメリットになると考えています。そのため、最近は面接の際にはスキルだけではなくその人の資質も理解する機会を設けています。従来選考回数は2回だったのですが、3次選考を設け、そこで会社が求める資質項目を何個クリアできるのかを見極める機会となっています。その結果、ある程度のスキルと合わせて会社とのマッチも重要視して採用していますね。特に当社では30カ国のメンバーが集まっていますので、多様なバックグラウンドを持つメンバーが協働するとなるとまとめるのは簡単ではありません。だからこそ、なおさらその必要性を感じています。理念・文化について————やはり会社がより成長していくためには組織の成長も求められますが、それを実現するためには社員のスキルだけではなく会社の価値観と社員の価値観がマッチしているかも大切ですよね。スロヴェイ様:元々会社が大きくなりだしてから会社の文化を言語化する必要があるとは感じており、他社の文化を研究することも多くありました。例えば、Apple社では「完璧さ」を重視しており、納得する商品ができるまで市場に出さないことを重視しています。反対に「スピード感」を重視する企業は、早い段階で市場に商品を提供し、顧客の反応などを見てアップグレードしていく、という方針を掲げていることもあります。他にも、「組織は家族でなければならない」、「組織はスポーツチームでなければならない」など、会社の文化には企業ごとの特色が存在します。どちらが正解というものはありませんが、会社のステージに合わせて方針を決定していく必要があります。この価値観は日本と海外の企業でも大きく異なることが多く、色んなバックグラウンドを持つ社員が在籍する当社だからこそ「当社はどのような文化・方針を持った企業なのか」をあらかじめ明確化することによって同じ方向を向いて協働できる組織づくりができると考えました。————他にも研修を作る中で気をつけていることはありますか。ヨシムラ様:研修を作る中で1番気をつけようとしているところは、「理解した」というところで終わらせないことですね。私は今まで色々な企業で働いてきたのですが、企業の文化を可視化し、オフィス内に飾っている企業もいくつかありました。もちろん可視化できるようにすることは重要なのですが、最終的には体現していないと意味はないと考えています。そのため、研修の中でも何度も文化についてメンバーに伝えるようにしています。私たちが定義した会社が求める資質項目を全て毎日体現することや入社時点で全て体現していることは非常に難しいことではありますが、私たちは理想図を描いてそれに向けて走ってもらえるように育成していきたいと思っています。例えば、コミュニケーション1つとっても多様性のある職場なので気をつける必要性がありますよね。このコミュニケーションが今日上手く取れなかったのであれば、明日は今日よりもスキルを向上させる必要があります。研修を行う上では、上手くできなかったのであればそれを素直に改善しようとする姿勢という理想を体現するための姿勢が重要だと考えております。————理念についてもお伺いしたいのですが、現在貴社ではどのような理念を掲げていますか。またその理念を掲げるに至った経緯もあわせてお伺いしたいです。スロヴェイ様:現在当社では、「世界の越境EC販売額20%を日本に」という理念を掲げ、越境ECを究極にシンプルにすることで世界と日本の物流を繋ぐことを目指しています。私は大学時代ずっと翻訳問題について学び言語に現れる世界観や他言語に翻訳しにくい文化的キーワードをどのように翻訳するのか、ということを研究していました。文化的キーワードだけでなく、一見普通の文章でも翻訳することによって文章に込められた意図が異なってしまうこともありますよね。大学卒業後は以前学んでいた分野とは全く異なる越境ECを始めたのですが、その中で「文化間のコミュニケーションや相互理解は言語の壁を超えることもある」ということに気付きました。つまり、「国境を越えた商品のやりとり」もある意味「文化間のコミュニケーションのやりとり」でもあると解釈できるのではないでしょうか。私は、文化を直接体験することによって話を聞く以上により深い理解を得ることができるのかなと思っており、例えば「言葉で翻訳された煎餅」と「実際に食べてみた煎餅」では理解に差がありますよね。このように言葉で説明することが望ましいこともあれば、実際に自ら経験した方がいいということもあります。だからこそ、私たちは国境を越えて制約なく製品をやりとりできることは時には言葉以上の力があると信じています。当社のお客様と出品者に国内取引と同じくらい簡単な越境ECの取引体験を提供することに力を入れています。当社は国境がそこにあると気づかないほど簡単でシームレスなサービスとなっていると確信しています。————会社を設立した当初から現在の理念を掲げていたのでしょうか。