WIPジャパン株式会社様の育成論育成論について————最初に、現在人材育成についてどのようなお取り組みをされているのかを教えてください。WIPでは、仕事を通じて能力を伸ばし、他の企業に移ったとしても通用する人材になってほしいと考えています。仕事のスキルだけでなく、人間力も一流になることを目指しています。そのため、WIPでは「WIPマインドセット」を明文化しており、これには「仕事力一流」「人間力一流」「他人の役に立つこと」「成長にどれだけ関心があるか」という点が含まれています。自己成長が仕事だけでなく、家族や友人、同僚、協力先、顧客にも影響を与えると信じています。そして「ありがとう」という言葉をもらうことは、仕事と人生における大きな喜びの一つです。そのため、成長を望む人材を求めています。例えば、給料はお客様からの「ありがとう」が売上へと繋がり、それが給料の源泉です。お客様からの感謝を多く受けることが、結果として自身の報酬にもつながると考えています。こうしたマインドセットをWIPの人材育成の最終目標としています。また、WIPでは電話対応、コミュニケーション、現場、文章作成、デスクワーク、日常の社内外の行動、会議、報告、メールのルールなどを含むルールブックを作成しています。ただルールを伝えるのではなく、守ってほしい点を細かく伝えています。逆に、このルールを守ることで、後は自由に活動しても良いとしています。一部では「細かすぎる」との意見もありますが、ビジネスでは細かなルールが多いので、これらを言語化して事前に共有しています。昔からの「守破離」という考え方にならい、基本形を身につけてから、個性を発揮することで更に高いレベルのパフォーマンスを目指してほしいと思っています。ルールブックは「守破離」の「守」の部分です。まずはこの基本形を全社員が徹底できるようにしています。ルールブックは手順書だけでなく、WIPの価値観やビジネス作法を反映しています。新卒社員、中途社員問わずしっかり読んでもらい、入社時だけでなく定期的に全員が見返す機会を設けています。これがWIPにおける社員育成の核となっています。————このルールブックは最初からあったのでしょうか。このルールブックは約20年前に作られました。当時は「作法集」と名付けられ、非常に厳しいトーンで「できない者は去れ」というような内容でした(苦笑)。しかし、表現や内容を時代に合わせてアップデートする必要があると考え、3年前に全面的に改訂しました。当時、細かくまとめられたビジネス作法はほとんどありませんでした。私が最初に銀行に就職した時、新入社員研修で多くを学びましたが、支店に配属されてから、業務中に先輩社員から順次作法を教わることが多かったです。また、先輩社員からの指導だけでなく、周囲の社員の行動を観察し、必要な作法を自分で書き留めるようにしていました。この経験から、細かな作法を事前にまとめて共有することで、業務がスムーズに進むと考え、ルールブックを作成するに至りました。————私も同じような経験があるので非常によく分かります。このルールブックは現在評価などに活用されているのでしょうか。また、今後どのように活用していきたいと思っていますか。現在、このルールブックを評価に活用することはまだ始まったばかりです。最終的には、ルールブックに記載されている事項をどれだけ遵守しているかを評価の一部として取り入れる予定です。社員が一生WIPで働き続けるかは分かりません。しかし、ルールブックを社内で浸透させることで、もし転職することになったとしても、他の会社で活躍できる人材になってほしいと思っています。私たちと一緒に働いた社員が、どこへ行っても成果を上げることができる人材になればと願っています。————ルールブック以外に成長のために実施されていることがあればお伺いしたいです。例えば、WIPでは日常業務の一環として、毎週行われる全体会議の中でグループセッションを実施し、各メンバーに1分間のスピーチの機会を設けています。最近のテーマには、「推し活」に関することや、自分が興味を持つアイドル、映画、本など、さらにはお客様からの嬉しい言葉についても話すことがあります。この1分間スピーチは、プレゼンテーションスキルを磨くことも目的の一つです。スピーチでは特定の形式に従います。「みなさん、推し活はしていますか?」といった問いかけで始め、結論を述べた後に理由を伝える形式です。通常、問いかけに約15秒、結論に約10秒、理由に約35秒を使うようにしています。この方法は、聴き手に疑問を投げかけた後、結論と理由で締めるプレゼンテーションの練習にもなります。また、お客様との商談でも応用できるため、問いかけ・結論・理由という基本的な流れを守って実施しています。プレゼンテーション能力を高めるだけでなく、お互いの理解を深めるきっかけ作りにもつながっています。