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採用とマーケティングを統合する「採用マーケティング」実践ガイド

「募集しても応募が集まらない」「内定を出しても辞退されてしまう」。こうした実感は、いま多くの企業に共通する悩みです。帝国データバンクの調査では、2026年1月時点で正社員の人手不足を感じる企業は52.3%にのぼり、1月としては4年連続で5割を超えました。

公開日
2026/05/30
更新日
2026/05/30
読了時間
8
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
採用マーケティング候補者体験定着

人手不足52.3%時代に応募を集め、定着まで設計する5つのステップ

対象読者:人事担当者・経営層 / カテゴリ:採用 / 2026年5月

「募集しても応募が集まらない」「内定を出しても辞退されてしまう」。こうした実感は、いま多くの企業に共通する悩みです。帝国データバンクの調査では、2026年1月時点で正社員の人手不足を感じる企業は52.3%にのぼり、1月としては4年連続で5割を超えました。厚生労働省の統計でも有効求人倍率は1.18倍(令和7年11月)と、求人が求職者を上回る「売り手市場」が続いています。

さらに新卒採用では、内定辞退率が65.1%(2025年卒・12月1日時点)に達しています。いまの採用は「採れない」だけでなく「決まらない・選ばれない」という二重の難しさを抱えているのです。

この環境で成果を出すために注目されているのが、マーケティングの発想を採用に取り入れる「採用マーケティング」という考え方です。本記事では公的データをもとにその本質を整理し、明日から実践できる5つのステップを、各ステップの「実施チェック」とともにご紹介します。

なぜ今、採用マーケティングが必要なのか

まずは、いまの採用環境を主要なデータで確認します。これらはいずれも、現場の実感を裏づける公的・主要調査の数値です。

指標

数値

出典(公的・主要調査)

正社員の人手不足を感じる企業

52.3%

帝国データバンク(2026年1月)

有効求人倍率(季節調整値)

1.18倍

厚生労働省(令和7年11月)

新卒の内定辞退率

65.1%

リクルート就職みらい研究所(2025年卒)

大卒の3年以内離職率

33.8%

厚生労働省(令和4年3月卒)

人手不足はもはや一時的な現象ではありません。帝国データバンクによれば、業種別では建設業が69.6%、情報サービスが69.2%と、特に深刻な状況です。2025年には従業員の退職を一因とする倒産が124件と過去最多を記録しており、人材を確保・定着できないことが事業継続を脅かす段階に入っています。

一方で、採用にかかる費用も上昇しています。各種調査によれば、1人あたりの採用単価は新卒で約90〜120万円、中途で約80〜100万円が目安とされ、増加傾向にあります。多額のコストをかけて採用しても、内定辞退や早期離職が起きれば、その投資は回収できません。

ここで一つ、見落とされがちな視点があります。採用における競合は、同業他社だけではないということです。候補者には「いまの会社にとどまる」「まったく別の会社を選ぶ」という選択肢が常にあります。だからこそ、母集団を一度に増やす一発勝負ではなく、候補者の意思決定の流れ全体に働きかける設計が必要になります。これが採用マーケティングの出発点です。

採用マーケティングとは何か

採用マーケティングとは、マーケティングの考え方と手法を採用活動に応用し、自社が求める人材に「認知され、興味を持たれ、応募され、入社・定着される」状態を計画的につくる取り組みです。候補者を「顧客」と捉え、その体験を一貫して設計する点に特徴があります。

採用を「点」ではなく「線」で捉える

採用マーケティングでは、候補者との関係を次のような流れ(採用ファネル)で捉えます。認知 → 興味・関心 → 応募 → 選考 → 内定承諾 → 入社 → 定着・活躍、という一連のプロセスです。従来の採用が「求人を出して応募を待つ」という母集団形成に偏りがちだったのに対し、採用マーケティングは各段階の歩留まりを数値で把握し、どこに問題があるかを特定して改善します。

候補者体験(CX)が「選ばれる会社」を決める

応募のしやすさ、連絡の速さ、面接官の対応——その一つひとつが候補者体験(キャンディデイト・エクスペリエンス)です。内定辞退率が65.1%にのぼる背景には、選考のスピードや体験の質が影響していると考えられます。良い体験は、入社の意思決定だけでなく、入社後の信頼関係にもつながります。

ゴールは「内定承諾」ではなく「定着・活躍」

採用マーケティングで最も大切な発想は、ゴールを内定承諾ではなく入社後の定着・活躍に置くことです。大卒の3年以内離職率が33.8%(厚生労働省)にのぼる現実を踏まえれば、採って終わりでは投資が無駄になります。採用と育成・定着を一続きのものとして設計することが、結果的にコストを最適化します。

採用マーケティングを機能させる5つのステップ

ここからは、採用マーケティングを実務に落とし込むための5つのステップを順に解説します。各ステップの末尾に「実施チェック」を添えていますので、自社の現状確認にお使いください。

