株式会社ディクセル様の育成論育成論について————最初に、現在人材育成についてどのようなお取り組みをされているのかを教えてください。金谷様:今回インタビューに同席している手嶋が2021年に入社してから2022年、2023年とそれぞれ2人ずつ採用しましたが、その中でも様々な変遷がありました。実は、2021年に入社した手嶋が新卒入社第1期生でした。それまで中途採用の経験はあったのですが、初めての新卒採用ということもあり、右も左も分からない状態でした。そんな中で「仕事に面白みを感じて欲しい」という思いがありましたし、会社の方針として「失敗から学ぶために積極的に様々な挑戦をして自信をつけて欲しい」という考えがあったため、採用を始めた3年間はこの考えをもとに採用や育成を行ってきました。————1期目の採用と比較して変化したお取り組みや新たに始めたお取り組みはございますか。金谷様:手嶋の代は新卒採用が初めてだったこともあり、育成の際には大事にしつつも、大丈夫かなと不安な側面もありました。それから少しずつ慣れてきたこともあり、現在では「もっとやらせてみよう」、「もっと現場の前線で色々なことを経験させてみよう」と考えるようになりました。実際に、3期目の河内の代では、入社して4ヶ月目の頃には私たちが出展する学生向けのイベントに参加してもらい、会社や商品の説明をする役割をお願いしました。年齢も近いのでスタッフ、学生にとってもやりやすいイベントを選びました。こういった挑戦したり経験する機会を増やすための取り組みを積極的に行いましたね。————手嶋様から見て、1期生で入社してから現在に至るまでどんな変化を感じられますか。手嶋様:私が入社した際は、新卒採用が初めてだったこともあり、周囲が先輩ばかりでとても緊張していたことが非常に印象として残っています。現在は、私よりも若いメンバーが入社してきたこともあり、職場が以前よりもさらに活気付いた印象を感じますね。やる気や積極的に自ら挑戦していこうという気持ちが社員全員高いため、日々刺激になっていますね。金谷様:現在新卒社員は6人在籍しており、社内の3割を占めているため、今後も良い影響を及ぼしてくれるのではないかと思っています。————新卒社員の方々が入社される前はどのような雰囲気だったのでしょうか。金谷様:実は、元々新卒採用を実施したいと思ってはいたのですが、当時のオフィスのキャパでは難しいため実現できていませんでした。その後2018年に現在のオフィスへ移転したことで広くなり、新卒採用を実施することができました。以前のオフィスは2階建て倉庫の2階部分だけだったので、きっと当時のオフィスで採用を行っていた場合、選考を希望しない学生も多かったのではないかなと思います(笑)環境面での雰囲気の差が1番大きいですね。————今後も新卒採用を続けられると思うのですが、今後チャレンジさせてみたいことや取り組んでいきたいことがあればお伺いしたいです。金谷様:特にデジタル面は彼らの方が触れてきた機会も多いと思うので、そういった領域は若い社員にどんどん任せていきたいと思っています。河内はもう1人の同期と共に、昨年1月に開催された東京オートサロンで展示したデジタルツールで商品選択できるタッチパネルを作成してもらいました。これを実施するにあたり、タッチパネル本体は購入していたのですが、問題作成や商品配置するなどの中身のコンテンツは自分たちで作る必要がありました。そのコンテンツ作成の部分を彼らにお任せしました。————河内様が実際に任された時の心境や、この経験を通して感じたことはありますか。河内様:1月のイベントに向けてこの業務を任せてもらったのが9月、10月くらいでした。当時は課題を与えられたような感覚だったのですが、途中からは私と同期の2人でほとんど進めていく機会が多く、先輩の力も借りながら主体的に色々挑戦しました。そのため、やりがいを感じることができ、非常に楽しみながら業務を進めていきましたね。ただ、私自身あまりデジタルツールを使用することが得意ではなかったので、媒体購入先の企業の担当者の方に説明を受けた際にも理解するのに一苦労しました。最初は機械に慣れることから始まり、説明書を見ながら少しずつ進めていくことが非常に大変でした。しかし、実際にイベントで展示した際にはメインコンテンツとして多くの人に触れてもらい、最終的には約1000人の方々に経験してもらうことができました。