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サクセッションプランの作り方|後継者不在を防ぎ次世代リーダーを計画的に育てる5ステップ

帝国データバンクの調査では、2025年の後継者不在率は50.1%。企業の半数に次の経営者がいません。人材要件の定義から候補者の選定・育成・定期レビュー・移行まで、サクセッションプランを実務に落とし込む5つのステップを、公的データとともに解説します。

公開日
2026/06/10
更新日
2026/06/10
読了時間
14
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
サクセッションプラン後継者育成次世代リーダー事業承継人材育成

後継者不在率は50.1%。企業の半数に「次の経営者」がいない

帝国データバンクが2025年11月に公表した全国「後継者不在率」動向調査(2025年)によると、全国・全業種約27万社のうち、後継者が「いない」または「未定」の企業は13.8万社、後継者不在率は50.1%でした。前年から2.0ポイント低下し、7年連続で改善しているものの、今なお企業の半数には次の経営者がいないことになります。

規模別の差も鮮明です。大企業の不在率が24.9%にとどまる一方、中小企業は51.2%、小規模企業では57.3%に達します。社長の年代別では、事業承継が視野に入る50代でも58.3%が後継者を決めておらず、80代以上でも22.2%、およそ5社に1社が未定のままです。同調査は、高齢の経営者ほど承継計画が中断したり白紙に戻ったりするリスクが高いことも指摘しており、後継者不在企業のうち「計画中止・取りやめ」が占める割合は、70代で3.3%、80代以上では4.7%と年代とともに上昇します。

もう一つの大きな変化が「脱ファミリー」です。2025年に代表者交代を行った企業では、血縁によらない役員・社員を登用する「内部昇格」が36.1%(速報値)となり、これまで最多だった「同族承継」(32.3%)を初めて上回りました。後継者候補の属性でも「非同族」が41.0%と、初めて4割を超えています。後継者は「身内から探す」時代から「社内で計画的に育てる」時代へと移りつつあります。この転換を仕組みとして支えるのが、本記事のテーマであるサクセッションプランです。

サクセッションプランとは何か

サクセッションプラン(後継者計画)とは、経営者や事業運営に不可欠なキーポジションについて、後継者候補を計画的に特定・育成し、円滑な引き継ぎまでを実現する一連の仕組みを指します。一度きりの「後継者指名」ではなく、人材要件の定義、候補者の選出、育成、進捗のレビュー、移行までを含む継続的なプロセスである点が特徴です。

混同されやすい「事業承継」は、株式や事業用資産、経営権の引き継ぎ全般を指す広い概念です。サクセッションプランはそのうち「人の準備」に焦点を当てたものであり、両者は車の両輪の関係にあります。どれほど資本政策を整えても、経営を担える人材が育っていなければ承継は完結しません。

コーポレートガバナンス・コードも「計画的な育成」を求めている

上場会社に対しては、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードが後継者計画への取り組みを明示的に求めています。補充原則4-1③は次のとおりです。

取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。

プライム市場・スタンダード市場の上場会社には、補充原則を含む全原則について「実施するか、実施しない場合はその理由を説明するか」が求められます。後継者計画は、もはや一部の大企業だけの任意の取り組みではありません。

日本企業の現在地。要件設定は進み、育成が追いついていない

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが東証プライム上場企業を中心に実施した「サクセッションプラン」に関するサーベイ(2024年度)によると、サクセッションの実施状況は「人材要件の設定」が最も高く(社長ポジション59%、経営陣幹部49%)、次いで「後継者候補の選出」(社長44%、幹部49%)、「候補者に対する育成」(社長38%、幹部44%)の順でした。要件を決め、候補者を選ぶところまでは進んできた一方、育成の実施率が最も低いのが現状です。「決める」ことより「育てる」ことが難所になっています。

同サーベイの2023年度調査では、サクセッション全般の課題として「人材要件が曖昧であること」を挙げた企業が約71%で最多でした。判断基準が曖昧なままでは、候補者の選出も育成も前に進みません。

