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企業向け研修サービス市場の動向と、研修投資の考え方

国内の企業向け研修サービス市場は、2025年度に前年度比3.7%増の6,075億円と推計されています(矢野経済研究所)。伸びを支えるのは、AIやデータ分析のスキル不足と、人的資本開示を機に育成を投資と捉える見方の広がりです。世界市場との比較、成長分野、研修投資を生かすための要点をまとめました。

公開日
2025/05/28
更新日
2026/09/28
読了時間
約 15 分
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
外部研修リスキリングDX

人材開発やスキルアップの重要性が高まる中、企業向け研修サービス市場も拡大の一途をたどっています。グローバル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速、働き方改革など、企業を取り巻く環境変化が、研修サービスへの需要を押し上げる要因となっています。

企業向け研修サービス市場の現状

グローバル市場規模

調査会社Grand View Researchによると、世界の企業研修市場は2025年に4,273億ドルと推計され、2026年から2033年にかけて年平均成長率(CAGR)7.8%で拡大し、2033年には7,775億ドルに達すると予測されています。

日本市場の規模

一方、日本国内の企業向け研修サービス市場について、矢野経済研究所の調査(2026年8月発表)によれば、2025年度の市場規模は事業者売上高ベースで前年度比3.7%増の6,075億円と推計され、2026年度も同3.7%増の6,300億円に拡大すると予測されています。

日本市場の特徴としては、以下の点が挙げられます:

  • 大企業を中心とした安定した需要
  • 中小企業の研修投資増加傾向
  • オンライン・ハイブリッド型研修の定着
  • DX人材育成への投資拡大

企業の研修投資状況

日本企業の研修投資について、厚生労働省の令和5年度「能力開発基本調査」によると、OFF-JT(職場を離れた教育訓練)に支出した費用の労働者一人当たり平均額は1.5万円でした(令和4年度に費用を支出した企業の平均)。

ただし、日本企業の研修投資は米国などと比べて低い水準にあります。厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析」によれば、GDPに占める企業の能力開発費(OJTを除く)の割合は、2010〜2014年の平均で米国の2.08%に対し、日本は0.10%でした。今後の伸びしろは大きいとも言えます。

市場拡大の主要因

企業研修市場の拡大を後押ししている主な要因は以下の通りです:

テクノロジーの進化とスキルギャップの拡大

デジタル技術の急速な進化により、多くの企業ではスキルギャップが課題となっています。世界経済フォーラム(WEF)の「Future of Jobs Report 2023」によると、2027年までに労働者の10人に6人が研修を必要とする一方、現時点で十分な研修の機会を得られている労働者は半数にとどまるとされています。

特にAI、データ分析、サイバーセキュリティなどの分野では人材需要が供給を大きく上回っており、社内での人材育成の重要性が高まっています。日本国内でも、経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(2019年)では、需要の伸びを高く見込んだ場合、2030年にIT人材が約79万人不足すると試算されており(中位の試算では約45万人)、企業内での育成を強化する動きが広がっています。

リモートワークの定着とラーニングの変容

コロナ禍を経て定着したリモート・ハイブリッドワークは、研修スタイルにも大きな変化をもたらしました。対面研修一辺倒からオンライン学習とのブレンド型研修へのシフトが加速し、研修市場における新たなサービス需要を生み出しています。

時間や場所に縛られないオンライン学習の利便性と、対面でしか得られない体験学習の価値を組み合わせたハイブリッド型研修への需要が高まっています。

人材獲得・定着競争の激化

少子高齢化による労働力人口の減少や転職市場の活性化により、優秀な人材の獲得・定着が企業の重要課題となっています。研修機会の充実は、人材定着の観点からも重要性を増しています。

経営課題としての人的資本経営の台頭

2023年3月期から始まった人的資本開示の義務化を契機に、企業の人材育成への投資が「コスト」から「投資」へと認識が変化し始めています。企業の人的資本に対する投資が株式市場でも評価される流れが強まり、人材育成の取り組みを積極的に開示・アピールする企業が増加しています。

経済産業省が推進する「人的資本経営」の考え方も広がりつつあり、人材育成への戦略的投資が企業価値向上につながるという認識が定着しつつあります。

研修分野別の市場動向

研修の需要は分野によって伸び方が異なり、DX・IT関連のように急増している分野もあれば、専門知識・資格取得支援のように安定して推移している分野もあります。

リーダーシップ・マネジメント研修

特徴:

  • 中間管理職向けプログラムの需要拡大
  • 若手リーダー早期育成ニーズの高まり
  • リモートマネジメントスキル研修の増加

リーダーシップ・マネジメント研修では、近年、管理職の早期登用や女性管理職の育成などニーズの多様化が進み、カスタマイズ型のプログラム需要が増加しています。

DX・IT関連研修

特徴:

