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ジョブ型人事制度とは?導入が進まない3つの理由と、人材育成で成果につなげる5つのステップ

ジョブ型人事制度は大企業を中心に広がり、政府も2024年に「ジョブ型人事指針」を公表しました。しかし「すでに導入」した企業は約2割にとどまります。なぜ進まないのか、その壁の多くは制度ではなく「育成」にあります。職務記述書からスキルの可視化、評価までを人材育成を軸につなぐ5つの実践ステップを、政府指針や各種調査をもとに解説します。

公開日
2026/06/09
更新日
2026/06/09
読了時間
10
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
ジョブ型人事制度ジョブ型雇用職務記述書リスキリング人材育成

ジョブ型人事制度とは何か。いま再び注目される理由

2024年8月28日、内閣官房・経済産業省・厚生労働省は連名で「ジョブ型人事指針」を公表しました。これは、同年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の改訂版を受けたもので、すでにジョブ型人事制度を導入している20社の事例が、制度の目的から等級・報酬・評価・キャリア支援の設計まで具体的に紹介されています。国が旗振り役となってジョブ型の導入を後押しする、大きな転換点といえます。

ジョブ型人事制度とは、職務(ジョブ)の内容や責任の範囲、求められるスキルをあらかじめ職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)として明確にし、その職務に最も適した人材を配置・評価・処遇する仕組みです。「人に仕事を割り当てる」従来のメンバーシップ型に対し、「仕事に人を割り当てる」考え方だと整理すると分かりやすいでしょう。

背景には、専門人材の獲得競争の激化、年功的な処遇の限界、そして従業員一人ひとりが自らのキャリアを主体的に築く「キャリア自律」への要請があります。政府の指針も、職務ごとに必要なスキルを明らかにすることで、働く人が自らの意思でリスキリング(学び直し)に取り組み、職務を選べるようにすることを重視しています。

データで見る現在地。導入は約2割、大企業では4割に迫る

関心の高まりに対して、実際の導入はどこまで進んでいるのでしょうか。人材サービス大手のJAC Recruitmentが行った調査「ジョブ型雇用の今 2025」によると、ジョブ型雇用を「すでに導入している」企業は21.8%でした。前年(2024年)の19.8%から着実に増えています。

企業規模による差は大きく、従業員1,000人以上の企業では36.0%が導入済みで、前年の29.5%から6.5ポイント上昇しました。一方、従業員100人未満では11.0%にとどまります。2024年5月時点の調査では、「すでに導入」19.8%と「導入を検討」33.7%を合わせて53.5%、1,000人以上の大企業に限れば74.5%が導入または検討の段階にあり、大企業を中心に広がっている構図が見えてきます。

導入・検討の理由として上位に挙がったのは、「戦略的に人材を採用したいから」(44.4%)、「従業員のスキルや専門力を高めたいから」(43.4%)、「より成果に即した評価をしたいから」(41.8%)でした。広く「仕事を基準にした給与」を含めれば、パーソル総合研究所の調査では一般社員層で約5割、管理職層で約7割が、すでに仕事基準の処遇を取り入れているという結果もあります。

注目したいのは、導入理由の上位に「従業員のスキルや専門力を高めたい」が並んでいることです。ジョブ型は、単なる成果主義や即戦力の中途採用のための仕組みではありません。本来は、求めるスキルを明確にし、人を育てて専門性を高めていくための制度なのです。

なぜ進まないのか。ジョブ型がつまずく3つの理由

関心が高く、導入の理由も前向きであるにもかかわらず、全体の導入率が約2割にとどまるのはなぜでしょうか。現場でよく見られるつまずきは、大きく3つに整理できます。

理由1:職務記述書の作成と更新に手が回らない

ジョブ型の出発点となるのが、職務ごとの職務記述書です。しかし、すべての職務について職務内容・責任・必要なスキルを洗い出す職務分析は、想像以上に煩雑な作業です。さらに、事業環境や業務が変われば職務記述書も更新が必要となり、一度つくって終わりにはできません。この運用負荷の高さが、導入の入り口でつまずく大きな要因になっています。

理由2:育成とキャリアの仕組みが従来のままになっている

メンバーシップ型では、会社が配置転換を通じて社員を育てることが前提でした。ところがジョブ型に切り替えると、「会社が異動で育ててくれる」という前提が薄れます。求めるスキルだけを掲げ、それを身につける学びの機会やキャリアの道筋を用意しないままでは、社員は何を目指せばよいか分からず、不安を抱えてしまいます。次世代の幹部やゼネラリストをどう育てるかという観点が抜け落ちやすい点も、見過ごせない課題です。

理由3:制度だけを導入し、自社の戦略と結びついていない

「他社が導入しているから」という理由だけでジョブ型の形を取り入れても、等級表や報酬テーブルを入れ替えただけの制度いじりに終わりがちです。日本経済団体連合会(経団連)も2025年版の報告で、ジョブ型かメンバーシップ型かという二択ではなく、各社が自社の事業や戦略に合わせて最適な「自社型雇用システム」を構築すべきだと提起しています。自社の経営課題と切り離されたジョブ型は、形骸化を避けられません。

