株式会社アーキ・ジャパン様の育成論事業内容について————最初に、貴社の事業についてお伺いしたいです。当社では、建設業に特化した人材派遣事業を行っています。当社の事業の特徴は、建設業に携わったことがない未経験の若い人材を採用して、派遣を行うことです。実は、建設業の経験者という人材は世の中にはほとんど存在していません。建設業自体が若者にあまり人気がない業界ということもあり、高齢化が進んでいる業界と言われています。だからこそ私たちは、経験がない若い人材を採用し、配属前の研修や、配属後に伴走することで、彼らが建設業界に根差した人材への成長を実現できるように育成を行っています。建設現場に人材を派遣することで現場での経験を積み、資格の受験を行う、というフローの中で彼らの人材価値の向上にも繋がっていきます。もちろん、資格取得の際にもサポートを行っています。そして、私たちは最終的に彼らには建設会社に転職して欲しいと思っています。建設業界では29歳未満の人材は13%しかおらず、55歳以上の人材が33%と言われており、1/3が55歳以上となっています。これが建設業界における非常に大きな人材課題であるため、私たちはこの13%未満の若手をどれだけ育成し、業界に輩出していくことができるかを重要視し、この課題解決を目指しています。そのため、派遣というのはあくまで手段の1つで、これを通じて若い人材が建設会社から「うちの社員になって欲しい」と言われるような人材へと成長していってもらいたいと思っています。そもそも、当社は人材派遣業界ではあるものの、私たちは若手人材を育成して輩出することをミッションとしておりますので、人材育成会社とも言えるため、「建設予備校」としてもありたいと考えています。カイシャの育成論について————現在人材育成についてどのようなお取り組みをされているのかを教えてください。前提として、私自身は当社の創業者ではなく、創業オーナーが引退されるということで、当社をファンドに売却しました。そこで、私が2年半ほど前に社長として就任したという経緯があります。私は、ファンドを買収した会社に経営者として入るということを何社か経験してきており、規模感としても同じくらいの中堅企業が多いです。創業社長が売上高100億円規模の中堅企業にまで一気に成長させていることが多く、社員の育成に力を入れるというよりは、統制型の組織体制において社長自らが細かく指示管理をして引っ張っていくことで成長させてきた会社が多いです。当社の創業社長・会長が引退される際にも、ここから先の成長は自分たちのやり方では難しいため、他の人に引き継ぎたいという思いがあってファンドを売却されていました。それを私の方で引き継がせていただいたという流れになっています。私自身中堅企業の代表を経験する中で、社員の方は様々なポテンシャルを持っていると感じたのですが、なかなかそれを引き出せる機会がないと感じていました。だからこそ、今在籍している社員1人1人のポテンシャルを最大限に引き出した上で業務ができるようになることがとても大事だと思っています。従来までのオーナー中堅企業の形式では、オーナー自身が社員に対して全て指示を出すことが多かったのですが、私が経営者として介在することで、これからは社員自身で考え、自分たちで判断して動いていく環境を構築していく必要があります。そういった自立自走できる状態へトランジションさせることが中継ぎ役の私の役割だと思っています。そのため、私の経営スタイルはどちらかというと、人を中心とした人と組織のマネジメントを行っていくスタイルです。私から「あれをやって欲しい」と指示を出すよりは、彼らに考えてもらったり、彼らが持つポテンシャルをどこまで引き出すことができるかということをいつも考えるようにしています。その上で、当社の育成は、大きく分けて2つあります。1つ目は、派遣社員たちを建設技術者として育成して、建設会社へ就職してもらうことを目的とした育成です。2つ目は、派遣社員たちを採用し、派遣先への営業や彼らのサポートを行う「管理社員」を育成することです。当社の人事総務部長も非常に人材の育成を大切にしているので、管理社員に対する育成を今後どうしていくかということを一緒に考えながら取り組んでいます。