リファラル採用を制度として導入する企業は49.2%に達した一方、勤務先を家族や友人に勧めたいと答える正社員はわずか38.6%です。制度と社員の本音の差を埋め、紹介を仕組みとして機能させる導入5ステップを、客観的な調査データとともに解説します。
リファラル採用とは
リファラル採用とは、自社の社員が友人・知人・前職の同僚などを紹介し、その紹介を通じて採用選考につなげる手法です。社員紹介制度とも呼ばれ、英語の「リファラル・リクルーティング(referral recruiting)」に由来する呼称です。人材紹介会社を介する転職エージェント経由の採用や、求人広告を通じた採用とは異なり、自社をよく知る社員が「橋渡し役」になる点が特徴です。
近年は、人手不足による採用競争の激化や採用コストの上昇を背景に、リファラル採用と、退職した社員を再び迎え入れる「アルムナイ採用」を組み合わせて導入する企業が増えています。
数字で見るリファラル採用の現在地
東京商工リサーチが2026年6月1日から8日にかけて実施した企業向けアンケート調査(有効回答6,475社)によると、アルムナイ採用と両方を導入する企業が27.0%、リファラル採用のみを導入する企業が22.2%で、リファラル採用を何らかの形で導入している企業は合計49.2%にのぼりました。企業規模別では、大企業の60.4%がリファラル採用を導入しており、6割を超えています。
同調査では、従業員の定着率が最も高い採用方法を尋ねた設問でも注目すべき結果が出ています。「いずれも大差ない」という回答を除くと、「リファラル採用」が18.5%で最も高く、「ハローワークを通じた中途採用」の12.1%を6.4ポイント上回りました。「転職エージェントからの紹介」は5.4%にとどまっています。
従業員の定着率が高い採用方法は、「いずれも大差ない」を除くと「リファラル採用」が18.5%で最も高く、「ハローワークを通じた中途採用」の12.1%を6.4ポイント上回った(東京商工リサーチ「2026年6月 企業の『採用』に関するアンケート調査」)
一方で、パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査(2025)」では、「現在の勤務先で働くことを家族や友人に勧めたい」と回答した正社員は38.6%にとどまりました。制度の導入率が49.2%まで広がる一方で、紹介のもとになる「勧めたい」という気持ちを持つ社員は、4割に届いていません。この差こそが、リファラル採用が「制度はつくったが紹介が生まれない」状態に陥る背景です。
リファラル採用が「制度倒れ」になる典型的な理由
リファラル採用は、制度を用意するだけでは機能しません。現場でよく見られるつまずきには、次の三つがあります。
- 紹介の心理的ハードルへの配慮不足:誘って断られる気まずさや、不採用になった場合に人間関係がぎくしゃくする不安を、社員が抱えたままになっている
- インセンティブ設計が納得感を欠く:金額や支給条件が曖昧なまま制度だけが先行し、紹介する動機につながっていない
- 選考・処遇の透明性の不足:紹介者にも紹介された側にも選考基準や結果の伝え方が明確でなく、不公平感が生まれやすい
導入を成果につなげる5ステップ
ステップ1:目的とターゲット人材像を明確にする
まず、どのポジションで、どのような人物像の紹介を必要としているのかを具体化します。全社一律で「誰でもいいので紹介してください」と呼びかけるのではなく、重点的に採用したいポジションと、その職務に必要な経験・スキル・志向性を絞り込むことで、社員が紹介する相手を思い浮かべやすくなります。
実施チェック:今回の募集で紹介してほしい人物像を、社員が一言で説明できる状態になっていますか。
ステップ2:紹介しやすい環境と情報を整備する
社員が友人・知人に会社を紹介する際の手間を減らすことが、紹介を生み出す鍵になります。募集要項や自社の魅力を簡潔にまとめた資料、SNSやメッセージでそのまま使える紹介文面のひな形などを用意し、社員が「説明の仕方に迷って紹介をやめてしまう」状況を防ぎます。
実施チェック:社員が3分程度で、友人へ自社を紹介する文章を用意できる状態になっていますか。
ステップ3:インセンティブと非金銭報酬を設計する
東京商工リサーチの調査では、リファラル採用の報酬(インセンティブ)について、「報酬は支払っていない」が40.9%で最多となった一方、支払っている企業では「1万円から10万円未満」が20.7%と最も多く、「100万円以上」はわずか0.8%にとどまりました。自社の採用コストや業界水準と照らし合わせながら、金額・支給条件・支給時期を明文化することが重要です。あわせて、感謝を伝える表彰や社内での可視化など、金銭以外の報酬も組み合わせることで、紹介そのものを前向きな行為として位置づけられます。
実施チェック:インセンティブの金額・支給条件・支給時期が、社員に明文化されて共有されていますか。
ステップ4:紹介後の選考・処遇の公平性を担保する
紹介された候補者であっても、選考基準を緩めたり、逆に厳しくしすぎたりしないことが原則です。不採用になった場合には、紹介した社員に対しても誠実に結果と理由を伝えるプロセスを設けます。紹介する側・される側のどちらにとっても「不利益を被らない」ことが明確であれば、社員は安心して紹介できるようになります。
実施チェック:紹介した社員に対して、選考結果と理由を丁寧に伝える手順が用意されていますか。
ステップ5:効果を測定し、勧めたくなる職場づくりに投資する
紹介件数、選考通過率、入社後の定着率を定期的に把握し、制度の効果を検証します。そのうえで最も重要なのは、リファラル採用という制度の土台が、「勤務先を勧めたい」と感じる社員を増やすこと、つまり社員エンゲージメントの向上にあると理解することです。パーソル総合研究所の調査が示すとおり、この土台はまだ十分に整っていません。制度設計を精緻にするだけでなく、社員が誇りを持って働ける職場づくりに投資することが、遠回りに見えて最も確実な打ち手になります。
実施チェック:リファラル採用の紹介数・採用数・定着率を、四半期など決まった単位で人事が把握していますか。
まとめ
リファラル採用は、人手不足と採用コストの上昇が続くなかで、定着率の高さが期待できる採用手法です。ただし、その効果は制度設計だけでは生まれません。社員が自社を「勧めたい」と思えるかどうかという土台があってはじめて、紹介という行動が生まれます。5つのステップを通じて制度を整えると同時に、社員エンゲージメントへの投資を並行して進めることが、リファラル採用を機能させる近道です。
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Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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