つまずきの本質は「育成のOS」をつくり直せるかどうか

3つの理由を貫いているのは、実は「育成」というテーマです。職務記述書を整えても、求めるスキルと現状の差を埋める育成の仕組みがなければ、社員は職務の要件に届きません。評価や報酬の制度を新しくしても、人が育たなければ成果は変わりません。

政府の「ジョブ型人事指針」が、職務ごとに必要なスキルを明確にし、働く人が自らリスキリングして職務を選べるようにすることを重視しているのも、同じ理由からです。ジョブ型の成否は、等級や報酬という「制度」よりも、スキルの可視化と育成・キャリア支援という「育成のOS(組織を動かす基本ソフト)」をつくり直せるかどうかにかかっています。制度の枠だけを先に入れて育成を後回しにすることが、最大の失敗パターンだといえます。

人材育成を軸にジョブ型を成功させる5つの実践ステップ

ここからは、育成を軸にジョブ型人事制度を設計・運用するための5つのステップを紹介します。各ステップに「実施チェック」を添えましたので、自社の状況を確認しながらお読みください。

ステップ1:目的とスコープを定義する

最初に、「なぜ自社にジョブ型が必要なのか」を経営戦略の言葉で言語化します。専門人材の確保なのか、処遇の納得感の向上なのか、目的によって設計は変わります。あわせて、全社一斉ではなく、専門職や管理職など効果が出やすい職種から段階的に始めると、運用負荷を抑えながら学びを得られます。

  • 実施チェック:ジョブ型を導入する目的を経営戦略と結びつけて説明でき、最初に着手する対象範囲を決められていますか。

ステップ2:職務を棚卸しし、職務記述書を整える

対象範囲の職務を洗い出し、職務内容・責任・成果の基準・必要なスキルを職務記述書にまとめます。最初から完璧を目指す必要はありません。粒度をそろえた共通テンプレートを用意し、年に一度などの更新ルールを決めておくと、作成と維持の負担を現実的な範囲に収められます。

  • 実施チェック:対象職務の職務記述書を共通の様式で作成し、定期的に見直す更新ルールを決められていますか。

ステップ3:求めるスキルを可視化し、スキルマップをつくる

職務記述書に書かれた必要スキルを、職場全体で見渡せるスキルマップに落とし込みます。誰がどのスキルをどの水準まで持っているかを可視化すると、職務の要件と現状とのギャップが具体的に見えてきます。このギャップこそが、次の育成計画の出発点になります。

  • 実施チェック:職務ごとの必要スキルを定義し、社員の現有スキルとの差を一覧で把握できていますか。

ステップ4:スキルギャップを埋める育成・リスキリングを設計する

可視化したギャップをもとに、研修やOJT、自己啓発支援、社内公募などを組み合わせた育成計画を立てます。会社が一律に与える研修だけでなく、社員が自らの意思で学び、次の職務に挑戦できるキャリア自律の仕組みを整えることが、ジョブ型を本当に機能させる鍵です。学び直しにかかる費用には、国の人材開発支援助成金などの公的制度も活用できます。

  • 実施チェック:スキルギャップに対応する育成施策とキャリア自律の支援策を、職務記述書と結びつけて用意できていますか。

ステップ5:評価・報酬と接続し、対話しながら運用・改善する

最後に、職務記述書とスキルを基準とした評価・報酬の仕組みへとつなげます。制度を一方的に決めるのではなく、導入の目的や評価の考え方を従業員に丁寧に説明し、労使で対話を重ねることが納得感を生みます。運用を始めた後も、現場の声を踏まえて職務記述書や評価基準を見直す改善のサイクルを回し続けることが大切です。

  • 実施チェック:評価・報酬を職務とスキルに基づいて運用し、従業員との対話と定期的な見直しの場を設けられていますか。

まとめ:ジョブ型は「制度改革」ではなく「育成改革」

ジョブ型人事制度は、等級表や報酬テーブルを入れ替えれば完成するものではありません。その本質は、求めるスキルを明確にし、人を育て、一人ひとりが主体的にキャリアを築ける組織へと変えていく「育成改革」にあります。導入が約2割にとどまる今だからこそ、育成を軸に設計できる企業には、大きな差別化の機会があります。

WONDERFUL GROWTHでは、ジョブ型への移行を支えるスキルの可視化や、職務に応じた階層別・専門別の研修プログラムを、貴社の事業や課題に合わせて設計しています。育成を軸にした人事制度づくりにご関心をお持ちの方は、資料請求・お問い合わせから、お気軽にご相談ください。

参考・引用元

  • 内閣官房・経済産業省・厚生労働省「ジョブ型人事指針」(2024年8月) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/jobgatajinji.pdf
  • 内閣官房「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/
  • JAC Recruitment「ジョブ型雇用の今 2025/日本のジョブ型雇用の実態調査」 https://research.jac-recruitment.jp/information/1265/
  • パーソル総合研究所「ジョブ型人事制度に関する企業実態調査」 https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/employment.html
  • 日本経済団体連合会「2025年版 経営労働政策特別委員会報告」 https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/006.html

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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