厚生労働省が2025年10月14日に公表した「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査」では、1人平均賃金の改定率が4.4%、改定額が13,601円でした。賃金の改定で最も重視された要素は企業の業績で41.7%、労働力の確保・定着が17.0%、消費者物価の動向は3.3%でした。賃上げの根拠をどこに置くかを自社の言葉で決めておくことが、社員への説明を支えます。
賃金改定率は4.4%、改定額は13,601円で、ともに前年を上回った
調査の対象は、常用労働者100人以上を雇用する民営企業3,643社です。2025年7月20日から8月10日に行われ、1,847社が回答しました(有効回答率50.7%)。1人平均賃金は、諸手当を含む所定内賃金の平均で、時間外手当などの割増手当や特別手当は含みません。
令和7年(2025年)中の改定率は4.4%で、前年の調査の4.1%を上回りました。改定額は13,601円で、前年の11,961円から増えています。賃金を引き上げた、または引き上げる企業は91.5%(前年91.2%)、引き下げた企業は1.1%、改定を実施しない企業は2.4%でした。
ここでの賃金の改定には、定期昇給とベースアップの両方が含まれます。調査時点で、9月から12月に予定していた改定も含まれています。
最も重視された要素は企業の業績、物価の動向は7.8%から3.3%へ
賃金の改定額を決めるときに最も重視した要素を、一つ選んでもらった結果です。対象は、賃金を改定した、または改定を予定していて額も決まっている企業です。
最も重視した要素 | 令和7年調査 | 令和6年調査 |
|---|---|---|
企業の業績 | 41.7% | 35.2% |
労働力の確保・定着 | 17.0% | 14.3% |
雇用の維持 | 11.9% | 12.8% |
世間相場 | 7.7% | 7.6% |
親会社又は関連会社の改定の動向 | 5.9% | 6.4% |
消費者物価の動向 | 3.3% | 7.8% |
最低賃金 | 3.2% | 数値なし |
重視した要素はない | 5.2% | 7.4% |
企業の業績は35.2%から41.7%に、労働力の確保・定着は14.3%から17.0%に増えました。一方で、消費者物価の動向は7.8%から3.3%に下がっています。最低賃金は3.2%でしたが、令和6年調査の表には数値がありません。
企業の業績を最も重視した企業は4割強です。人の確保や定着、雇用の維持を最も重視した企業も、合わせて3割弱(17.0%と11.9%)あります。賃金を決める根拠は、業績だけで語り切れない企業が少なくありません。
図解01
最も
- 企業の
業績41.7% - 労働力の
確保・ 定着17.0% - 雇用の
維持11.9% - 世間相場7.7%
- 親会社又は
関連会社の 改定の 動向5.9%
記号1つが10%(最も重視した要素に挙げた企業の割合) 消費者物価の動向:3.3%
改定率は規模で開き、100〜299人は3.6%にとどまる
企業規模別に見ると、5,000人以上は5.1%、1,000〜4,999人は5.0%で、300〜999人は4.0%、100〜299人は3.6%でした。
企業規模 | 改定率 | 改定額 | 引き上げた(引き上げる)企業 |
|---|---|---|---|
5,000人以上 | 5.1% | 16,784円 | 98.9% |
1,000〜4,999人 | 5.0% | 15,859円 | 96.0% |
300〜999人 | 4.0% | 12,308円 | 95.6% |
100〜299人 | 3.6% | 10,264円 | 89.7% |
労働組合の有無でも差があります。労働組合がある企業は4.8%(15,229円)、ない企業は4.0%(11,980円)です。産業別では、建設業が5.9%、製造業が5.2%と高く、医療・福祉は2.3%、生活関連サービス業、娯楽業は2.9%でした。
全体の4.4%は、規模や産業の違いを平均した値です。自社の規模と業種に近い欄で比べたほうが、実態に近い位置が分かります。
定期昇給は76.8%、ベースアップは57.8%の企業が実施
調査では、定期昇給を「労働協約や就業規則などで定められた制度に従い、一定の時期に毎年増額する昇給」としています。能力や業績の評価に基づく昇給も含みます。ベースアップは、賃金表の改定によって賃金水準を引き上げることです。
区分 | 全体 | 労働組合あり | 労働組合なし |
|---|---|---|---|
定期昇給を行った(行う) | 76.8% | 90.0% | 72.9% |
ベースアップを行った(行う) | 57.8% | 82.1% | 49.4% |
ベースアップを行わなかった(行わない)企業は15.1%でした。定期昇給とベースアップを区別していない企業も25.5%あります。区別をしない企業では、改定のうち賃金表の底上げ分と個人の昇給分が、社員に見えにくくなりやすい面があります。
100人以上の企業の調査であり、賃金を決めた理由の中身は分からない
この調査の数字には、読み方の限界があります。
- 対象は常用労働者100人以上の民営企業で、100人未満の企業の実態は含まれていません。
- 最も重視した要素は一つだけ選ぶ形式です。業績が最多でも、ほかの要素が考えられていなかったとは言えません。
- 回答は2025年7月から8月の時点のもので、その後の物価や最低賃金の改定は反映されていません。
- 平均値であり、個々の社員にどう配分されたか、賃上げが採用や定着にどう効いたかは分かりません。
同じ調査の令和8年版は実施されており、結果は2026年10月18日の時点で確認できていません。公表された時点で、数字を見直す必要があります。
自社の賃金改定を、決め手と数字に分けて説明できる形にする
まず、自社の改定率を、定期昇給の分とベースアップの分に分けて書き出します。次に、決め手を一つ選んで一文にします。選択肢は、調査の項目にある業績、人の確保・定着、雇用の維持、世間相場、物価、最低賃金などです。そのうえで、同じ規模と産業の欄と並べます。
- 自社の改定率は、定期昇給の分とベースアップの分に分けて示せるか
- 決め手を一つ選ぶと、業績、人の確保・定着、雇用の維持、世間相場、物価、最低賃金のどれになるか
- 同じ規模と産業の欄と比べて、自社の改定率は上か下か
- 管理職は、決め手と数字を部下に説明できるか
説明の後に管理職へ寄せられる質問を集めると、決め手の伝わり方が分かります。質問が賃金表の仕組みに集中するなら、定期昇給とベースアップの説明が足りていません。決め手への疑問が多いなら、根拠の文章を書き直します。
まとめ
令和7年の賃金改定率は4.4%、改定額は13,601円でした。最も重視された要素は企業の業績が41.7%、労働力の確保・定着が17.0%、消費者物価の動向が3.3%で、規模別では5,000人以上が5.1%、100〜299人が3.6%と開いています。自社の賃金改定の決め手を一つ選び、定期昇給とベースアップに分けた数字と並べて説明できるようにすることが、最初の作業です。
出典:厚生労働省「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」(2025年10月14日公表。2026年10月18日に確認)厚生労働省の公表ページ/概況版(PDF)
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Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
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