私は、仕事は「何をするか」だけでなく「誰とするか」も重要だと考えており、この活動は同僚がどんな興味を持っているか、何を好み、何を嫌うかを知る良い機会となり、相互理解を深める取り組みとなっています。価値観について————上田様が「守破離」や基本を大事にして欲しいという考えに至った経緯や、どのように価値観として反映されているのかについてお伺いしたいです。最初に私は住友銀行(現在の三井住友銀行)で働き始めました。そこは非常に厳しい職場でしたが、そのような環境を求めて入社しました。独立を志していたため、銀行員としてのキャリアは約3年間でした。銀行時代は上司から厳しい指導を受けました。時には涙を流すこともありましたが、そのような環境での経験が自信を育み、起業への道を歩むことができました。今振り返ってみると、給与をいただきながら学ぶことができたことに、心から感謝しています。こうした就業経験を通じて、人材育成に関して多くの有益な知見を得ることができました。これらの経験は、独立時に留意すべきポイントを理解するのに役立ち、現在の価値観形成の基盤ともなっています。1日を考えると、睡眠に8時間、仕事に8時間、その他に8時間を使っているとすれば、起きている時間の半分、つまり人生の半分は仕事に費やされていることになります。人生は一度きりですので、仕事が充実していなければ、人生の半分が満たされない状態になるのは避けたいと思いました。そのため、WIPの社員には会社で充実感を持って過ごしてもらいたいと願っています。また、彼らが「厳しい部分もあるけれどこの環境で良かった」と言ってもらえる会社にしたいと考えています。理念・会社の歴史について————会社の歴史についてもお伺いしたいのですが、従業員の皆様に価値観を発信していこうと思ったきっかけや現在の理念や文化にしていこうと決めた経緯などがあればお伺いしたいです。私は中学生の時から、「なぜ世界には戦争や飢餓が存在するのか」とよく考えていました。その理由や、海外の価値観を知る中で、いろいろとわかったようでまだ理解しきれていない部分も多くあると感じてきました。私は、世界中の人々が同じ価値観や生活を共有する必要はないと思います。しかし、お互いの考えを理解し合えていないことが、これらの問題の一因ではないかと思うようになりました。そこで、私は、互いの状況や考え方を知り合えるような仕事に関わりたいと考えるようになりました。直接戦争を止めたり飢餓を解決することは難しいかもしれませんが、相互理解の助けになることはできると思いました。その思いから、「もっと理解しあえる世界を作りたい」という理念を持ってWIPを創業しました。留学経験がある私が、帰国後最初に行った仕事がオリンピック招致活動の裏方サポートでした。この仕事では、海外情報の収集とそれに基づいた準備リサーチが主な業務でした。この経験から、海外リサーチの半分は翻訳業務だと気づきました。集めた情報を日本語で整理する必要がありました。そこから、翻訳業務にも従事するようになり、次第に通訳の依頼や外国語を話せる人材の派遣も行うようになりました。翻訳は裏方の仕事で地味な面もありますが、世界の人々が相互理解を深めるど真ん中の仕事だと思います。その思いを社員にも伝え続けています。日本は海外の情報を取り入れることは多いですが、海外へ発信することはあまりありません。長い歴史を振り返っても、日本が最も輸入してきたのは書籍です。昔から、私たちは読むこと、つまりインプットに力を入れてきました。しかし、発信する機会は少なく、多くの日本人は英語を話すのが苦手です。結果として、外国語で海外に向けて発信する人や企業はまだまだ少ないのです。日本の家電や自動車は世界的に知られていますが、それ以外にも世界で通用する多くの商品やサービス、観光資源があります。ビジネス面だけでなく、日本の考え方や美意識、価値観を発信する余地はまだ多くあると感じています。フランスは現在、世界で最も多くの旅行客を集める国ですが、日本の魅力をもっと海外に発信することで、日本が逆転する可能性があると思っています。社員の皆様について————ありがとうございます。現在貴社で働かれている社員の皆様についてもお伺いしたいのですが、活躍されている社員の特徴としてはどのようなものがありますか。WIPの従業員には、海外が好きな人や留学経験がある人が多いです。また、海外の文化に関心を持つ社員もたくさんいます。さらに、自分の言語スキルや他の知識と経験を仕事で活かしたいと考える人、お客様に貢献したいと思う社員が、社内でリーダー的な役割を果たしています。彼らはお客様だけでなく、社内の発展にも貢献したいと考えています。そのため、WIPで活躍する社員は、スキルだけでなく人間力を含む総合的な力が高い人が多く、お客様からは「またあの人に頼みたい」という声を多くいただいています。