また、グループ会社に研修を行う子会社があり、子会社が派遣社員の育成や資格取得の勉強サポート、トレーニーカリキュラムを実施しています。先ほどもお話ししたように、派遣社員は20代前半から30代前半の経験のない方を採用することもあり、これまでのキャリアの中で挫折した経験を持っている方や社会人として順調に歩むことが難しくなった経験を持つ方が多くいます。そういう方々が新たな業界へチャレンジするために、建設業界についてはもちろん、社会人として自立し、成長していくためのカリキュラムも実施しています。理念について————スキルだけでなく、社会人としてのスタンスの育成も重要視されていることが伝わってきました。その中で、なぜ将来的に育成した派遣社員の方々を派遣先の建設会社に就職させることを目的とされているのでしょうか。派遣ビジネスとしてはもちろんスキルや経験値の高い方が、長く在籍してくれる方が理想的です。しかし、私たちは「未来を創るひとづくり」というパーパスを掲げています。建設業は未来を作る仕事ですが、その建設業界の人材課題として若手人材の不足が挙げられ、未来を作るための担い手が若手ではなくなってしまっているのが現状です。若い人たちの未来こそ若い人たちで創り出していける環境であるのが理想ですし、根本的な建設業界の課題に対して価値提供をしていくことができなければ、会社としての存在意義もないと思っています。私自身建設業に従事していた経験があり、ビルの耐震性能しかり、省エネ設備しかり、安全快適なオフィス/生活環境に最新のテクノロジーが活用されていることを知っています。また、交通インフラ、通信インフラも大きく進化し、移動時間やコミュニケーションにおける効率性が飛躍的に改善しています。近年では地震などの自然災害も多く発生しているため、耐震にも注力されており、様々なテクノロジーが普及しつつあります。こうした未来社会の実現は建設業が創り出しており、未来の担い手である若手建設人材を業界に輩出していくことが1番のミッションだと思っています。また、私が建設業界に携わっていた際も、現場の人は年配の方が多く、若い子たちからあまり人気を得にくい環境であることも感じていました。しかし、その課題を解決しなければこの業界は廃れてしまいますし、日本における建設投資は未来への投資に繋がっていると思っています。私たちが目標としている未来を担う若者を業界に輩出していくことは未来投資を行っていく1つの方法だと考えています。しかし、派遣社員である限り、建設業界のキャリアの1番の花形とされている監理技術者・主任技術者にはなることができません。監理技術者になるための1級施工管理技士の資格は派遣社員でも取れるのですが、実際に監理技術者になるには、建設会社の正社員となる必要があります。建設業界のキャリアを歩み始めようと思ったからにはそこを目指して欲しいですし、当社の派遣社員である限り、先ほどお話しした建設業界における29歳未満の人材の13%にはカウントされません。本人のキャリアや建設従事者の数字に貢献していくためにも積極的に派遣社員が当社から卒業し、建設会社の正社員として入社することをサポートしています。————ありがとうございます。管理社員の方々についてもお伺いしたいのですが、この方々に共通して大事にして欲しい観点や価値観・文化などはありますか。管理社員の方々に向けて特に大切にしているのがまさにこの「パーパス教育」です。人材派遣の業務は同じことの繰り返しであることも多く、例えば、派遣社員の採用においても、毎日面接を繰り返し行うこともあります。昨年当社では1000人採用したのですが、この1000人を採用するためには約4000人の面接が必要となります。このような繰り返しの業務ばかりが続いてしまうと、当然「何のためにやっているのか」を見失ってしまいますし、自身が成長しているのかもわからなくなってしまいます。また、人材派遣ビジネスで1番うまくいっている状態というのは、何も問題がないことですよね。派遣社員が毎日現場に行って、ちゃんと仕事をしてくれているということがベストの状態です。しかし、ベストな状態はお客様からすると当たり前なことでもあるため、そこに対して特別褒めていただいたりフィードバックをいただくことはありませんよね。