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更年期離職とは?背景と企業に求められる職場支援を解説
はじめに
管理職や専門職として経験を積んだ人材が、四十代後半から五十代にかけて体調を理由に職場を離れる。その背景に更年期の症状があるにもかかわらず、本人も周囲も理由を言い出せないまま退職に至る事例が少なくありません。こうした状況を指す言葉として、更年期離職という表現が用いられるようになりました。本記事では、更年期離職の意味と社会的な背景、企業に求められる職場支援の考え方を解説します。
更年期離職とは?
更年期離職とは、更年期に伴う心身の不調が原因で、就業の継続が困難となり退職や役割の縮小に至ることを指します。更年期とは、閉経の前後およそ五年ずつ、合わせて十年程度の期間を指し、日本人女性の平均的な閉経年齢はおよそ五十歳とされています。この時期は卵巣機能の低下により女性ホルモンの分泌が急激に減少し、のぼせ、発汗、不眠、倦怠感、気分の落ち込み、集中力の低下といった多様な症状が現れやすくなります。症状の重さには大きな個人差があり、日常生活に支障が出る状態は更年期障害と呼ばれます。留意すべきは、これが女性だけの課題ではないことです。男性にも加齢に伴う男性ホルモンの減少による同様の不調があり、近年は男性更年期として認識が広がっています。経済的な影響も試算されています。二〇二一年に公表された調査では、更年期症状による離職に伴う経済損失は男女合わせておよそ六千三百億円と推計されました。当該年代は管理職や熟練人材が集中する層であり、その離職は組織にとって単なる欠員以上の意味を持ちます。
更年期離職がよく使われるシーン
健康経営や女性活躍推進の取り組みを検討する場面で取り上げられます。女性管理職比率の向上を目指す企業にとって、候補となる年代がこの時期に重なるため、支援の有無が施策の成否に影響します。両立支援制度の設計でも論点になります。育児や介護との両立支援に比べ、更年期に関する制度整備は遅れている企業が多く、既存の休暇制度や柔軟な働き方の仕組みを、この課題にも使える形に整えられるかが問われます。産業保健の領域では、健康診断や産業医面談、ストレスチェックの結果を踏まえた対応の中で話題に上ります。管理職研修でも扱われます。部下からの体調の相談に対し、詮索や決めつけをせずに受け止め、適切に産業医や人事へつなぐ対応が求められるためです。
更年期離職を理解することの重要性
理解の意義は、防ぎ得る人材の流出を防ぐ点にあります。更年期の症状は、適切な治療や働き方の調整によって多くの場合は緩和が見込めます。にもかかわらず離職に至るのは、症状が更年期によるものだと本人が気づいていない、相談できる相手がいない、休みを取ると評価に響くと感じている、といった環境側の要因が重なるためです。つまり職場の対応次第で結果は変わり得ます。支援にあたって重要なのは、特別扱いではなく、使いやすい仕組みを整えることです。時間単位の休暇、フレックスタイム制、テレワークといった既存の制度は、更年期の不調にも有効に働きます。制度の名称に特定の症状を掲げると、かえって利用をためらわせることがあるため、幅広い体調不良に対応できる設計が現実的です。一方で慎重さも必要です。年齢や性別を手がかりに個人の体調を推測することは、本人の尊厳を損ない、差別的な取り扱いにつながるおそれがあります。健康情報は機微な個人情報であり、取得と共有の範囲は本人の同意に基づいて限定しなければなりません。企業が担うべきは、原因を詮索することではなく、誰もが不調を申し出やすく、必要な調整を受けられる状態をつくることです。