WIPのお客様は大企業から小企業まで幅広いです。お客様の業界は時代によって自動車業界や半導体業界などトレンドはあるのですが、様々な分野からご依頼をいただいていますその中で活躍している社員は、お客様からのリピートが多く、「この人に依頼したい」と言っていただける点が共通しているのではないでしょうか。事業について————様々な分野でご依頼をいただいているとお話しがありましたが、貴社の事業のやりがいや、お仕事の魅力としてはどのようなものがありますか。仕事の性質上、多様な言語や文化と接する機会が豊富で、現地の協力者とのやり取りや調査内容の翻訳なども頻繁に行います。そのため、海外文化への接点が多く、海外や文化に関心のある人にとっては、新しい発見や刺激につながっています。WIPの社員も海外好きな人が多いので、仕事を楽しんでいる様子が見受けられます。また、日本についても知識を深めていくことができる環境でもあります。日本特有の事象を見て「なぜ日本ではこうなのか」と考えることもあり、自分の考え方や常識が通用しない場面にも遭遇します。これもまた、学びの一つであり、日本の文化や価値観を深く理解するきっかけとなります。私自身「グローバルビジネスほど面白いものはない」と感じています。異なる価値観を持つ人々と出会い、相手を理解するだけでなく、自己理解を深めていく過程が面白いです。しかし、グローバルビジネスはいつも華やかな仕事ばかりではなく、地道な作業も必要です。面白みを感じにくい部分もありますが、世界観を広げることは、自分自身の国や価値観を理解する上で大切だと思います。このような理解が広がれば、異なる考え方や価値観を尊重し合える関係を築けるかもしれません。そのためには、多角的な理解を深めていく必要があります。仕事を通じてどこまでできるかは分かりませんが、こうしたことに少しでも触れることができる良い環境がWIPにはあると感じています。未来のビジョンについて————今後事業と会社の側面でそれぞれ力を入れていこうと考えている事はありますか。翻訳の分野では、AIの利用が大きく進展しています。AIによる翻訳の精度が日々向上しているため、3年後には人の手による翻訳が不要になる時代が来るかもしれません。しかし、私はAIと競合するのではなく、AIをサービスに組み込んで、よりお客様に合ったサービスを提供することを目指しています。例えば、AIがウェブサイトを即座に多言語化するソリューション「AIシュリーマン」など、様々なサービスを既に提供しています。人の翻訳を100点とした場合、翻訳ソフトDeepLは80〜85点程度の品質を持ち、更にChat GPTを用いた校正を加えると、85〜95点の翻訳が可能です。こうしたAIを活用したソリューションで効率化を図っています。翻訳エンジンによって得意不得意の言語があるので、これを組み合わせてお客様がビジネスでAIを活用するサポートも強化していきます。最近では、AIと人が協働し、AIによる翻訳の最終確認を人が行い、精度を高める作業をしています。これにより、納期を大幅に短縮し、コスト削減も実現しています。人による最終チェックはまだ必要ですが、進化しているため、情報をキャッチアップし続け、お客様にとってより価値のあるサービスを提供しようと考えています。東日本大震災や新型コロナウイルスの影響で会社の存続が難しい状況になった経験もありますが、今後もこうした影響を受ける可能性があると考え、オンライン通訳者探しポータルサイト「YOYAQ(予訳)」など、オンラインで完結するなど様々なサービスをリリースしていきたいと思います。会社としては、私が目指す成長にまだ遠いですが、将来的にはIPOも考えています。そして、日本を世界にアピールするために、更に取引先を増やしていきたいと考えています。今まで約1万2000社のお取引がありますが、100万社くらいとの取引がないと変化をもたらすのは難しいと感じています。私たちのサービスをさらに多くの企業に活用してもらえるよう努力していきます。————最後に、今後上田様はどのような方と一緒に働いていきたいと思いますか。一緒に働きたい人について、2つの条件があります。まず1つ目は、WIPの理念に共鳴できる人です。多様性は重要ですが、根底にある価値観については共感してほしいと思います。一方で、やり方や発想といった側面では多様性を求めていきたいです。2つ目は、仕事を通じて世界を変えたいと考える、大きな志を持つ人です。これらの条件を満たす人たちと共に働いていきたいと思っています。【WIPジャパン株式会社】・所在地:〒102-0074 東京都千代田区九段南1-6-5 九段会館テラス1F・世界とつながるメディア: https://japan.wipgroup.com/media/index.htmlその他のメディア・ご連絡先は以下から御覧ください。