カイシャの育成論──まず、御社の育成制度について教えてください。きちっとしたマニュアルがあるというよりは、その時その時で必要なものを少しずつ組み立てているという状況です。制度として体系化されたものではなく、むしろ現場で生まれるニーズに応じて、必要な学習機会を設計していくアプローチを取っています。直近では、自社のインターン生向けの課題を作っています。彼らが業務未経験の状態から、私たちが開発しているアプリの開発に参加してもらうために、最低限必要なスキルを身に付けられるような課題ですね。具体的には、アプリ開発のプログラミング言語を使って、私たちのアプリ「Stockr」の核となるメモツールの簡素な部分を作るという内容です。このアプリは開発を始めて4年ほどになりますが、非常にミニマルな設計になっているので、初学者でも取り組みやすいんです。プログラミング言語に全く触れたことがない学生もいれば、他の言語で経験がある学生もいます。そこで、エンジニアが課題を設定して「まずここからやっていきましょう」という段階的なアプローチを取り、40時間から60時間程度で完了できるようにしています。最後まで行くともうちょっと時間がかかりますが、それを終えると実際の開発に参加してもらえるレベルになります。──デザイナーのインターンに対してはいかがですか?デザイナーのインターン向けにも最近課題を作りました。デザイナーの場合、このプロダクトがどういったターゲットを想定しているものなのか、そのターゲットのカスタマージャーニーを理解することから始めます。普段の生活の中でどんな感情の変化があって、どんな困りごとや課題を抱えた時にこのアプリに出会うのか。インストールした後にどんな体験をすることで「また使いたい」と思ってもらえるのか。そうしたカスタマージャーニーの設計が、デザイナーの仕事の中でも、いわゆるアプリの画面を作る表面的なデザインよりも重要な部分なんです。いわゆるUXデザインと呼ばれる領域ですね。そのあたりの理解を前提として、スキルを確認したり、さらに成長してもらうためのインターン課題を作っています。──社員向けの育成はどのような方針ですか?社員向けには、スキル面とマインド・価値観面の両方を大切にしています。特に私たちが重視しているのは「なぜそれをするのか」という部分です。新卒の場合、入社前の半年間に月1回来てもらって、内定者研修・内定者インターンという形で研修を行います。1日の研修の半分はエンジニアリングの基礎やデザインの基礎、プロジェクトマネジメントの基礎を扱います。そして残りの半分は、自分のセルフビジョンを作ることに時間を使います。これが私たちの育成で最も特徴的な部分かもしれません。最初は自分と向き合うことから始めます。これまでの人生、大学卒業ぐらいまでの人生を振り返って、どういう時に高まりがあったか、逆に落ち込みがあったか、そうした体験からキーワードを出していく。自分の中で大事にしているキーワードとエピソードを紐づけていくことで、自分が大切にしている価値観を明確にしていくんです。そしてそれを社員に向けて発表してもらいます。これは単なる教育ではなく、お互いを理解し合い、信頼関係を作る場として機能させています。基本的に、社員には事前に詳細に伝えず、むしろ新卒入社予定者のことをいろいろ聞いていく場をつくることで、私たちも理解しようとしているし、相手も理解しようとしてくれている環境だということが伝わっていると思います。──なぜこうしたアプローチを重視されるのでしょうか?私が長くIT業界にいて感じるのは、スキル習得のプロセスがこの20年ぐらいでどんどん変化し、早くなっているということです。「何ができるようになるか」という機能的な話よりも、「なぜそれをするのか」という部分の方がずっと重要になってきていると考えています。私としてもそういう会社にしたいなと思っていて、価値観として以前からあったんですけど、それを制度として取り入れていこうとしたのは、自分の体験によるものです。私自身、新卒で入った会社は大手企業でした。そちらで5年ほど働いた後で転職をしたのですが、周りからすれば辞める必要のない環境で働いていたと思います。当時の私の心情を記録してあったのですが、働いている時間が人生の3分の1を占めるのに、その時間に自分なりの意義を見出せないのはどうなんだろうと真剣に考えていたようです。自分がどういう人生にしたいかということに向き合った結果、当時の自分は、エンジニアリングやソフトウェア開発に近い場所で働きたいと、ようやく自分の方向性に気づいたという経験があります。そうした試行錯誤を経て、働く時間に対してきちんと意味を見出せることの大切さを実感したんです。会社の理念や考え方──理念にはどのような思いが込められているのでしょうか?裏にあるイメージとしては、世界が動いているのは巨大な権力や力を持つリーダーだけではなく、本当に一人一人が前を向いて歩んでいるからだ、そういう世界にしたいという想いが込められています。