株式会社アビスト様の育成論カイシャの育成論について————最初に、現在人材育成についてどのようなお取り組みをされているのかを教えてください。現在は新入社員研修から始まり、階層別や当社で導入しているランクごとの教育、役職ごとの研修など様々な形で実施しています。また、当社では独自に作成したeラーニングシステムを導入したり、通信教育制度の斡旋、資格取得支援や語学力向上奨励制度なども制度として実施しています。最近では機械設計開発職を志望する新入社員に対して、1年間かけてしっかりと教育を実施する「1年研修」を行った上で実践に進んでもらうような取り組みも行っています。————貴社ではかなり人材育成に力を入れているなと感じたのですが、育成に力をいれようになった経緯などをお伺いしたいです。これまでは、各拠点が異なる業界や異なるお客様と取引していたため、統一的な教育が難しく、各拠点やチームが独自に教育を行っていました。しかし、お客様から求められるレベルが年々高まり、業務と同時に教育を行うことで負荷が増え、個々のスキルにばらつきが出ることが懸念されました。各拠点ごとに求められるスキルも異なることから、各拠点でヒアリングを実施し、共通化できる部分は共通化し、拠点やお客様ごとに適切に分けることを検討しました。また、会社の成長には「人財」が欠かせませんので、現在は積極的に人材育成に取り組んでおり、先ほどお話した育成の種類も増やしていく方針です。————実際に様々な研修を導入してみて得られた現場の反応や得られた効果はありますか。例えば、役職者研修は従来なかったものなので、「そういう研修があってすごく嬉しいです」、「助かっています」という声もありますし、昨年は集合研修を取り入れたのですが、コロナ禍でコミュニケーションを取る機会がなかった分「研修でいろんな話を聞けて刺激になった」という声も聞きましたね。研修の中で様々な人とコミュニケーションを取る機会を生み出したことで、自身の価値観をアップデートできる機会となり、自身ができていないことと向き合うきっかけ作りになっていますね。また、先輩社員に先ほどお話しした新卒の1年研修について伝えると「自分もその研修をやりたかったです」、「そんな研修も受けられて羨ましいです」という声も沢山ありましたね。その声を聞いて、「みんな研修を求めていたんだな」と私自身気づくきっかけにもなっています。————社員の皆様も成長意欲が高い方が多いということが伝わってきました。反対に、育成において今後の課題やこれから取り入れていきたいと考えているものはありますか。主体的に学ぼうとする姿勢をもっと強化していきたいです。eラーニングなどを始めとし、現在は会社側が「こういうものがあるよ」と提供することが多いので、最終的には社員1人1人が自ら意欲的に学びに行く姿勢や意識が生まれると理想的ですね。もちろんプライベートの時間を確保することや目の前の業務が忙しくて時間の確保が難しいこともあるので、非常に難しい課題ではあるとは思っています。やらざるを得ない環境だけでなく、自己啓発として学んでいくマインドを身につけてもらえる環境づくりをしていく必要がありますね。ただ、これは永遠の課題だなと思っていますし、私たちとしても社員にとって学びたいなと思ってもらえるコンテンツを今後も考えていきたいです。また、成長してもらうために「気づき」のきっかけを作るためにスキルを明確化し、「次はこのステップに進もう」とスキルの指標を階段状に示すようにしています。これは年次ごとに今やるべきことを可視化し、目指してもらうようにしていますね。若手社員だけではなく、どれだけ社会人経験を積んでもわからないことや学ぶことは多いと思っています。だからこそ、役職問わず学びたい人が学べる環境づくりを今後はしていきたいですね。実際に現在は次長以上の研修や管理職以上のコンプライアンス研修など役職ごとの研修も設定しています。理念・文化について————今後も育成に力を入れていきたいとお伺いしましたが、この価値観は会社の理念や文化にどのように紐づいているのでしょうか。当社は、経営理念として「顧客主義」「社員主義」「成果主義」の3つの主義を掲げています。中でも「社員主義」は社員一人ひとりが「自主自律人材」になることで価値創造に繋げて欲しいという考えがあるので、先ほどお話しした「自ら学ぶ」という方針もそこからきています。自ら動き、学び、対応することで自主自律人材の育成に繋がると考えています。また、当社は人材派遣や業務請負の事業を行っているため、会社の看板を背負って対応をしています。社員がどこまで成果を出せるのか、しっかりとアウトプットができているかで、会社の信頼・価値が変わってきます。人の成長があれば成果も増え、それがお客様の利益にもつながります。そのため、経営理念に基づいた人材の成長が企業全体の発展につながっていると考えています。社員の皆様について————実際に自発的に行動し活躍されている社員の方もいらっしゃるのではないかと思うのですが、貴社で活躍されている社員の共通点についてもお伺いしたいです。活躍している社員の特徴としては様々あるのですが、1つは逆境に強いことですね。仕事はうまくいくことばかりではないので、失敗して落ち込むこともあると思います。