反対に、「今日〇〇さんが来なかった」「トラブルが起きた」といった際はお客様から連絡をいただくことが多いです。そうするとお客様からいただく声がネガティブなものが多いと感じてしまい、「怒られてばかり」、「自分がやっていることは価値があることなのか」となってしまいます。ただ、実際は、担当している派遣社員が100人いるとすれば、問題が起きる派遣社員は5人程度だったりします。数字では少なく見えますが、実際に5人分クレームをいただくのは辛いですよね。95人は何もクレームがないということは上手く業務が遂行されているということでもあるのですが、ポジティブな情報のフィードバックが無いと良い面を見失ってしまうので、どうしてもネガティブな思考に陥ってしまいやすくなります。だからこそ、この目の前の仕事が何に繋がっていて、何のためにやっているのかを理解することが必要です。そうしないと派遣社員のキャリア以前に管理社員自身のキャリアを見失ってしまいますよね。だからこそ、パーパス教育は非常に重要視しています。吉田様について————吉田様のパーソナルな部分についてもお伺いしたいのですが、今までの経験やパーパスを大事にするに至ったきっかけがあれば教えていただきたいです。私が新卒で入社したのは外資系のソフトウェアの大手企業でした。その次に建設会社に転職したのですが、文化もスタイルも全く異なる環境でした。そこでは、当然専門的な領域において、優秀な技術力を持っていたのですが、自身のフィールド内でのプレイヤーとしては優秀ですが、壁にぶつかった時に乗り越える力や周囲のメンバーの能力を引き出す力、まとめる力など、組織力として弱い環境に直面することもありました。私が建設会社に入社した際はちょうどリーマンショックの時期でもあり、140億ほどの売り上げが70億ほどになってしまうという危機的状況に直面していました。その状況から再生させるというフェーズだったのですが、周囲の環境が勝手に利益を生み出してくれるわけでは無いので、自分たち自身で立て直していく必要がありますよね。しかし、当初は粗利や粗利率の概念について正しく理解できていないメンバーもいました。当時のメンバーは工事における1件の粗利を追求しており、例えば粗利10%を目標に業務を行っていたのですが、140億円の売上に対する粗利10%と70億円の売上に対する粗利10%では大きく異なりますよね。その他にも、社員の給与や設備費など様々な費用が粗利からマイナスされます。そのため、売上が低迷している状態で同じ人件費を含む経費を維持するためには、20%の粗利が必要になることもあります。そういう当たり前だけど言われないと気づかない知識も多く、そこにまず気付くことが必要です。そして、次にどうやってこの20%を生み出すのかを考える必要があります。しかし、この最適解を1番導き出せるのは工事の経験がない私ではなく、やはり現場で働いている社員の方ですよね。だからこそ、現場の経験がある方たちと壁打ちをしていくことで、自身で考えるきっかけを生み出していきました。今までは10%に着地することが目的となっていたのですが、必要となる知識を伝え、考えるきっかけを与えると解決するためのアイデアが生まれてきました。その結果、1年で黒字化しました。これは私だけの力ではなく、彼らが様々なアイデアを持ち寄ったからこその結果だと思っています。その後景気も良くなり、会社も順調に回復し、最終的には事業会社に売却するまでに至りました。現在でもその企業とはお付き合いがあるのですが、今でも当たり前のようにそれだけの利益を出せる企業になっており、すごいことだなと感じています。例えば、私が利益を出す仕組みを考えて、指示を出していたら、現在のようにはならなかったと思います。私の役割は彼らが自分たちで利益を出す仕組みを考えてそれを実行できるように導くことだと思います。それを経た結果、私が介在しなくても彼らが自走していくことができるようになります。この経験は私にとってもとても良い経験になりましたね。だからこそ、私は人が秘めているポテンシャルは無限だと思いますし、それを引き出すことが、市場の80%を占めている中小企業の成長につながると考えています。そして、人のポテンシャルを引き出すことができれば、もっと日本は成長していけるのではないでしょうか。