ステップ1 採用ペルソナと提供価値(EVP)を定義する

最初に、「誰に来てほしいのか」「その人に自社は何を提供できるのか」を言語化します。求める人物像(ペルソナ)は、スキルや経験だけでなく、価値観や仕事への動機まで具体的に描きます。あわせて、自社で働く魅力をまとめたEVP(従業員に提供する価値)を、給与・成長機会・働き方・理念などの中から重要な3点に絞って明確にします。ここがあいまいだと、以降のすべての発信がぼやけてしまいます。

実施チェック □ 求める人物像を「スキル・経験」だけでなく「価値観・動機」まで具体化したか □ 自社で働く魅力(EVP)を、競合と比べて3点に整理したか □ その魅力は、いま活躍している社員の実感と一致しているか

ステップ2 採用ファネルとKPIを可視化する

次に、認知から定着までの各段階に数値目標(KPI)を置き、歩留まりを測ります。たとえば、応募数、書類選考の通過率、面接の通過率、内定承諾率、入社後の定着率などです。段階ごとの数値を並べると、候補者がどこで離脱しているか(ボトルネック)が見えてきます。改善は、最も離脱の大きい段階から着手するのが効率的です。

実施チェック □ 採用プロセスを段階に分解し、各段階の人数と通過率を記録しているか □ 最も離脱が大きい段階(ボトルネック)を特定したか □ 採用単価(1人あたりコスト)と、充足までの期間を把握しているか

ステップ3 候補者体験(CX)を設計する

応募から内定までの体験を、候補者の視点で見直します。応募フォームは入力しやすいか、連絡は迅速か、面接官の対応は誠実か。とくに連絡のスピードは、辞退を防ぐうえで重要です。また、求人票には仕事の魅力だけでなく、実態を率直に伝えるRJP(現実的な情報提供)の視点を取り入れると、入社後のミスマッチと早期離職を減らせます。

実施チェック □ 応募から一次連絡までの時間を「24時間以内」など基準化したか □ 求人票に、魅力だけでなく仕事の実態(RJP)も記載したか □ 面接を「見極めの場」だけでなく「動機づけの場」として設計したか

ステップ4 チャネルを最適化し、自社発信を育てる

求人媒体、人材紹介、リファラル(社員紹介)、オウンドメディア(採用サイトやSNS)など、チャネルごとに費用対効果を比較し、配分を見直します。広告に依存しすぎず、社員インタビューや現場の様子といった「自社で語れる発信」を継続的に蓄積していくことが、中長期で採用力を高めます。発信は一度きりではなく、更新を続けることに意味があります。

実施チェック □ チャネル別の応募数・採用数・コストを比較し、配分を見直したか □ リファラル採用を促す仕組み(依頼の働きかけや社内周知)があるか □ 自社の魅力を伝える発信(採用サイト・SNS等)を継続的に更新しているか

ステップ5 入社後オンボーディングと定着までを採用に含める

採用は内定承諾で終わりではありません。入社後の受け入れ(オンボーディング)と、早期の育成・フォローまでを一連の設計に含めます。最初の3か月・6か月の立ち上がりを支える体制があるかどうかで、早期離職の有無は大きく変わります。早期離職を防ぐことは、採用コストを守ることと同じ意味を持ちます。

実施チェック □ 入社後3か月・6か月の立ち上がり目標とフォロー体制を決めているか □ 配属先の上司・先輩が、受け入れの役割を理解しているか □ 早期離職の理由を記録し、採用基準や選考に反映する仕組みがあるか

よくある3つの落とし穴

母集団を増やせば解決する、という誤解。応募数だけを追うと、ミスマッチや選考の負荷が増え、かえって歩留まりが下がります。数より質と通過率を重視しましょう。

採用と育成・定着の分断。採って終わりにすると、早期離職(大卒33.8%)によって採用コストが無駄になります。入社後までを一気通貫で設計することが重要です。

数字を測らないこと。勘と経験だけでは改善の方向が定まりません。各段階のKPIを記録し、定期的に振り返る習慣をつくりましょう。

まとめ

採用難は構造的であり、求人を出して待つだけでは選ばれません。採用マーケティングは、候補者を顧客と捉え、認知から定着までを一連のプロセスとして設計する考え方です。ペルソナとEVPの定義、ファネルとKPIの可視化、候補者体験の設計、チャネルの最適化、そして入社後の定着までを結びつけることで、限られたコストでも「選ばれる会社」へ近づけます。まずは自社の採用プロセスを段階に分解し、どこにボトルネックがあるかを一つ可視化することから始めてみてください。

出典・参考

帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)」

厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年11月分)」

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」

リクルート就職みらい研究所「就職プロセス調査(2025年卒・2024年12月1日時点)」

採用単価の水準は、各種民間調査・推計に基づく一般的な目安です。

人材を「採る」から「定着・活躍させる」へ WONDERFUL GROWTHは、採用した人材の早期戦力化と定着を支える研修・人材育成プログラムをご提供しています。自社に合う育成設計のご相談や、サービス資料のご請求を承ります。資料請求・お問い合わせはこちら:https://wonderful-growth.com/contact

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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