こうやって目に見えて結果を実感することができたため、この経験ができてよかったなと非常に感じています。金谷様:イベント最終日に媒体の企業の方も様子を見にきてくれていたのですが、「ここまで作り込んでいるのは他では見たことがありません」と仰ってもらえるほどの完成度でしたね。————金谷様から見て、当初の期待値とイベント当日を迎えてみてのギャップはありましたか。金谷様:期待値以上で鳥肌が立ちましたね。さらに、1月のショーでは日本語版のみの展示だったのですが、外国の方が触った時に日本語のみでは言語がわからないということもあり、「2月のショーに向けて英語版を作ります」と言ってくれた時は嬉しかったですね。何より成功体験を積んで欲しかったことと、何事にもついてくる納期を守るということを勉強してもらうことを狙いとして今回は実施しましたね。価値観・文化について————社内の文化にも誰でも挑戦できることや任せてもらえること、主体的に行動できることなどの環境が整っているのでしょうか。金谷様:当社には元々そういう風土がありますね。実際に手を挙げたら挑戦できるという文化は強く浸透しています。当社では1人当たりの仕事量もかなり大きいこともあり、それに加えて自ら挑戦していくということは正直しんどいと感じることでもあるのかもしれませんが、挑戦した結果成功体験を作ることができるだけでなく、意欲にも繋がるため、会社としても挑戦することや主体的に行動できる環境を作っています。これは当社が設立した当初から変わらない文化ですね。私自身も入社して20年目になるのですが、現在に至るまでも様々な挑戦をさせてもらってきました。————代表の方の考え方もお伺いしたいのですが、社員の方に対する考え方や仕事への向き合い方など社内に浸透している考え方はありますか。金谷様:社長自身はあまり言わないのですが、温かく見守ってくれている感じがしますね。叱責されることはありませんし、失敗した際には都度一緒に軌道修正してくれます。社長室はガラス張りなのですが、ドアは常に開いた状態となっています。これは、社員がいつでも社長に相談できる環境づくりのひとつです。この取り組みは昔から変わらず、自分の手を止めてでも、相談に乗ってくれる方ですね。その場で解決まで至るので、仕事の効率だけでなく、意思決定までのスピードも速いです。————河内様が入社する前と後で会社に対する考え方や見え方の変化はありましたか。河内様:学生の頃は私の勝手なイメージですが入社しても数年は与えられた業務をこなしていくのが仕事だというイメージを持っていました。しかし、ディクセルでは莫大な業務もやりつつ、自分が挑戦したいことには手を挙げればやらせてもらえますし、他の人がやっているプロジェクトに参加することができるような環境もあるので、自由度が高いなと感じていますね。————貴社の製品にはコアなファンが多いと思うのですが、製品やお客様に対して大事にしている考え方や思いをお伺いしたいです。金谷様:当社の製品はコアなため、知っている人は知っているけれど知らない人は知らないというブランドです。製品の作り方は色々あると思うのですが、例えば優れた技術を発揮した製品をこの価格で買って欲しいという会社もあれば、当社のように、お客様からの「こんな商品が欲しい」という声を聞いてお客様が買ってくれる製品を作り上げるという会社もあります。その中の1つが当社の「Mタイプ」という商品です。これはホイールが汚れないブレーキパッドなのですが、これも「ホイールが汚れて困っている」という声を吸い上げて生まれ、ロングセラー商品として販売し続けています。2004年に販売開始し、今年で20周年を迎えます。このように、お客様のニーズが見えるように多くの声を吸い上げるということは大切にしています。同様に、社員からも「こんな会社だったらいいのに」、「こんなのがあれば便利だな」という声を吸い上げて様々な取り組みを実施してきていますね。例えば、土曜日はシフト制で出勤希望のスタッフが出勤していますが、以前は平日同様18:30までの勤務でした。しかし、社員から『土曜日の売上高はさほど高くないので、17:00までの営業でも良いのではないか』との意見があがり、今では9:30~17:00の勤務形態になりました。