この経験が私にとっては大きな影響をもたらしたこともあり、その後入社した旅行会社でも、現在でも同じ組織規模の企業に在籍しています。会社の成長において、創業時の成長は社長の牽引力だと思います。しかし、一度踊り場局面を迎えた会社の第二成長期に欠かせないのは人と組織の自律自走力だと考えています。だからこそ、私が指示する前に1人1人の社員が「どうすれば利益が出せるのか」を自分で考え、自分たちで体得することが大切だと思いますし、それを通じて自分たちの価値やパーパスを見出すことができれば、その後は自然と自走していきます。当社では特に人材業界ということもあるため、人を中心に考えています。また、実はパーパスである「ひとづくり」というワードは私が考えましたが、元々の考え方は創業者の思いをお伺いし、私が共感したことから生まれました。そのため、「未来を創るひとづくり」や「予備校」という価値観や考え方は創業者の思いに共感した私が引き継いで、今後もそれを浸透させていきたいと思っています。社員の皆様について————吉田様が参画される前と後で社員の皆様にどのような変化がありましたか。また、その間に施策として取り組まれたことがあればお伺いしたいです。私はまず1番側近のトップマネジメントメンバーに対して、事業の方向性、目標設定と施策、課題の見極めと解決策などの経営計画を一緒に策定しました。今まではトップダウンで社長からマネジメントメンバーへ指示が降りてきていたのに、私が社長に就任してからは彼らに意見を求めるようになり、初めは戸惑ったと思います。「社長が全部決めてください」とも言われました。しかし、ビジネスにおいて1番精通しているのは彼らだとわかっているからこそ、私は彼らに素朴な疑問をぶつけたり、意見を求めたりし続けました。そうすると、徐々に自身で考えるようになり、2年間継続すると当初と比べ、自身で考えアイデアを生み出す経営層も増えてきたと思います。彼らは私よりも圧倒的にビジネスにおける数字の組み立て方や予測を理解していると改めて感じたのですが、これまで疑問を投げかけられて自分で考えるという経験が少なかったため、数年間の中で何度も彼らと壁打ちする機会を作りました。当初は、会社の文化として、強烈なトップダウン式の文化が存在しており、言いたいことが言えない環境が存在していました。そうなってくると、社員1人1人が考えることすらもしなくなってしまったり、考えたとしても相手が求める正解を探すようになったりと自分の意見じゃないものを言ってしまいます。しかし、私は自立自走するということが大切だと思うので、このトップダウンの文化をやめました。そして、私が次に大事にしていることがミドルマネージャー教育であるため、ここに注力しました。10人や20人であれば直接意見を伝えることは可能ですが、100人を超えているだけでなく、全国に拠点がある場合は声を届けることが難しくなってしまいます。だからこそ、マネージャー同士の意識を擦り合わせることが非常に大切になってきますし、パーパスの浸透や文化の変化にはミドルマネージャーの存在は非常に大きい物だと思っています。そこで、昨年は数ヶ月に1回全国のミドルマネージャーを集めて研修を実施しました。研修の際には、私が考えている組織としてのありたい姿についてや、なぜ自走する組織が必要なのかなど、根本的な意識や価値観、考え方についてお話ししました。しかし、ミドルマネージャーだけが理解していても、現場の文化や価値観を変化させるには変革に協力してくれる人たちも必要ですよね。そこで、研修の場にはミドルマネージャーだけでなくトップマネジメントメンバーも同席させるようにしており、研修の中で行ったグループディスカッションのファシリテーターとして、彼らをアサインしています。また、ディスカッションで出た意見に対して誰も否定しないという基本ルールのもとミドルマネージャーたちも心理的安全性を確保した上で意見を発信できる場となっています。そうすると、私がトップマネジメントメンバーに直接教育を行わなくても、間接的に話を聞く機会を生み出せたり、価値観のすり合わせを行うことができ、会社として変化させていく必要があるという意識づけを行うことが可能となります。