株式会社SMSデータテック様の育成論育成論について————最初に、現在人材育成についてどのようなお取り組みをされているのかを教えてください。松原様:当社では、「共創プロジェクト」というeラーニングポータルを立ち上げています。なぜこのeラーニングサイトに「共創プロジェクト」という名前を付けているのかというと、実はこのeラーニングサイトは、当社の社員のみならず、私たちのパートナー企業の社員の皆さんにも使っていただき、パートナー企業様と一緒になって、学び合う場を「共に創る」ことを目的として立ち上げたものだからです。このように社内だけでなく、パートナー企業様にも教育の場を開放しているのには理由があります。それは、私はこれからの時代、会社というものの境界線が、どんどん曖昧になっていく世の中になってくると思っているからです。そもそも「社員雇用」というものは、戦前のドイツで源泉徴収によって国が効率よく税を徴収するために生まれたと言われています。日本でも企業を経由して税収を徴収しますよね。社員である、ということはそういった国の徴税上の都合によって生まれたものなのです。しかし、現在では人々の働き方も多様化しています。1つの会社に属さず働く人々も増えています。もし今後マイナンバー制度を使って、直接国が徴収するようになれば、従来企業が行っていた源泉徴収の役割はそもそも不要になりますし、さらにもしベーシックインカムが導入され生活が保障されるようになったとしたら、「そもそも何のために働くのか?」と、働く意義そのものが問われる時代になります。もちろん、そこまでの変化は今すぐ急には起こらないかもしれませんが、価値観や働き方が多様化していく中で、今後は従来のように、社員を囲い込んで、「ここまでが社員」「それ以外は他人」といったような境界線を引いて分ける発想ではなく、自社の社員、パートナー会社の社員様、フリーランスの方々といった境界なく、当社に関わり働いてくださる皆さんを同等に接していく姿勢が必要なのではないかと思っています。そして、そういった関わってくださる皆さんが、一緒に成長できる場を作っていくことが、人が集まり仕事をする場としての「会社」というものにとって、今後は大切なのではないかと考えています。そのような「人が成長できる場」が中心にあるということが、会社が存在することの意義に繋がってくるのではないかと考えています。その中心のひとつとして「共創プロジェクト」に取り組んでいます。現在はこの考え方に共感していただいた企業様とプロジェクトを実施しており、協賛いただいている企業様にご参加いただいたり、プロジェクトのコンテンツをご提供いただく機会も多いですね。————「共創プロジェクト」を始める前と後で変化を感じることができた瞬間があればお伺いしたいです。松原様:教育の一番の近道はアウトプットすること、つまり周囲の人に教えることだと思っています。そのため、共創プロジェクトのコンテンツを作る社員が一番成長していますね。共創プロジェクトの中でも会社の経営理念を社員に伝えることを目的の一環として、部長以上のメンバーには、経営理念に対する自分の考えを述べる10分程のビデオを作成してもらう試みをしています。このビデオの視聴を通じて、社員に経営理念を理解してもらうことも一つの目的ですが、話すことによって部長陣が経営理念について深く考えてもらうことも実は大きな目的としています。このように、当社では教えることも学ぶ場として考え、活用しています。また、共創プロジェクトとは異なるのですが、当社では社内のインフラ業務などを行うため、実地の研修が必要となります。そういったものは手を挙げた社員が勉強会を開く「自己啓発研修」という形で実施する環境が自然と生まれていますね。せっかくこういう文化があるので、これも今後は共創プロジェクトの中でさらに活発化させられる仕組みを構築できないかなと考えています。————他にも制度や育成として取り組んでいることはありますか。藤岡様:新卒の社員には、入社後にOJTで実務に触れながら基礎知識や働くことについての理解などを学んでもらうために、トレーナー制度を導入しています。先輩社員がトレーナーを担当し、業務の進捗管理や目標設定を面談などを通じて一緒に行います。そして、毎月育成レポートを書き、1年後には「成果発表会」として1年を振り返る機会を設けていますね。成果発表会では1年間自身が取り組んだことを振り返るだけでなく、それを踏まえて来期ではどういう目標を持って仕事に取り組むのかを全体に向けて発表しています。松原様:基本的には、その新卒社員の近くで働いている先輩社員がトレーナーに抜擢されます。ただ、当社では新卒を約50人採用することもあるため、どの社員も1度はトレーナーを経験したことがあるという方が多いですね。こちらがトレーナーを選抜するというよりは、トレーナーを担当することが先輩社員にとっても学びになるという観点もあるので、トレーナーを経験してもらうようにしています。