Insights

人材育成がうまくいかないのはなぜか|約8割の事業所が抱える課題と対策

人材育成がうまくいかない理由の多くは、目的のあいまいな研修や時間の不足、フィードバックの欠如など、企業の仕組みの側にあります。最も多い悩みは指導する人材の不足で、育成に問題を抱える事業所の59.5%が挙げています。育成の時間を計画に組み込み、育成に尽力した人を評価で報いることが、立て直しの条件です。

公開日
2023/03/10
更新日
2026/09/28
読了時間
約 14 分
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
人材育成モチベーション企業事例

人手不足が続くなか、社内の人材をいかに育てるかは、あらゆる企業にとって経営の中心課題になっています。まずは公的データから現状を確認しましょう。

能力開発や人材育成に関して「何らかの問題がある」とする事業所は79.9%。問題点の内訳では「指導する人材が不足している」(59.5%)が最多で、「人材を育成しても辞めてしまう」(54.7%)、「人材育成を行う時間がない」(47.4%)が続く。(出典:厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」2025年6月公表)

さらに帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」によると、正社員の不足を感じている企業は50.6%と、4月としては4年連続で半数を超えました。人材の確保が難しくなる一方で、育成も思うように進んでいません。多くの企業が「様々な施策を試しても社員の成長を促せない」という課題を抱えています。

なぜ人材育成がうまくいかないのでしょうか。原因は、育成の目的のあいまいさ、時間の不足、フィードバックや対話の欠如、社員への関心の不足などにあります。

目的のあいまいさ、時間不足、対話や関心の欠如とその対策

育成プログラムの不適切さ

人材育成プログラムの内容が従業員の能力や経験、学習スタイルに合わない場合、学習効果が得られず、成果が出せないケースが多く見られます。また、企業が人材育成の目的を明確に定義せず、具体的な戦略を持っていない場合、育成プログラムは方向性を失い、従業員の成長につながりません。

前出の能力開発基本調査によると、教育訓練費用(OFF-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は54.9%にとどまり、OFF-JTに支出した費用は労働者一人当たり平均1.5万円と前回から横ばいでした。研修を「実施すること」自体が目的化し、内容が形骸化している企業は少なくありません。

【対策の具体ステップ】

  • 人材育成の目的と期待される成果を、経営戦略から逆算して明確に定義する
  • 従業員のスキルレベルや学習スタイルを棚卸しし、対象者ごとにプログラムを設計する
  • 短期・中期・長期のマイルストーンを設定し、1か月・半年・1年の区切りで振り返りと最適化を行う
  • 従業員との対話を通じて育成プログラムを共同で決定し、納得感を高める

自社の育成プログラムは、目的を一文で説明できること、対象者ごとに内容が異なること、直近半年以内に見直していることの3点を満たしている必要があります。1つでも欠けていれば、設計を見直す時期です。

時間やリソースの不足

能力開発基本調査では、人材育成の問題点として「人材育成を行う時間がない」と回答した事業所が47.4%にのぼりました。企業が短期的な業績向上を優先するあまり、中長期的な取り組みである人材育成が後回しになりがちです。

【対策の具体ステップ】

  • 人材育成を企業の最重要戦略として経営層が位置づけ、予算と時間を確保する
  • 育成担当者の業務の一部を他の社員に分散し、指導に充てる時間を捻出する
  • e-ラーニングやオンライン研修を活用し、移動や集合にかかるコストを削減する
  • 外部の研修機関やセミナーを選択的に活用し、社内リソースの不足を補う

部下育成のための時間は、管理職の年間計画に明示的に組み込みます。組み込まれていない場合、育成は個人の善意に依存している状態です。

フィードバックの欠如

フィードバックを通じて客観的な課題を伝えることで、一人では気づけない問題点を認識できるようになります。しかし、多くの企業ではフィードバックが不十分であり、社員は自分の成長を測定できず、学習の進展を確認することができません。

能力開発基本調査によると、労働者の主体的なキャリア形成に向けて実施した取り組みとして「上司による定期的な面談の実施(1on1ミーティング等)」を挙げた事業所は68.3%と最多でした。一方で、目標が曖昧なままでは、例えば新入社員へのOJTでも、いつまでにどのスキルを習得すべきかが不明確となり、指導内容にばらつきが生じます。

【対策の具体ステップ】

  • 評価面談とは別に、月1回以上の1on1ミーティングを定例化する
  • 習得すべきスキルと期限を明文化し、フィードバックの基準をそろえる
  • 良い点の承認と改善点の指摘をセットで伝える型を、管理職研修などで浸透させる
  • 育成プログラムの成果を定期的に評価し、改善点を特定する

