2026年7月、障害者の法定雇用率が2.7%に引き上げられます
2026年7月1日から、民間企業に課される障害者の法定雇用率が、現行の2.5%から2.7%へ引き上げられます。あわせて、雇用義務の対象となる事業主の範囲も、常用労働者40.0人以上から37.5人以上へと広がります。これまで雇用義務の対象ではなかった企業も、新たに障害者を雇用する義務を負うことになります。
この引き上げは、突然決まったものではありません。民間企業の法定雇用率は、2021年3月以降の2.3%から2024年4月に2.5%へ引き上げられ、2026年7月の2.7%は、その段階的な引き上げの最終段階にあたります。背景には、働く意欲のある障害者の増加と、障害の有無にかかわらず誰もが働ける共生社会を実現するという国の方針があります。
データで見る現在地:法定雇用率の達成企業は46.0%
厚生労働省が公表した「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業に雇用されている障害者の数は約70万4,610人で、前年から4.0%増加し、22年連続で過去最高を更新しました。実雇用率も2.41%と、14年連続で過去最高となっています。障害者雇用は着実に前進しているといえます。
一方で、法定雇用率(集計時点では2.5%)を達成している企業の割合は46.0%にとどまり、半数を超える54.0%の企業が未達成という現実があります。企業規模別に見ると、従業員1,000人以上の企業では57.5%が達成しているのに対し、300〜500人未満の企業では40.7%にとどまるなど、中堅企業ほど達成が難しい傾向がうかがえます。基準が2.7%へ引き上げられれば、現在は達成できている企業であっても、未達成に転じる可能性があります。
見落とされがちな「定着の壁」:採用しても続かなければ率は維持できません
ここで、多くの企業が見落としがちな点があります。法定雇用率は、その年に「採用した人数」ではなく、「継続して雇用している障害者の人数」で測られるということです。つまり、どれだけ採用に力を入れても、入社した方が早期に離職してしまえば、雇用率は安定して上がりません。
そして、その定着こそが大きな課題となっています。障害者職業総合センターの調査(2017年)によると、就職から1年後の職場定着率は、身体障害で60.8%、知的障害で68.0%、発達障害で71.5%である一方、精神障害では49.3%と半数を割り込みます。近年の障害者雇用の増加は、対前年比11.8%増となった精神障害者が大きく牽引しています。雇用が伸びている層と、定着が難しい層が重なっているのです。
採用は、法定雇用率を達成するための「ゴール」ではなく「スタート」です。入社した方が職場に定着し、戦力として活躍できるところまでを設計してはじめて、雇用率は安定して満たされ、組織の力にもつながります。
未達成が招くコスト:納付金と、失われる戦力
法定雇用率の未達成は、企業にとって直接の負担にもつながります。常用労働者が100人を超える企業が法定雇用率を下回った場合、不足する障害者1人あたり月額5万円(年間60万円)の障害者雇用納付金を納める必要があります。逆に、法定雇用率を上回って雇用している企業には、1人あたり月額2万9,000円の調整金が支給されます。基準の引き上げは、この負担の差をさらに大きくします。
ただし、本質的な損失は納付金だけではありません。障害者雇用促進法は、企業に対し、障害の特性に応じた合理的配慮の提供を義務づけています。配慮は単なる負担ではなく、一人ひとりが力を発揮するための前提条件です。配慮と育成の仕組みを欠いたまま頭数だけをそろえようとすれば、早期離職を繰り返し、せっかくの戦力を失うことになりかねません。
障害者雇用率2.7%に対応する5つの実践ステップ
ここからは、2026年7月の引き上げに向けて、採用から定着・戦力化までを一貫して進めるための5つのステップを紹介します。各ステップに「実施チェック」を添えましたので、自社の取り組みの確認にお使いください。
ステップ1:必要人数を試算し、現状とのギャップを把握する
まず、自社の常用労働者数に2.7%を乗じて、2026年7月以降に雇用すべき障害者の人数を算出します。そのうえで、現在雇用している障害者数との差(不足数)を明らかにします。短時間労働者や障害の程度によって算定方法が異なるため、自社の状況に即して正確に計算することが出発点になります。
- 実施チェック:2.7%・対象37.5人以上を前提に、自社の必要人数と現在の不足数を数字で把握できていますか。
ステップ2:職務を切り出し、合理的配慮を前提に設計する
