Insights

モスバーガーに学ぶ現場教育と定着の仕組み|未経験者が育ち、長く働ける職場のつくり方

人手不足が深刻な外食業界で、モスバーガーはなぜ人が育ち、長く働き続けるのでしょうか。教育体系「モスアカデミー」やエンゲージメント調査、健康経営など公開情報をもとに、現場が育ち定着する組織づくりの要点と、自社への活かし方を解説します。

公開日
2026/07/22
更新日
2026/07/22
読了時間
7
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
人材育成離職防止組織開発エンゲージメント外食業界

なぜ今、モスバーガーの組織づくりが注目されるのか

人手不足が深刻な外食業界にあって、モスバーガーを展開するモスフードサービスは、現場の人材を育て、長く働き続けてもらう組織づくりに定評があります。その背景には、創業以来の理念と、それを支える具体的な仕組みの両輪があります。まずは、業界が置かれた状況から確認します。

外食業界を襲う構造的な人手不足

厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」によると、令和4年3月に卒業した大学卒業者の就職後3年以内の離職率は全体で33.8%ですが、宿泊業・飲食サービス業は55.4%と、業種別で最も高い水準にあります。採用しても半数以上が3年以内に離れていく構造のなかで、人が育ち定着する組織をどうつくるかは、外食企業に共通する経営課題です。

モスが掲げる「心と科学」の両輪

モスフードサービスの経営理念は「人間貢献・社会貢献」です。創業者の櫻田慧氏は、かねて「心と科学の両方が重要だ」と語っていました。理念を掲げるだけでなく、店舗運営の課題をデータで分析し、合理的に打ち手を定める。この両輪こそが、モスの組織づくりの土台になっています。経営陣も、人材育成という経営の土台を固めることがチェーンの強さを生む最大の要因だと語っています(日経トップリーダーによる経営者インタビュー)。

現場が育つ教育の仕組み

教育体系「モスアカデミー」で育成と定着をつなぐ

モスグループは、教育・研修体系の全体を「モスアカデミー」と総称しています。その目的は、活躍する人材の育成と定着を同時に実現することにあります。研修は年代・役職・テーマ別に用意され、内容は毎年見直されます。育成を単発の研修で終わらせず、体系として運用している点が特徴です。

学びのきっかけを広げ、キャリアを選べるようにする

モスフードサービスでは、通信教育や外部機関の講座を社員が選んで学べる「モスゼミ」を用意し、自発的に学ぶきっかけを提供しています。加えて、異動希望を申告できる「自己申告制度」、多国籍な環境で経営を英語で学ぶ「国際大学派遣制度」、海外拠点で1年間働く「海外インターンシップ派遣制度」など、手を挙げた人にキャリアを広げる機会が開かれています。学びと挑戦の場を用意することは、成長意欲の高い人材の定着に直結します。

加盟店の現場力と次世代を育てる

店舗を支える加盟店に対しても、店舗の責任者を対象とした「ベーシック研修」や「出張ベーシック研修」で、労働安全や傷病者対応などを学ぶ機会を設けています。さらに、加盟店オーナーの高齢化に備え、30〜40代の若手を対象とした「次世代オーナー育成研修」を実施し、現場のリーダーを計画的に育てています。本部と加盟店が危機感を共有し、商品の作り方をおさらいする「製造勉強会」を行うなど、現場の基本を繰り返し磨く姿勢も一貫しています。

人が辞めない職場をつくる定着の仕組み

エンゲージメントを四半期ごとに測り、改善する

モスフードサービスは、2023年から従業員エンゲージメント調査を導入しました。経営理念への共感、働きやすさ、仕事のやりがいなどの度合いを四半期ごとに測定し、その結果をもとに組織課題を解決する継続的な改善サイクルを回しています。従業員の状態を定点観測し、勘や経験だけに頼らずに手を打つ姿勢にも、「心と科学」の発想が表れています。

