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脳科学から見る人材育成(1)感謝と反復練習で研修を定着させる

研修で学んだことは、注意を払って見て、実際にまねて繰り返すことで、初めてスキルとして身につきます。感謝を書き出す取り組みがストレスの感じ方を和らげたという研究もあります。研修の最後に要点をおさらいし、気づきと行動計画を書き出してもらうことが、学びを業務につなげる決め手です。

公開日
2023/03/24
更新日
2026/09/28
読了時間
約 15 分
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
心理学研修効果メンタルヘルス

AIの発達、働き方改革などによって、人材への考え方は日々変化する時代にあります。

この変化の時代に対応し、既に研修体系や人事制度の見直しを行っている企業さまも多いかと思います。

家電に取扱説明書があるように、人材育成にも「取扱説明書」にあたる知識があります。脳科学は、その手がかりになる分野の一つです。

今回は、脳科学の観点から見た人材育成を紹介していきます。

脳科学とは

皆さん知っている「脳科学」という言葉。しかし、「じゃあ、具体的に脳科学って何?説明してよ」と言われて、すぐに答えられる方は多くないと考えられます。

脳科学は、最近精神疾患の改善やメンタルケアなど医学分野で高い注目を得ています。

生物学、医学、薬学、化学、工学、情報学等の自然科学、哲学、心理学、教育学、社会学、倫理学、法学、経済学等の人文・社会科学、ひいては芸術的な分野とのつながりも非常に強く脳科学の研究者の方はこれらの多くの分野に精通している必要があると言われています。

上記でも書いたようにこの多くの分野の中には教育学も含まれています。

在宅勤務の心の負荷を、日々のセルフケアで軽くする

コロナ禍で在宅ワークが進み、対面での会議や同僚との会話は激減しました。

コミュニケーションの低下から、情報伝達、意思の疎通ができず精神的に負荷がかかってしまうことも多くあります。

この精神的な負荷を軽減するヒントが脳科学にあります。

・健康的な食事を心がける。

当たり前のように聞こえますが、とても重要なことです。ストレスは食行動に影響し、食べすぎたり、逆に食欲が落ちたりすることがあるとされています(トーレスとナウソン、2007年)。

健康的な献立を意識したうえで、よく噛むことを意識しましょう。

・情報源を制限しましょう

災害や事件などの衝撃的な報道を長時間見続けると、強いストレスを感じやすくなることを示した研究があります(ホルマンら、2014年)。

信頼できる情報源から時間を制限して情報収集を行いましょう。

・趣味を見つけましょう

脳の神経系を落ち着ける=気分転換になるものを見つけましょう。

テレビ、ゲーム、読書、ランニングなど自分に合うものを探していく必要はありますが、健康的に仕事と向き合っていくためにはとても重要なことです。

・感謝をしましょう

気の持ちよう、嘘のように聞こえるかもしれませんが、感謝をすることはストレスの緩和に役立つといわれています。働く人を対象にした研究をまとめた報告(駒瀬ら、2021年)では、感謝していることを書き出す取り組みによって、ストレスの感じ方や抑うつの症状が改善したとされています。

1日に3回程度自分が感謝している人や事を考えてみましょう。

・十分な睡眠をとりましょう

質のよい十分な睡眠は、心身の健康を保つうえで欠かせません。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、睡眠の問題そのものがうつ病などの精神障害の発症リスクを高めるという報告があると紹介しています。睡眠前のスマートフォンなどの使用は控え、睡眠に備えましょう。

これらは非常に重要な要素になります。

また、心配事やストレスと上手に付き合う手がかりとして、デイビッド・ロックが2008年に提唱した『SCARF』モデルがあります。人が他者とのかかわりの中で、脅威や報酬として受け止めやすい5つの領域を整理したものです。

  • Status(地位):他者と相対して、自分の地位は高いか低いか。
  • Certainty(確実性):将来の確かさ。脳はパターン認識で常に近い未来のことを予測し、円滑な動作や行動を可能にしています。そのためパターンと異なるものは、脳にとっては「エラー」であり脅威と認識されます。
  • Autonomy(自律性):環境や自分の身に起こることを統制できているか、さまざまな選択肢を自らが持っているか。
  • Relatedness(関係性):人とつながっているという感覚があるか。
  • Fairness(公平性):人と何かを交換するときに公平であるか。