また、成果発表会ではトレーナーと一緒に15分程度の動画を撮影し、それを新入社員が入社した4月に見てもらった上で、誰が1番かを競い合います。1番に選ばれた人は、「ベスト2年生賞」「ベスト3年生賞」が与えられ、それと同時に、彼らを指導してくれたトレーナーに対して、「最優秀ベストトレーナー賞」が表彰されるなど、イベントの一環としても成長できる場を作っています。そして、毎月提出された1人1人のレポートに対して、本部長全員がコメントを書くようにしています。その結果、新卒社員もフィードバックを得ることができるため、より成長に繋がっている仕組みの1つとなっていると感じていますね。理念・文化について————理念や会社の価値観、行動指針といった軸となる部分にはどのような考えがあるのかもお伺いしたいです。松原様:当社では、他社様の様々な事例も参考にしながら、独自の経営計画書を作成しています。そして経営計画書は冊子の形にして、6月の経営計画発表会の際に社員全員に渡すようにしています。冊子には理念も記載していますね。私は当社の2代目になりますが、当社には創業当時からある「創業理念」と「基本的価値観」の2つが現在も綿々と受け継がれています。そして、もう一つ「行動指針(SDTプライド)」というものがありますが、それは最近できたものです。一昨年、部長以上の役職のメンバーが集まり、一人一人が大切にしている個人の行動指針や考え方をそれぞれ述べ、その共通点を「行動指針(SDTプライド)」としてまとめあげました。その結果、「楽しむプロ」、「学びのプロ」、「カイゼンのプロ」、「トライのプロ」の4つを現在は行動指針として掲げています。行動指針には当社の社員の特徴をまとめた要素や、今後大切にしていきたい考え方の要素が集約されています。この経営計画書の冊子は、行動指針や理念だけでなく、その年次の経営方針や教育方針といったあらゆる情報を言語化して記載するようにしています。経営方針などを作成する場合は各事業部のメンバーにも作成してもらうことで、自分の事業部がどのようなことを行っていくべきかを整理する機会としても活用されています。私自身も明文化することで「やらなくてはいけない」という気持ちのスイッチを入れるきっかけになっているので、各部長陣にも同様に感じてもらえていると嬉しいですね。————このような経営計画書を作ろうと思ったきっかけはどのようなものでしたか。松原様:あらゆる組織において「その組織のビジョン実現に特別な役割を担う1人」がいるという「ソース原理」というものがありますが、それをベースに考えた際に、私は2代目ではあるのですが、現社長の私がその役割をしっかり担う必要があると感じました。そして、単にソースとして組織内に存在するというだけでなく、会社の方向性や価値観を言語化し、見える形で社員に伝えることもソースとしての役割を果たすことだと考えました。それらについて棚卸しすることで、「自分がソースたりえるのか?」ということを私自身も確認することができたのではないかと思っています。また、私は「正直なこと」と「誠実なこと」は違うと考えています。やったことを正しく伝えることが「正直」、すると言ったことをちゃんとすることが「誠実」だと思っています。仮に、現在の実力では実現できないことでも、「やる」と言って、それを最終的に実現するのが「誠実」であるということです。そのため、「やる」と言った瞬間はまだ実現不可能であるため、一見嘘だと感じる人がいるかもしれません。しかし、実現しないままでは嘘つきかもしれませんが、それを本当にするためにあらゆる方法を考え、実行し本当にすることが、誠実に対応するということであると考えています。その違いを理解した上で、当社の経営計画書には努力しなくては実現できないことも含めしっかり書くようにしています。会社の歴史について————様々な変遷があって現在の貴社があると思うのですが、過去の経験の中で大変だったことやターニングポイントとなった出来事があればお伺いしたいです。松原様:当社は、20年前、株主でもあるNTTデータグループ様からのお仕事をすることを祖業として創業した会社です。そのため、設立当初は、お客様も決まっており、求められた通りに仕事をすることがほとんどでした。会社の機能には、管理、オペレーション、作る、売る、経営するという5つがあると思います。しかし、そういった背景で設立されたため、当社では商品を作る、売るという機能が以前は明確には無い状態でした。そういう状況でしたので、私は入社した際に、まずその作る、売るの機能である、事業開発とマーケティングを立ち上げることから始めました。ただ、元々そういう機能が求められていない会社だったため、既存のプロフィットメンバーからは、何を無駄なことをしているのだと、中々理解してもらえず、受け入れられにくい環境でしたね。