Research

賃金改定の決め手は企業の業績が41.7%、物価は3.3%

賃金改定率は4.4%、改定額は13,601円で、ともに前年を上回りました。決め手は企業の業績が最多で、労働力の確保・定着と雇用の維持が続き、規模別や労働組合の有無別にも差があります。定期昇給とベースアップに分けて自社の根拠を示すことが、社員への説明を支えます。

公開日
2026/10/18
更新日
2026/10/18
読了時間
約 7 分
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
報酬制度人事データ人事制度中小企業

厚生労働省が2025年10月14日に公表した「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査」では、1人平均賃金の改定率が4.4%、改定額が13,601円でした。賃金の改定で最も重視された要素は企業の業績で41.7%、労働力の確保・定着が17.0%、消費者物価の動向は3.3%でした。賃上げの根拠をどこに置くかを自社の言葉で決めておくことが、社員への説明を支えます。

賃金改定率は4.4%、改定額は13,601円で、ともに前年を上回った

調査の対象は、常用労働者100人以上を雇用する民営企業3,643社です。2025年7月20日から8月10日に行われ、1,847社が回答しました(有効回答率50.7%)。1人平均賃金は、諸手当を含む所定内賃金の平均で、時間外手当などの割増手当や特別手当は含みません。

令和7年(2025年)中の改定率は4.4%で、前年の調査の4.1%を上回りました。改定額は13,601円で、前年の11,961円から増えています。賃金を引き上げた、または引き上げる企業は91.5%(前年91.2%)、引き下げた企業は1.1%、改定を実施しない企業は2.4%でした。

ここでの賃金の改定には、定期昇給とベースアップの両方が含まれます。調査時点で、9月から12月に予定していた改定も含まれています。

最も重視された要素は企業の業績、物価の動向は7.8%から3.3%へ

賃金の改定額を決めるときに最も重視した要素を、一つ選んでもらった結果です。対象は、賃金を改定した、または改定を予定していて額も決まっている企業です。

最も重視した要素

令和7年調査

令和6年調査

企業の業績

41.7%

35.2%

労働力の確保・定着

17.0%

14.3%

雇用の維持

11.9%

12.8%

世間相場

7.7%

7.6%

親会社又は関連会社の改定の動向

5.9%

6.4%

消費者物価の動向

3.3%

7.8%

最低賃金

3.2%

数値なし

重視した要素はない

5.2%

7.4%

企業の業績は35.2%から41.7%に、労働力の確保・定着は14.3%から17.0%に増えました。一方で、消費者物価の動向は7.8%から3.3%に下がっています。最低賃金は3.2%でしたが、令和6年調査の表には数値がありません。

企業の業績を最も重視した企業は4割強です。人の確保や定着、雇用の維持を最も重視した企業も、合わせて3割弱(17.0%と11.9%)あります。賃金を決める根拠は、業績だけで語り切れない企業が少なくありません。

図解01

最も重視された要素は企業の業績、物価の動向は7.8%から3.3%へ

  • 企業の業績41.7%
  • 労働力の確保・定着17.0%
  • 雇用の維持11.9%
  • 世間相場7.7%
  • 親会社又は関連会社の改定の動向5.9%

記号1つが10%(最も重視した要素に挙げた企業の割合) 消費者物価の動向:3.3%

企業の業績が最多で、労働力の確保・定着、雇用の維持が続いています。出典:厚生労働省「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」(2025年10月14日公表。常用労働者100人以上の民営企業1,847社が回答)

改定率は規模で開き、100〜299人は3.6%にとどまる

企業規模別に見ると、5,000人以上は5.1%、1,000〜4,999人は5.0%で、300〜999人は4.0%、100〜299人は3.6%でした。

企業規模

改定率

改定額

引き上げた(引き上げる)企業

5,000人以上

5.1%

16,784円

98.9%

1,000〜4,999人

5.0%

15,859円

96.0%

300〜999人

4.0%

12,308円

95.6%

100〜299人

3.6%

10,264円

89.7%

労働組合の有無でも差があります。労働組合がある企業は4.8%(15,229円)、ない企業は4.0%(11,980円)です。産業別では、建設業が5.9%、製造業が5.2%と高く、医療・福祉は2.3%、生活関連サービス業、娯楽業は2.9%でした。

