なぜ今、カジュアル面談が採用の主役になりつつあるのか
カジュアル面談とは、選考の合否を判断する場ではなく、企業と候補者がお互いを率直に知り合うために、面接の前段階などで行うフラットな対話の場を指します。近年、この手法を求職者も企業も強く支持し始めています。
株式会社学情が20代後半から30代の社会人に行った調査(2025年3月発表、有効回答245件)では、カジュアル面談の機会があれば「参加してみたいと思う」が48.2パーセント、「どちらかというと参加してみたいと思う」が32.2パーセントで、合わせて8割以上が参加を希望しました。さらに、面接・選考段階で知りたい情報を得るために活用したいものとしても、「カジュアルな面談・座談会」が68.2パーセントで最多となっています。
企業側の動きも急です。学情の企業向け調査(2025年10月公表)では、中途採用でカジュアル面談を実施する企業は52.4パーセントに達し、前年から15.7ポイント増加しました。実施企業の約7割は、その狙いを「採用のミスマッチ防止」に置いています。厚生労働省の一般職業紹介状況で有効求人倍率が高止まりし、人材の獲得競争が続くなか、企業は「選ぶ側」であると同時に「選ばれる側」でもあるという現実が、この広がりの背景にあります。
「落とす採用」から「上げる採用」へ――発想の転換
従来の面接は、多くの応募者をふるいにかけ、基準に満たない人を落としていく「落とす採用」でした。しかし、母集団の数だけを追い、見極めて絞り込む発想を続けても、応募が細れば採用コストは垂れ流しになりがちです。カジュアル面談が示すのは、これとは逆の「上げる採用」という発想です。すなわち、候補者を落とすためではなく、相互理解を通じて志望度と入社後の活躍可能性を引き上げるために会う、という考え方です。
このとき鍵になるのが、報酬や待遇の高さで候補者を引きつけようとしないことです。給与の多寡だけで動く候補者は、より高い条件を提示する他社にも動きます。そうではなく、自社の弱みと強み、そして本当の魅力を率直に伝え、それに共感する人と出会うことが、長く活躍する採用につながります。市場にいる人を採用して自社でどう活躍してもらうかを一緒に考える姿勢が、結果として採用コストの無駄をなくします。
カジュアル面談がうまくいかない3つの要因
期待して導入しても、成果につながらないケースには共通した要因があります。代表的な3つを整理します。
要因1:実質的な面接になっている
「カジュアル」と銘打ちながら、担当者が見極めモードで質問を重ねてしまうと、候補者はすぐに評価されていると察して身構えます。これでは率直な相互理解という本来の目的が失われ、通常の面接と変わらなくなります。
要因2:目的が「口説き」か「見極め」か曖昧なまま実施している
相互理解の場なのか、優秀な人を口説く場なのか、あるいはこちらが見極める場なのか。目的が定まらないまま実施すると、伝えるべき情報も聞くべきことも定まらず、候補者に中途半端な印象だけが残ります。
要因3:会って終わりで、関係が続かない
一度会って母集団を増やしたことに満足し、その後の接点をつくらないケースです。カジュアル面談は、その場で採否を決めるものではありません。継続的な関係づくりの起点と捉えないと、多くの出会いが一度きりで途切れてしまいます。
カジュアル面談を成果につなげる5つのステップ
ここからは、カジュアル面談を「上げる採用」の武器にするための手順を5つのステップに分けて説明します。各ステップに実施チェックを添えますので、着手前の確認にお使いください。
ステップ1:「誰に、何のために会うか」を先に定義する
はじめに、カジュアル面談を見極めの場ではなく相互理解の場と明確に位置づけます。そのうえで、どのような関心や経験を持つ人に、何を伝え、何を知るために会うのかを言語化します。この場を「自社が求める人物像と、実際に市場にいる人材との乖離を知る機会」と捉えると、面談の一つひとつが採用戦略の学びになります。
- 実施チェック:この面談を選考ではなく相互理解の場とすることを、担当者間で共有できていますか。
- 実施チェック:会いたい人物像と、その人に伝えたい自社の情報を事前に整理できていますか。
ステップ2:面接にしない仕組みを設計する