「任せられる仕事がない」という声は多くの現場で聞かれますが、実際には既存業務を見直すことで、切り出せる職務は数多くあります。複数の部署に分散している定型業務を集約する、工程を分解して担当を明確にするといった工夫により、活躍の場は広げられます。あわせて、必要な合理的配慮(業務指示の出し方、作業環境、勤務時間など)をあらかじめ設計しておくことが、入社後のミスマッチを防ぎます。
- 実施チェック:受け入れ部署と具体的な職務を洗い出し、想定される合理的配慮まで言語化できていますか。
ステップ3:採用チャネルを広げ、ミスマッチを防ぐ
障害者採用では、ハローワークに加えて、就労移行支援事業所、特別支援学校、地域の障害者就業・生活支援センターなど、多様な窓口との連携が有効です。採用の前に職場実習やトライアル雇用を活用すれば、実際の業務を通じて相互理解を深め、入社後のミスマッチを大きく減らせます。応募者の「できないこと」ではなく「できること・力を発揮できる条件」に目を向けることが、よい出会いにつながります。
- 実施チェック:複数の採用・支援機関とつながり、職場実習やトライアル雇用を選択肢に入れられていますか。
ステップ4:オンボーディングと定着支援を仕組み化する
入社後の定着は、本人の努力任せにするものではなく、組織の仕組みで支えるものです。受け入れ部署の同僚が自然に支援できる体制(ナチュラルサポート)を整え、必要に応じてジョブコーチや支援機関と連携します。入社直後は短い面談を定期的に行い、不安や困りごとを早期に把握して小さなうちに解消することが、早期離職の防止に直結します。
- 実施チェック:入社後の支援担当・面談の頻度・外部機関との連携先が、あらかじめ決まっていますか。
ステップ5:現場と管理職を育て、戦力化につなげる
障害者雇用を「人事部だけの仕事」にしないことが、戦力化の鍵です。受け入れ部署の管理職や同僚が、障害特性の理解や配慮の仕方、本人の強みを引き出す関わり方を学ぶことで、職場全体の受け入れ力が高まります。本人にも段階的な目標設定とフィードバックの機会を用意し、キャリア形成を支えます。障害者を積極的に雇用・活躍させている中小事業主を国が認定する「もにす認定制度」や各種の助成金も、取り組みを後押しする仕組みとして活用できます。
- 実施チェック:受け入れ部署の管理職・同僚に対する教育の機会と、本人の育成・評価の仕組みを用意できていますか。
まとめ:2.7%を「義務」から「組織力」へ
法定雇用率の引き上げは、一見すると企業にとって新たな負担に映るかもしれません。しかし、採用から定着・戦力化までを一貫して設計できれば、障害者雇用は単なる義務の達成にとどまらず、多様な人材が力を発揮する組織づくりそのものへと変わります。2026年7月の引き上げを、自社の働く環境と育成の仕組みを見直す好機として捉えていただければ幸いです。
WONDERFUL GROWTHでは、障害者雇用の定着・戦力化を支える現場の受け入れ研修や管理職向けの育成プログラムを、貴社の業種や課題に合わせて設計しています。多様な人材が活躍できる組織づくりにご関心をお持ちの方は、資料請求・お問い合わせから、お気軽にご相談ください。
参考・引用元
- 厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67490.html
- 厚生労働省「障害者の法定雇用率の引上げと支援策の強化について(リーフレット)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf
- 労働政策研究・研修機構(JILPT)「障害者雇用率を段階的に引き上げ、2026年度中に2.7%へ」 https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2023/03/k_01.html
- 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金制度の概要」 https://www.jeed.go.jp/disability/about_levy_grant_system.html
- 障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究(調査研究報告書No.137)」(2017年) https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/p8ocur0000000nub-att/houkoku137.pdf
Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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