  • AIリテラシー・データ分析スキル研修の急増
  • デジタル人材育成の全社的展開
  • エンジニア向け高度専門研修の需要拡大

DX推進の加速に伴い、IT部門だけでなく全社的なデジタルスキル底上げのための研修需要が急増しています。特にAI活用やデータ分析に関する基礎スキル研修は、多くの業種で実施されるようになっています。

ヒューマンスキル研修

特徴:

  • コミュニケーション力強化研修の定着
  • レジリエンス・ウェルビーイング関連プログラムの増加
  • 多様性理解・インクルージョン促進研修の拡大

AIやテクノロジーの進化に伴い、むしろ人間固有のスキルの重要性が高まっています。非認知能力(ソフトスキル)の開発を目的とした研修への投資が増加傾向にあります。

専門知識・資格取得支援

特徴:

  • ファイナンス・法務・コンプライアンスなど専門分野の研修ニーズ安定
  • 業界特化型専門研修の需要堅調
  • eラーニングによる資格取得支援サービスの拡大

法改正や規制変更に対応するための専門知識習得ニーズは安定しており、特に金融・医療・建設などの規制産業では継続的な専門研修需要があります。

グローバル人材育成研修

特徴:

  • オンライン英会話・語学研修の定着
  • 異文化理解・多様性対応力強化ニーズの増加
  • バーチャル海外研修プログラムの登場

コロナ禍による海外渡航制限の影響を受けたものの、オンラインを活用したグローバル人材育成は継続されています。特に日本企業の海外事業拡大に伴い、語学だけでなく異文化対応力を高める研修ニーズが高まっています。

地域別・業種別の市場特性

地域別の市場特性

北米市場

  • 市場規模:世界最大(2025年の世界市場に占める割合は37.8%、Grand View Research)
  • 特徴:テクノロジー活用が最も進んでおり、AIを活用したパーソナライズド・ラーニングやマイクロラーニングなど革新的サービスの開発が活発

欧州市場

  • 特徴:政府主導のスキル開発政策が充実しており、企業と教育機関の連携による研修が普及

アジア太平洋地域

  • 成長率:地域別で最も高いと予測(Grand View Research、2026〜2033年)
  • 特徴:中国・インドを中心に急成長中、特にIT・デジタルスキル研修の需要が旺盛

日本市場

  • 市場規模:6,075億円(2025年度、事業者売上高ベース、矢野経済研究所)
  • 特徴:従来型の階層別研修が根強く残る一方、DX人材育成やリスキリング需要が急増中

業種別の市場特性

金融・保険業

  • 特徴:コンプライアンス研修の必須化、フィンテック人材育成の強化

製造業

  • 特徴:DX・IoT関連スキル習得、グローバル人材育成ニーズが高い

IT・通信業

  • 特徴:最新技術対応の専門研修、エンジニア定着のためのキャリアパス構築支援

小売・サービス業

  • 特徴:接客品質向上、店舗マネジメント人材育成が中心

医療・ヘルスケア

  • 特徴:専門スキル更新研修、チーム医療推進のためのコミュニケーション研修需要増

企業規模別に見ると、大企業では体系的な研修体系の構築や研修のデジタル化投資が進む一方、中小企業では即効性のある実践的研修や、外部研修リソースの効率的活用へのニーズが高まっています。

将来予測:今後の市場展望

企業研修市場は国内外ともに拡大が予測されており、AIの活用などにより、伸びる分野や研修の手法にも変化が見込まれています。

市場規模の予測

グローバル市場

  • 2033年予測:7,775億ドル(Grand View Research)
  • CAGR:7.8%(2026〜2033年)

日本市場

  • 2026年度予測:6,300億円(矢野経済研究所、事業者売上高ベース)
  • 前年度比:3.7%増

注目される成長分野

1. AIスキル開発プログラム 特徴:生成AIの業務活用、プロンプトエンジニアリング、AIリテラシーなど全社的なAIスキル底上げ研修の普及

2. パーソナライズド・ラーニング 特徴:AI技術を活用した個別最適化学習、学習者の行動データに基づく推奨システムの普及

3. イマーシブラーニング(AR/VR/メタバース活用) 特徴:仮想環境での実践的トレーニング、特に危険作業や高度専門職のシミュレーション研修での活用拡大

4. リスキリングプラットフォーム 特徴:企業内人材の再配置・育成を支援する総合的なプラットフォームサービスの普及

5. ウェルビーイング・メンタルヘルス研修 特徴:メンタルヘルス対策、レジリエンス強化、ワークライフインテグレーション支援など総合的なウェルビーイングプログラムの拡大

