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生成AIで広がる社員間の格差を、人材育成で埋める

生成AIを導入しても成果が出ない、使いこなせる社員とそうでない社員の差が広がっている。AIは作業を代わりに担えても判断までは代われず、その効果は使い手のリテラシーで二極化します。競争力を分けるのは、AIの導入そのものより、AIを成果につなげる人材育成の有無です。

公開日
2026/05/10
更新日
2026/09/28
読了時間
約 12 分
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
AI活用リスキリング研修設計

はじめに:データが示す「AI格差」と、人材育成の急務

「生成AIを導入したのに成果が出ない」「使いこなせる社員と、そうでない社員の差が広がっている」。これは、2026年に入り、人事担当者の方々から最も多く寄せられるご相談です。

総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年7月公表)によれば、業務で生成AIを利用している日本企業の割合は55.2%。一見すると過半数を確保しているように見えますが、同じ調査における中国95.8%、米国90.6%、ドイツ90.3%と比較すると、日本企業は活用面で大きく後れを取っていることがわかります。

さらに同白書では、生成AI導入時の懸念事項として「効果的な活用方法がわからない」が最多回答となりました。これは、ツールそのものの問題ではなく、ツールを業務成果につなげる「人」の側に課題があることを示しています。

AI活用の差は、もはやツール選定の差ではなく、人材育成の仕組みの差として現れる時代に入りました。

(出典)総務省『令和7年版 情報通信白書』第1章第2節「企業におけるAI利用の現状」(2025年7月)

AIと人材育成を、対立ではなく一体で捉え直す

AIの導入は人材育成の対立概念ではなく、人材育成のあり方そのものを再定義する出来事です。

AIは作業を代替するが、判断は代替しない

生成AIは資料作成、議事録要約、コード生成などの定型作業を高速化します。しかし、何を成果とみなすか、どこにリスクがあるか、誰に説明するかという「判断」は、依然として人の責任領域です。判断の質を高める人材育成は、AI時代にむしろ重要性を増しています。

AIの効果は使い手のリテラシーで二極化する

パーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」(2026年2月公表)では、生成AIを活用しているタスクの所要時間が平均16.7%削減されたという結果が報告されています。一方で、業務で生成AIを利用している就業者は32.4%にとどまっており、「使える人」と「使わない人」の差が広がるおそれがあります。

(出典)パーソル総合研究所『生成AIとはたらき方に関する実態調査』(2026年2月)

AI導入そのものが新しい育成テーマを生む

AI倫理、プロンプト設計、ハルシネーション(誤情報生成)への対応、知的財産権の取り扱い、社内データの安全な利用。いずれもAI普及前には存在しなかった育成テーマです。育成領域は減るのではなく、入れ替わりながら拡張しています。

公的データで見る、人材育成領域に起きている地殻変動

経済産業省「Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会 報告書」

2025年5月に経済産業省が公表した本報告書は、「スキルベースの人材育成」への転換を打ち出しました。スキル習得の努力が報われ、個人が起点となって学び続けられるよう、スキルの可視化やスキル情報基盤の整備を進める方向性が示されています。

(出典)経済産業省『Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会 報告書』(2025年5月)

DX推進スキル標準(DSS-P) ver.1.2

経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、生成AIの登場を踏まえて「DX推進スキル標準」を見直し、2024年7月にver.1.2として公表しました。DX推進スキル標準は、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティの5つの人材類型について役割と必要なスキルを定めたもので、ver.1.2ではビジネスアーキテクトに関する補記や生成AIに関する補記などが追加されました。

(出典)経済産業省・IPA『DX推進スキル標準 ver.1.2』(2024年7月改訂)

IPA「DX動向2025」が示すDX推進人材の不足

IPAが2025年6月に公表した「DX動向2025」では、DXを推進する人材の「量」が不足していると答えた日本企業が85.1%にのぼり、米国(23.8%)やドイツ(44.6%)を大きく上回りました。人材の不足は人材育成で解消していく必要があり、設備投資より人への投資が成果を左右する局面に入っています。

(出典)独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『DX動向2025』(2025年6月)

層別の目標から効果測定まで、育成プログラムを組み直す

人材を「3層」に分けて目標を再定義する

全社員に同じAI研修を行うのは投資対効果の観点で最適とは言えません。経済産業省のスキル標準を踏まえ、まずは社員を以下の3層に分けて到達目標を再定義します。

層

期待される役割

代表的な到達スキル

ビジネス活用層

日常業務に生成AIを取り入れ、自身の生産性を高める

プロンプト設計、出力レビュー、情報セキュリティの基本

ビジネスアーキテクト層

業務プロセス全体を再設計し、AI活用の場面を特定する

業務分析、ROI設計、ベンダーマネジメント、変更管理

データ・テクノロジー層

モデル選定、運用、ガバナンスを担う専門人材

データ基盤構築、モデル評価、AI倫理、セキュリティ実装

全社員を3層のいずれかに割り当て、層ごとの到達目標を1枚で言語化できれば、この段階は完了です。

「学ぶ前提」を共通化する全社研修を先に実施する

層別の専門研修に進む前に、全社員が共通して持つべき土台を整えます。具体的には、AI倫理、情報セキュリティ、知的財産権、社内データの取り扱いルールの4点です。これらは外部のeラーニングなどで整備でき、訓練の内容や実施方法によっては、厚生労働省「人材開発支援助成金 人への投資促進コース」の対象となる場合があります。