その結果、まだまだ変化は必要ですが、管理統制型トップダウン文化はかなりなくなり、自身の考えを発信しやすくなったり、自分で考えるきっかけを与えるようになったりということが当たり前にできるようになってきたのではないかなと思います。その一方で、単なる仲良しクラブになってしまわないためには、やはりパーパスが重要です。なんのためにやっているのかや、自身のミッションを理解するためにも自分で考え、言語化していくということを、ワークショップ形式で実施しています。この変化には時間がかかるものなので、現在劇的に変化が起きているかというとまだこれからではあると思いますが、雰囲気は明らかに変化してきていますね。また、トップマネジメントも管理統制型トップダウン文化にしたくてしているわけではなく、彼ら自身がそういう文化に触れてきてトップになったからこそ、上に立つとは「そういうもの」と勘違いしまっているというのもあると思います。しかし、トップダウン式の文化をやめた方が、社員同士が相互に尊重し合い、それぞれのポテンシャルをのびのびと発揮できますし、少しずつ変化は起きていますね。トップマネジメントの中には新卒からキャリアアップしてきたメンバーが2人いるのですが、彼らは特にこの2年間で会社の雰囲気が変化したと実感しているそうです(笑)自立自走できる人材に成長するために、自分で考えることを当たり前にした結果、「仕事の大変さはかなり上がった」という声を耳にするようになりました。今まで使う機会がなかった脳のリソースを割くようになったので苦労する部分もある一方で、少し楽しそうでもありますね。でもそれが1番ベストですよね。楽なことが楽しいわけではなくて、「大変だけど楽しい」、「今まで考える機会が少なかったけど自分で考えて答えが出せたら嬉しい」ということを体感してもらい、仕事のやりがいに繋がっていくのが理想ですね。研修について————研修についてのお話が出てきましたが、その他にも育成のために実施している施策や課題に対してどのように改善しているかなどあればお伺いしたいです。当社の従業員の平均年齢は27歳と非常に若い組織なのですが、裏を返せば辞めてしまう人が多いから若いということでもあります。退職に繋がってしまう理由として、当初はトップダウンの文化が合わなかったという方が多かったです。しかし、文化が変化した後でも退職する方は少なくなく、業務内容が同じことの繰り返しで自身の成長を感じられないことや、やりがいを感じにくいという声も耳にします。やはり、やりがいを感じるためには、困難な業務に対して、自身の得意分野を活用して乗り越えるなど自分の力を発揮できた経験が必要ですよね。だからこそ、若手人材がどうすればやりがいを感じられるか、自身が活躍できるフィールドやスタイルを見つけられるかが現在の課題だと感じています。そこで、現在は管理社員、派遣社員問わず自己理解を進めてもらうことに注力しています。若手人材がこれからキャリアを考える上で1番ベースになるのは自分について知っていることだと思っています。 弊社では業界未経験者に寄り添い、定着してもらうために配属後のサポートを行う担当を派遣社員一人ひとりにつけていますが、退職者数は業界内では退職率が一番低いものの、毎月30~40人ほどになります。先ほどお話ししたように、昨年は採用数を増やしたこともあり、退職する方もその分非常に多かったです。これではダメだと感じ、サポート部門だけではなく、採用、研修、営業それぞれの部門のメンバーにも協力してもらい、社員定着のためにできることは何かを考え、アクションプランを作成しました。その結果、なぜ辞めてしまうのかを考えた時に、様々理由はあるのですが、根底に不安や自信のなさ、認められないということに集約されていると気付きました。それらを踏まえて、研修では何ができるのかを考えた時に、建設業界の知識をインプットするのではなく、不安や自信のなさ、認められないという考えを払拭できるような研修を実施していく必要があるという結論に至りました。ではなぜこのような不安や自信のなさを感じるのかを考えた際に、SNS世代に多いのですが、SNSでのいいね数など周囲からの評価を意識するあまり、評価が他人軸となってしまい「何ができるのか」、「強みは何か」、「自分の強みを活かした仕事はこうだ」ということが自分の中にないことが理由だと考えています。