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AIと人材育成の関係性

「生成AIを導入したのに成果が出ない」「使いこなせる社員と、そうでない社員の差が広がっている」――2026年に入り、人事担当者の方々から最も多く寄せられるご相談です。

公開日
2026/05/10
更新日
2026/05/10
読了時間
10
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
AI活用リスキリング人材育成

WONDERFUL GROWTH | AIと人材育成の関係性

AIと人材育成の関係性

〜生成AI時代に「人」をどう育てるかが、企業の競争力を決める〜

人事担当者・経営層向け/2026年5月版

1.はじめに:データが示す「AI格差」と、人材育成の急務

「生成AIを導入したのに成果が出ない」「使いこなせる社員と、そうでない社員の差が広がっている」――2026年に入り、人事担当者の方々から最も多く寄せられるご相談です。

総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年7月公表)によれば、業務で生成AIを利用している日本企業の割合は55.2%。一見すると過半数を確保しているように見えますが、同じ調査における中国95.8%、米国90.6%、ドイツ90.3%と比較すると、日本企業は活用面で大きく後れを取っていることがわかります。

さらに同白書では、生成AI導入時の懸念事項として「効果的な活用方法がわからない」が最多回答となりました。これは、ツールそのものの問題ではなく、ツールを業務成果につなげる「人」の側に課題があることを示しています。

AI活用の差は、もはやツール選定の差ではなく、人材育成の仕組みの差として現れる時代に入りました。

(出典)総務省『令和7年版 情報通信白書』第2章2節「企業におけるAI利用の現状」(2025年7月)

2.「AI vs 人材育成」ではなく、「AIと人材育成」と捉え直す3つの視点

AIの導入は人材育成の対立概念ではなく、人材育成のあり方そのものを再定義する出来事です。本章では、議論の土台となる3つの視点を整理します。

視点1.AIは作業を代替するが、判断は代替しない

生成AIは資料作成、議事録要約、コード生成などの定型作業を高速化します。しかし、何を成果とみなすか、どこにリスクがあるか、誰に説明するかという「判断」は、依然として人の責任領域です。判断の質を高める人材育成は、AI時代にむしろ重要性を増しています。

視点2.AIの効果は使い手のリテラシーで二極化する

パーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」(2026年2月公表)では、生成AIの活用によって業務時間が平均16.7%削減されたという結果が報告されています。一方で、活用度合いの低い層との生産性格差は拡大しており、「使える人」と「使わない人」の二極化が進んでいます。

(出典)パーソル総合研究所『生成AIとはたらき方に関する実態調査』(2026年2月)

視点3.AI導入そのものが新しい育成テーマを生む

AI倫理、プロンプト設計、ハルシネーション(誤情報生成)への対応、知的財産権の取り扱い、社内データの安全な利用――いずれもAI普及前には存在しなかった育成テーマです。育成領域は減るのではなく、入れ替わりながら拡張しています。

3.公的データで見る、人材育成領域に起きている地殻変動

本章では、AIと人材育成の関係を示す主要な公的データ・調査結果を時系列で整理します。

3-1.経済産業省「Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会 報告書」

2025年5月に経済産業省が公表した本報告書は、「スキルベースの人材育成」への転換を打ち出しました。職務(ジョブ)を起点に必要スキルを定義し、生成AIを含むデジタルスキルを既存業務へ組み込む方向性が示されています。

(出典)経済産業省『Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会 報告書』(2025年5月)

3-2.DX推進スキル標準(DSS-P) ver.1.2

経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、生成AIの普及を踏まえて「DX推進スキル標準」を改訂し、ver.1.2として公表しました。ビジネスアーキテクト、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティ、デザイナーの5職種について、生成AI活用を前提としたスキル要件が再整理されています。

(出典)経済産業省・IPA『DX推進スキル標準 ver.1.2』(2024年7月改訂)

3-3.IPA「DX動向2025」が示す3大課題

IPAが公表した「DX動向2025」では、DX推進の主な課題として「人材不足」「知識・情報不足」「スキル不足」が上位を占めました。いずれも人材育成で解消可能な課題群であり、設備投資より人への投資が成果を左右する局面に入っています。

(出典)独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『DX動向2025―AI時代のデジタル人材育成』

3-4.リスキリング重視スキル1位が初めて「AI活用」に

パーソルイノベーション「Reskilling Camp」が2025年に実施した企業向け調査では、リスキリングで重視するスキルとして「AI活用(ChatGPT等)」が33.3%で初めて1位となりました。次いでセキュリティ30.5%、ITプロジェクトマネジメント30.2%という順序です。

(出典)パーソルイノベーション株式会社『Reskilling Camp 企業におけるリスキリング施策の実態調査』(2025年)

