内閣官房の資料によると、就職氷河期世代の正規雇用労働者は、2019年平均の923万人から2024年平均の934万人へ、5年間で11万人増えました。不本意ながら非正規雇用で働く人は、同じ期間に46万人から35万人に減っています。採用の入口は少しずつ開いてきた一方で、正社員に迎えた後の賃金や学びの機会が整っていなければ、正社員になったことが定着につながりにくいと考えます。当社は、この世代への支援を、採用の条件だけでなく、採用後の処遇と育成の設計から見直すことを提言します。
正規雇用は5年で11万人増え、不本意非正規は35万人に
内閣官房 就職氷河期世代支援推進室の「就職氷河期世代等の支援について」(2025年11月)は、総務省「労働力調査」をもとに、2019年平均から2024年平均までの就業の動きを次のように示しています。
区分 | 2019年平均 | 2024年平均 | 増減 |
|---|---|---|---|
正規雇用労働者 | 923万人 | 934万人 | 11万人増 |
役員 | 52万人 | 72万人 | 20万人増 |
不本意非正規雇用労働者 | 46万人 | 35万人 | 11万人減 |
非労働力人口 | 210万人 | 174万人 | 36万人減 |
うち無業者 | 41万人 | 44万人 | 3万人増 |
政府は2019年の骨太方針で、「同世代の中心層の正規雇用者を30万人増やすことを目指す」としました(2025年4月25日の関係閣僚会議の資料)。ただし、上の表の正規雇用労働者の増加と、この目標が数える「中心層」の範囲が同じかどうかは、資料から確かめられません。目標を達成したかどうかを、この表だけで判断することはできません。役員が20万人増えている点も、正規雇用労働者とは別の区分の動きです。
図解01
正規雇用は
増加は11万人
2019年平均の
2024年平均の
2019年平均の
2024年平均の
- 1賃金既存社員の
賃金と 並べる - 2学び助成金や
休暇制度を 使う - 3働き方65歳以降の
見通しを 示す
数字は雇用の量を示すが、処遇の水準は示さない
表の数字は、働く人の数がどう動いたかを示しています。賃金の水準や、働き続けられるかどうかは、この表に含まれません。
同じ関係閣僚会議の資料は、別の統計をもとに、この世代の賃金の上昇幅は相対的に小さく、賃金カーブの増加は緩やかだと整理しています。金融資産は少なく、40代から50代の単身世帯では持家率が下がっていて、高齢期の住宅の確保が課題になる可能性がある、とも書いています。
こうした整理は、世代全体の平均を見たものです。自社の社員が同じ状況にあるとは限りません。自社で確かめるには、正規雇用に転換した社員や中途で採用した社員の賃金を、同じ役割で同じ年代の既存社員の賃金と並べます。差があるなら、その理由を説明できる状態かを確かめます。
「世代で括る支援は不公平」という声への答え
世代を名指しした支援には、「ほかの世代の社員との公平を欠くのではないか」という声が出ます。もっともな懸念です。社内の制度は、年齢や世代で線を引かず、経歴と本人の状況で対象を決めるのが妥当だと考えます。
理由は、同じ世代の中でも必要な支援が違うからです。内閣府の「就職氷河期世代の就業等の実態や意識に関する調査」(2023年8月にインターネットで実施、25歳から54歳の男女8,400人が回答)の詳細分析(2025年11月)では、男女とも、不本意非正規雇用の人は他の雇用形態の人より行政の支援策を利用したい傾向が強く、失業者や無業者は弱い傾向でした。利用したい意向が高い施策は、職業紹介、職業訓練、就職活動の相談窓口などと整理されています。
政府の新しいプログラム(2025年6月3日の関係閣僚会議で決定)も、対象を概ね1993年から2004年の間に就職活動を行った世代とし、就労・処遇改善、社会参加、高齢期という段階の違う支援を並べています。社内でも、正社員の経験が少ない人、非正規から転換した人、長く同じ職場で働いてきた人というように、状況に応じた支援を用意すれば、世代の外にいる社員も使える制度になります。
採用後の育成と処遇に使える公的な支援
2025年6月3日に決まった「新たな就職氷河期世代等支援プログラムの基本的な枠組み」は、2028年度までの3年程度を集中的な取組の期間と想定しています。企業の採用後の育成や処遇に関わる項目は次のとおりです。
- 人材開発支援助成金は、正規雇用への転換を目的とする、OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練の助成率を、70%から75%に引き上げました(2025年度から)。
- 教育訓練休暇給付金が、2025年10月に創設されました。雇用保険の被保険者が教育訓練休暇を取るときに、賃金の一部が支給されます。
- キャリアアップ助成金は、非正規雇用から正社員への転換に使えます。トライアル雇用助成金と特定求職者雇用開発助成金は、2025年11月の内閣官房の資料で拡充の対象とされています。
- 65歳超雇用推進助成金は、70歳までの就業機会を確保する企業への拡充が示されています。65歳までの雇用確保措置は、2025年度から全面施行になりました。
助成金の対象、金額、受付の状況は変わります。申請の前に、厚生労働省の最新の案内で確かめてください。
採用の前に、賃金・学び・働き方の道筋を決める
採用の条件を決める会議に、採用後の資料を持ち込みます。進め方は次のとおりです。期間は目安で、自社の人事の流れに合わせて調整してください。
- 正規雇用に転換した後の賃金を、同じ役割で同じ年代の既存社員の賃金と並べます。差があるときは、理由を説明できる形にします。
- 入社から半年ほどの間に、担う役割と足りない知識や技能を、本人と話し合います。話した内容は、学びの計画に書き込みます。
- 学びの費用と時間を、助成金や休暇制度を使って用意します。受講中の業務の調整も、あわせて決めます。
- 65歳以降も働ける役割と賃金の見通しを、本人に示します。
部署ごとに運用が違うと、同じ立場の社員の間で差が出ます。賃金の確認から高齢期の見通しまでを、人事が一つの表にまとめ、管理職が同じ説明をできるようにすると、運用のばらつきを抑えられます。
採用は、社員と会社の関係の出発点です。条件を整えるだけで終わらせず、処遇と学びの道筋を同じ会議で決めておくことが、正社員に迎えた人が働き続ける土台になると考えます。
まとめ
就職氷河期世代の正規雇用労働者は、2019年平均から2024年平均までに11万人増え、不本意非正規雇用の人は35万人まで減りました。政府の資料は、この世代の賃金の伸びは小さく、金融資産は少ないと整理しています。まず、正規雇用に転換した社員の賃金を、同じ役割で同じ年代の既存社員と並べて確かめてください。
出典:内閣官房 就職氷河期世代支援推進室「就職氷河期世代等の支援について」(2025年4月25日の関係閣僚会議資料。2026年10月19日に確認)資料1/同「就職氷河期世代等の支援について」(2025年11月。2026年10月19日に確認)資料1/内閣府「就職氷河期世代の就業等の実態や意識に関する調査(詳細分析)(概要)」(2025年11月。2026年10月19日に確認)参考資料2/就職氷河期世代等支援に関する関係閣僚会議「新たな就職氷河期世代等支援プログラムの基本的な枠組み」(2025年6月3日決定。2026年10月19日に確認)資料2
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