部下が「自分は今、何をどこまでできるようになったか」を自分の言葉で説明できれば、フィードバックは役割を果たしています。説明できない場合は、フィードバックが機能していない可能性が高いといえます。

コミュニケーションの欠如

企業が育成プログラムについて十分に情報を提供せず、従業員がプログラムの目的や利点を理解できていない場合、プログラムはうまく機能しません。育成担当者と従業員の間で目的や目標が一致していないと、社員は「やらされている」と感じてしまい、貴重な育成機会が無駄になってしまいます。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2025年6月に公開した「DX動向2025」によると、DXを推進する人材が「不足している」と回答した日本企業は85.1%にのぼり、米国やドイツと比べても突出して高い水準です(出典:IPA「DX動向2025」)。リスキリングが急務となるなか、目的を共有しないまま研修だけを課しても、学びは定着しません。

【対策の具体ステップ】

  • 育成プログラムの目的・期待される成果・受講者にとっての利点を、開始前に文書で伝える
  • 会社のビジョンや育成計画を日常的に共有する場(朝会・社内報・社内SNSなど)を設ける
  • リモートワーク環境でも双方向のやり取りができるツールと運用ルールを整備する
  • 経営陣が人材育成のビジョンを自らの言葉で発信し、自社の文化に合った育成方針を確立する

研修の受講者に「この研修は何のために受けるのか」を尋ねると、目的が共有されているかどうかが分かります。回答が人によって大きくばらつくなら、目的の共有が足りていません。

従業員への関心の不足

企業が従業員の成長に対して関心を持たず、育成プログラムを軽視する場合、従業員はモチベーションを失い、成長意欲が低下します。能力開発基本調査でも「人材を育成しても辞めてしまう」が問題点の第2位(54.7%)に挙がっており、育成と定着を一体で考える必要性が高まっています。

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によると、生産年齢人口(15〜64歳)は2020年の7,509万人から減少を続け、2032年に7,000万人、2043年には6,000万人を下回り、2070年には4,535万人まで減ると見込まれています。さらに帝国データバンクの調査では、2025年度の人手不足倒産は441件と、年度ベースで初めて400件を超え、3年連続で過去最多を更新しました(出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」)。採用で欠員を埋め続けることは年々難しくなっており、既存社員の育成と定着は企業存続の前提条件になりつつあります。

【対策の具体ステップ】

  • 人材育成を企業文化の中核に据え、経営層がその重要性を社内外に発信する
  • 人材育成の成果を評価制度に組み込み、育成担当者の貢献を適切に評価する
  • 職務遂行能力に応じた等級制度や資格制度を整備し、公正な評価で従業員の向上心と目標達成への意欲を支える
  • 人材育成は中長期的な投資であるという認識を、予算と体制の両面で組織全体に示す

直近1年間に、育成に尽力した管理職や先輩社員の働きが評価・処遇に反映された事例があるかどうかで、育成に対する組織の姿勢が見えてきます。事例が一つもなければ、「育てても報われない」というメッセージを組織に発していることになります。

働く環境、仕事の目的、挑戦の機会で意欲を保つ

職場環境を整える

働く環境は社員のモチベーションに大きな影響を与えます。職場環境とは、物理的な環境(オフィスの温度、照明、音など)だけでなく、安全な作業環境、休憩所、人間関係など、仕事をする上で従業員を取り巻くあらゆる要素を指します。

帝国データバンクの調査によれば、2026年4月時点で正社員が不足している企業の割合は50.6%と高水準が続いています。また、2025年の春闘では民間主要企業の賃上げ率が平均5.52%(厚生労働省調べ)と、2年連続で5%を上回りました。賃金だけで人材を引き留めることが難しい中堅・中小企業ほど、働きやすい環境づくりが「選ばれる職場」の条件になります。

  1. 物理的な環境の整備:適切な温度、照明、音響環境の確保
  2. 柔軟な働き方の導入:リモートワーク、フレックスタイム制度の整備
  3. 福利厚生の充実:休憩スペースの拡充、健康促進プログラムの実施
  4. 心理的安全性の確保:意見が言いやすく、失敗を恐れない組織文化の醸成
  5. 社内コミュニケーションの活性化:定期的な対話の機会、社内SNSの活用

企業のミッションを明確にする

「働く目的」を明確にすることは、社員のモチベーションを高める上で必要不可欠です。社員が意欲的に仕事に取り組む企業では、ミッション(使命)・ビジョン(目標)・バリュー(価値観)が組織全体に浸透しています。