この他人軸での評価を辞め、自分軸で価値を感じられるようにするためには自分を知るのが重要だと思っています。私は人のポテンシャルは無限で、誰にでも才能はあると思っています。しかし、自分の才能に気づいていない人も多いですし、それを活かしている人も少ないため、やりがいに繋がらなかったり、自信のなさに繋がってしまうのではないでしょうか。また、管理社員の視点で考えると、派遣社員について知る必要があるため、他者理解が必要となってきます。そして、他者を理解するためにも自己理解をしておく必要もあります。自分の強みを知ることで、うまくいった経験の中でどう反映されたのか、失敗した際に何が苦手なのかを理解することができ、人を見る時にも相手の強みにより目を向けられるようになります。特に、当社の派遣社員の面接は一般的なふるい落とすための面接ではなく、口説く面接です。中には自分に自信がない方もいるので、「こういう人なのでは」、「こういう力を持っているのでは」と本人が気付いていない強みに気付かせるのが重要になってきます。そのため、管理社員は会話の中で相手の強みを探したり引き出す力が必要となります。だからこそ、自己理解ができていると他者理解ができますし、他者理解ができていると人間関係もうまくいきます。そこで、自己理解を深めるために今回導入したのが「動物占い」です。他の自己理解ツールと比べ、誕生日の入力だけで結果が表示されるため、簡単であることはもちろん、1人1人の結果をレポートとして見ることができ、約60種類のタイプに分類されます。レポートで既に自分の行動特性などが言語化されていることもあり、パッとみて理解しやすいですし、周囲のメンバーとコミュニケーションを取るきっかけにもなりますよね。そして、レポートの内容の中で気になった部分をマーキングし、過去の経験と紐づけることで自己理解に繋がっていきます。誰が見ても簡単に内容を理解できるということで、派遣社員向けに動物占いを導入し、面接の際にもこのレポートを活用しています。その結果、実際に面接の中で相手に強みを気付かせることにも繋がっています。その後、当社に入社した際には、研修の初日に自己理解のカリキュラムを実施し、動物占いのレポートと自身の過去の体験を紐づけて、自分の取扱説明書を作成し発表するなどのワークを実施しています。このカリキュラムをきっかけにコミュニケーションも取りやすくなっていますね。今後はさらに管理社員向けにも自己理解のカリキュラムを実施していく予定です。将来について————最後に、今後吉田様が会社をどのように成長させていきたいと考えているのかお伺いしたいです。また、その成長の中で従業員の皆様にどうあって欲しいと思っていますか。私が目標にしているのは、自分で自走自立しながら、自らやりがいを感じ、さらに次へ挑戦していくことです。そのためにはなんのためにやっているのかというゴールや現状に対して、どう進んでいくのかを自分で考えアクションを起こしていくのが理想だと思っています。それを実現していくためのパーツを現在は組み立てているところですね。これが実現されれば、私が介在しなくても社員全員が自ら考え、動いていける環境が構築されると思いますので、ベースとしてこの理想を目指していきたいと考えています。また、昨今ではZ世代と呼ばれる若い世代が仕事に対してやりがいを感じられないことや組織に馴染めないという状況が増えつつあります。これは非常にもったいないことだと感じています。しかし、従来のアプローチではまだまだ不十分だと思っているので、今後はZ世代が自立自走することや、自分の価値を見出し、発揮できる環境などを事業を通じて行っていきたいです。建設派遣業といえば、どうしても建設業向けの目線を中心として語られることが多く、私も半分はそちらに重きをおいていますし、最終的には当社から「卒業」してもらうことを目標にしているのも建設業に貢献していきたいという思いがあるためです。もう半分は、現場に派遣している社員や管理社員は20代が中心であるため、この世代の人材が自分達の価値を発揮していける環境を作っていきたいと思っています。このZ世代のマネジメントは国内のみならず、世界中が課題を感じていることだと思います。私はこれをすごく大きなテーマだと感じているため、今後もZ世代が価値に気付き発揮することをサポートしていきたいです。