退職者の8割超が「本当の理由」を告げていない
株式会社ハッカズークが1年以内に退職したビジネスパーソン574人を対象に実施した「退職理由の本音と建前に関する実態調査」によると、退職者の88%が本音の退職理由を会社に告げず、「家庭の事情」などの建前を伝えて退職していることがわかりました。会社に伝えた建前の退職理由は「家庭の事情」(48%)、「別の業界にチャレンジしたい」(40%)が上位を占める一方、本音の退職理由としてこれらを挙げた人はそれぞれ13%、18%にとどまり、建前と本音には大きな乖離があります。
さらに20代に注目すると、本音の退職理由として「社風・風土が合わない」(22%)、「成長の実感がなかった」(17%)を挙げる割合が、30代以上(それぞれ7%、2%)の8.5倍に達しています。そして、本音を会社に伝えなかった理由として20代が最も多く挙げたのは、「上司に話しても理解してもらえないと思ったから」(65%)でした。
退職者の88%は、本音の退職理由を会社に告げていない(株式会社ハッカズーク「退職理由の本音と建前に関する実態調査」)
つまり、退職面談(エグジットインタビュー)でどれだけ丁寧にヒアリングをしても、多くの場合、そこで語られるのは本音ではなく建前です。人事や上司が「退職理由」として把握している情報の多くは、実態とずれている可能性があります。
エグジットインタビューだけでは遅い理由
株式会社リクルートマネジメントソリューションズが実施した「若手の離職実態調査2026」では、社会人1〜3年目のうち、離職を想起した経験がある人の割合は約6割にのぼりました。つまり、多くの若手社員が在籍中に一度は「辞めたい」と感じています。
退職の意思が固まってからのヒアリングでは、すでに本人の決断は終わっており、会社にできることはほとんど残っていません。退職を防ぐための対話は、「辞めたい」と感じ始めた段階、あるいはその手前で行う必要があります。退職者ではなく、今まさに働いている社員に目を向ける手法、それが「ステイインタビュー」です。
「ステイインタビュー」とは何か
ステイインタビューとは、退職の意思を表明していない在籍中の社員を対象に、「なぜここで働き続けているのか」「何が変わったら会社を辞めたいと思うか」を尋ねる対話型の面談です。人事評価や目標管理のための面談とは異なり、パフォーマンスを評価する場ではなく、社員の本音とエンゲージメント要因を把握するための場です。
主な目的は次の三つです。第一に、社員が仕事に満足し、定着している理由を具体的に言語化すること。第二に、離職につながりかねない不満や懸念を、本人が退職を決意する前の段階で把握すること。第三に、上司と部下の間に、本音を話しても不利益がないという信頼関係を築くことです。
ステイインタビューを機能させる5つの実践ステップ
ステップ1:対象者とタイミングを設計する
全社員に一律で実施しようとすると、運用が形骸化しやすくなります。まずは、離職した場合の影響が大きい中核人材や、入社1〜3年目の社員、異動・昇格直後の社員など、優先度の高い層から着手することが現実的です。実施のタイミングは、人事評価面談と切り離し、年に1〜2回、負荷の少ない時期に設定します。
実施チェック:対象者の優先順位と実施時期を、評価スケジュールと重ならない形で決めていますか。
ステップ2:質問はオープンクエスチョンで設計する
「はい」「いいえ」で終わる質問ではなく、本人の言葉で語ってもらえる問いを用意します。たとえば「毎朝出社するとき、何が原動力になっていますか」「今の仕事で最もやりがいを感じる瞬間はどんなときですか」「もし転職を考えるとしたら、その理由は何だと思いますか」といった質問です。評価や人事考課に直結する質問を混在させると、本音を話しにくくなるため避けます。
実施チェック:質問項目に、評価・考課を連想させる内容が紛れ込んでいませんか。
ステップ3:直属の上司が実施し、人事はガイドを設計する
ステイインタビューは、日常的に接点のある直属の上司が行うことで、より実態に即した対話になります。ただし、上司が独自の判断で進めると、詰問のような雰囲気になったり、聞くべき内容が抜け落ちたりする恐れがあります。人事は質問リストと進行の手引きを用意し、上司には傾聴を中心とした進め方の研修を実施します。
実施チェック:上司に対して、質問リストと傾聴の進め方を事前に共有していますか。
ステップ4:得られた声を記録し、組織課題として集約する
個々の面談内容は、上司の記憶や主観だけに留めず、簡潔な記録として残します。そのうえで人事が定期的に内容を集約し、部署単位・階層単位での傾向を分析します。個人が特定される形での共有は避けつつ、組織として繰り返し挙がる課題を可視化することが目的です。
実施チェック:面談内容を個人の記憶に依存させず、人事が集約・分析できる仕組みになっていますか。
ステップ5:フィードバックをアクションに変え、本人に還元する
面談で挙がった要望や懸念について、対応する場合はもちろん、対応が難しい場合も、検討した結果を本人に伝えます。聞きっぱなしで終わると、次回以降の面談で本音が語られなくなり、制度そのものが形骸化します。
実施チェック:面談で出た意見に対して、対応の可否を含めた返答を本人に行っていますか。
導入時に注意したいこと
ステイインタビューは、年1回のイベントとして単発で実施しても効果は限定的です。日常的な1on1ミーティングとは目的を分けたうえで、両者を補完的に運用することが望まれます。また、経営層がこの取り組みを「コスト」ではなく「定着への投資」として位置づけ、上司が面談に十分な時間を割けるよう配慮することも欠かせません。
退職者の本音は、辞めた後では取り戻せません。在籍している社員に、いま何を感じているかを尋ねる仕組みを持つことが、離職の予兆を早期につかむ最も確実な方法です。
- 出典:株式会社ハッカズーク「退職理由の本音と建前に関する実態調査」
- 出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「若手の離職実態調査2026」
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Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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