また、有給制度も昨年変わったことで、1時間単位から取得可能となり、より自由に有給を取得できる環境になりました。————こう言った価値観は若手のお2人から見ても感じられますか河内様:そうですね。社内社外問わず社員全員お客様のニーズに応えるための行動をされているなと感じますね。イベントなどでエンドユーザーの方とお話しすることもあるのですが、よく「ディクセルの商品使っています」と言っていただきますし、別の商品の説明を聞きにきていただいたり、相談などのお問い合わせをいただくこともあります。歴史について————金谷様が入社されてから20年間の間に会社としても様々な変化があったのではないかと思うのですが、印象に残っているエピソードはありますか。金谷様:昔から中途採用はしていたため、「こういう人材が欲しい」と社内で要望があれば私が採用窓口となって採用を行ってきました。当初は採用が決まった段階で配属先の部署にすぐ配属していたのですが、そうするとその時点で私の手から離れてしまい、育成に関しては現場のメンバーにお任せする状態となっていました。そのため、人を育成することが得意な人とそうではない人で育成の差が生まれることが発生していました。当社では人を育成する経験があまりないメンバーが多いこともあり、中々スキルを継承していくことが難しいという課題がありました。新卒採用においても、元々は配属部署を決めて採用していたのですが、河内の代からは配属部署を決めずに採用を行うことにしました。1年間かけて様々な研修やイベントなどの経験を経てスキルや適性、本人の希望などを見極めながら2年目に配属部署を決定するというスタイルに変更しました。本人が充実感を感じて進んで仕事ができる部署を1年かけて本人、会社共に探すのです。そうすると、上司が決まっていないという状態になるので、採用担当の私ともう1人の担当者と本人で毎月3者ミーティングをしたり、課題を与えるという育成方法を現在は行っています。————新卒採用を始められたきっかけは何だったのでしょうか。金谷様:私たちの世代が40代50代とどんどん偏っていたので、後継を作らなくてはいけないという思いから新卒採用をしようと始めました。中途社員はその仕事に長けた部署であれば即戦力として活躍してもらえる一方で、当社以外の経験があるためすでに価値観などの色がついてしまっているので、今後伸ばしていきたいことや新たな挑戦をしていって欲しいという場合には新卒社員の方が馴染みやすいといったことがあると思います。だからこそ、新卒を採用することによって会社の可能性を広げることと組織の成長の拡大を図りたいという思いで新卒採用を開始しましたね。社員の皆様について————実際に新卒社員が入社してみて、会社の雰囲気や既存社員の方々に変化はありましたか。金谷様:手嶋も言っていましたが、社内の雰囲気が活気付いてきているように感じますね。業務の際には時々冗談も飛び交いながらも真剣にコツコツ取り組む社員が多く在籍しています。新卒1期生から現在の3期生まで退職者が1人も出ていないことは私にとっての誇りでもありますし、新卒メンバーも頑張ってくれているなと実感しています。退職者を出さずにやってこられたのも、同期がいたからこそだと思います。各世代に必ず2人採用してきたからこそ、2人で支え合って相談しながら切磋琢磨して取り組み成長してきたからこそ、今も活躍してくれているのではないでしょうか。同期たちで協力しながら頑張ってくれているのを見ると私も嬉しくなりますね。————お三方それぞれから見て、活躍している社員の方のエピソードがあればお伺いしたいです。河内様:私の1つ上の先輩社員の舛田さんという方ですね。彼は技術開発部に所属しており、製品の開発などを担当されています。舛田さんは私と同期の2人が入社した際に面倒を見てくれたり、自分の仕事が大変にも関わらず、イベントに向けて私たちが「やってみたい」と考えていることに対して相談に乗ってくれたりと親身になって接してくれました。舛田さんにも業務があって大変だったと思うのですが、後輩である私たちのことを常に気にかけていただいて、良くしてもらっているなと感じています。手嶋様:私は現在営業部のカスタマーサービス課と企画部広報課に所属しています。カスタマーサービス部の課長を担当されている方は入社してからずっと私の憧れの社員で「こういう人になりたいな」と思う先輩です。