マーケティングもすぐにお客様を見つけられるわけではないので、私自身だけでなく、私の部署で働いていたメンバーたちが周囲の社員から理解を得られずに辛い思いをしてしまうということもありました。そして、メンバーをどのように守ってあげなければいけないかを悩んだり、チームが中々成果を出せずに周囲から認めてもらえない日々が続いて落ち込んだりしました。しかし、チームメンバーが諦めず挑戦し続ける姿を見せることで、周囲の彼らを見る目も変わってきて、それによって、現在では行動指針の「楽しむプロ」「トライのプロ」といったところで明文化されるようにもなっている、新しいことでも挑戦していこう、そしてそれを応援しようという組織文化が、少しずつ社内に根付いていったのではないかと感じています。しかし何より、チームメンバーが努力し続けた結果、マーケティングの成果と、新規事業が立ち上がったという実績を作ったことが、組織風土の変化の一番の要因かもしれません。みんなの頑張りがあったおかげで私も救われたと感じています(笑)社員の皆様について————現在働かれている社員の皆様についてもお伺いしたいのですが、社員の皆様に共通している特徴や採用の基準としていることはありますか。松原様:当社には真面目で人が良い社員が多いなと感じています。例えば、他人を差し置いて自分だけ出世しよう、という思いを持った人はいないですね。そういう方は入社しても馴染めずに退職してしまう傾向があります。また、当社には基本的価値観として、「傍楽(はたらく)」、「Aufheben(アウフヘーベン)」、「π(パイ)型思考」の3つがあります。「傍楽(はたらく)」とは、自分の周りの人々が楽になってもらう、楽しくなってもらうために働く、ことを楽しむことです。また、「Aufheben(アウフヘーベン)」とは、他者の違いを尊重し、互いの違いの中から新たなイノベーションを共に生み出すことです。そして、「π(パイ)型思考」とは、広い知識と、仕事と私生活両面での専門分野の知見によって、人生の理解を深め、物事の本質を多面的に観ることです。この3つの価値観を自然に体現している人が多いのだと思います。特に、「傍楽(はたらく)」という価値観については会社としてもとても大切にしています。正直なところ、当社では「こういう人材が欲しい」という定義はありません。よく新卒の面接でも、「どのような人材を求めていますか?」と聞かれることがありますが、「特に何か求める人材がいてそれにフィットした人たちを集めたいわけではなく、あなたが入社してくれることによる相乗効果を私たちは期待しています。ですので、他者とは違ったありのままのあなたで来てくれれば結構です。」と答えています。会社は人が作るものです。その人が入った会社は、その人が居なかった昨日までの会社とはまったく違う会社になっているのだと思っています。多様な価値観を持つ人が集まれる、そんな会社にしたいと考えています。————素敵な考え方ですね!社員さんの中で期待以上の活躍をしてくれている方のエピソードがあればお伺いしたいです。松原様:やっぱり藤岡さんですかね(笑)当社では毎月6月と12月に忘年会を開催しているのですが、彼がその司会を担当してくれていて、とても盛り上げてくれています。藤岡様:スベることによって笑いを誘っているだけですが(笑)松原様:はい(笑)忘年会ではクイズ大会も開催しています。藤岡様:オールスター感謝祭をオマージュした形で実施しています。松原様:そのクイズの司会を私と彼の2人で掛け合いながら実施しています。クイズの中では会社の経営理念など会社に関することを出題していますね。また、社員の中には趣味でレースをしている方がいるのですが、自前のレーシングカーに会社のロゴを貼ってくれている方もいます。特に会社側でスポンサーをしているというわけではなく、自ら貼ってくれていて、会社愛を持ってくれていると感じられてとても嬉しかったですね。その他にも、「利き酒会」や「eスポーツ大会」など、社外でも横の繋がりを作ろうとしてくれている社員もいて嬉しいです。人の資本とは金融資本だけでなく、経験や人間関係といったものも全て含めてその人の資本になると思っています。時間も資本の1つですよね。会社はあくまでその人の人生の一部なので、会社軸だけで行動を制限せずにどんどん資本を広げて豊かな人生にして欲しいです。それを自然と社内のメンバーが生み出してくれていることは素晴らしいと感じています。当社の創業理念としても社員の幸せを願っていますし、もっともっと社外にも広げていって欲しいですね。それが個人にとっても、会社にとっても良い影響になると考えています。事業について————全ての考えの原点に経営計画書の価値観があることを改めて感じました。貴社の事業内容についてもお伺いしたいのですが、現在はどのような事業をメインで取り組まれているのでしょうか。