✦ Interview · No. 0069

IT・メディア・広告業界

株式会社エージェント・スミス

代表取締役社長 山菅 利彦

2026/02/26

◈ Editor’s Note

IT業界の常識を覆す。クライアントと仕事に徹底して向き合い続ける同社。顧客価値を追求する組織と人材育成の真髄に迫りました。

カイシャの育成論

――まず、現在御社でお取り組みされている育成制度や教育の取り組みについて教えてください

山菅様:当社はユーザー企業のIT業務のコンサルティングや構築支援を展開する企業です。

教育体系は大きく2つに分かれており、1つは純粋なIT技術のスキル、もう1つはヒューマンスキルです。

技術スキルについては、エンジニアや現場、お客様によって大きく変わってくるので、個別に取り組んでもらっています。

ただし、個別研修に関しては「どんどんやりなさい」と推奨していて、研修に伴い発生した費用や資格取得のための費用は全て会社が負担をしています。

必要に応じて、現場やお客様にスキルを習得してもらっています。

自ら「必要な知識が何か」を考え、補い強化するということに自然と取り組んでもらえるようにしています。

――技術面以外での人材育成について、どのような取り組みをされていますか?

山菅様:人間力は評価にも影響が出るように設計をしています。

エンジニアという仕事柄、誤解されやすいのですが、ただ画面に向かって仕事をしているだけでなく、お客様のニーズを理解しそれを実現していくことが求められます。

そしてその先に、お客様の期待を超えていけるような姿勢も必要になってきます。

このような考え方や姿勢はいくら技術スキルを磨いても、身につく力ではありません。

エンジニアも他の職種と同様に、「人との接し方で評価が決まる」ということを理解することが重要です。

そのために、お客様の真のニーズを理解し、常に期待値を超える意識で業務に取り組むことを浸透させるための取り組みを強化しています。

――浸透させるための取り組みとしてはどのようなものがありますか?

山菅様:エンジニアの皆さんがお客様先でお仕事をする時に心がけてほしい5つの問いかけを「Professional Statements」として掲げています。

第一に「顧客思考」。

お客様にとっての価値とは何かを常に考えてもらいます。

お客様との契約内容は「様々な仕事を一定期間で提供する」とありますが、それはあくまでお客様のお仕事の一部です。

「お客様の価値とは何か?」というところまで拡げて考えなければいけません。

お客様がどこを目指して、何を価値と感じているかを読めているエンジニアと読めていないエンジニアとでは、仕事の結果は大きく変わります。

第二に「提案」です。

要求されたことだけを提案すると思っている人が多いですが、お客様の仕事を注意深く精査していけば、お客様自身も気づいていない本質的な課題が見えてくることもあります。

発見した課題を含めて提案していくことを要求しています。

第三に「成果」です。

成果はQCD(Quality, Cost, Delivery)で判断するようにしており、お客様が満足する品質でサービス提供できているか、お客様はコストパフォーマンスが良いと感じているか、約束した納期で納められているかを重視しています。

常にQCDの3つを満たすように意識するべきですが、想定通りうまくいかないことも多々あります。

「品質は担保できたが、納期が遅れてしまう」等の事象はシステム構築の分野ではよく見かける事例です。

しかしながら、当社のエンジニアは常にQCDが満たされている状態を目指していく意識が必要と考えています。

第四に「期待値」です。

「指示の遂行がお客様の期待値の充足」と勘違いしている人は多いですが、契約内容をクリアすることは当然です。

Professional Statementsの「顧客思考」にもあるように、お客様の「価値」を徹底的に考え抜いて、期待を超える仕事をしなければなりません。

お客様からの期待値は満足度と照らし合わせて設定しなければ、我々が評価されることはありません。

そして第五に「価値」です。

価値とは、エージェント・スミスの価値向上を指しています。

上記の四項目をクリアしていればお客様からの満足度は高くなっていると思いますが、当社の一員であるということを忘れてはいけません。

一人ひとりの仕事が、当社の価値と自分自身の価値を高めていく取り組みになっていくような意識が日頃から求められます。

お客様にとって我々が「唯一無二の存在になれているか」を常に問いかけた結果、お客様から評価され、信頼され、継続していただけるということを社員には向き合い考えてもらっています。

――Professional Statementsはいわゆる行動指針のようなものですか?