全体の4.4%は、規模や産業の違いを平均した値です。自社の規模と業種に近い欄で比べたほうが、実態に近い位置が分かります。

定期昇給は76.8%、ベースアップは57.8%の企業が実施

調査では、定期昇給を「労働協約や就業規則などで定められた制度に従い、一定の時期に毎年増額する昇給」としています。能力や業績の評価に基づく昇給も含みます。ベースアップは、賃金表の改定によって賃金水準を引き上げることです。

区分

全体

労働組合あり

労働組合なし

定期昇給を行った(行う)

76.8%

90.0%

72.9%

ベースアップを行った(行う)

57.8%

82.1%

49.4%

ベースアップを行わなかった(行わない)企業は15.1%でした。定期昇給とベースアップを区別していない企業も25.5%あります。区別をしない企業では、改定のうち賃金表の底上げ分と個人の昇給分が、社員に見えにくくなりやすい面があります。

100人以上の企業の調査であり、賃金を決めた理由の中身は分からない

この調査の数字には、読み方の限界があります。

  • 対象は常用労働者100人以上の民営企業で、100人未満の企業の実態は含まれていません。
  • 最も重視した要素は一つだけ選ぶ形式です。業績が最多でも、ほかの要素が考えられていなかったとは言えません。
  • 回答は2025年7月から8月の時点のもので、その後の物価や最低賃金の改定は反映されていません。
  • 平均値であり、個々の社員にどう配分されたか、賃上げが採用や定着にどう効いたかは分かりません。

同じ調査の令和8年版は実施されており、結果は2026年10月18日の時点で確認できていません。公表された時点で、数字を見直す必要があります。

自社の賃金改定を、決め手と数字に分けて説明できる形にする

まず、自社の改定率を、定期昇給の分とベースアップの分に分けて書き出します。次に、決め手を一つ選んで一文にします。選択肢は、調査の項目にある業績、人の確保・定着、雇用の維持、世間相場、物価、最低賃金などです。そのうえで、同じ規模と産業の欄と並べます。

  • 自社の改定率は、定期昇給の分とベースアップの分に分けて示せるか
  • 決め手を一つ選ぶと、業績、人の確保・定着、雇用の維持、世間相場、物価、最低賃金のどれになるか
  • 同じ規模と産業の欄と比べて、自社の改定率は上か下か
  • 管理職は、決め手と数字を部下に説明できるか

説明の後に管理職へ寄せられる質問を集めると、決め手の伝わり方が分かります。質問が賃金表の仕組みに集中するなら、定期昇給とベースアップの説明が足りていません。決め手への疑問が多いなら、根拠の文章を書き直します。

まとめ

令和7年の賃金改定率は4.4%、改定額は13,601円でした。最も重視された要素は企業の業績が41.7%、労働力の確保・定着が17.0%、消費者物価の動向が3.3%で、規模別では5,000人以上が5.1%、100〜299人が3.6%と開いています。自社の賃金改定の決め手を一つ選び、定期昇給とベースアップに分けた数字と並べて説明できるようにすることが、最初の作業です。

出典:厚生労働省「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」(2025年10月14日公表。2026年10月18日に確認)厚生労働省の公表ページ/概況版(PDF)

賃金制度の見直しや、社員への説明の整え方についてご相談をご希望の方は、下記より資料請求ページへお進みください。

資料請求はこちら

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

Next step

記事の内容を、自社に当てはめてみませんか。

Growth Survey は、心理的安全性・エンゲージメント・行動変容を定量化し、組織の現在地を可視化するサーベイです。 まずは3分診断で、おおよその現在地をつかむこともできます。

✦ SHARE with カイシャの育成論

メディアでも、深く発信しています。

自社メディア『SHARE with カイシャの育成論』では、企業インタビューと人事用語辞典を通じて、より深い知見をお届けしています。