カスタマーサービス部は普段からお客様とコミュニケーションを取る機会が非常に多いのですが、課長はどんな時でも1番優先させるべきことを判断する力があるだけでなく、部下に対してもいつも丁寧に教えてくれます。普段から会社全体のことを考えて行動しているんだなというのをすごく感じていて、将来は課長のようになりたいという思いで現在頑張っています。金谷様:課長を担当されている方は中国出身の女性で、日本の大学に進学しており、当社のインターンシップに参加したことがきっかけで社員になった方です。当社ではベテラン社員の1人ですね。手嶋自身目標にしているというのもあり、少しずつ課長の彼女に似てきたなと感じますね。私の視点からは、新しく入社してきた若手の社員が輝いて見えますね。特にオンオフの切り替えがすごく明確で、有給を使い切ってしっかりオフを楽しむ社員もいて、とてもいいことだと感じています。また、当社の勤務時間は9:30-18:30なのですが、終業時間になったら切り替えて退社する時もあれば、「明日休みなので今日は少し長めに頑張ってから帰ります」という時もあるように、会社に対して献身的な働き方をしつつオフを充実させるメンバーは輝いて見えます。他にも、入社してから結婚した社員もいるのですが、そういった話も耳にすると嬉しいですね。仕事をちゃんとできていなかったらオフも充実させることは難しいですよね。限られた時間の中で高いパフォーマンスを発揮できる人が集まるからこそ、勤務時間の中で業務をしっかりこなし、オフも楽しめると思っています。業務内容について————みなさんそれぞれ業務内容は異なると思うのですが、どのような瞬間にやりがいを感じられるかお伺いしたいです。河内様:私は現在営業部のCS課に所属しており、受注業務やお客様の納期の問い合わせ対応などサポート業務を行なっています。お客様のサポートを行う中で、自分のサポートがきっかけで商品購入に繋がった時や、イベントに向けて販促品を作成して良い反響を得られた時には特にやりがいを感じますね。手嶋様:お客様と直接お話しする機会がとても多いので、「この商品を買おうと思っているんだけど」といった電話をいただくこともあります。私がニーズを聞き取り、アドバイスした結果、「この商品を選んでよかった」と言っていただけることもあります。電話で対応する際には、”会社の顔”としてお客様とお話ししていると思っています。自分が対応したことでお客様が会社や製品を好きになってもらえるということはすごくやりがいになっていますね。金谷様:私は広報という立場なので、興味を持ってもらうことを目的とした業務がほとんどです。私は広報活動を通じて、「ディクセルって面白いな」と興味を持ってもらうきっかけを作りたいと思っています。そのために販促品を作ったり、最近は車雑誌ではなく、間接的に関係がありそうなスポーツ雑誌やキャンプ雑誌、サービスエリアやパーキングエリアのフリーペーパーなどに情報を掲載する方針に変更したりしました。それらの情報を何気なく見た人が「面白そうな商品があるな」と思ってもらえたら狙い通りですし、こういった活動が購買のきっかけとなることが私にとってのやりがいの1つです。未来のビジョンについて————今後挑戦していきたいお取り組みなどはありますか。金谷様:会社としては今後規模を大きくする予定はないというのが代表の方針です。現在まで売り上げを落とすことなく伸ばしてきていますが、これは会社の規模を大きくしたからではなく、個々の力が強くなったからできたことです。これは今後も継続してやっていこうということなので、必要最低限の人員で1人1人のスキルを向上させることで売り上げを伸ばしていくというスタンスを引き続き継続していく予定です。そのため、組織規模は大きくしませんが、組織として強くなっていくことを目指しています。また、新卒採用の際には良く伝えるのですが、会社に務めるということは会社の歯車になることだと思っています。大企業であれば、歯車の歯1つ1つが集まって部署になるため、歯車ではなく、歯の1つになることが多いです。しかし、ディクセルでは1人1人が歯車そのものになりますし、歯車の大きさもどんどん大きくすることが求められる環境があると発信しています。今後も大きな歯車になって活躍したいという人に来て欲しいと考えています。