山菅様:5つの項目は行動指針ではありません。

行動指針を定めてしまうと、行動を遂行しているだけで達成感を感じ満足してしまうので、当社は敢えて、行動指針という表現はしていません。

お客様を「察知して、感じて、考えて、提案しなさい」と伝えている為、とるべき対応がその時々で異なります。

臨機応変な対応を行動指針の文言で網羅できるかと言えば難しく、お客様の状況や自分たちが優先して取り組むべき仕事に応じて柔軟に対応できるような人材を育てていかないといけないため、行動指針ではなく、一人ひとりが大切にするべき考え方として定めています。

――研修や教育の効果測定についてはどのように考えていますか?

山菅様:短期的ではなく、中長期的に考えています。

一定間隔で効果測定し、常にプログラムをブラッシュアップしていくように考えています。

会社の理念や考え方

――Professional Statementsの導入のきっかけを教えてください

山菅様:当社のエンジニアがお客様から評価され、信頼され、依頼をいただくためには、お客様の満足度を高い次元に保つことが必要で、それを実現するための理想的なエンジニア像に近づくための考え方を明文化したものがProfessional Statementsです。

IT業界はプロダクトアウトなので、ハードウェアにしてもソフトウェアにしても、製品をメーカー側が作って、それを販売するというモデルになっています。

これは何十年も昔から続いています。

30年くらい前はプロダクトが少なかったので、開発は今よりもっとシンプルでした。

しかし、今はものすごく多い数のプロダクトが出てきています。

同じ業務に適用させることを目的とした、同じ機能を有するプロダクトが何十も何百も存在する場合もあるわけで、このような環境下で良い選択と良い仕事をするためには質の高い考え方が大切になりますね。

――現代における煩雑な問題をどのように解決しようと考えていますか?

山菅様:我々のパーパスは「ユーザー主導の世界にIT業界を変える」ことです。

お客様の立場に立って、お客様が正しい製品やサービスを選択するよう伴走しています。

お客様はメーカーやベンダーに惑わされないようにしなければなりません。

メーカーは「自社で作った製品が一番お客様に適している」と営業することが仕事なので、たとえ適していない場合であっても自社の製品を提案します。

だからこそ、私たちは売る側とは反対の視点で、かつ専門的知識を有した適切な判断の下、製品やサービスを選定します。

それが結果としてお客様の求めていることの実現につながり、当社のパーパスの実現にもつながっていきます。

また、その他にもお客様の情報システム部門内で人手が足りないというケースがよくあります。

技術的な要員不足の場合、当社がIT要員を提供してお客様の仕事を代行するサービスも提供しています。

会社の歴史

――エージェント・スミスの歴史について教えてください

山菅様:元々は、大手SIerに務めていた経験から、IT業界の課題を肌で感じてきました。

例えば、100億円の予算でシステムを開発する場合、受注したベンダー側はできるだけ少ないコストで完成したいと考えます。

100億円で受注しているから、50億円で開発したら50億円が利益になるわけです。

一方で、ユーザー側は100億円払うのだから、それなりかそれ以上の価値を求めます。

つまり、お客様側は出来るだけ沢山の要望をシステム構築に盛り込もうとします。

それに対しベンダー側は「契約のスコープ外です。」と押し返し、いたちごっこの状態に陥り、結果として効率が落ちていきます。

例えば2年で完了予定のプロジェクトにもかかわらず、設計に1年以上も要してしまい、結果的に納期が大幅に遅延するような事例が多々あります。

この相反する利害関係が、プロジェクトの進行と品質と納期を大きく劣化させるのです。

――そのような業界の問題を解決するために会社を設立されたのですね。

山菅様:そうです。

IT業界の仕組みとして根本的な問題があると感じていました。

日本のシステム構築のスキームが間違った方向に発展してきてしまったという側面があります。

先述の通り、商売である限りは、「利益をどれだけ上げられるか」が重要ですから、ベンダー側のできるだけ効率的に開発を行おうとするスタンスは当然です。

一方でユーザー側が決められた予算の中で、出来るだけ多くの要件を実現したいのもまた然りです。

ユーザーとメーカー・ベンダーの間にある構造的な問題を解決し、本当の意味で効率の良いシステム構築を実現し、お客様とメーカー・ベンダー双方が適正なベネフィットを享受できるスキームを作り上げることを目標にエージェント・スミスを立ち上げました。

活躍する社員について

――実際にこれまで伺った御社の取り組みは現場でどのように実践されているのでしょうか?