能力開発基本調査の個人調査では、正社員の3分の2近くが「自分で職業生活設計を考えていきたい」(「どちらかといえば」を含む)と回答しています。社員一人ひとりが描くキャリアの方向と、会社のミッションが重なる部分を示せるかどうかが、意欲を引き出す分かれ目になります。人材育成を進める際には、経営理念、経営ビジョン、ミッションを土台に、人事理念や求める人材像を明確にすることが欠かせません。

  1. ミッション・ビジョン・バリューの策定と定期的な見直し
  2. 全社員参加型のワークショップを通じた理念の共有
  3. 日常業務とミッションの関連性を可視化する仕組みづくり
  4. 「価値観ワーク」などを通じて、価値観に関する単語を選んだ理由をグループで議論し、考え方を共有する
  5. 経営層による定期的なミッションメッセージの発信

挑戦を促す制度・環境を作る

日々の仕事がルーティン化すると、社員は退屈を感じてモチベーションが低下します。新たな挑戦の機会を提供することで、成長実感と達成感を得られる環境を整えることが重要です。

中小企業においても、育成の取り組みが業績の向上や人材の定着につながる可能性が指摘されています。適切な挑戦機会の提供は、企業の業績向上と社員の定着の両方に寄与します。

  1. 社内公募制度:新規プロジェクトや異動希望の募集
  2. 社内起業制度:新規事業アイデアの提案と実現をサポート
  3. ストレッチアサインメント:現在のレベルより少し高い難易度の業務を任せる
  4. 「やってみなはれ」のように、既存の方法にとらわれない新しい発想でチャレンジした活動を表彰する制度の導入
  5. 失敗から学ぶ文化の醸成:失敗事例の共有会や振り返りセッションの定期開催

人材育成の成功事例に学ぶ共通ポイント

成功している企業の人材育成には、いくつかの共通点が見られます。

  1. 長期的視点での投資:人材育成を長期的な投資として位置付け、戦略的に取り組む姿勢が重要です。短期的な視点に囚われず、5〜10年単位の計画を持っています。
  2. トップのコミットメント:企業として人材育成を推進していくという強い覚悟を上層部が発信しないことには、なかなか人材育成は浸透しないため、経営層の積極的な関与が必須です。
  3. 体系的なプログラム:基礎的なスキルを中心に学ぶ人材育成と、社内の課題解決や経営戦略の実現に向けて行う体系的な教育である人材開発を適切に組み合わせています。
  4. 個別化されたアプローチ:社員一人ひとりの能力を整理し、それをもとに上司とキャリアデザインについてすり合わせを行うなど、社員の自主性も尊重される仕組みを取り入れています。
  5. 学習文化の醸成:人材育成は単に「仕事ができる従業員を育てるもの」ではなく、従業員の成長支援を通じて企業全体が成長することを目指しています。

WONDERFUL GROWTHの人材育成サービス

WONDERFUL GROWTHでは、企業の課題に合わせた人材育成サービスを提供しています。社員の成長段階や役職に応じた多様なプログラムをご用意しており、以下のような研修を実施しています。

階層別研修

  • 新入社員研修:ビジネスマナーから業務の基本スキルまで
  • 中堅社員研修:リーダーシップとフォロワーシップの両立
  • 管理職研修:チームマネジメントとビジョン構築

スキル別研修

  • コミュニケーション強化研修
  • プレゼンテーションスキル向上研修
  • 問題解決力育成研修

組織活性化研修

  • チームビルディング研修
  • 組織エンゲージメント向上研修
  • ダイバーシティ&インクルージョン研修

当社の研修は、単なる知識提供に留まらず、実践的なワークショップを通じて実務に直結するスキル習得を目指しています。また、研修後のフォローアップを重視し、学びを職場で定着させるためのサポートも充実しています。

人材育成は一朝一夕で成果が出るものではありません。しかし、適切な方法で継続的に取り組むことで、社員の成長と企業の発展の両方を実現することができます。WONDERFUL GROWTHは、御社の人材育成の課題を解決し、持続的な成長をサポートいたします。

人材育成に関するご相談や、研修プログラムの資料請求をご希望の方は、ぜひお気軽にこちらからお問い合わせください。

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

Next step

記事の内容を、自社に当てはめてみませんか。

Growth Survey は、心理的安全性・エンゲージメント・行動変容を定量化し、組織の現在地を可視化するサーベイです。 まずは3分診断で、おおよその現在地をつかむこともできます。

✦ SHARE with カイシャの育成論

メディアでも、深く発信しています。

自社メディア『SHARE with カイシャの育成論』では、企業インタビューと人事用語辞典を通じて、より深い知見をお届けしています。