目的が相互理解である以上、その場で評価や合否を出さないことを原則にします。話す場所や進め方、担当者の姿勢を整え、候補者が緊張せずに本音を話せる雰囲気をつくります。実際、カジュアル面談を実施する企業の多くが、面接のような空気を避け、候補者の緊張を和らげることを意識していると報告されています。一方的に質問するのではなく、候補者の関心に応じて自社を語る対話を心がけます。
- 実施チェック:面談中は評価・合否判断を持ち込まないことを、担当者が理解していますか。
- 実施チェック:候補者が質問しやすいよう、対話の時間配分と進め方を用意できていますか。
ステップ3:自社の弱み・強み・魅力を率直に伝える
カジュアル面談の価値は、通常の選考では聞きにくい情報を率直に共有できる点にあります。良い面だけでなく、いま抱えている課題や向かない人のタイプまで正直に伝えることで、候補者は自分に合うかを判断でき、入社後のミスマッチが減ります。前掲の学情調査では、志望度が上がる情報の最多が「未経験でもやっていけるか(研修や資格サポートについて)」でした。報酬額よりも、成長できる環境や入社後の活躍イメージを語ることが、共感を生む訴求になります。
- 実施チェック:自社の強みだけでなく、課題や向き不向きも率直に伝える準備ができていますか。
- 実施チェック:入社後の育成やキャリアの見通しを、具体的に説明できるよう整理していますか。
ステップ4:面談数をあえて増やし、市場と人物像の乖離を知る
会う数を意図的に増やすことも有効です。多くの候補者と対話することで、自社が求める要件が今の労働市場と合っているのか、どこに乖離があるのかが見えてきます。求める経験を持つ人が市場に少ないと分かれば、要件を見直したり、育成前提の採用に切り替えたりと、採用戦略そのものを現実に合わせて調整できます。面談は採用の手段であると同時に、市場を知る調査の場でもあるのです。
- 実施チェック:面談で得た「求める人物像と市場の差」を記録し、振り返る仕組みがありますか。
- 実施チェック:市場の実態を踏まえて、採用要件を柔軟に見直す前提を持てていますか。
ステップ5:見送り後も関係を続け、活躍イメージを一緒に描く
その場で入社に至らなくても、関係を終わらせない工夫が「上げる採用」を支えます。今回は縁がなくても、将来の候補者としてつながりを保ち、折に触れて自社の情報を届けます。相互理解が深まった相手とは、入社後にどのように活躍できそうかを一緒に描けるようになり、再び接点を持ったときの入社確度が高まります。
- 実施チェック:すぐに採用に至らない候補者と接点を保つ、タレントプールの仕組みがありますか。
- 実施チェック:候補者ごとに、自社での活躍イメージを言語化し共有できていますか。
よくある誤解と留意点
カジュアル面談は選考ではないため、その場で合否を伝えたり評価を持ち込んだりしないことが原則です。ただし、社内では対話の内容を記録し、次の接点に生かす情報共有は欠かせません。労働条件に関わる話題には誠実に対応し、事実と異なる期待を持たせないよう注意します。そして最も大切なのは、「カジュアル」を準備を省く口実にしないことです。誰に何を伝えるかを整えた面談と、行き当たりばったりの面談とでは、その後の選考への移行率に大きな差が生まれます。
まとめ
カジュアル面談は、候補者を落とすための関門ではなく、相互理解によって志望度と活躍可能性を引き上げる「上げる採用」の入り口です。求職者の8割以上が参加を望み、企業の過半が導入する時代において、報酬に頼らず自社の弱みと強み、魅力を率直に伝える姿勢こそが、長く活躍する人材との出会いを生みます。
まずは、目的を相互理解と定め、面接にしない場を設計し、率直に語り、数を重ねて市場を知り、関係を続ける。この5つのステップを小さく回すことから、採用コストの垂れ流しを止め、自社に合う人を着実に迎える採用へと変えていくことができます。
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Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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