厚生労働省の「令和7年度能力開発基本調査」(2026年7月31日公表)によると、計画的なOJTを実施した事業所は、正社員に対しては60.6%、正社員以外に対しては25.1%でした。非正規雇用から正社員に転換した人や、中途で入社した人にも、正社員と同じ育成の計画を用意できているかが問われます。国の助成金は、育成計画を先に決め、その計画に合う訓練の種類を選び、計画届の提出期限から日程を逆算する順で使うと、助成金の要件に計画を合わせてしまう失敗を避けられます。
計画的なOJTを行う事業所は、正社員60.6%、正社員以外25.1%
この調査は、常用労働者30人以上の企業と事業所、およびそこで働く個人を対象にしています。調査時点は2025年10月1日で、事業所調査の有効回答率は54.2%、個人調査の有効回答率は43.9%です。正社員と正社員以外を比べると、次のとおりです。
項目 | 正社員 | 正社員以外 |
|---|---|---|
計画的なOJTを実施した事業所(事業所調査) | 60.6% | 25.1% |
OFF-JTを受講した労働者(個人調査) | 44.5% | 19.4% |
自己啓発を実施した労働者(個人調査) | 43.3% | 15.9% |
どの項目も、正社員以外が正社員を下回っています。一方で、この数字は雇用形態別の集計であり、就職氷河期世代だけを切り出したものではありません。自社の氷河期世代の社員がどの位置にいるかは、この調査からは読み取れないため、自社の人事データで確かめる必要があります。
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対象者は、年齢と経歴と雇用形態で棚卸しする
助成金の対象は、世代の名前では決まりません。年齢、現在の雇用形態、これまでの正規雇用の期間といった条件で決まります。そこで、育成の対象にしたい社員を、世代の名簿からではなく、次の項目で一覧にします。
- 現在の雇用形態(正社員、有期契約、無期契約など)と、正社員に転換した時期
- 年齢と、入社した時期
- 入社前に正規雇用で働いた期間
- これまでに受けた社内外の訓練
一覧の各行に、あとで確かめる制度の要件を書き込める状態になっていれば、この段階は整っています。経歴の欄が空のままの社員が多いときは、本人との面談で聞き取る段取りを先に決めます。
雇い入れの助成金は、育成計画の入口として別に確かめる
就職氷河期世代の採用そのものに使える助成金に、特定求職者雇用開発助成金の中高年層安定雇用支援コースがあります。厚生労働省の「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」(令和8年4月8日時点)は、このコースの対象を、就職氷河期世代を含む中高年層のうち、正規雇用の機会を逃したことなどから十分なキャリア形成がなされず、正規雇用に就くことが困難な人と書いています。対象者の要件は、次のものをすべて満たすことです。
- 年齢が35歳以上60歳未満であること
- 雇入れ日前の直近5年間に正規雇用労働者等として雇用された期間の合計が1年以下で、かつ雇入れ日の前日から過去1年間に正規雇用労働者等として雇用されたことがないこと
- 紹介日時点で失業状態の人、または非正規雇用労働者であって、ハローワークや職業紹介事業者等で個別支援を受けている人であること
- 正規雇用労働者として雇用されることを希望していること
助成額は1人あたり60万円(中小企業以外は50万円)です。この助成金は雇い入れの時点の支援で、入社後の訓練に使うものではありません。採用後の育成には、次の節の人材開発支援助成金を別に確かめます。同じ人に複数の助成金を重ねて使えるかどうかは、それぞれの支給要領で確かめてください。
訓練の種類は、育成の目的が決まってから選ぶ
育成の計画は、まず「誰に、何を、どのくらいの期間で身につけてもらうか」から書きます。そのあとで、人材開発支援助成金の人材育成支援コースの訓練の種類から、計画に合うものを選びます。厚生労働省のパンフレットによると、中小企業の場合の助成は次のとおりです(令和8年4月8日以降に提出された職業訓練実施計画届に基づく訓練が対象)。
訓練の種類 | 対象 | 経費助成 | 賃金助成(1人1時間) | OJT実施助成 |
|---|---|---|---|---|
人材育成訓練 | 雇用保険被保険者 | 正規雇用等は45%、有期契約等は70% | 800円 | なし |
認定実習併用職業訓練 | 訓練開始時点で15歳以上45歳未満 | 45% | 800円 | 20万円 |
有期実習型訓練 | 正社員経験の少ない有期契約労働者等 | 75% | 800円 | 10万円 |
中高年齢者実習型訓練 | 訓練開始時点で45歳以上 | 60% | 800円 | 10万円 |
賃金要件または資格等手当要件を満たすと、助成率や助成額が加算されます。人材育成訓練の場合は、経費助成率が15%、賃金助成が1人1時間あたり200円、それぞれ加算されます。
有期実習型訓練は、正規雇用等への転換を目的とした訓練です。支給申請日の時点で、有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換している場合に限り、助成の対象になります。簡略版は、有期契約労働者等の正社員転換を目的とするものと、中高年齢者を対象とするものを、いずれもOJTとOFF-JTを組み合わせた2か月以上の訓練としています。