一人ひとりの成長が、ちゃんと世界を変えているよね、という世界を目指しているんです。その上で、私たちが日々大切にしている価値観が3つあります。1つ目は「誠実に働こう」ということです。これは私自身の体験に基づいているのですが、今まで開発の仕事をずっとやってきて、目の前の仕事をちゃんとやっていれば必ずつながっていくということを実感しています。今でも昔の知り合いから連絡があって「こういうことできる?」と声をかけてもらえる。もともと真面目な性格ということもあるんだと思います。兄弟からは「真面目過ぎる」と言われることもありますが、真ん中っ子だった私にとっては、「真面目に生きることが、周りに認められるために大切なことだ」と思って生きていました(笑)。そういう考え方が私のアイデンティティの一つになっていると思います。2つ目は「挑戦」です。既存の成功体験に安住しないということを大切にしています。世の中が変わっているからこそ、新しい価値を届けられる可能性がある。そういった新しい取り組みに対する意欲や好奇心を、個人の中にある成長意欲として大切にしています。3つ目は「練達」への意識ですね。これは「一人ひとりの成長が、世界をより良くする」を掲げている私たち自身の成長に対する責任でもあると思います。元々「成長」という言葉を置いていましたが、卓越していくというプロとしての視点も大切にしたかったため、現在は練達という言葉を用いています。──理念ができてから、組織に変化はありましたか?はい、確実にあります。会社のコミュニケーションを意識的にデザインしている部分もあるのですが、日々の会話の中で価値観の実践に対する承認を送り合えるような場を設計したり、そうした会議体を作ったりもしています。普段の現場でそれを感じる変化があるかというと、結構あるんです(笑)。話し合いの中で「やっぱりそれはそうだよね」「これ誠実なことだね」「挑戦してるね」といった言葉が自然に出てくるようになりました。そういった普段の言葉の中から価値観が表れてくるというのが、実際に感じられています。最終的には無意識に落とし込まれているような感じですね。これがあるのとないのとでは、かなり大きな違いがあると思います。会社の歴史──そもそも会社を立ち上げられた経緯を教えてください。実は創業時点では、かなり身勝手な動機でした(笑)。前職では、教育ベンチャーにいたのですが、いろいろあって、そちらを離れることになりました。それで、当初は「自分のための場所があればいい」という、ちょっと身勝手な感じで渋谷から八王子に移って会社を始めたんです。その後、前の会社での経験は楽しかったので、誰かと一緒に何かするのは楽しいなと思ってそれからは仲間を集めました。ただ、会社として軸があるわけではなく、エンジニアリングやソフトウェアが作れる人だけで集まって、技術の話で盛り上がったり、ある程度の技能を持っている人を集めて会社をやっていたという感じでした。これが2016年から2020年頃までの状況です。──どのような課題を感じていたのでしょうか?当時の私の器や関わり方にも理由があると思うのですが、会社として軸があるわけではないので、ただ仕事がある箱みたいな感じだったんです。みんながある程度成長すると「自分は独立するから」「他の技術を思いきりやりたいから」と言って転職していく。最初は「成長して卒業していくんだな」みたいに思っていたのですが、だんだん「なんで会社やってるんだろう」と思うようになりました。一緒にやりたいなと思って楽しい場を作っているけれど、結局仕事は残るんですよね。その接続や継続が結構自分の中では「また面倒くさいな」と思っていたんです。そこで残ってくれているメンバーと一緒に、1泊の合宿をやりました。今やっていることはどういう価値観に基づいているのか、一人一人の価値観というよりは会社としてのアイデンティティをまとめていこうという取り組みでした。──合宿での議論はどのように進んだのですか?みんなで集まって色々意見交換していく中で、「一人ひとりの成長が、世界をより良くする」という言葉にまとまったんです。これは私一人の考えではなく、本当にみんなで話し合って出てきた結論でした。その後、この理念に基づいて、世界の前進につながるような仕事を続けていこうということになりました。合宿後、当初は「何万人以上のユーザーに関わっていくために、ユーザー数が多いサービスを手伝えば前進できる」といったことを謳いながら、さまざまなサービス開発に関わっていくことになりました。活躍する社員について──現在活躍されている社員の方に共通する特徴はありますか?一番は学習力だと思います。良くも悪くも、制度として丁寧に作り上げられた育成プログラムがあるわけではないんです。大手企業のように研修があって、階層が決まっていて、昇進の道筋があるような整備された環境ではありません。