Insights

人事トレンドを読む|生成AI、スキルベース、ウェルビーイング

求人文の作成から候補者の選考、社内の問い合わせ対応まで、生成AIが人事の業務を支える場面が広がっています。スキルを軸にした人材マネジメント、ウェルビーイング、個人に合わせたハイブリッドワーク、パーパス経営を含む5つの流れと、自社で試す手順を整理しました。

公開日
2026/05/15
更新日
2026/09/28
読了時間
約 13 分
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
人事部門AI活用タレントマネジメントウェルビーイング働き方改革

コロナ禍を経て働き方が劇的に変化し、「大離職時代」から「スキル不足危機」へと人材市場の課題がシフトする中、人事部門の役割はかつてないほど重要になっています。

ジェネレーティブAIによる人事変革

2023年から爆発的に普及したジェネレーティブAIは、2025年には人事業務の中核技術として確立されつつあります。ChatGPT、Claude、Gemini (旧Bard)などのLLMを活用した人事業務の革新が、業界を問わず急速に進行しています。

採用、社員対応、人事分析に広がるAIの活用

採用プロセスの自動化と高度化

  • 求人文作成から候補者スクリーニング、一次面接までをAIが支援
  • バイアス検出AIによる公平な採用判断の実現(無意識バイアスの排除)

従業員サポートの24時間体制化

  • AIチャットボットによる人事関連問い合わせの自動対応
  • 従業員のキャリア相談やスキル開発アドバイスをAIが提供
  • メンタルヘルスサポートへのAI活用(早期警告システム)

戦略的人事分析の高度化

  • 従業員データの高度分析による「離職予測」「エンゲージメント予測」の精度向上
  • 組織ネットワーク分析を用いたチーム最適化
  • 人材市場動向の予測と先行的採用戦略の立案

ユニリーバ・ジャパンが通年採用に取り入れたAI選考

ユニリーバ・ジャパンの通年採用「UFLP365」 ユニリーバ・ジャパンは2017年6月、世界中どこからでも応募できる通年の新卒採用「UFLP365」を正式に導入しました。選考は、Web登録、米pymetricsのAIを活用したゲーム選考、与えられたテーマへの回答を動画で撮影して送るデジタル面接(米HireVue)で構成され、候補者は時間や場所を選ばずに選考を受けられます(出典:ITmedia ビジネスオンライン、2017年6月)。

定型業務から段階的にAIを導入する

  1. 段階的なAI導入計画の策定
    • まずは定型的な人事業務(問い合わせ対応、書類作成支援)からAI化
    • 導入効果の測定と継続的な改善サイクルの確立
    • 人事担当者向けAIリテラシー研修の実施
  2. 人とAIの最適な役割分担の設計
    • AIは「反復的業務」「データ分析」「初期対応」を担当
    • 人は「共感」「複雑な判断」「戦略策定」「関係構築」に注力
    • 定期的な役割分担の見直しと最適化

スキルベース人材マネジメントへのシフト

従来の「職務」や「役職」中心の人材マネジメントから、「スキル」を中核に据えた新しいアプローチへの移行が加速しています。変化の激しいビジネス環境において、組織の俊敏性と人材の流動性を高めるこの手法は、日本企業にも急速に浸透しつつあります。

スキルの体系化と、スキルを軸にしたチーム編成

スキルタクソノミーの構築

  • 自社に必要なスキルを体系化した「スキルタクソノミー(分類体系)」の整備
  • 世界標準スキル辞書との連携(O*NET、ESCO等)
  • AIを活用した自動スキルマッピングの普及

ダイナミックチーム編成の実現

  • プロジェクトベースでスキルマッチングによるチーム編成
  • 「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の良いとこ取りの「ハイブリッド型人事制度」
  • 社内人材マーケットプレイスの活性化

スキル習得の可視化と支援

  • デジタルバッジやマイクロ資格による細分化されたスキル認定
  • パーソナライズされた学習推奨システム
  • スキル習得度に連動した報酬体系の導入

エンジニアの行動基準を段階ごとに明文化したメルカリ

メルカリの「Engineering Ladder」 メルカリでは、エンジニアに期待される行動を成長段階ごとに明文化した「Engineering Ladder」を作成し、等級ごとに求められるスキルや行動を定める基準として使っています。メンバーの自己評価やマネージャーからのフィードバックでも、この基準が参照されています(出典:メルカリエンジニアリングブログ、2023年)。

