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属人的業務は「悪」なのか|専門性を生かしながらリスクを抑える方法

属人的な業務は、組織のリスクとして否定的に語られがちです。しかし、個人に深く根ざした専門性は、競争力の源泉でもあります。属人化と専門性を見分け、暗黙知を形式知に変える仕組みと後継者の計画的な育成を組み合わせれば、リスクを抑えながら専門性を生かせます。

公開日
2023/05/18
更新日
2026/09/28
読了時間
約 9 分
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
技能継承タレントマネジメント人材戦略

「属人的業務は排除すべき」「属人化は組織のリスク」。こんな言葉を、経営会議や人事戦略の場で耳にしたことはありませんか?

確かに、DXやAI活用、業務の標準化が推進される現代において、「属人的業務」は否定的に語られがちです。しかし、属人的業務には、競争力の源泉となる重要な側面もあります。

属人的業務は、管理のしかた次第で、組織の強みにもリスクにもなります。

属人的業務は、特定の人がいないと滞る業務

まず、「属人的業務」とは何かを正確に理解しましょう。属人的業務とは、特定の個人の知識・経験・スキルに依存した業務のことを指します。言い換えれば、その人がいなければ滞る、または品質が大きく低下する業務です。

多くの企業では、この「属人化」を排除すべきリスク要因と捉えています。しかし、適切に管理された属人的業務は、組織の専門性と市場競争力を高める要素にもなり得ます。

特に高度な専門知識やクリエイティブな判断が求められる領域では、属人的業務の持つ価値は大きいと考えられます。

同じ人が担い続けるからこそ、専門性と信頼が育つ

専門知識の深化とイノベーションの創出

属人的業務の最大の価値は、専門知識の深化とイノベーションの創出にあります。特定の業務を長期間担当することで、担当者は該当領域における「匠」としての深い知見を獲得します。

  • 専門性を高める自己研鑽を積極的に奨励・支援する制度の導入
  • 専門知識を深めるための外部研修や学会参加の支援
  • 専門家としての「匠の技」を記録・分析するナレッジマネジメントシステムの構築
  • 専門性を認定・評価する社内資格制度の導入

顧客満足度と品質の向上

属人的業務のもう一つの重要なメリットは、一貫した高品質と迅速な問題解決による顧客満足度の向上です。

属人的業務の担当者は「全体像」を把握しているため、複雑な問題でも迅速かつ的確に対応しやすくなります。特に高度な専門知識や判断が必要な業界(金融、法律、医療、IT等)では、その効果が大きいと考えられます。

取り組み例: 例えば、特定の顧客に長期間対応する専任のアドバイザーを置く進め方が考えられます。顧客は毎回一から状況を説明する必要がなくなり、相談しやすい関係を築きやすくなります。

  • 顧客対応の履歴や経緯を詳細に記録するCRMシステムの活用
  • 専門的な問題解決のプロセスや判断基準のドキュメント化
  • 緊急時や問題発生時の迅速な対応フローの確立
  • 顧客フィードバックを専門性向上に活かす仕組みの構築

組織の説明責任と信頼性の向上

三つ目のメリットは、明確な責任所在による組織の透明性と信頼性の向上です。

属人的業務においては、担当者が業務の全過程を把握しているため、問題が発生した際の原因究明と説明が容易になります。これは、組織の透明性と信頼性を高める重要な要素となります。

取り組み例: 例えば、研究開発プロジェクトに専任の責任者を置き、全過程の監督と説明責任を明確にすると、関係機関からの問い合わせにも一貫した説明をしやすくなります。

  • 業務の意思決定プロセスと根拠の明確な記録
  • 定期的な進捗報告と成果共有の場の設定
  • 問題発生時の原因分析と改善プロセスの標準化
  • 説明責任を果たした担当者への適切な評価と報酬

専門性は残し、属人化のリスクだけを減らす

属人的業務のメリットを享受しながら、そのリスクを最小化するためには、戦略的なアプローチが必要です。次の取り組みを実践することで、属人的業務を組織の強みに転換できます。

「属人化」と「専門性」の峻別

まず、「排除すべき属人化」と「強化すべき専門性」を明確に区別することが重要です。次のような基準で区別するとよいでしょう:

強化すべき専門性の特徴:

  • 高度な専門知識や判断が必要な業務
  • クリエイティブな思考や革新的アプローチが求められる業務
  • 顧客との深い関係構築が重要な業務
  • 組織の中核的価値を生み出す業務

排除すべき属人化の特徴:

  • 単純な手順や定型作業が多い業務
  • 明確なルールやプロセスで標準化可能な業務
  • 他のメンバーと共有すべき基本的な情報や知識
  • 不在時にも滞らせてはならない業務

各業務について「専門性マッピング」を実施し、上記の基準に照らして評価・分類します。これにより、「強化すべき専門性」と「排除すべき属人化」を明確に区別できます。

「暗黙知」の「形式知」への変換プロセスの確立

属人的業務のリスクを低減するためには、個人の頭の中にある「暗黙知」を組織の「形式知」に変換するプロセスが不可欠です。野中郁次郎教授の「SECI(セキ)モデル」を応用した知識変換のサイクルを確立しましょう。

  • 専門家へのインタビューと知識抽出セッションの定期実施
  • 重要な判断基準やノウハウのドキュメント化
  • ケーススタディやベストプラクティスの集積
  • ナレッジシェアリングの場(勉強会や発表会)の定期開催
  • メンターシップやペアワークを通じた知識伝達

「専門家」と「後継者」の計画的育成

属人的業務のリスク軽減と価値最大化の両立には、「専門家」と「後継者」の計画的な育成が欠かせません。効果的な育成には、次のような要素が重要です:

専門家の育成:

  • 専門分野における継続的な学習機会の提供
  • 業界の最新動向に触れる外部研修や交流会への参加支援
  • 専門性を評価・認定する社内資格制度
  • 専門家としての成長を評価する人事制度

後継者の育成:

  • 「シャドーイング」による実践的な知識移転
  • 段階的な権限委譲と責任範囲の拡大
  • クロストレーニングやジョブローテーションの戦略的実施
  • メンターシッププログラムの導入

各専門業務について「スキルマップ」と「育成ロードマップ」を作成し、現在の専門家と将来の後継者候補を明確にしたうえで、計画的な育成を進めます。

テクノロジーを活用した知識管理と共有

デジタル技術を活用することで、属人的業務の知識管理と共有を効率化できます。次のようなテクノロジーの活用が考えられます:

活用すべきテクノロジー:

  • AIを活用したナレッジマネジメントシステム
  • 業務プロセスの可視化・分析ツール
  • 動画やAR/VRを活用したスキル伝達システム
  • クラウドベースの共同作業環境
  • チャットボットによる専門知識のセルフサービス化

活用例: 例えば、製造業では、熟練技術者の技能をAIや動画解析で「見える化」し、若手への技術伝承に活用する進め方が考えられます。

「属人性」と「組織力」のバランスを測定・評価する指標の導入

属人的業務の効果的な管理には、適切な測定と評価が不可欠です。次のような指標の導入が考えられます:

測定すべき指標:

  • 知識共有度:専門知識がどの程度ドキュメント化・共有されているか
  • 後継者準備度:不在時の業務継続性がどの程度確保されているか
  • 専門性レベル:業界標準と比較した専門性の深さ
  • 価値創出度:属人的業務が組織にもたらす具体的な価値
  • リスク指数:担当者不在時の業務中断リスクの度合い

四半期ごとに「属人性バランススコアカード」を用いて評価し、理想的なバランスに向けた改善施策を実施します。

まとめ:属人的業務を組織の競争力に変える

属人的業務は、適切に管理すれば組織の競争優位性を高める重要な資産となります。重要なのは「属人化を無条件に排除する」のではなく、「戦略的に専門性を高めながらリスクを管理する」アプローチです。

次のメリットと実践ステップを生かすことで、属人的業務を組織の強みに転換できます:

  1. 専門知識の深化とイノベーションの創出
  2. 顧客満足度と品質の向上
  3. 組織の説明責任と信頼性の向上

そして、これらのメリットを最大化するための実践ステップ:

  1. 「属人化」と「専門性」の峻別
  2. 「暗黙知」の「形式知」への変換プロセスの確立
  3. 「専門家」と「後継者」の計画的育成
  4. テクノロジーを活用した知識管理と共有
  5. 「属人性」と「組織力」のバランスを測定・評価する指標の導入

組織独自の専門知識とその活用能力は、持続的な競争優位の源泉になります。属人的業務を戦略的に管理することは、この専門知識を育み、活用するための重要なアプローチです。

WONDERFUL GROWTHでは、貴社の業務特性や組織文化に合わせたカスタマイズプログラムにより、専門性を生かしながらリスクを抑える組織づくりをサポートいたします。

組織の専門性と競争力を高める具体的な方法について詳しく知りたい方は、ぜひお問い合わせください。

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本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

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