スロヴェイ様:当社は元学生4人とITスタッフ1人で設立した企業で、当時大学を卒業したばかりでどこまで大きい会社になるのか、生き残れるのかさえもわからないというのもありました。マンションの一室から始まった会社で、最初は目先のことばかりを考えていた時期でもあったのかなと思いますね(笑)ただ、親戚や周囲の友達から「日本のものが欲しい」という声をもらっていたので、事業のニーズは実感していました。だからこそ、より簡単に日本の商品を海外に販売できる仕組みがあれば海外にいる人たちがもっと喜んでくれるのではないかという考えはありましたね。ただ理念や文化を最初から明確にして言語化していたのではなく、事業を行いながら考え言語化していったので、途中で今の理念や文化になりましたね。————会社の文化や理念を明確に言語化しようとなったきっかけがあれば教えていただきたいです。スロヴェイ様:これというのは多分なかったと思います。メンバーの人数が増えるにつれて、明確ではない部分を明確にしていこうというのがありました。例えば、メンバーが入社した際にマニュアルがないことや方針が明確ではないことに対して不安な声を上げる人もいました。そもそも当社はまだまだスタートアップに近いので大手企業のようになんでもマニュアルが揃っていて、マニュアル通りにやればいいという訳ではありません。ただ、入社する人にとって会社に期待することは様々ですよね。せっかく縁があって当社に入社してもらったにもかかわらず、入社してから当社の働き方にマッチしない可能性があるということに気づいて、当社がどういう会社なのか広く発信しないとミスマッチが起こってしまうなと実感しました。だからこそ、キャリアサイトを立ち上げるだけでなく、社内社外問わず「当社はこんな会社です」と発信するようにしましたし、面接の際にも当社の働き方や価値観について直接お伝えする機会を設けるようにしました。その結果、ミスマッチも減ったのかなと思います。そういうのがきっかけでしたね。会社の歴史について————理念についてお伺いする中で創業当初のお話についても触れていただいたのですが、実際に大変だったことやそれを乗り越えた方法についてもお伺いしたいです。スロヴェイ様:会社を起業した最初の1年は創設者しかいませんでした。人の採用はそれから1年後に始まりましたね。大学を卒業してすぐに当社を設立したということもあり、社会の経験がほぼないメンバーで創設したので、本来であれば社会人にとって当たり前なことも知らないことが多く、試行錯誤しながら学ぶことが多かったですね。そのため、営業の方法や接待の方法などわからない部分が多すぎて失敗してしまうこともあり、経験してみて初めてわかることがたくさんありました。他にも、コロナ禍は大変な時期でもありました。当時もそこそこの物量がありましたが、ある日「日本郵便から全ての荷物が配送できなくなった」と報せが来ました。そこから一気に何千個の荷物が戻ってきて、その保管場所を確保することに困ったり、物流が止まると当社のビジネスも止まってしまうので、新しい配送ルートを考えたりする必要もあったりと、当時は非常に大変でした。社員の皆様について————ありがとうございます。先ほど文化を大事にしながら社員の方も採用されているとお伺いしましたが、貴社で掲げている求める資質とはどのようなものがありますか。ヨシムラ様:当社で定義した求める資質としては、コミュニケーションやポジティブさなどがあります。当社はスタートアップ企業としては規模が大きい組織となってきましたが、こういった資質がある人でないと模範的なメンバーになれないのではないかと考えています。簡単にいうと自立して行動できる人ですね。自ら考え、自ら行動できる人が当社で活躍し、模範的なメンバーとされている人となっています。スロヴェイ様:他にも、データに基づいて判断できることや意欲的に自ら学ぶことができる人も活躍していますね。何度もお話ししている通り、当社はまだまだスタートアップの段階なので、マニュアルがないことも多くあります。そのため、社内にノウハウがない物事でも自ら調べることができる人が当社にはマッチしていると思いますね。ヨシムラ様:近年では「〇〇テック」やAIなども注目されてきているため、そのような分野やツールに関心を示し、学んでいきたいという意思がある人も望ましいです。業務内容について————自立していて成長意欲が高い人が活躍できる環境だということが伝わってきました。実際に社員の皆様がどのような業務を行っているのかについてもお伺いしたいです。スロヴェイ様:先ほども少し触れたのですが、当社では海外の購入者と日本の出品者を様々な形で繋ぐことを事業としています。越境ECというのはいわゆるショッピングモールを作って終わりではなく、購入代行という形もありますし、サブスクリプションという形で商品を提供することもあります。