なぜ後回しになるのか。サクセッションプランを阻む3つの壁

壁1。現任者が健在なうちは緊急性が低く見える

中小企業庁の「事業承継ガイドライン」では、後継者候補の選定から経営に必要な能力の習得、知的資産の引き継ぎまでには5年から10年以上の準備期間が必要とされ、経営者の平均引退年齢が70歳前後であることを踏まえて、おおむね60歳頃には準備に着手することが望ましいとされています。ところが、現任の経営者が元気なうちは「まだ先の話」と優先順位が下がりがちです。前述のとおり50代の経営者でも58.3%が後継者未定であり、高齢になってから着手すると、候補者の選択肢は狭まり、育成にかけられる時間も限られます。80代以上で計画の中止・取りやめが4.7%と最も高いという事実は、先送りのリスクをそのまま示しています。

壁2。人材要件が曖昧なまま「人選」から始めてしまう

「誰にするか」から議論を始めると、現任者の好みや社内力学に引きずられ、納得感のない指名になりがちです。前述のとおり、サクセッション全般の課題として最も多かったのは「人材要件が曖昧であること」(約71%)でした。まず「自社の次の経営にどんな人材が必要か」を言語化しなければ、選出の妥当性も育成の的も定まりません。

壁3。次のリーダーを育てる活動が日常に組み込まれていない

厚生労働省の令和6年度「能力開発基本調査」によると、正社員に対して計画的なOJTを実施した事業所は61.1%ある一方、対象を管理職層に限ると24.8%にとどまり、新入社員(54.7%)の半分以下です。また、人材育成に何らかの問題があるとする事業所は79.9%に上り、問題点としては「指導する人材が不足している」が最も多くなっています。新人を育てる仕組みはあっても、次の経営層・管理職層を育てる活動は構造的に手薄なのです。

サクセッションプランの作り方。5つの実践ステップ

ここからは、サクセッションプランを実務に落とし込む手順を5つのステップで解説します。上場企業に限らず、中堅・中小企業でもそのまま使える形にしています。

ステップ1。対象ポジションを定め、人材要件を言語化する

最初に「どのポジションの後継者を準備するか」を決めます。社長・役員に加え、事業部長や工場長、支店長など、不在になると事業継続に支障が出るキーポジションも対象に含めます。次に、経営戦略から逆算して、各ポジションに求められる経験・スキル・行動・価値観を人材要件として文書化します。「3年後、5年後にこの会社をどこへ導くポジションか」を起点に書き出すと、現任者の個人的な特徴をなぞるだけの要件になることを避けられます。

  • 実施チェック:後継者を準備すべきキーポジションの一覧を作成した
  • 実施チェック:各ポジションの人材要件(経験・スキル・行動・価値観)を文書化した
  • 実施チェック:人材要件を経営戦略・中期計画と突き合わせて確認した

ステップ2。候補者を複数特定し、現在地を評価する

人材要件に照らして、1つのポジションにつき複数の候補者を特定します。1人に絞ると、転職や健康問題など不測の事態でプラン全体が止まってしまうためです。候補者ごとに「すぐ就任可能」「1年から3年で準備可能」「3年から5年で準備可能」といった準備度の区分を付け、アセスメントや360度評価などの客観的な手法で要件とのギャップを可視化します。なお、前述の2024年度サーベイでは、社外人材を候補に含めている、または近い将来含める予定と回答した企業は、社長ポジションで26%、経営陣幹部ポジションでは50%に達しており、社内に適任者がいない場合は外部登用も現実的な選択肢です。

  • 実施チェック:各ポジションに複数の後継者候補を特定した
  • 実施チェック:候補者ごとに準備度(就任までの想定年数)を区分した
  • 実施チェック:アセスメントなどで人材要件とのギャップを可視化した

ステップ3。ギャップを埋める個別育成計画をつくる

可視化したギャップを埋めるため、候補者ごとに個別育成計画を策定します。同サーベイの2023年度調査では、育成施策を実施している企業の過半数が「社外研修」と「タフアサインメント」(あえて困難な役割や課題を任せる育成手法)を採用していました。新規事業の立ち上げ、不採算部門の立て直し、子会社経営といった修羅場経験は、座学では得られない経営者としての判断力を育てます。社外研修や経営塾は、自社にない視点と社外の人脈を得る機会として組み合わせると効果的です。あわせて、現経営陣によるメンタリングや定期的な対話を通じて、経営理念や意思決定の背景といった言葉になりにくい知見を引き継ぎます。

  • 実施チェック:候補者ごとに個別育成計画(内容・期間・責任者)を策定した
  • 実施チェック:タフアサインメントの機会(新規事業・部門再建など)を設計した
  • 実施チェック:社外研修・メンタリングを育成計画に組み込んだ