AI利用ガイドラインを社内で文書化し、全社員が理解している状態をつくることが、層別研修に進む前提です。

実務に即した課題演習で「使う場面」を増やす

座学だけでは行動変容は起きません。営業部門なら提案資料のドラフト作成、人事部門なら募集要項の改善案、経理部門なら仕訳の確認補助など、各部門の実務テーマで演習を設計します。生成AIを「触る場面」を意図的に作ることが、利用率向上の最短経路です。

部門ごとに3件以上のユースケースを棚卸しし、その結果を研修テーマに反映させます。

助成金で投資負担を平準化する

厚生労働省「人材開発支援助成金 人への投資促進コース」(令和8年度/2026年度版)には、高度デジタル人材訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)、自発的職業能力開発訓練など複数のメニューが用意されています。研修費用と訓練期間中の賃金の一部が助成対象となるため、人材育成投資の社内承認を得やすくなります。申請手続きは複雑なため、社会保険労務士への早期相談を推奨します。

(出典)厚生労働省『人材開発支援助成金 人への投資促進コース』(令和8年度/2026年度版)

自社が活用可能な助成金メニューを特定し、申請スケジュールが工程表に入っていれば、投資負担を平準化する準備は整っています。

効果測定は「ROI」より先に「行動変容」で見る

AI研修の効果を金額換算しようとすると、短期では数字が立ちにくく、現場の納得感も得られません。まず行動変容指標(生成AIの月次利用率、業務時間削減率、ユースケース数、社員満足度)を四半期で追い、その後にコスト削減・売上貢献などのROI指標を6か月〜12か月のスパンで追加するのが現実的です。

パーソル総合研究所の調査では、生成AIを活用しているタスクの所要時間が平均16.7%削減されたとされていますが、こうした効果を得るには継続的な利用が欠かせません。研修直後ではなく、3か月後・6か月後の利用状況を必ず追跡してください。

行動変容指標とROI指標を分け、四半期と年次の二本立てでKPIを設計しておくと、短期では数字が立ちにくいAI研修でも効果を説明しやすくなります。

ツールも研修も「提供して終わり」にしない

ツール導入が目的化し、使い手が置き去りになる

生成AIライセンスを全社員に配布したものの、活用率が一桁にとどまるケースです。回避策は、ライセンス配布前に「最初の1か月で何をするか」を業務単位で設計し、配布と研修と社内ヘルプデスクを同時に立ち上げることです。

一部の「AIに強い人」だけが活用し、社内格差が広がる

特定の部門・特定の年齢層だけがAIを使いこなし、それ以外の部門との生産性格差が広がるケースです。回避策は、層別目標と現場メンター制度を組み合わせ、活用が遅れている部門に伴走支援を行うことです。

学習機会を提供して終わり、業務との接続がない

eラーニングを契約して終わり、評価制度や業務目標と接続しないケースです。回避策は、AI活用を評価項目(行動評価のひとつ)に組み込み、上長の1on1で利用状況を定例的に確認することです。

人事担当者が今週から始められること

自社のAI活用方針(積極活用/領域限定活用/不採用)を1枚で明文化し、経営会議に諮る。

全社員向けAIリテラシー研修を四半期内に1回実施する計画を作成する。

各部門で生成AIユースケースを最低3件棚卸するワークショップを設定する。

人材開発支援助成金の活用可能性について、社会保険労務士へ相談する。

AI活用の行動変容指標(月次利用率、ユースケース数)を評価制度に組み込む案を作成する。

まとめ:AIが人を置き換えるのではなく、AIを使える人が、使えない人を置き換える時代へ

総務省、経済産業省、IPA、パーソル総合研究所など複数の調査からうかがえるのは、AIの普及そのものよりも、AIを業務成果につなげる人材育成の有無が、企業の競争力を分けるということです。

AIへの投資と人材育成への投資は、二者択一ではなく、両輪として設計する必要があります。

「とはいえ、自社単独で設計するのは負担が大きい」とお感じになる場合は、研修サービスの活用もぜひご検討ください。研修テーマの設計、層別カリキュラムの組み立て、評価制度との接続まで一気通貫で伴走可能なパートナーをお選びいただくことで、初動の遅れを取り戻すことができます。

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参考文献・出典一覧

総務省『令和7年版 情報通信白書』第1章第2節「企業におけるAI利用の現状」(2025年7月公表)

経済産業省『Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会 報告書―スキルベースの人材育成を目指して』(2025年5月)

経済産業省・IPA『DX推進スキル標準 ver.1.2』(2024年7月改訂)

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『DX動向2025』(2025年6月公開)

厚生労働省『人材開発支援助成金 人への投資促進コース』(令和8年度/2026年度版)

パーソル総合研究所『生成AIとはたらき方に関する実態調査』(2026年2月公表)

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

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