4.AI時代の人材育成プログラムを再設計する5ステップ

ここからは、人事ご担当者がそのまま社内検討に持ち帰れる5ステップを提示します。各ステップには「実施チェック」を添えていますので、自社の進捗確認にお使いください。

ステップ1.人材を「3層」に分けて目標を再定義する

全社員に同じAI研修を行うのは投資対効果の観点で最適とは言えません。経済産業省のスキル標準を踏まえ、まずは社員を以下の3層に分けて到達目標を再定義します。

期待される役割

代表的な到達スキル

ビジネス活用層

日常業務に生成AIを取り入れ、自身の生産性を高める

プロンプト設計、出力レビュー、情報セキュリティの基本

ビジネスアーキテクト層

業務プロセス全体を再設計し、AI活用の場面を特定する

業務分析、ROI設計、ベンダーマネジメント、変更管理

データ・テクノロジー層

モデル選定、運用、ガバナンスを担う専門人材

データ基盤構築、モデル評価、AI倫理、セキュリティ実装

実施チェック:全社員を3層のいずれかに割り当てたうえで、層ごとに到達目標を1枚で言語化したか。

ステップ2.「学ぶ前提」を共通化する全社研修を先に実施する

層別の専門研修に進む前に、全社員が共通して持つべき土台を整えます。具体的には、AI倫理、情報セキュリティ、知的財産権、社内データの取り扱いルールの4点です。これらは外部のeラーニングや、厚生労働省「人材開発支援助成金 人への投資促進コース」の対象訓練として整備可能です。

実施チェック:AI利用ガイドラインを社内で文書化し、全社員が理解した状態を作ったか。

ステップ3.実務に即した課題演習で「使う場面」を増やす

座学だけでは行動変容は起きません。営業部門なら提案資料のドラフト作成、人事部門なら募集要項の改善案、経理部門なら仕訳の確認補助など、各部門の実務テーマで演習を設計します。生成AIを「触る場面」を意図的に作ることが、利用率向上の最短経路です。

実施チェック:部門ごとに3件以上のユースケースを棚卸し、研修テーマに反映したか。

ステップ4.助成金で投資負担を平準化する

厚生労働省「人材開発支援助成金 人への投資促進コース」(令和8年度/2026年度版)には、高度デジタル人材訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)、自発的能力開発訓練など複数のメニューが用意されています。研修費用と訓練期間中の賃金の一部が助成対象となるため、人材育成投資の社内承認を得やすくなります。申請手続きは複雑なため、社会保険労務士への早期相談を推奨します。

(出典)厚生労働省『人材開発支援助成金 人への投資促進コース』(令和8年度/2026年度版)

実施チェック:自社が活用可能な助成金メニューを特定し、申請スケジュールを工程表に組み込んだか。

ステップ5.効果測定は「ROI」より先に「行動変容」で見る

AI研修の効果を金額換算しようとすると、短期では数字が立ちにくく、現場の納得感も得られません。まず行動変容指標(生成AIの月次利用率、業務時間削減率、ユースケース数、社員満足度)を四半期で追い、その後にコスト削減・売上貢献などのROI指標を6か月〜12か月のスパンで追加するのが現実的です。

パーソル総合研究所の調査では、生成AI活用により業務時間が平均16.7%削減されたとされていますが、これは継続利用が前提です。研修直後ではなく、3か月後・6か月後の利用状況を必ず追跡してください。

実施チェック:行動変容指標とROI指標を分けて、四半期と年次の二本立てでKPIを設計したか。

5.ありがちな失敗パターン3つと、回避策

失敗1.ツール導入が目的化し、使い手が置き去りになる

生成AIライセンスを全社員に配布したものの、活用率が一桁にとどまるケースです。回避策は、ライセンス配布前に「最初の1か月で何をするか」を業務単位で設計し、配布と研修と社内ヘルプデスクを同時に立ち上げることです。

失敗2.一部の「AIに強い人」だけが活用し、社内格差が広がる

特定の部門・特定の年齢層だけがAIを使いこなし、それ以外の部門との生産性格差が広がるケースです。回避策は、層別目標と現場メンター制度を組み合わせ、活用が遅れている部門に伴走支援を行うことです。

失敗3.学習機会を提供して終わり、業務との接続がない

eラーニングを契約して終わり、評価制度や業務目標と接続しないケースです。回避策は、AI活用を評価項目(行動評価のひとつ)に組み込み、上長の1on1で利用状況を定例的に確認することです。

6.人事担当者が今週から始められる初期アクション5つ

自社のAI活用方針(積極活用/領域限定活用/不採用)を1枚で明文化し、経営会議に諮る。

全社員向けAIリテラシー研修を四半期内に1回実施する計画を作成する。

各部門で生成AIユースケースを最低3件棚卸するワークショップを設定する。

人材開発支援助成金の活用可能性について、社会保険労務士へ相談する。

AI活用の行動変容指標(月次利用率、ユースケース数)を評価制度に組み込む案を作成する。

7.まとめ:AIが人を置き換えるのではなく、AIを使える人が、使えない人を置き換える時代へ

総務省、経済産業省、IPA、パーソル総合研究所など複数の調査が示しているのは、AIの普及そのものよりも、AIを業務成果につなげる人材育成の有無が、企業の競争力を分けるという事実です。

AIへの投資と人材育成への投資は、二者択一ではなく、両輪として設計する必要があります。本記事でご紹介した5ステップが、自社のプログラムを再設計する際の出発点になりましたら幸いです。

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参考文献・出典一覧

総務省『令和7年版 情報通信白書』第2章「企業におけるAI利用の現状」(2025年7月公表)

経済産業省『Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会 報告書―スキルベースの人材育成を目指して』(2025年5月)

経済産業省・IPA『DX推進スキル標準 ver.1.2』(2024年7月改訂)

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『DX動向2025―AI時代のデジタル人材育成』

厚生労働省『人材開発支援助成金 人への投資促進コース』(令和8年度/2026年度版)

パーソル総合研究所『生成AIとはたらき方に関する実態調査』(2026年2月公表)

パーソルイノベーション株式会社『Reskilling Camp 企業におけるリスキリング施策の実態調査』(2025年)

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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