非正規雇用から転換した社員に基礎を教える計画なら有期実習型訓練、45歳以上の社員に現場の技能を学び直してもらう計画なら中高年齢者実習型訓練、というように、計画の目的から訓練の種類が決まる順に進めます。このほか、有給の教育訓練休暇制度を導入し、社員が休暇を取って訓練を受けた場合には、教育訓練休暇等付与コースが定額で30万円を助成します。
目的を決める段階が整ったかどうかは、対象者の一覧の各行に、身につけてほしい内容と期間が書き込めているかで見ます。訓練の種類の名前から計画を書き始めたときは、いったん目的の欄に戻ります。
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計画届の提出期限から、訓練の開始日を逆算する
人材育成支援コースの計画届は、訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に、労働局へ提出します。たとえば訓練を4月1日に始めるなら、届は前年の10月1日から3月1日までの間に出します。提出期限は訓練開始日の1か月前までと決まっています。育成の開始時期を決める会議に、この期限を持ち込みます。
図解01
助成金は、
出発点正社員以外へ
確認終了後に担当業務と
- 出発点正社員以外へ計画的なOJTを実施 25.1%
- 1棚卸し対象者の
棚卸し年齢と 経歴と 雇用形態 - 2目的育成の
目的を 決める誰に、 何を、どのくらいの 期間で - 3訓練訓練の
種類を 選ぶ目的が 決まってから - 4計画届提出期限から
逆算する訓練開始の 6か 月前から 1か 月前 - 5申請経費の
立て 替えと 申請の 期限訓練終了の 翌日から 2か 月以内 - 確認終了後に担当業務と賃金を確かめる
日程の逆算は、次の順で行います。
- 訓練を始めたい日から、計画届の提出期限(1か月前)を引き、社内の承認に必要な日数をさらに引いて、計画書の完成日を決めます。
- 完成日から、対象者への説明、訓練の実施先との調整、経費の見積もりの取得に必要な日数を引いて、準備に着手する日を決めます。
- 提出期限と着手日を、人事の年間の予定表に書き込みます。
着手日が今日より前になるときは、訓練の開始日を後ろにずらす判断が必要です。助成金のために育成を急ぐより、計画の質を保って開始日を動かすほうが、結果として育成の成果を守れます。
経費の立て替えと申請の期限を、予算表に入れる
助成金は、訓練が終わってから申請し、審査を経て支給されます。事業主は、訓練経費を支給申請日までに全額負担する必要があります。支給申請は、訓練終了日の翌日から2か月以内に行います。助成金が入るのは、費用を払ったあとです。
このため、育成の予算表には、次の項目を入れます。
- 訓練の実施先に払う費用の支払い時期と金額
- 受講中の賃金を払う期間(賃金助成は、この賃金の一部にあたります)
- 支給申請の担当者と、訓練終了日から数えた申請の期限
申請の期限と担当者が予算表に載っていれば、この段階は整っています。訓練の担当者と申請の担当者が別の部署のときは、訓練の記録を誰がいつ渡すかまで決めておきます。
助成金の対象になることと、育成が進んだことは別である
助成金が支給されたことは、育成の計画が実行されたことを示すにとどまります。受講した社員の担当業務が広がったか、賃金や役割が見直されたか、働き続ける見通しを本人が持てているかは、訓練の終了後に別に確かめます。
確かめる時期は、訓練の終了時と、半年ほどたった時点の2回が一つの目安です。終了時には、訓練の内容が担当業務に結びついているかを、本人と上司の両方から聞きます。半年後には、担当業務の範囲と賃金の見直しの有無を、訓練に参加しなかった同じ立場の社員と並べます。差が出ているなら、その理由を説明できる形にしておきます。
冒頭の調査が示すとおり、正社員以外の育成の機会は、正社員よりも少ない状態にあります。国の支援策は、その差を埋めるための費用の一部を支えるものです。差を埋める計画そのものは、各社で書くしかありません。
まとめ
計画的なOJTを実施した事業所は、正社員に対して60.6%、正社員以外に対して25.1%でした。国の助成金は、育成の目的を決めてから訓練の種類を選び、計画届の提出期限(訓練開始日の6か月前から1か月前)から日程を逆算し、費用の立て替えと申請の期限を予算表に入れる順で使います。最初に、対象者の年齢、雇用形態、これまでの正規雇用の期間を一覧にしてください。
出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」(2026年7月31日公表。2025年10月1日現在、常用労働者30人以上の企業・事業所。2026年10月28日に確認)報道発表/同「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」(令和8年4月8日時点。2026年10月28日に確認)パンフレット/同「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」のパンフレット(令和8年4月8日以降に提出された計画届が対象。2026年10月28日に確認)パンフレット
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Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
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