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退職者が生じた企業の87.8%で中途入社者も退職――経験者採用の定着を左右する三つの設計

2025年に退職者が生じた企業のうち87.8%で、中途入社の正社員も退職の対象に含まれていました。「即戦力だから大丈夫」という思い込みが早期離職を招く背景と、組織適応研究にもとづく経験者採用の定着に向けた三つの設計を解説します。

公開日
2026/08/11
更新日
2026/08/11
読了時間
7
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
中途採用オンボーディング組織適応離職防止

退職者が生じた企業の87.8%で、中途入社の正社員も退職しています

株式会社マイナビが中途採用業務を担当する人事担当者1,500名を対象に実施した「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(2026年3月27日公表)によると、2025年に正社員の退職者が発生した企業は49.3%にのぼりました。退職者の属性を尋ねたところ、退職者に「中途入社の正社員」が含まれていた企業は87.8%にのぼり、新卒入社の正社員が含まれていた企業の割合を上回りました。

2025年に退職者が発生した企業は49.3%。退職者の属性別では「中途入社の正社員」が87.8%で、新卒社員の正社員よりも多い(マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」より)

同調査では、退職が業務・経営に与えた影響が最も大きい属性として「勤続5年以上の中堅社員(68.8%)」が最多となり、「20代の正社員(66.3%)」「新卒入社の正社員(65.3%)」が続きました。事業変革や人材不足への対応として中途採用を強化する企業が増えるなか、経験者には早期の戦力化と中核人材としての定着が期待されています。同調査によれば、2026年の中途採用については91.1%の企業が積極的な意向を示し、求めるスキルや経験を持つ経験者採用に積極的な企業は74.2%にのぼりました。

厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」でも、令和6年の入職率は14.8%、離職率は14.2%となり、ともに前年を下回ったものの、人材の出入りは引き続き高い水準で推移しています。採用の「入口」への投資が広がる一方で、「入社後にどう定着させるか」という出口側の設計が追いついていない企業は少なくありません。

なぜ「即戦力」のはずの経験者が定着しないのか

株式会社リクルートマネジメントソリューションズが中途入社者1,038名を対象に実施した調査(人材育成学会第21回年次大会発表論文に基づく、2025年7月公開)は、この背景を読み解く手がかりを示しています。同調査は中途入社者を、前職の専門性をそのまま生かす「専門性重視型採用者」と、社会人経験を土台に入社後に新たな知識・スキルを学びながら活躍する「ポテンシャル重視型採用者」の2群に分けて比較しました。その結果、ポテンシャル重視型は専門性重視型に比べて「職務遂行への自信」「認められている実感」「ワーク・エンゲージメント」の得点が有意に低く、組織への適応がより難しいことが分かりました。

さらに注目したいのは、勤続意思やワーク・エンゲージメントといった中長期的な指標の動きです。ポテンシャル重視型の中途入社者では、これらの指標が入社半年から2年目にかけて一度低下し、その後回復する「J字」を描く傾向が確認されています。現場が「入社半年も経てば独り立ちできるだろう」と手を離しがちな時期は、実は本人が最も適応の壁にぶつかっているタイミングと重なっているのです。中途入社者は周囲から「即戦力」を期待されがちですが、実際には前職の経験をそのまま生かせるとは限らず、新しい会社の仕事の進め方や判断基準、社内の人脈を一から築く必要に迫られます。この期待と実態のギャップこそが、早期離職の一因になっていると考えられます。

経験者採用の定着を左右する三つの設計

設計1:「即戦力の範囲」を採用前にすり合わせる設計

中途入社者を「専門性重視型」で迎えるのか、「ポテンシャル重視型」で迎えるのかによって、入社後に必要な支援は大きく異なります。この整理を選考段階で曖昧にしたまま入社を迎えると、現場は「即戦力だから任せて大丈夫」と考え、本人は「一から学ぶ前提だと思っていた」とすれ違ったまま、双方が孤立してしまいます。

  • 実施チェック:募集要項・採用要件に、即戦力として任せる業務範囲と、入社後の習得を前提とする業務範囲を分けて明記したか
  • 実施チェック:内定から入社日までの間に、配属先の上司と「入社後3カ月で期待すること」をすり合わせる場を設けたか
  • 実施チェック:入社初週のうちに、本人と上司が期待値のズレを言葉にしてすり合わせたか

設計2:「上司の関わり」を仕組み化する設計

前出のリクルートマネジメントソリューションズの分析では、組織適応を促す要因として「上司の関わり」「職場の風土」「本人のプロアクティブ行動」「本人のプロアクティブな性格特性」の4つが挙げられており、なかでも「上司の関わり」は短期的な適応への直接的な効果に加え、職場の風土づくりや本人の主体的な行動を引き出す間接的な効果も併せ持つことが示されています。「中途入社者なのだから経験もあるし、放っておいても自分でなんとかするだろう」という思い込みを、属人的な気配りに頼らず仕組みで断ち切ることが、定着の起点になります。

  • 実施チェック:入社後1カ月は週1回、その後3カ月までは隔週で、直属の上司との1on1を予定に組み込んだか
  • 実施チェック:直属の上司とは別に、日常の疑問を気軽に聞けるバディ・メンター役を配置したか
  • 実施チェック:社内の人脈づくりを本人任せにせず、関係部署への同行・紹介の機会を設計したか

設計3:「J字」を見込んだ中長期フォローの設計

短期的な適応が順調に見える入社半年前後は、中長期的な定着にとってはむしろ気を緩められない時期です。特にポテンシャル重視で採用した人材については、半年から2年目にかけてエンゲージメントが一時的に落ち込みうることをあらかじめ織り込み、節目ごとのフォローをカレンダーに組み込んでおく必要があります。

  • 実施チェック:入社半年・1年・2年の節目に、直属の上司以外(人事など)との面談を設定しているか
  • 実施チェック:中途入社者がつまずきやすい時期を可視化するサーベイやジャーニーマップを用意しているか
  • 実施チェック:入社半年時点で「もう大丈夫だろう」と支援を打ち切っていないか、人事側で定期的に確認しているか

まとめ

中途入社者の退職は、多くの企業にとって他人事ではありません。マイナビの調査が示すとおり、退職者が生じた企業の9割近くで中途入社の正社員がその対象に含まれており、退職の経営への影響が最も大きいと認識されているのも勤続5年以上の中堅社員です。「即戦力だから大丈夫」という思い込みをいったん手放し、期待値のすり合わせ、上司の関わりの仕組み化、中長期を見据えたフォローという三つの設計を採用活動とセットで整えることが、経験者採用を成果につなげる近道になります。

中途入社者を受け入れる現場の管理職向け研修や、オンボーディング設計について、お気軽にご相談ください。

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本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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