転職入職者が前職を辞めた理由を男性で見ると、「定年・契約期間の満了」は55〜59歳の9.5%に対し、60〜64歳では57.8%です(厚生労働省「令和7年雇用動向調査」)。60歳を境に、前の職場を離れる理由が入れ替わっています。役職定年の後に人が離れる流れを防ぐ鍵は、役職定年、定年、継続雇用を別々の制度として扱わず、一つの流れとして見直すことにあります。
役職定年の導入は、大企業で41.0%、中小企業で17.8%
東京商工リサーチの「『早期・希望退職』『役職定年』に関するアンケート調査」(2025年6月2日〜9日にインターネットで実施。有効回答6,483社。2025年7月9日公表)では、役職定年制度を「導入している」と答えた企業は、大企業(資本金1億円以上)で41.0%、中小企業(同1億円未満)で17.8%でした。
全企業では、「導入する予定はない」が64.7%、「導入を検討している」が10.6%、「導入していたが廃止」が2.6%です。「導入している」と「導入し、直近3年以内に内容を見直した」を合わせると21.8%でした。同じ調査で、45歳以上の正社員が半数以上を占める企業は、全企業の64.2%にのぼります。制度の有無にかかわらず、45歳以上の層を前提にした人事制度の点検は、多くの企業に関わります。
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65歳までの雇用確保は、継続雇用制度が65.1%、定年引上げが31.0%
厚生労働省の「令和7年高年齢者雇用状況等報告」(2025年6月1日現在。常時雇用する労働者21人以上の237,739社を集計。2025年12月19日公表)によると、65歳までの雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%でした。内訳は、継続雇用制度の導入が65.1%(前年から2.3ポイント減)、定年の引上げが31.0%(2.3ポイント増)です。70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は34.8%で、前年から2.9ポイント増えました。
高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用の確保を事業主に義務づけ、70歳までの就業機会の確保を努力義務としています。定年を引き上げた企業は3割ほどで、残る多くの企業は、定年の時点を境に継続雇用制度へ移る形で65歳までの雇用を確保しています。役職定年がある企業では、役職を外れる節目の後に、定年の節目が続けて訪れます。
転職入職者の前職の離職理由は、60歳を境に定年・契約期間の満了へ寄る
厚生労働省の「令和7年雇用動向調査結果の概況」(2026年8月31日公表。常用労働者5人以上の事業所を、約15,000事業所抽出して調査)には、転職入職者が前職を辞めた理由の割合があります。「定年・契約期間の満了」と答えた男性は、55〜59歳で9.5%、60〜64歳で57.8%、65歳以上で52.5%でした。女性は、55〜59歳で9.0%、60〜64歳で34.7%、65歳以上で28.5%です。
55〜59歳の男性では1割に届かなかった理由が、60歳を過ぎると半数を超えます。転職した人の前職の離れ方は、60歳前後で入れ替わっていることが分かります。
図解01
転職入職者の
- 55〜59歳9.5%
- 60〜64歳57.8%
- 65歳以上52.5%
記号1つが10%(定年・契約期間の満了で前職を辞めた男性の転職入職者の割合)
数字からは、役職定年の後に辞めた理由までは読み取れない
ここで引いた調査は、それぞれ別の対象を集計しています。雇用動向調査の数字は、転職した人が前職を辞めた理由であり、役職定年を経験した人に限った数字ではありません。定年や契約期間の満了で職場を離れた人が、本人の希望で離れたのか、継続雇用の条件が合わずに離れたのかも、この表からは分かりません。
役職定年を機に退職した人が自社にどれだけいるか、その理由は何かは、自社の退職者の記録で確かめるほかありません。公的な統計は、制度を見直すときの背景を示すにとどまります。
新陳代謝を目的とする制度でも、役職を外れた後の道筋は別に設計できる
役職定年は、ポストを空けて若い世代に機会を渡し、組織の新陳代謝を保つための制度だという見方があります。この目的は否定しません。ただ、ポストを空けることと、役職を外れた人の次の役割を決めることは、別の設計です。前者だけを整えて後者を決めずにおくと、本人は先の見通しを持てないまま定年を迎えることになります。
役職定年、定年、継続雇用を、一枚の表で並べて見直す
見直しは、次の項目を一枚の表に並べるところから始めます。
- 役職を外れる年齢と対象の役職。一律に適用しているのか、役職や職種ごとに分けているのか。
- 役職を外れた後の役割と評価の基準。後進の指導や専門業務など、何を期待しているかを本人に伝えているか。
- 給与や手当の変わり方。役職定年の時点と、定年後の継続雇用の時点で、どれだけ変わるのか。
- 定年から継続雇用へ移るときの契約と役割。役職定年の後に決めた役割が、継続雇用でも続くのか、断ち切れるのか。
- 面談の時期。役職を外れる前、外れた後、定年の前に、本人の意向を聞く場があるか。
表を作ると、役職定年から定年までの間に、役割も評価も説明されていない期間が見つかることがあります。その期間に当たる人が自社に何人いるかを数えてください。人数が多いほど、先に手を入れる必要が高い箇所です。
次に、過去数年の退職者を、役職定年の前、役職定年から定年まで、定年の時点、継続雇用の期間中に分けて数えます。退職の時期が特定の節目に偏っているなら、その節目の前後の説明と面談から見直します。
まとめ
転職入職者が前職を辞めた理由で、男性の「定年・契約期間の満了」は、55〜59歳の9.5%から60〜64歳の57.8%へ入れ替わります。65歳までの雇用確保は継続雇用制度が65.1%を占め、役職定年のある企業では、役職を外れる節目の後に定年の節目が続きます。役職定年、定年、継続雇用を一枚の表で並べて、役割と面談が途切れる節目を探すことから、制度の見直しは進みます。
出典:東京商工リサーチ「『早期・希望退職』『役職定年』に関するアンケート調査」(2025年7月9日公表)調査の公表ページ/厚生労働省「令和7年高年齢者雇用状況等報告」(2025年12月19日公表)公表ページ/同「令和7年雇用動向調査結果の概況」(2026年8月31日公表。2026年10月29日に確認)(PDF)
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本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
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