ソーシャルディスタンスの影響で、こうした領域が満たされにくくなることもあります。

しっかりと自分自身について考える時間を作りましょう。

『感謝』と脳科学

「感謝」については、心理学や脳科学の分野でも研究が行われています。感謝の気持ちを抱いているときの脳の活動を調べた研究もあります(フォックスら、2015年)。

心理学者のロバート・エモンズ氏は、感謝には2つの要素があると説明しています。

1つ目は「自分がよいものを受け取っているという認識」

2つ目は「そのよいものが、他者など自分の外からもたらされたという認識」

エモンズ氏は、感謝は人との関係を強める感情だとも述べています。

さらに感謝には、次の3つの水準があるとされています(マカラックら、2004年)。

  • 感謝しやすい性格的な傾向としての感謝
  • ある程度の期間続く、気分としての感謝
  • 贈り物を貰ったり親切な行為を受けたりする時に感じる一時的な感謝

感謝は人間関係構築の際の緩衝材になってくれます。

自分自身の心身への効果も研究されています。感謝の気持ちを持ちやすい人ほど睡眠の質がよい傾向があることや(ウッドら、2009年)、感謝していることを書き出す取り組みで前向きな気分が高まること(エモンズとマカラック、2003年)が報告されています。

では、この「感謝」を職場で有効活用するためにはどうすればいいのか、例をいくつか確認していきましょう。

1つ目、朝礼や終礼で感謝を述べよう。プロジェクトの進捗確認や共有事項と一緒に感謝を伝えましょう。

2つ目、チャットなどの連絡媒体で感謝を伝える。ソーシャルディスタンスの影響でコミュニケーションの機会は確実に減少しました。

日常会話は激減し、業務上の確認や連絡のみがチャット上に飛び交う中、私たちは意識的にチャットで感謝を伝える必要があります。

在宅業務が進んだ状態だからこそ、積極的に現状使っているツールやミーティングの機会を活用しましょう。

今後はVRなどの新しい技術がさらに進化していくと思われます。

実際に、ジェットコースターのVRを使用して実際に乗り物酔いが起こるように、バーチャルリアリティは生物学的な反応を人体に起こすには十分な現実感を備えています。

既に企業の社員研修などにも応用されています。

例えば、深海の掘削装置を映像化し、実際の現場に行く前に危険な要素やポイントを確認する研修や、実際と同じ食堂をVR上に再現して給仕の練習をする研修のような使い方が考えられます。客前で失敗できない業務でも、事前に練習を重ねることで社員の自信につながり、本番でよりよいサービスを提供しやすくなると考えられます。

このように、技術を積極的に活用することで、より効率的に、ストレスを抑えて業務を進められる場合もあります。

グループワークでのピンチを打開する方法

研修でのグループ学習やミーティングなど大人数で作業を行う際に「ファシリテーター(司会役)」は非常に重要なポジションです。

ファシリテーターの能力が高ければグループワークは個人作業よりも多くの収穫を得ることができます。

しかし、どんなに優秀なファシリテーターがいても問題が発生してしまうのが集団行動の難しい部分です。

この章では、代表的なグループワークの際に発生する問題点とその問題の解決策を紹介します。

・メンバーが誰も話さない…。

自己表現が苦手とされる日本人には、多く見受けられる状態だと思います。

意見して否定されたらどうしよう、ついついネガティブに考えてしまい行動が委縮してしまう傾向があります。

対策としては意外かもしれませんが、「待つこと」が有効です。

具体的には深呼吸をして頭の中で20秒を数えましょう。

普通であれば誰かが話し始めます。それでも話さない場合は、チャットなどに会話の内容をまとめる時間を作りましょう。これにより、参加している人は自分の意見を整理することができます。

また準備をしたという労力が発生するので、使った時間や労力を無駄にしたくないという心理が働き多少なりとも発表に対する抵抗がなくなります。

他にはさらに小規模(2人など)のグループを作り意見交換をしてもらうことも有効な手段です。

・誰か一人ばかり話をしている場合…。

この場合はいつも以上に話している人以外に意識を向ける必要があります。これには2人ペアなどの小グループを作って他の人の意見を吸いだしやすい状態を作ることが効果的です。

それでも、一人の人が発言し続ける場合は休憩時間などに「○○さんには他の人の意見を聞くためのサポートをしてほしい」とポジティブな理由を使ったうえでの協力を仰ぎましょう。

・大前提のルールを破る人…。

決まっているルールがあると進行はとても楽になります。全体でルールがない場合は自分たちのグループだけでもルールを作っていいかもしれません。ルールがあり、参加をしている人がルールを無視する場合、指摘をしやすくなります。