山菅様:ひとつは、実際に当社がお客様に展開したサービス事例において、お客様の情報システム活動が向上し、効率化された事例を、後続の案件に継承することによって、より多くの現場の成功事例を増やすことです。

またもう1つは、人材を1つの案件に長居させず案件ごとに定期的な人材のローテーションを行い、情報システム活動の向上が著しい現場での仕事を経験させることです。

多種多様な現場がある中で、成功事例を社員に経験してもらうことが組織全体の能力を高め、さらなる価値提供をしていけると考え実践しています。

技術的な部分については、IT業界はトレンドがあり、採用するシステムも金融系で使うものとスマートフォンの一般的なアプリで使うものとでは異なってきます。

そういった専門性の部分は個別に対応していますが、ヒューマンスキルはProfessional Statementsをしっかりと守っていくことで、おのずと成長していくと考えています。

こういった取り組みを積極的に行っている社員は、お客様先で非常に高い評価をいただくことも少なくありません。

――お客様先にいると優秀な方ほど転職されてしまいそうな気がしますが

山菅様:嬉しいことに、優秀な社員ほど考え方が浸透しているおかげで離職のケースはほとんどありません。

業界内で比較しても離職率は極めて低く3%台となっています。

社員の多くは目的を持って働いてくれていますし、会社としても成長機会をたくさん提供しています。

当社のパーパスでもある「ユーザー主導の世界にIT業界を変える」の実現に向けて様々な顧客の課題解決、理想の実現に向けて社員一丸となって取り組んでいきたいと思っています。

会社の事業について

――現在の事業展開について詳しく教えてください。

山菅様:当社はパーパスの実現に向けて、「業界に影響を与える存在、光る存在になろう」と考えています。

実際に、メーカーやベンダーの立場ではなく、お客様の立場に立ってサポートすることを徹底しており、お客様が正しい意思決定をできるよう情報提供をしていますし、お客様のIT人材不足を補うサービスを多角的に展開していくことで、さらに業界内でのプレゼンスを高めていけると確信しています。

――ITの専門家として価値がますます向上していきそうですね

山菅様:当社の取り組みはお客様との棲み分けを大切にすることも意識しています。

例えばITとは異なる業種を志して就職した人が、その会社の情報システム担当となってITの専門的な業務に従事しても、モチベーションが上がらないと思いますし、その人の本来のポテンシャルを発揮できる機会を失ってしまうことにもなりかねません。

だからこそ、「ITの専門領域は、我々のようなITの専門家に任せてもらう」という棲み分けを提案しています。

――お客様からの評価はいかがですか?

山菅様:お客様の情報システム部門の代行を行うITの専門家として、高い信頼と評価をいただいています。

いたずらに開発や導入案件を推し進めるのではなく、しっかりと「お客様が成功していくために何をすべきか」ということを、真摯に考え続けるビジネススタンスが、お客様にも伝わっているのだと思います。

未来への取り組み、今後やりたいこと

――今後の展望について教えてください。

山菅様:IT業界を本当の意味で「ユーザー主導の世界」に変えていきたいと考えています。

お客様が適切な選択や意思決定ができるように、我々がより良いサービスを提供し続けることで、業界全体の効率向上とユーザー企業のグローバルな競争力向上に貢献していきたいです。

人材育成の面では、このProfessional Statementsの考え方をさらに浸透させ、お客様から評価され、信頼され、継続的に選ばれるような人材を育てていきたいと思います。

技術だけでなく、人間的な成長も含めた総合的な育成を目指し現場での実践を継続していきます。

組織面では、成功事例の横展開をさらに強化し、全社的にレベルアップを図っていきたいと考えています。

お客様にとって本当に価値あるサービスを継続的に提供することで、ITに対する新たな価値観を創出し、お客様自身がITの可能性をさらに実感できる未来を創り出していきたいと思います。

✺ Interviewees

お話を伺った方

  • 代表取締役社長

    山菅 利彦

    2009年 株式会社エージェント・スミス創業 代表取締役社長 就任

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