ある種、目的や目標、想いを共有した上で「あとはみなさん、それぞれ頑張ってください」という部分があるんです。そこについてきてくれることはすごくありがたいのですが、やはり学習していくことの重要性をみんなが認識してくれています。例えば、今年から開始した広報という形で、会社の思いややっていることをメッセージにして発信していく取り組みについて。これまで全く取り組んでいなかった領域だったので、教材があったりフィードバックがもらえる環境を整えながら進めているのですが、担当者が自主的に学習を進めてアウトプットを増やすことで、本当に様々な発信ができるようになってきました。──ユニークな制度があるとお聞きしました特徴的な制度として、業務時間の最後の1時間を「自己啓発タイム」にしています。10時始業で19時までの勤務時間ですが、実際の業務は18時に終了します。17時45分から15分間の振り返りをして、18時に「お疲れ様でした」となった後の19時までの1時間は、何をやってもいい自由な時間なんです。これは私が前職で見た制度を参考にしたもので、会社の時間を使って自分の好きなことを仕込んでよいという考え方です。そこから新しいアイデアが生まれることを期待しています。本人の意欲や好奇心が高いメンバーが集まっているので、みなさんその時間を使って能力開発をしてくれています。 ──具体的にどのような活用をされているのでしょうか?例えば、広報担当が、たくさんのメディア向けのサービス資料を作るんです。「いつやってるの?」という感じなのですが、AIを活用して自分なりのワークフローを設計し、試行錯誤しながら効率的なやり方を模索しているんですよ。別に「こういう風にやろう」と細かく指示しているわけではなく、自分で設計して取り組んでくれています。そのほかにもエンジニアが、インターン向けの課題を自発的に作ってくれました。これも私が指示したわけではないんです。彼はデザインもできるエンジニアになりたいという目標があり、インターンのメンバーが増えている状況を見て、効率的に指導できるようなカリキュラムを作ってくれました。一人一人と向き合って指導していると自分の時間が足りなくなるという課題を感じていたんでしょうね。いつの間にかそれを解決するパッケージを作り上げていたんです。カリキュラムを課題としてパッケージ化することで、それを見ながらフィードバックしたり課題を修正したりできるような仕組みを考えて作っていました。──個人の成長意欲をどのように見極めていますか?時間管理についても、あるエンジニアは入社前から2割8割の法則を実践していました。2割の重要な仕事から8割の成果が出るという考え方で、その2割の仕事にしっかり時間を使う意識を持っています。入社前に「こういう風になっておきたい、そのために時間の使い方をこうする」と決めて、朝からカフェに行って本を読むなど、自分なりの成長のための時間の使い方を確立していました。「ここまでやってたら、僕も人生変わってただろうな」と思うような新卒時代の過ごし方をしていて、本当に素直で学習意欲が高い人だなと感じています。もちろん、全員が同じように動けるわけではありません。今まで在籍していたメンバーの中には、そうした傾向がないメンバーもいました。ただ、基本的には仕事に還元されるような学習をしてくれているメンバーが多いと思います。採用における価値観の重視──こうした組織文化を支える人材の採用について、どのような点を重視されていますか?最近では、採用担当が最初の面談を担当しています。私自身、そこからの気づきが多いです。彼女は以前、人材業界で個人営業や採用人事を専任で担当していた経験があるので、その経験を活かしてくれています。具体的に、彼女は過去と未来という軸で見ているんです。価値観は長い時間かけて醸成されるもので、なかなか変えることができない。そこは良い意味でその人の強みとして形成されていると思うので、まずそこをしっかりヒアリングした上で、今の社内の業務や文化と照らし合わせた時にどういう風にフィットしそうか、これから会社としてやりたいことに対し、どう活かせるのかといったマッチングを考えています。また、将来どうなりたいかをどれくらい具体度高く話せるかというところも重視しています。過去と未来、そこに結構フォーカスして話を聞くようにしています。──実際の選考ではどのような点を見ていますか?結構シンプルで、いわゆる「言っていることよりは、やっていることを見る」というアプローチです。ある程度ご縁があって面談まで進まれる場合、応募者も会社のことを調べてきてくださっていることが多いので、合わせるような話はできてしまうと思うんです。私たちのやりたいことに共感していただけるのはとても嬉しいことですが、「じゃあ今何をしているの?」というところが重要ですね。例えば、新しい技術を身に付けつつ、教育や成長に貢献するようなことをやりたいと言っていたとしても、今できることがあるわけです。