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社員の78.6%が使いたい社内公募制度が、使われない理由

社内公募制度は、部署が要件を社内に公開し、社員が自らの意思で異動に手を挙げる仕組みです。導入は広がっていますが、応募の機会の少なさや不合格者へのフィードバック不足、異動後のフォローの欠如から形骸化しがちです。募集から選考、異動後のフォローまでを一続きに設計し直すことが、制度を機能させる近道です。

公開日
2026/08/12
更新日
2026/09/28
読了時間
約 8 分
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
人事制度キャリア開発タレントマネジメント離職防止

導入は広がり関心も高いが、運用が追いついていない

社内公募制度(ジョブポスティング制度)は、人材を必要とする部署が募集要件を社内に公開し、社員自身の意思で異動に手を挙げる仕組みです。日本労働研究雑誌(独立行政法人労働政策研究・研修機構発行、2025年1月号、No.774)に掲載された研究によると、導入率は2006年の34.7%(労働政策研究・研修機構調査)から2022年には42.2%(リクルートマネジメントソリューションズ調査)まで上昇しており、個人の主体的なキャリア形成を尊重する人事施策として広がりを見せています。

社員側の関心も高い水準にあります。株式会社ビズリーチのHRMOS WorkTech研究所が2023年9月11日から17日にかけて実施した調査(ビズリーチ会員、有効回答643件)では、78.6%が「社内公募制度を利用したい」と回答しました。同調査で、退職を検討したことがある回答者に在籍企業への不満・悩みを聞いたところ、最も多かったのは「自身のキャリアの将来性」(54.0%)で、「給与・賞与」(32.2%)を上回っています。社内でキャリアの見通しが持てないことが、退職検討の背景として大きいことがうかがえます。

一方で、同調査では社内公募制度がある企業に勤める社員のうち40.0%が「公募の数・種類が少ない」「気軽に応募できる雰囲気ではない」といった運用面の課題を挙げています。制度を「導入」した企業と、社員にとって「機能」している企業との間には、依然として距離があるといえます。

「出来レースになっている」「直属の上長が許さない」など、制度の正当性・安全性(信頼性)が損なわれると、社内公募は体裁だけで形骸化してしまいます。(ビズリーチ HRMOS WorkTech研究所 所長 友部博教氏)

社内公募制度が形だけになる理由

制度が定着しない背景には、個社の運用の巧拙だけでは片づけられない構造的な壁があります。リクルートワークス研究所などの調査からは、次のような実態が浮かび上がります。

フィードバックの格差

リクルートワークス研究所が300人以上の企業に属する個人を対象に実施した「異動に関する個人意識調査」(2022年)によると、異動希望が叶った人の37.4%が「結果が詳しく説明され、内容について話し合った」と回答した一方、異動希望が叶わなかった人の35.2%は「いっさい説明はなかった」と回答しています。挑戦した社員の間で、結果次第でフィードバックの手厚さに差が生まれているのが実態です。

応募機会の少なさ

同研究所の調査(2022年)では、社内公募の応募時期を「通年」としている企業はわずか12.5%にとどまり、「年1回」が31.5%、「不定期」が25.5%を占めます。手を挙げたいタイミングと、募集が開かれるタイミングがそろわなければ、意欲があっても行動に移せません。

異動後のフォロー不足

電機メーカー3社を対象にした調査研究(千野, 2025)では、社内公募制度を利用して異動希望が叶った社員の中にも「今の職場で将来のキャリアを描けない」と感じている人が一定数存在することが示されています。異動先での役割や期待が伝わらない、参考になるロールモデルが見えない、といった不満が、せっかく実現した異動の満足度を下げてしまうケースです。

社内公募制度を機能させる運用の見直し

制度を「体裁」で終わらせず、人材育成と定着につなげるための実践ステップを整理します。

募集サイクルを通年・複数回に設計する

応募機会が年1回や不定期では、意欲の高いタイミングを逃してしまいます。ある電機メーカーの事例では、通年で1,000前後のポストを常時公開しており、制度導入後に応募者数が年間500人規模から2万人規模へと大きく伸びました。自社の規模に応じて、まずは半期に1回以上の定期公募から通年化を目指しましょう。

募集サイクルを見直した後は、次の状態になっているのが理想です。

  • 年に複数回、または通年で応募できる仕組みになっている
  • 直近の公募情報を、社員がいつでも確認できる状態にある

応募要件を「見える化」する

募集ポジションごとに、必要なスキル・知識・経験を明文化して公開します。ある企業では、多数のポストについて役割や必要な人材要件を定義した文書を整備し、全社員に公開することで、社員が自分の適性を照らし合わせて応募を判断できる環境をつくっています。要件が曖昧なままでは、社員は自分に合っているかどうかを判断できず、応募をためらう一因になります。

社員の立場から見て次の状態になっていれば、要件の公開は十分です。

  • 募集ポジションごとに、必要なスキル・経験が明文化されている
  • 社員が自分の適性を事前に判断できる情報量になっている

選考プロセスと基準を統一する

書類選考から面接までの流れ、判断基準、人事部門の関与範囲をあらかじめ社内で統一しておきます。現場責任者が主体となって面接を行う企業が多い一方、応募情報が直属の上長に伝わることへの不安から応募をためらう社員がいることも、ビズリーチの調査に寄せられた自由回答から見えています。応募者情報の取り扱いルールを明確にし、社員が安心して手を挙げられる設計にすることが欠かせません。

社員が安心して手を挙げられる選考にするため、次の点を社内で決めておきます。

  • 選考基準と人事部門の関与範囲が、社内で統一されている
  • 応募情報の取り扱い(上長への共有可否など)を明文化している

不合格者への「次につながる」フィードバックを制度化する

異動希望が叶わなかった社員の3人に1人以上が「説明なし」で終わっている現状は、意欲を持って手を挙げた社員のモチベーションを損ないかねません。合否にかかわらず、不足していたスキルや経験、次にどう活かせるかを伝えるフィードバックの機会を、選考プロセスの標準工程として組み込みましょう。

フィードバックが制度として定着したといえるのは、次の状態になったときです。

  • 不合格者へのフィードバックの実施が、選考プロセスに組み込まれている
  • フィードバックの内容が、今後のキャリア形成に活かせる具体性を持っている

異動後のオンボーディングとフォローを行う

異動希望が実現した社員に対しても、役割や期待値のすり合わせ、ロールモデルの紹介、定期的な面談などのフォローを行います。異動が実現した後こそ、社員の主体的なキャリア形成を組織の成果につなげる分岐点です。フォローを人事部門任せ、現場任せにせず、両者が連携する体制を整えましょう。

異動した社員のフォローでは、次の状態を保ちます。

  • 異動後一定期間は、役割や期待値をすり合わせる面談を設けている
  • 異動者の状況を、人事部門と現場の双方で継続的に把握できている

まとめ

社内公募制度は、社員の78.6%が利用を望むほど関心の高い仕組みです。しかし、応募機会の少なさやフィードバックの格差、異動後のフォロー不足といった構造的な壁を放置すれば、「制度はあるが機能していない」状態に陥りかねません。募集・選考・フォローの一連のプロセスを丁寧に設計し直すことが、社内公募制度を人材育成と定着の両面で機能させる近道です。

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Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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