必要なスキルを特定し、社内公募や配置に生かす

  1. スキル可視化の基盤整備
    • 自社に必要な重要スキルの特定と体系化
    • スキル評価の客観的基準と評価方法の確立
    • スキル情報を一元管理するシステムの導入
  2. スキルベース人材活用の仕組み作り
    • 社内公募制度やプロジェクトアサインメントでのスキルマッチング
    • 「必要なスキル」と「現有スキル」のギャップ分析と育成計画
    • スキル習得を促進する報酬・評価制度への段階的移行

ウェルビーイング重視の従業員体験

従業員の心身の健康(ウェルビーイング)を重視する流れは、2025年にさらに加速しています。単なる福利厚生の枠を超え、企業戦略の中核として位置づけられるようになった「ウェルビーイング施策」は、人材獲得・定着の重要な差別化要因となっています。

心身・財務・社会面の健康を包括的に支える

包括的ウェルビーイングの重視

  • 身体的健康、精神的健康、財務的健康、社会的健康を包括したアプローチ
  • 「予防型」健康管理からパフォーマンス向上のための「成長型」健康支援へ
  • ウェルビーイングと財務パフォーマンスの関係を示すデータの蓄積

パーソナライズされた支援プログラム

  • 個人のニーズに合わせたカスタマイズ可能な福利厚生(カフェテリアプラン進化版)
  • ウェアラブルデバイスやヘルステックによる個別化された健康管理
  • ライフステージに応じた柔軟な支援プログラム

測定可能な効果と投資対効果の明確化

  • ウェルビーイング指標のダッシュボード化と経営指標との連動
  • 「健康投資」としての戦略的予算確保

経営層の関与と予算を確保し、効果を定期的に測る

  1. 包括的なウェルビーイング戦略の策定
    • 身体・精神・財務・社会的側面を含めた総合的アプローチ
    • 経営層のコミットメントと予算確保
    • 効果測定の仕組み構築(KPI設定、定期的なサーベイ)
  2. 個別化されたサポートの提供
    • 選択型福利厚生の拡充とパーソナライズ
    • 上司向け「ウェルビーイングリーダーシップ」研修の実施
    • 専門家(産業医、心理カウンセラー等)との連携強化

個別化されたハイブリッド働き方改革

コロナ禍を契機に広まったリモートワークは、2025年には「個別最適化されたハイブリッド働き方」へと進化しています。全員一律の働き方ではなく、業務内容、個人の特性、チームの状況に合わせて柔軟に働き方を選択できる環境が標準となりつつあります。

オフィスの役割とマネジメントの見直し

「オフィスの存在意義」の再定義

  • 単なる「仕事をする場所」から「コラボレーションと創造の場」へ
  • 「ネイバーフッドオフィス」(自宅近くの小規模オフィス)の展開
  • オフィス空間のアクティビティベース化(目的別空間設計)

デジタルツールの高度化と統合

  • バーチャルオフィスプラットフォームの普及
  • AIを活用した「最適な働き方提案」アシスタント
  • 「デジタル疲れ」を軽減するための「デジタルウェルビーイング」機能

マネジメントスタイルの変革

  • 「見える管理」から「成果ベース管理」への完全移行
  • ハイブリッドチームのための新しいコミュニケーションプロトコルの確立
  • 遠隔勤務と対面勤務のベストミックスを探るための継続的実験

業務の特性に応じた、部門ごとの働き方の設計

  1. 業務分析に基づく最適な働き方設計
    • 業務の特性(創造性、協働性、定型性等)を分析
    • 役割・部門ごとの「理想的なハイブリッド比率」の設定
    • 定期的な検証と柔軟な調整の仕組み作り
  2. ハイブリッドワークを支える環境整備
    • 物理的環境(オフィスレイアウト、在宅勤務環境)の整備
    • デジタル環境(コミュニケーションツール、セキュリティ)の強化
    • 心理的安全性とコミュニケーションルールの確立

持続可能な組織づくりとパーパス経営

気候変動や社会的格差などの地球規模の課題に対する意識の高まりを背景に、「目先の利益」だけでなく「社会的意義(パーパス)」を重視する経営が主流化しています。Z世代を中心に「自分の仕事が社会にどう貢献しているか」を重視する傾向が強まる中、人事戦略においてもサステナビリティとパーパスは中核的要素となっています。

企業のパーパスと社員の価値観を重ねる動き

企業パーパスと個人の価値観の連動

  • 採用・評価・育成プロセスにおける「パーパス親和性」の重視
  • 個人のパーパスと組織のパーパスの「アライメント対話」の普及
  • 世代間ギャップを埋める「パーパス翻訳」の取り組み