そのために、例えばこういうアプリを作ってみているとか、世の中にある類似のアプリを使ってみて「これもいいと思います」といった具体的な行動があるかどうか。本当にそれをやりたいと思っていて、実行力があるかどうかは、言っていることよりもやっていることに表れるので、そこをすごく見ています。また、先ほどの「誠実・挑戦・練達」という価値観についても、社内では共有用の文章にまとめていて、それぞれの望ましい実践と、真逆の行動についても文章化しています。お話する中で、その人のこれまでの大学選択や転職といった判断に、どのような価値観や考え方が表れているかを確認するようにしています。──入社後のフォローはいかがですか?価値観がマッチして入ってきた人たちは、より文化に納得感や理解を示した上で、行動にもそれを落とし込んでくれている印象があります。お互いの確信が高まった段階では、他のメンバーと話してもらうということもやりますね。実際にどんなことをやっているかを見てもらって、求職者の方が集めてきた情報が、事実こういう形で実行されているとか、同じような価値観を持っている人がいるということを、しっかり納得感を持って理解してもらえるようにしています。こうしたプロセスを経ているからこそ、優秀な人が多い理由があるのかなと感じています。 会社の事業について──開発されているサービスについて教えてください現在はふりかえり習慣化アプリ「Stockr」を開発・運営しています。これは、日々のアウトプットとAIからの関わりを通じて、多くの人がなんとなく毎日を過ごすのではなく、自分の中で軸を持って、自分の言葉、自信を持って生きられるようになることを目指したサービスです。自信というのは、他人に褒められることから作られるものではないと考えています。確かに褒められるのは嬉しいのですが、褒められることを求めて生きるのはちょっと不健全な感じがするんです。自信というのは、自分の中で経験したことから得られるものだと思います。最初は承認を受けることから始まっても構いません。「自分は何をやってもいいんだ」という感覚を得た上で、「じゃあ自分が何をやってもいいとしたら何をしよう」という自律的な選択ができるようになる。それが充足感につながって、本当の自信になるというロジックです。──具体的にはどのような機能を提供されているのでしょうか?アプリでは、書くことを続けることで、自己理解と自信につなげられるような体験を作っています。とはいえ、最初はちょっと褒められた体験から入るんです。アプリの中には「ストック」という機能があって、何か書くとAIからコメントをつけてもらえたり、AI解析による価値観診断なども提供しています。自分がどういう考え方を大事にしているかといったことが分かる仕組みです。そうした機能を通じて自己理解が深まり、「あ、こういう風に考えているんだな」「こういう風に成長したんだな」という自信につながるような体験を作ろうと考えています。現在は「再発見」という機能も提供していて、これは過去の自分の記録に出会えたり、成長実感を感じられるような機能です。振り返りをやったことがない人向けに、どうやってやればいいかのインプットを得られる学習機能も用意しています。──最近新しい機能もリリースされたとか5月にビジョン設定機能をリリースしました。これはAIと対話しながらビジョンを描くというものです。よくあるChatGPTのような体験とは違って、AIの方から話しかけてくるんです。そこから対話を重ねて、自分の言葉を持ち、日々に納得感を持って生きる人になれるようなビジョンを作っていきます。社会人の目標って会社から与えられることが多いじゃないですか。「あなたの目標は何ですか」と言われても、本人の納得感はともかく、会社が与えた目標になってしまう。私たちのサービスでは、本当に自分に向き合ってビジョンを描くところから始めるんです。そのビジョンを掲げた状態で日々の振り返りをすることで、常に目標が見えるところにある状態を作ります。ビジョンの通りに生きるとしたら、いつまでにどうなりたいか、何を手にしたいか。それが本当の目標であって、自分の目標というのは苦しむものじゃなくて、達成できなくても落ち込むものじゃなくて、「やっぱりその通りに生きたいよね」ということを確認するためのものだと考えています。──サービス開発のきっかけは?2020年のコロナがきっかけでした。緊急事態宣言で新卒研修などが軒並み止まり、私たちも社会人教育のシステム開発が多かったので大きな影響を受けました。毎月の発注量が2割、3割と減っていく状況で、正直びっくりしていました。とはいえ、それなりのキャッシュがないわけでもなかったので、社内の手が空いたこの機会に何か作ってみようと考えました。「一人ひとりの成長が、世界をより良くする」という言葉は作ったけれど、ホームページも変えていなかったので、まずはブランディングをして、そこから自分たちが作りたいプロダクトを作ってみようということになったんです。