他にも様々な形でお手伝いできる場面が沢山あるので、日本の出品者さんのニーズに合わせて色々なサービスを今後も立ち上げていこうと考えています。例えば、自社サイトを持っていて海外にも商品を販売したいと考えているが、海外へのマーケティング方法がわからないという企業をお手伝いすることもあります。また、海外配送だけ当社がお手伝いする、という場合もあります。当社で1番需要が大きいのは購入代行ですが、ショッピングプラットフォームやサブスクリプションとして購入してもらうボックスの内容を考案したりしています。このように、あらゆる形で越境ECをシンプルにする仕事を当社では行っていますね。————ありがとうございます。今後事業としてやっていきたいと考えていることはありますか。スロヴェイ様:出品者のニーズはまだまだ沢山ありますが、それら全てにまだ応えられていないので、これから海外配送においてもっとニーズに応えていけるサービスを提供していきたいというのが1番ですね。なので、1,2年は物流関連に力を入れていきたいと考えています。また、越境EC自体は送料が高いとやはり購入してもらいにくくなるため、近年の物価高騰は課題の1つでもあります。いかに配送料を抑えられるかはビジネスの鍵にもなるのでそこにも力を入れていきたいと思っています。未来のビジョンについて————事業と絡めて今後社員の皆様にもこんな風に成長して欲しいという期待があればお伺いしたいです。スロヴェイ様:当社が定義する11個の資質は採用の際にも基準にしており、7個クリアしていれば合格としているのですが、既存のメンバーの評価の際にも参考にしています。例えば、ボーナスの時期にも360度評価で資質のチェックを行っていますが、全体のクリア平均よりも多くクリアできる人が増えたり、少しでも多くのメンバーが11個全てクリアできるようになって欲しいと思っています。また、会社が成長している中で感じることとしては、中間マネジメントが不足している部分があることです。まだまだ代表が直接マネジメントをする部分が大きいと感じているのでもっとマネジメント部分を研修などを実施することで改善して、頼れるメンバーを増やし、一緒に会社を大きく成長させていきたいですね。————今後は研修が会社の成長にとって大きなポイントになりそうですね。現在のマネージャー層の方に対してはどのような成長を期待していますか。ヨシムラ様:当社のあり方としては、ベンチャー企業によくある専門性のあるメンバーが多い一方で、従業員の平均年齢は30代前半と非常に若い組織です。そのため、マネジメント経験がない方が多く、マネジメントスキルを色々模索しながら業務を行っていました。ただ、今後は研修を通じて、今後は資質も含めた成長を目指して欲しいと思っています。自身がマネージャーであることで周りへの影響を理解しながら周囲のメンバーへ資質の模範になって欲しいですし、自身のできていない部分は素直に発信していけるような変化を期待していますね。当社には1度もマネジメント経験がないメンバーもいますし、反対に百人くらいの組織のトップになった経験がある人もいますので、現在はお互いから勉強してもらえる方法をメンターシップなどを導入しながら模索しています。また、当社は代表の4人と非常に距離が近いという特徴があります。他社では考えられないくらいの頻度で代表とコミュニケーションを取れたり、代表の考えを直接聞くことができます。現在は近い距離ですが、組織が複雑化し、距離が開き始めている中で、その状況がなくなった時にでも組織が自立するように、現在マネジメント層に判断力・問題発見力などの向上を促しています。————最後に、今後お2人はどんな方とお仕事をしていきたいと思っていますか。ヨシムラ様:私は、クライアントの方でも、採用する方でも、管理職になる方でも、私たちのミッションに賛同していただける人とお仕事をしていきたいと思っています。ミッションとしても「世界の越境EC販売額20%を日本に」という非常に大きなものを掲げており、私だけでなく、当社のメンバーが大好きな日本をより元気にしていきたいなと考えています。だからこそ、このミッションに賛同してもらえるメンバーと一緒に働いていきたいですね。スロヴェイ様:私も同じ考えですね。その他だと、その人から何か学べるといいなと思っています。代表だからといって何でも知っているわけではないので、経営部分はもちろん、人事や広報など幅広い分野で自分より知識があったり賢い人を雇う時期が来ます。そうじゃないと会社が成長しないままですよね(笑)そういう人たちとコミュニケーションを取る中で学べる機会も多いと思っていますので、今後もそんな人たちを会社に迎えてお互いに学び合う機会を生み出すことができればいいなと思います。