AIやLXP、学習分析が研修の形を変える

1. AI/機械学習の研修への本格導入

  • AI講師によるパーソナライズド・フィードバック
  • 学習進捗予測と最適な学習パスの自動生成
  • 会話型AIを活用した実践的コミュニケーション訓練

2. 学習エクスペリエンスプラットフォーム(LXP)の主流化

  • 従来のLMS(学習管理システム)からLXP(学習体験プラットフォーム)へのシフト
  • 社内外の学習リソースを統合した総合的学習環境の構築
  • ソーシャルラーニング機能の充実

3. マイクロクレデンシャルの普及

  • 細分化されたスキル単位での認定制度の普及
  • 社内スキル認定制度と連動したキャリアパス設計
  • デジタルバッジ等による可視化・共有の促進

4. 学習分析(ラーニングアナリティクス)の高度化

  • 詳細な学習行動データの収集と分析
  • 研修ROIの精緻な測定手法の確立
  • 予測分析による効果的な人材育成投資の最適化

5. アジャイルラーニングの浸透

  • 短期サイクルでの学習と実践の反復
  • 業務の中での学習(ラーニング・イン・ザ・フロー・オブ・ワーク)の促進
  • 即時フィードバックと継続的改善の文化構築

効果的な研修投資のためのポイント

研修投資の効果は、投資の規模の決め方と、研修を業務につなげる取り組みで大きく変わります。

研修投資の適正規模の考え方

業界平均値との比較 業界・規模によって研修投資の適正額は異なるため、自社と同じ業界・規模の企業の水準と照らし合わせて検討することが大切です。

投資対効果の測定方法

研修投資の効果測定は難しいとされてきましたが、以下のようなアプローチで定量的・定性的な効果を把握することができます:

カークパトリックの4段階評価モデル

  • レベル1:反応(参加者の満足度・理解度)
  • レベル2:学習(知識・スキルの習得度)
  • レベル3:行動(業務での実践度)
  • レベル4:成果(ビジネス成果への影響)

投資対効果(ROI)の算出 研修による利益向上効果 ÷ 研修コスト × 100 = ROI(%)

間接的指標の活用

  • 従業員エンゲージメントの変化
  • 離職率の変化
  • 内部昇進率の変化
  • 顧客満足度の変化

研修投資を成功させるための実践ポイント

経営戦略と連動した研修計画の策定

  • 中期経営計画と連動した3〜5年の人材育成計画の策定
  • 事業目標の達成に必要な重点スキル領域の特定
  • 経営層の関与と継続的なコミットメントの確保

研修サービスを選ぶときに確かめること

  • カスタマイズ性:自社の課題・文化に合わせた内容調整が可能か
  • 継続性:単発ではなく継続的な学習を促す仕組みがあるか
  • 実践志向:学んだことを実務に活かすための工夫があるか
  • 測定可能性:効果測定の仕組みが組み込まれているか
  • 最新性:最新の学習理論や技術を取り入れているか

研修効果を高める組織的取り組み

  • 上長による研修前後のフォローアップ体制の構築
  • 研修で学んだことを実践する機会の意図的な創出
  • ピアラーニング(同僚同士の学び合い)の促進
  • 学びの文化・風土の醸成と経営層からの発信

研修投資の最適化のためのデータ活用

  • 研修データの体系的な収集と分析
  • スキルインベントリ(社内スキルの棚卸し)の定期的な実施
  • 研修効果の高い社員・部門の特性分析
  • データに基づく研修プログラムの継続的改善

まとめ:今後の研修サービス選定のために

企業研修市場は今後も拡大・進化を続け、単なるスキル習得の場から、組織と個人の持続的成長を支える戦略的投資へと位置づけが変化しています。効果的な研修投資のためには、以下のポイントを押さえることが重要です:

  1. 市場動向の把握:研修サービス市場の最新トレンドを理解し、自社に適した研修手法を選択する
  2. 戦略的アプローチ:単発の研修ではなく、経営戦略と連動した体系的な人材育成計画を策定する
  3. テクノロジー活用:AI、データ分析、モバイル学習など最新テクノロジーを活用した効率的・効果的な研修を導入する
  4. 効果測定の徹底:研修投資の効果を定量的・定性的に測定し、継続的な改善サイクルを回す
  5. 学びの文化構築:単なる研修提供にとどまらず、日常的な学びと成長を促進する組織文化を醸成する

企業研修の在り方は、一方的な知識伝達から、学習者主体の継続的な成長支援へとパラダイムシフトが起きています。この変化に対応し、人材育成を競争優位の源泉として戦略的に位置づけることが、今後の企業成長のカギとなるでしょう。

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本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

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