ただ、その後ハングリー精神で「やってやるぞ」と切り替えて何をやらなければいけないのかを考え、スピード感を持って行動していける社員や落ち込むことがあってもすぐに切り替えアクションしていける社員は活躍していますね。また、知識の観点からすると、社外のコンテンツやネットの情報、お客様との業務の中、伝手など使えるものは何でも使うことができる社員は仕事が早いですね。ある意味、周囲の人との関係性を深めることができる人ということでもあります。————挑戦することは企業の成長にも個人の成長にも繋がりますよね。実際の研修の中で積極性を磨いたり、挑戦する価値観を身につけたりする機会はありますか。新卒の1年研修では、まずビジネスマナーや業務で使用するツールの使い方など基礎教育から始まります。その後はOJT教育となり、機械設計開発職志望の社員は、当社の次長や部長から本番と同じように直接業務の指示をもらい研修を通して知識や技術を身につけてもらいます。その際に業務の報告を行う相手が部長以上の社員ということもあり、このOJTを経て現場に出ることで、物怖じせずに上司や先輩に対して質問ができる姿勢を醸成することが可能となっていますね。この研修を導入してからは先輩社員から「積極的に質問しにきてくれます」、「物怖じすることはあまりないです」と言った声も実際に上がっています。業務の中では相手のことを考えるあまり遠慮してしまったり物怖じしてしまうということも少なくはないと思うのですが、それを緩和できているのではないかなと思います。また、先輩社員に実際に聞くことができるかどうかでも情報量に差が生まれると思っています。そういった部分でも成長の機会に繋がっていますね。そして、研修が終わった後は成果発表会を実施します。どのような業務を行ったのか、どんな失敗をして、その対策としてどのようなアクションをとったのかということを発表してもらいます。それに加え、毎月1ヶ月の振り返りとして、自己評価と上司視点での評価のそれぞれを行い、すり合わせとフィードバックの機会も設けていますので、積極性の観点以外でも成長に寄与しています。そういう部分でも意識の改革を行っていますね。————実際に研修を通して見えた社員の方の一面や期待以上の成長はありましたか。まだまだ研修としては始めたばかりということもあり、大きな成長を実感できるのは今後になるかなと思っています。ただ、研修を通じて知ることができた一面として、「この新人社員はこんなにも競争意識が高かったんだな」と感じた方はいましたね。早く実践に挑戦していきたいという思いが強いこともあり、実際にスキルも高く、仕事も早い方だったのですが、その方は1年待たずして実践に進みましたね。研修を通して1人1人の特性を理解する機会も増えたため、従来以上にそれぞれの適正に合わせた業務の依頼も可能になっているなと感じます。そうすることで本人のモチベーションや成長度合いも変化するのではないかと思っています。今後もそういった取り組みを取り入れて社員の方達が活躍できる環境づくりをしていきたいです。業務内容について————貴社のサービスを導入している企業様から見える貴社のサービスの魅力としてはどのようなものがあるのかお伺いしたいです。当社は主に、3D-CAD(3次元データの製図を作成するソフト)を利用した、自動車や機械などの設計開発を行っています。お客様には大手自動車メーカー様やその関連会社、部品メーカー様など、さまざまな製造業が含まれます。その中で、お客様からは「アビストさんはかゆいところに手が届くよね」という声をいただきますね。もちろんお客様に求められている業務は大前提として行うのですが、それだけではとどまらず、お客様が困っている小さな問題にも当社の社員は対応するようにしています。言われたことだけを行うのではなく、「これをやったらお客様も嬉しいだろうな」ということを自ら考え能動的に動く社員が多いですね。そのような対応を行うことで、信頼を得られ、今日も継続して取引いただいております。未来のビジョンについて————最後に、湯田様自身が今後力を入れていきたい研修などがあればお伺いしたいです。現在当社は、ビジョンとして「デジタルソリューション企業」を掲げていますが、そちらに関連した教育環境は機械設計開発職に比べても整っていません。技術革新が激しい中で、リスキングが必要と考えておりますのでそこを早期にカバーしていきたいと考えています。そのため、直近ではDX人材育成教育対応も行っていく予定としていますまた、「1年教育」に関しても機械設計開発職の内容を直近始めたのですが、「システム・ソフトウェア開発職」で入社する社員や「電気・電子回路設計職」で入社する社員に対しての対応環境もまだまだ未完成ですので、こちらも整えるようにしていく予定です。このようにまだ足りていない部分はまだまだ多くあるので、その辺りを今後も追加していき、当社の社員にとって「自社の教育ってすごい」と感じてもらうだけでなく、お客様先でも誇りに思ってもらえるような教育体制の構築を目指していきたいです。まだまだ時間はかかると思いますが、その結果、冒頭でお話しした「自ら学ぶ」姿勢を持った社員への育成へ繋げていけたらいいなと思っています。