ステップ4。経営会議・取締役会で定期レビューする仕組みをつくる

サクセッションプランは作って終わりではなく、進捗を定期的に点検する場が必要です。上場会社であれば、コーポレートガバナンス・コードが求めるとおり取締役会や指名委員会が主体的に関与し、少なくとも年1回は候補者の育成進捗をレビューします。2024年度サーベイでは、指名委員会の課題として「社外取締役は候補者に関する情報が不足し、議論が深まらない」が60%で最多でした。社外役員が候補者と直接接する機会(役員合宿、事業報告会、個別面談など)を意図的に設けることが、レビューを形だけのものに終わらせない鍵になります。中堅・中小企業では、経営会議に「人材レビュー」の議題を定例化し、必要に応じて顧問税理士、取引金融機関、外部コンサルタントといった第三者の視点を加える方法が現実的です。

  • 実施チェック:後継者育成の進捗をレビューする会議体と頻度を決めた
  • 実施チェック:レビューの責任主体(取締役会・指名委員会・経営会議)を明確にした
  • 実施チェック:社外役員・外部関係者が候補者を直接知る機会を設けた

ステップ5。移行計画を実行し、プランを毎年更新する

後継者が固まったら、引き継ぎの実行計画に落とし込みます。現任者と後継者がともに経営にあたる並走期間を設け、権限を段階的に移譲するマイルストーンを設定します。たとえば、1年目は事業全体の責任を移し、2年目に代表権を移すといった段取りです。現任者の退任後の役割(会長職や相談役の期間と権限)も先に決めておくと、引き継ぎ後の二重権力による混乱を避けられます。また、サクセッションプランは一度作ったら終わりではありません。経営環境の変化や候補者の異動・退職に応じて、人材要件と候補者リストを毎年見直します。帝国データバンクの調査でも、一度決めた承継計画が白紙に戻るケースは毎年一定数発生しており、複数候補の維持と定期的な更新が計画を確かなものにします。

  • 実施チェック:並走期間と権限移譲のマイルストーンを設定した
  • 実施チェック:現任者の退任後の役割と関与範囲を明文化した
  • 実施チェック:人材要件・候補者リストの年次見直しを定例化した

中小企業こそ「育てる承継」が選択肢を広げる

サクセッションプランは大企業だけのものと思われがちですが、実際には、規模の小さい企業ほど切実な課題です。前述のとおり、事業承継の主流は同族承継から内部昇格へ移りつつあり、後継者候補の41.0%は非同族です。これは、「身内に後継ぎがいないから畳むしかない」という時代から、「社内で育てれば事業を続けられる」時代への転換を意味します。

一方で、中小企業の後継者不在率は51.2%、小規模企業では57.3%と依然として高く、育成には年単位の時間がかかります。だからこそ、遅くとも経営者が60歳を迎える頃までには着手したいところです。後継者育成は、特別なプロジェクトである必要はありません。経営数字の共有、重要な意思決定への同席、部門経営の権限移譲、計画的なOJTと研修。こうした日常の人材育成の延長線上に次の経営者づくりを位置づけることが、最も確実な事業承継対策になります。

まとめ。サクセッションプランは先送りできない経営課題

後継者不在率は改善傾向にあるとはいえ50.1%であり、帝国データバンクは当面50%前後で推移するとみています。待っていても後継者は現れません。本記事では、人材要件の言語化、複数候補の特定と評価、個別育成計画の策定、定期レビュー、移行と毎年の更新という5つのステップを紹介しました。この仕組みを現経営者が元気なうちに動かし始めることが、会社の未来への最も確実な投資になります。

WONDERFUL GROWTHでは、次世代リーダー・後継者候補の育成研修、管理職研修、人材要件の設計支援など、サクセッションプランの実行を人材育成の面から支援しています。自社の状況に合わせた育成の進め方を検討したい方は、資料請求・お問い合わせからお気軽にご相談ください。

参考・引用元

  • 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年11月21日公表) https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
  • 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「『サクセッションプラン』に関するサーベイ結果(2024年度)」(2025年4月23日公表) https://www.murc.jp/news/information/news_250423/
  • 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「『サクセッションプラン』に関するサーベイ結果(2023年度)」(2024年4月19日公表) https://www.murc.jp/news/information/news_240419/
  • 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版)」補充原則4-1③ https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/index.html
  • 中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」(2022年3月改訂) https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/shoukei_guideline.pdf
  • 厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」(2025年6月27日公表) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00202.html

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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