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カスタマーハラスメント対策は10月1日に義務化|中小企業が今から整えること

顧客や取引先からの著しい迷惑行為から従業員を守る措置が、企業の規模を問わず、すべての事業主の義務になります。過去3年間に顧客等から著しい迷惑行為を受けた労働者は10.8%にのぼります。基本方針の明文化から相談窓口、対応マニュアル、研修まで、施行までに整える体制をまとめました。

公開日
2026/06/06
更新日
2026/09/28
読了時間
約 8 分
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
ハラスメント法改正中小企業離職防止

カスタマーハラスメント対策が2026年10月1日、全ての事業主の義務になります

2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日からカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)の防止措置が、すべての事業主の義務になります。対象は従業員を1人でも雇用する企業と個人事業主で、企業規模による猶予期間はありません。

厚生労働省は令和5年度に「職場のハラスメントに関する実態調査」を実施しました(対象:全国の労働者8,000人、2024年1月実施)。過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為を受けた労働者は10.8%にのぼりました。同じ調査で実施した企業向け調査(有効回答7,780社)でも、過去3年間にカスハラに関する相談があった企業は27.9%を占め、そのうち86.8%が「該当する事案がある」と回答しています。

帝国データバンクが2024年6月に実施した調査(有効回答1万1,068社)でも、直近1年間でカスハラ被害を「受けた」とする企業は15.7%にのぼりました。業種別では、個人向け取引の多い小売(34.1%)や金融(30.1%)で高い割合となっています。一方で、カスハラへの対応策や取り組みを「特に実施していない」企業は47.4%を占めており、施行までの期間が限られるなかで、体制整備が追いついていない企業も少なくないとみられます。

カスタマーハラスメントの定義と、正当なクレームとの違い

労働政策研究・研修機構(JILPT)が整理した定義によると、カスタマーハラスメントは次の3つの要素をすべて満たす言動とされています。

顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うものであること。社会通念上相当な範囲を超えた言動であること。労働者の就業環境が害されること。

商品やサービスへの正当な指摘や改善要望は、カスハラには当たりません。この点に注意が必要です。要求の内容自体に妥当性があり、伝え方も社会通念上相当な範囲にとどまっている場合は、消費者の正当な権利の行使です。企業が真摯に受け止めるべき声といえます。

カスハラと判断されるのは、要求の内容に妥当性を欠く場合、または要求の実現手段が暴言・威圧・長時間の拘束など社会通念に照らして相当でない場合です。この線引きをあらかじめ社内で共有しておくことが、現場の判断のばらつきを防ぐ土台になります。

事業主に求められる4つの措置

国の指針は、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、次の4点を示しています。

  • 方針の明確化とその周知・啓発:カスハラを許さないという会社の姿勢を明文化し、従業員に周知します。
  • 相談に応じ、適切に対応するための体制の整備:相談窓口をあらかじめ定め、担当者が内容に応じて関係部門と連携できる仕組みを整えます。
  • 被害発生後の迅速かつ適切な対応:事実関係を正確に確認し、被害を受けた従業員のケアと再発防止につなげます。
  • あわせて講ずべき措置:相談者のプライバシー保護と、相談を理由とした不利益取扱いの禁止を徹底します。悪質な事案には、警察への通報や警告文の発出、サービス提供の停止といった抑止のための対応方針もあらかじめ定めておきます。

施行までに方針、相談窓口、対応手順を形にする

次の取り組みは、国の指針が示す4つの措置を、現場で動く形に落とし込んだものです。

基本方針を明文化し、社内外に示す

経営層の責任のもとで「カスハラから従業員を守る」という方針を文書化し、全従業員に周知します。ウェブサイトや店頭掲示などで対外的にも姿勢を示すことは、迷惑行為への抑止としても働きます。

会社の基本方針は文書化し、全従業員がいつでも確認できる状態にしておきます。

相談窓口を整備し、プライバシー保護を明確にする

相談窓口を設け、相談したことや事実確認に協力したことを理由に不利益な取扱いを受けないこと、相談内容のプライバシーが守られることを明文化します。国の指針でも、相談体制の整備は事業主が講ずべき措置の柱の一つに位置づけられています。

相談窓口の存在と利用方法が全従業員に周知されていることが、窓口を整えたと言える目安です。

判断基準と対応マニュアルを整備する

どの言動をカスハラとみなすか、どの時点で対応を打ち切るかを、具体的な場面に沿って明文化します。厚生労働省は業種別のマニュアルや事例集を公開しており、自社マニュアルを作成する際の参考になります。現場の担当者が一人で判断を抱え込まない仕組みをつくることが目的です。

現場の担当者がその場で対応の可否を判断できる基準と手順がそろっていれば、判断を一人で抱え込まずに済みます。

管理職と現場向けの研修を実施する

方針やマニュアルは、現場で使える形に落とし込まれてはじめて機能します。想定場面を用いたロールプレイ形式の研修を通じて、初期対応の言葉づかいや、上席者への引き継ぎの判断、複数名での対応といった実践力を養います。

研修は、現場の担当者と管理職のそれぞれに向けて、実際の場面を想定した内容で計画します。

悪質な事案への対応方針を定めておく

過度な要求を繰り返すなど、特に悪質と考えられる行為への対処方針をあらかじめ定めます。警察への通報、警告文の発出、法令の範囲内でのサービス提供の停止、弁護士への相談といった選択肢を整理し、現場が一人で抱え込まずに済む連携体制を整えておきます。

悪質な事案が起きた際に、誰がどこに連絡するのかは、あらかじめ決めておきます。

中小企業ほど対応が遅れやすい理由

帝国データバンクの調査を企業規模別にみると、直近1年でカスハラ被害を受けた企業の割合は、大企業が21.0%であるのに対し、小規模企業は14.4%でした。被害の実感が少ない分、対応の優先順位が上がりにくい面があります。

しかし今回の義務化に企業規模による猶予はありません。従業員数の少ない企業ほど、一人の担当者が相談対応から事実確認まで兼務せざるを得ない場面も想定されます。外部の相談窓口や、業界団体・社会保険労務士が提供するマニュアルをそのまま活用することも、限られた人員で対応を進める現実的な選択肢になります。

まとめ 従業員を守る仕組みが人材定着の土台です

カスハラ対策の義務化は、企業にとって新たな負担に映るかもしれません。その本質は、理不尽な言動から従業員を守り、誰もが安心して働ける環境を整えることにあります。10月1日の施行を、自社の働く環境を見直す機会として捉えていただければ幸いです。

WONDERFUL GROWTHでは、カスハラ対応をはじめとする現場の実践力を高める研修を、貴社の業種や課題にあわせて設計しています。従業員を守る仕組みづくりにご関心をお持ちの方は、資料請求・お問い合わせからお気軽にご相談ください。

出典

  • 厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(令和5年度厚生労働省委託事業、令和6年5月17日公表) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40277.html
  • 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)「カスタマーハラスメント対策を事業主の雇用管理上の措置義務に」(ビジネス・レーバー・トレンド2025年3月号) https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2025/03/harassment_01.html
  • 株式会社帝国データバンク「カスタマーハラスメントに関する企業の意識調査」(2024年7月23日公表) https://www.tdb.co.jp/report/economic/6wc57djldxmw/
  • 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」 https://www.mhlw.go.jp/content/11921000/000894063.pdf

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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