健康経営とダイバーシティで働きやすさを整える

働き続けられる土台として、モスは健康経営にも力を入れています。2022年に「健康宣言」を定め、保健師による健康相談室を毎月開設し、外部委託のメンタルケア窓口やストレスチェックの活用を続けています。こうした取り組みが評価され、経済産業省と日本健康会議による「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に、2020年から7年連続で認定されています。多様な働き方の面でも、女性活躍推進の状況が優良な企業に与えられる「えるぼし認定」で最高位の3つ星を取得し、女性の育児休業の利用率・復職率100%を継続しています。障がいのあるメンバーを「チャレンジメイト」と呼び、特例子会社のモスシャインを通じて活躍の場を広げるなど、多様な人材が働き続けられる環境づくりを進めています。

働きに報い、選べる働き方を用意する

定着には、報いる仕組みと働き方の柔軟性も欠かせません。モスフードサービスは、正社員に業績連動の賞与を年2回支給するほか、勤続や等級に応じた退職金制度を設けています。さらに、社員が中期経営計画への参画意識を持てるよう、株式付与ESOP信託による従業員インセンティブも導入しています。オフィスはフリーアドレス化などのリニューアルを実施し、部門を越えたコミュニケーションと自律的な働き方を後押ししています。頑張りが報われ、働き方を選べる環境が、長く働き続ける動機を支えます。

対話を土台にした評価と、現場との直接対話

モスの評価制度は、業績評価と、行動特性を評価する「モスバリュー評価」で構成されています。同社は評価を、社員を査定するためだけのものではなく、一人ひとりを成長に導く仕組みだと位置づけ、その基本は上長とメンバーの対話にあるとしています。対話が深まれば心理的安全性が高まり、率直な意見交換が育成や業務改善につながるという考え方です。経営トップ自らが社員との「ランチミーティング」や、現場で働くキャストとの「キャストミーティング」を重ね、直接対話を絶やさない姿勢も、現場の声を経営に生かす仕組みとして機能しています。こうした積み重ねの一つの表れとして、モスフードサービス単体の平均勤続年数は14.3年に達しています(2026年3月期・有価証券報告書)。

自社の育成と定着にどう活かすか

モスの規模や歴史をそのまま再現する必要はありません。他社が取り入れられる要点は、次の3つに整理できます。

  • 理念を「掲げる」だけで終わらせない。理念と数値分析の両輪で、現場の課題に具体的な打ち手を用意します。
  • 育成と定着を分けて考えない。教育体系・エンゲージメント調査・健康経営を、一つのつながった仕組みとして設計します。
  • 評価や面談を「査定の場」から「対話の場」へ変える。対話の質を高めることが、心理的安全性と定着の土台になります。

自社を振り返る問いとして、次の3点を確認してみてください。

  • 理念やビジョンを、行動と数値の両面から現場に落とし込めているか。
  • 育成施策と定着施策が、別々ではなく一つの流れとして設計されているか。
  • 評価や面談が、一方的な査定ではなく双方向の対話になっているか。

まとめ

モスバーガーの強さは、特別な一つの施策にあるのではなく、理念と仕組みを両輪で回し続けているところにあります。「モスアカデミー」による体系的な育成、四半期ごとのエンゲージメント調査、健康経営やダイバーシティ、そして対話を土台にした評価。これらが積み重なることで、現場が育ち、長く働き続けられる組織が形づくられています。自社でも、理念とデータ、育成と定着を一体で捉えることから始めてみてください。

ワンダフルグロースでは、企業の理念浸透から研修体系の設計、定着に向けた組織づくりまでを一貫して支援しています。自社の人材育成と定着の仕組みづくりにご関心のある方は、以下より資料をご請求ください。

資料請求・お問い合わせはこちら

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

Related Download

研修プログラム カタログ

WG が提供するテーマ別研修プログラム 18 種の全容・カリキュラム・対象者をまとめた資料です。

✦ SHARE with カイシャの育成論

メディアでも、深く発信しています。

自社メディア『SHARE with カイシャの育成論』では、企業インタビューと人事用語辞典を通じて、より深い知見をお届けしています。