これは、自分のする指摘に根拠が生まれるからです。ルールを破っているという明確な要因があればデリケートな指摘も行いやすくなります。

それでもルールを破る人がいる場合は、個別でヒアリングを行いましょう。行動の意図が分かれば話し合いをすることができ、問題は解決に向かいます。

・攻撃的な参加者がいる場合…。

参加者を執拗に気づ付ける人がいる場合は、休憩をとって当事者を落ち着かせましょう。

それでも攻撃を続ける場合は、他のファシリテーターや主催者に介入してもらうことを検討する必要もあります。

他にも様々な問題が発生するのがグループワークの難しいところ。

その時は、弊社の問い合わせフォームで是非解決策を聞いてみてください。

見て学んだことは、反復して身につける

日本では「見て学ぶ」という言葉がよく使われます。

学生時代の部活動や会社でもよく耳にしたことでしょう。

実際に観察学習は非常に重要です。その仕組みの一つとして、ミラーニューロンと呼ばれる神経細胞の働きが挙げられることがあります。

ミラーニューロンは、他者の行動を見たときにも、自分が同じ行動をするときと同じように活動する神経細胞で、サルを使った研究で報告されました(リゾラッティら、1996年)。ただし、見て学んだことを身につけるためには、次の条件が大切です。

1つ目は、見る側の人間が注意を払ってみているということです。皆さんは飛行機で説明される酸素マスクのつけ方や、救命胴衣の着用方法を覚えていますでしょうか。

複数回乗ったことがあるという人でも覚えている人は少ないと思います。

理由は至極単純で一生懸命聞いていないからです。

音楽を聴いている人、飛行機の中でどの映画を見ようか考えている人、一緒に乗った友人や家族と話している人、そういった状態では、説明の内容はほとんど頭に残りません。何かを学び、それを記憶に留め、実際に行動に影響させるには、しっかりとした集中が必要になります。

2つ目は、実際に動作を行ってみるということです。

見るだけでなく、実際にまねをして体を動かしてみることで、学びはより確かなものになります。

さらには、同じ動作を反復する行為は知識の定着につながり、定着した知識はスキルになります。頭の中で動作を詳しく思い描く練習(メンタルプラクティス)にも、実際の上達を助ける効果があることが、多くの研究をまとめた分析で示されています(ドリスケルら、1994年)。

私も昔、営業研修で何度も何度も営業のトークスクリプトを読んだ経験があります。

ただ読むだけではなく、当時の直上司がお客さん役をし何度も反復して練習を行いました。

実際に現場でトラブルが起こり、パニックになったとき口から出てくる言葉はトークスクリプトの内容でした。

このように、よく見て、実際に繰り返し練習することで、いざというときに自分を助けてくれる強力な武器を得ることができます。

研修を定着させるには

「いい研修だった」と満足して帰っても、その内容を日々の業務に生かせるとは限りません。

学んだことがそれきりになってしまい、研修が単なる業務をしない日になってしまうことは多々あります。

研修の終え方が始め方と同じくらい重要だということを、気づいていない人は一定数存在します。

研修の終わりは、時間が押してしまった時などは焦って混乱した状態にもなりがちです。アンケートを取るなどの事務的段取りもこなさなくてはなりません。研修の終わりの場面で印象に残る締めくくりができるよう、設計には十分に注意を払う必要があります。

抑えるべきポイントをいくつか紹介します。

  • 重要なポイントはおさらいをしましょう。その日学んだ内容の復習は重要です。スライドや冊子でその日の学んだ内容を箇条書きで表示しましょう。
  • 参加者に研修での気づきを書き出させましょう。
  • 参加者にアクション・プランを作らせましょう。
  • 参加者に、最初に取り組む課題をカレンダーに記入してもらいましょう。
  • 時間内に事務的な作業を済ませましょう。
  • ポジティブな雰囲気で研修を終えましょう。

ここまでご紹介してきたように、脳科学には人材育成と密接な関係性を持っている点が多いです。脳科学の観点から私達も重視している部分ですので、研修をプログラムされる際の参考にしてください。

WONDERFUL GROWTHでは、研修プログラムの構築に学術的観点からも多くのヒントを得て制作しております。

具体的な事例や学術的根拠など、すでに立証されている人材開発に使えるノウハウを駆使して研修プログラムの最適化を図ります。

私たちWONDERFUL GROWTHでは、企業様・その社員のひとりひとりに向き合うことを大切にしており、企業の課題ごとにカスタマイズしたプログラムの提供が可能となっております。

またWONDERFUL GROWTHはサービスを通じて、「学ぶことそのもの自体が楽しい」と思っていただける「学習定着」を重要視しておりますので、学ぶ内発的動機を形成することを実現します。

少しでも気になった方はお気軽にお問い合わせくださいませ。

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