藤岡様:当社では日本企業のDXを「攻め」と「守り」の両面で支えることを目的として事業を行っています。「攻め」としては、「ハイブリッド&マルチクラウド事業」と「データサイエンス事業」の2つがあります。「ハイブリッド&マルチクラウド事業」では、AWSを始めとするクラウド環境を用いて企業様のクラウド環境の構築・運用など幅広くサポートしています。当社では、アマゾン ウェブ サービスが提供する「AWSコンサルティングパートナー」の認定も取得しているため、マネジメントやコンサルティングも含めて広い領域で携わっています。また、「データサイエンス事業」では、ビックデータを分析し、分析結果を用いた提案をサービスとして行っています。他にも、SNSの分析など様々なサービスにも応用できるため、広くご利用いただいています。一方で、「守り」としては、「自動化ソリューション事業」と「セキュリティ事業」の2つがあります。「自動化ソリューション事業」では、企業の既存システムの保守・運用を自動化することで効率化を図ります。既存システムの運用に工数やコストがかかってしまい、予算の8割を占めてしまうという課題を抱えた企業様は少なくありません。そのため、当社の自動化サービスを活用いただくことで、工数やコストを削減し、浮いたコストでDXの推進や新規事業などに投資を行っていただけるようにしています。また、「セキュリティ事業」では、昨年「ダークウェブアイ」というサービスをリリースしました。これはダークウェブの領域を監視し、情報が漏洩した際に迅速な対応ができるセキュリティツールです。まだ他社での取り組み事例が少ないこともあり、当社では一足早くセキュリティ面でのサポート領域を広げています。既存のセキュリティツールも駆使しつつ、企業様のセキュリティ対策を支援しています。当社では企業様がDXを推進していただくために必要なインフラやデータ活用といった裏側のサポートを行うことをコンセプトとしてサービス提供していますね。未来のビジョンについて————ありがとうございます。今後事業としてやっていきたいこととしてはどのようなものがありますか。松原様:今後は「IT業界のディズニーランドになる」ことを目標として掲げています。ディズニーランドは朝行って、様々なアトラクションを回って、夜中真っ暗になるまで楽しんで帰りますよね。それと同じように、会社の中に様々な事業が取り組みながら、気づいたら定年までいた、というような環境を作りたいと考えています。エンジニアというのは成長志向が高く、色々なことを学びたいという方が多いです。そのため、新たな知識を学ぶ際には、退職して別の会社に行ってしまうということが多く、私はそれが非常に勿体無いなと感じていました。また、会社の質を高めるか、量を増やすかと悩んだことがあり、結論として「両方やるのが正解だな」と考えました。社内に様々な事業を行っている子会社群があることで、社員が入社した後もこの会社で成長をし続けていける環境を作ることが理想です。この目標の実現は、自社の中だけでなく、他者と合弁で実現する形でも良いと思っています。そのため、先ほどお話しした4つのDX事業の他にも、事業の幅を増やしていくことが今後の目標です。これは、ITだけでなく、ITをベースに強みを持てる事業会社という形でも増やしていきたいですね。様々な新しいことに挑戦できるチャンスを社員に増やしていきたいと思っています。————最後に、今後松原様自身はどのような人と働いていきたいですか。松原様:シンプルに「好きな人」ですね。一緒に働くのに、嫌いな人と働くというのは嫌じゃないですか。皆さんも同じだと思いますが、私自身、今の妻と結婚した理由は、何か特定の条件があったのではなく、ただ「好きだから」ということだと思います。「自分は結婚後こういう家庭を築きたい。それにあたって最適な女性はあなただ。だから結婚してくれ。」と言われても、キモイですよね。会社も同じで、まずお互い、人として好きになれるかどうか、が大事なのだと思っています。それは入社後も同様で、社員みんながお互いに対して好きという気持ちを持った状態で働ける環境だと理想的なのかなと思っています。お互いを好きだと思い合えると、意見や価値観が仮に異なっていても、それをすり合わせたりアウフヘーベンさせることによって、今現状を超える力を組織は発揮できるのだと思っています。働く上でのベースとして、社員全員が自分のことだけでなく、相手のことも思って動けるかというのが重要だと考えています。そのため、最終的には当社の経営理念の1つである「傍楽(はたらく)」という価値観を持った人と今後も働いていきたいです。【株式会社SMSデータテックサービスページ】・インディゴデータ:https://indigodata.co.jp/・PigData: https://pig-data.jp/その他のメディア・ご連絡先は以下から御覧ください。