ESG経営と人事戦略の統合

  • ダイバーシティ&インクルージョンの深化(特に世代間多様性)
  • 環境負荷削減に貢献する働き方の促進
  • 「サステナビリティリテラシー」の全社的向上

「社会的インパクト」の可視化と共有

  • 従業員の仕事が社会にもたらす影響の定量的・定性的可視化
  • 社内外のステークホルダーとの「インパクトストーリー」の共有
  • 「社会的リターン」と「経済的リターン」の両立事例の蓄積

パーパスを採用・評価・育成の基準に組み込む

  1. 組織のパーパスを人事施策に落とし込む
    • 企業理念・パーパスの再定義と全社的な対話
    • 採用・評価・育成プロセスへのパーパス要素の組み込み
    • 「パーパス体現社員」の見える化と称賛
  2. サステナビリティへの貢献を可視化する
    • 部門・チームごとの「サステナビリティ貢献目標」の設定
    • 「社会的インパクト」の測定と定期的な共有
    • 若手社員主導の「サステナビリティイニシアチブ」の促進

優先領域を絞り、小さく試してから全社へ

現状診断と優先領域の特定

まずは自社の現状を客観的に診断し、最も注力すべき領域を特定しましょう。

  • 従業員サーベイ(満足度・エンゲージメント)の実施と分析
  • 離職率・採用成功率・生産性などの人事KPI分析
  • 経営層・現場管理職・一般社員との対話セッション
  • 業界ベンチマークとの比較分析

一度にすべてを変えようとせず、最も効果が期待できる1〜2の領域に絞り込むことが重要です。例えば「従業員エンゲージメントが特に低い」「デジタル人材の採用に苦戦している」など、自社固有の課題を明確にしましょう。

小規模パイロットでの実験

特定した優先領域について、小規模なパイロットプロジェクトを実施し、効果検証を行います。

  • 特定部門・チームでの試験的導入
  • 明確なKPIと測定方法の設定
  • 週次・月次での効果測定と改善サイクルの実施
  • パイロット参加者からの定性的フィードバック収集

「完璧な制度設計」を目指すのではなく、「素早く実験、素早く学習」の精神で取り組むことが成功の鍵です。失敗を恐れず、小さく始めて継続的に改善していくアプローチが効果的です。

成功事例の可視化と全社展開

パイロットでの成功体験をもとに、全社展開のプランを策定します。

  • パイロットの成果を具体的なストーリーとして共有
  • 経営層の支援を得るためのROI(投資対効果)の提示
  • 段階的な展開ロードマップの作成
  • 「チェンジチャンピオン」の育成と配置

全社展開の際は、パイロットで得られた学びを活かしつつ、各部門・チームの特性に合わせたカスタマイズを許容することが重要です。「型」を押し付けるのではなく、「原則」を共有しながら柔軟に展開していきましょう。

まとめ:2025年の人事トレンドを味方につける

2025年の人事トレンドは、テクノロジーの進化、働き方の多様化、社会的価値の重視など、さまざまな要素が絡み合う複雑なものとなっています。しかし、これらのトレンドを理解し、自社の文脈に合わせて戦略的に取り入れることで、人材獲得競争で優位に立ち、持続的な組織成長を実現することができます。

今回ご紹介した5つのトレンド:

  1. ジェネレーティブAIによる人事変革
  2. スキルベース人材マネジメントへのシフト
  3. ウェルビーイング重視の従業員体験
  4. 個別化されたハイブリッド働き方改革
  5. 持続可能な組織づくりとパーパス経営

これらはいずれも、「人」を中心に据えながら、テクノロジーとヒューマンタッチを融合させる方向性を示しています。「人事部門がビジネス成果に直結する戦略パートナーとなる」という流れは、今後さらに加速するでしょう。

WONDERFUL GROWTHでは、最新の人事トレンドを取り入れた組織変革を支援するコンサルティングサービスを提供しています。貴社の状況や課題に合わせたカスタマイズ支援も可能です。

最新の人事トレンドを活かした組織づくりに興味をお持ちの方は、ぜひお問い合わせはこちらからご連絡ください。

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

Next step

記事の内容を、自社に当てはめてみませんか。

Growth Survey は、心理的安全性・エンゲージメント・行動変容を定量化し、組織の現在地を可視化するサーベイです。 まずは3分診断で、おおよその現在地をつかむこともできます。

✦ SHARE with カイシャの育成論

メディアでも、深く発信しています。

自社メディア『SHARE with カイシャの育成論』では、企業インタビューと人事用語辞典を通じて、より深い知見をお届けしています。