私も社会人教育をずっとやっていたので、経済産業省が発信する「社会人基礎力」に「振り返り」が書いてあることを知っていました。確かに内省や振り返りって今どこでも言われているな、小学校でもやっているな、と。でも小学校の振り返りは反省会をやっているように見えるし、振り返りについてちゃんと伝えているサービスやツールがないんじゃないかと思ったんです。私たちは特定の研修会社でもなければコンテンツも持っていないので、まずはツールを作ってみようというぐらいの始まり方でした。最初は本当にメモツールという感じでしたが、今では使っていただいている方に喜んでもらえるサービスに成長しています。未来への取り組み、今後やりたいこと──今後の展望について教えてくださいまず組織面では、いかにみんなのお給料を上げられるかということを常に考えています。そのためには事業規模を大きくしなければなりません。ふりかえり習慣化アプリ「Stockr」はめちゃくちゃいいものを作っているという自信があるので、あとはどう広めるかという点に注力しています。一方で、社員一人一人の成長がどこまでデザインできているかという課題もあります。先ほども言ったように、どちらかというと目的や目標があって、そこにみんなでワーッと向かっているだけなので、もうちょっと分かりやすい階段やはしごのようなものが必要だと感じています。評価制度や昇級制度といった、社員一人一人がキャリア開発をしていく上での指針となる制度をちゃんと言語化して整備していく必要があるでしょうね。今も全くないわけではないのですが、まだ粗い状態です。特に私たちはわりと若手が多いので、中間層の育成も課題です。採用で解決する部分もあるかもしれませんが、今の若手が成長していく中で、後から入ってくるメンバーを引き上げられるようなマネージャーになってくれることも期待しています。──事業面での展望はいかがですか?ふりかえり習慣化アプリ「Stockr」は現在5万5000ダウンロード程度ですが、書籍の自己啓発ジャンルで売れているもので言うと30万部、類似カテゴリーのアプリでも70万ダウンロードといったものがあるので、まだまだ多くの方にお届けできる余地があると思っています。法人向けの展開も考えています。企業の組織文化や価値観を共有するようなツールとして活用できる可能性があります。また、キャリア開発の文脈でも価値を提供できると思っています。実際に、転職活動をする前からふりかえり習慣化アプリ「Stockr」を使っていたというメンバーが転職してきてくれたこともあります。逆に、転職する時に自分と向き合うことの大切さを考えると、社員の定着率向上や離職率低下といった課題にも貢献できるのではないでしょうか。──より長期的なビジョンはありますか?最終的には、何かをやりたいと思った人に対して、どう関わると最も良い結果が得られるかを、データに基づいて示せる世界を作りたいと思っています。以前、習い事のマッチングサービスに関わった時の経験が大きく影響しています。同じドラムレッスンでも、ある先生だととても長く続くのに、他の先生だと2、3回で終わってしまう。同じ「やりたい」という気持ちで始めたのに、続けられる・続けられないの違いが、関わる人次第で決まってしまうんです。コミュニケーションの履歴や、先生が何を伝えているか、どのタイミングで何をやっているかが全てデータとして残るので、どういう関わり方が効果的かを分析できるんです。今ふりかえり習慣化アプリ「Stockr」で蓄積している50万件以上の振り返りデータも、自己実現のためのデータとして活用できると考えています。指導者である親、先生、上司、経営者などに「こういう時にはこういう風に関わるといいんですよ、なぜならこういうデータがあるから」と伝えられるような世界を作っていきたいですね。これこそが、世界で一番「何かをやりたいと思った人にどれだけ良い関わりをすると、その人がそれを実現できるのか」を知っている存在になることだと思っています。そうした構想を実現していきたいと考えています。私たちが目指しているのは、やはり一人一人が自分の軸を持って、自分の言葉で生きられる世界です。特に働く時間は人生の大きな部分を占めるので、その時間に意味を見出せることがとても大切だと思います。今の日本では、中高生が自分の国の将来が良くなると思えない、親や先生を尊敬できないといった統計がありますが、これは大人の責任だと感じています。もっと多くの大人が自分の仕事や生き方にやりがいを持てるような世界になれば、「大人になるといいこともある」「早く社会に出たい」と思えるような社会を作っていけるはずです。そのために、私たちは一人一人の成長を支援する取り組みを続けていきたいと思います。そして、そうした取り組みが世界をより良くしていくことを信じています。