厚生労働省が2026年7月15日に公表した令和7年度(2025年度)の「過労死等の労災補償状況」によると、脳・心臓疾患の労災請求は1,254件で、前年度より224件増えました。一方、支給決定は217件で、24件減っています。請求の中心は50代と60歳以上で、時間外労働が80時間を下回る例も認定されています。自社の点検は、年齢別の健診結果と時間外労働の記録を並べるところから始まります。
請求は1,254件に増え、支給決定は217件に減った
脳・心臓疾患は、脳血管疾患や虚血性心疾患などを指します。令和7年度の請求1,254件のうち、死亡は303件で、前年度より48件増えました。支給決定217件のうち、死亡は67件で、前年度と同数です。
請求は労災補償を求めて申し出があった件数で、支給決定は業務上の疾病と認められた件数です。請求が224件増えても、支給決定は24件減っており、二つの件数は同じ動きをしていません。請求が増えた理由は、この集計からは読み取れません。
同じ調査では、精神障害の請求が4,958件、支給決定が1,082件でした。脳・心臓疾患と精神障害を合わせた過労死等の請求は6,212件で、前年度より1,402件増えています。
図解01
請求は
支給決定業務上の
請求労災補償を
- 支給決定業務上の
疾病と 認められた 件数 - 請求労災補償を
求めて 申し出があった 件数
| 項目 | 支給決定 | 請求 |
|---|---|---|
| 件数 | 217件 | 1,254件 |
| 前年度との差 | 24件減 | 224件増 |
| うち死亡 | 67件 | 303件 |
請求の中心は50代と60歳以上、40代が続く
脳・心臓疾患の請求と支給決定を、件数の多い年齢区分から並べると、次のとおりです。
年齢区分 | 請求件数 | 支給決定件数 |
|---|---|---|
50〜59歳 | 508件 | 79件 |
60歳以上 | 452件 | 63件 |
40〜49歳 | 220件 | 58件 |
50〜59歳と60歳以上を合わせると、請求は960件です。請求全体の1,254件の大半を、この二つの区分が占めています。
ただし、これは年齢区分ごとの件数であり、その年齢層の就業者の人数を踏まえた割合ではありません。50歳以上の就業者が多い職場ほど件数が増えやすい面もあるため、この表だけで50歳以上が発症しやすいとまでは言えません。それでも、自社の50歳以上の社員が働く環境は、点検の優先度が高い対象です。
運輸業、郵便業が最多で、サービス業や建設業にも請求がある
業種(大分類)別の請求件数は、運輸業、郵便業が257件で最も多く、サービス業(他に分類されないもの)の166件、建設業の164件が続きます。支給決定件数は、運輸業、郵便業が64件、卸売業、小売業が37件、建設業が21件です。中分類では、道路貨物運送業が請求179件、支給決定50件で最多でした。
職種(大分類)では、請求が輸送・機械運転従事者231件、サービス職業従事者170件、専門的・技術的職業従事者165件の順です。中分類では、自動車運転従事者が請求215件、支給決定53件で最多でした。
運転や建設を主な業務とする会社では、件数の多さが自社の実態に近いと考えられます。それ以外の業種にも請求と支給決定があり、サービス業や卸売業、小売業、専門的・技術的な職種も上位に入っています。業種が上位にないことは、自社の点検を省く理由になりません。
時間外労働が80時間を下回る例も、支給決定に含まれる
厚生労働省の脳・心臓疾患の労災認定基準(2021年9月改正)では、発症前1か月におおむね100時間、または発症前2か月から6か月にわたって1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働があれば、業務と発症の関連が強いと評価されます。この水準に至らなくても、それに近い時間外労働があり、労働時間以外の負荷要因が加わる場合は、労働時間と負荷要因を合わせて総合的に評価されます。
労働時間以外の負荷要因として挙げられているのは、次の項目です。
- 勤務時間の不規則性(不規則な勤務、交替制勤務、深夜勤務)
- 拘束時間の長い勤務
- 休日のない連続勤務
- 勤務間インターバルが短い勤務
- 事業場外における移動を伴う業務
- 心理的負荷を伴う業務
- 身体的負荷を伴う業務
令和7年度の支給決定を時間外労働の長さ別に見ると、発症前1か月の評価では100時間以上120時間未満が27件で最多でした。発症前2か月から6か月の1か月平均では、60時間以上80時間未満が48件で最多です。80時間を下回る例が、件数として最も多い区分に入っています。
この分布は、支給決定された事案の内訳であり、何時間働くと発症するという基準ではありません。ただし、点検の線を月80時間だけに置くと、60時間台の時間外労働が続く働き方や、休日のない連続勤務、短い勤務間隔が視野から外れます。
年齢別の健診結果と時間外労働の記録を並べる
自社の点検は、次の観点で進めます。
観点 | 確かめること | 使う自社のデータ |
|---|---|---|
年齢別の人数と健診の状況 | 40代以上の社員の人数と、健診で所見があった人への事後の対応(医師の意見を聞いたか、就業上の措置を検討したか) | 人事データ、健康診断の結果、産業医の意見の記録 |
時間外労働の長さ | 月80時間を超えた人だけでなく、月60時間台が数か月続いている人の有無 | 勤怠データ |
労働時間以外の負荷 | 休日のない連続勤務、終業から次の始業までの短い間隔、不規則な勤務、出張や運転を伴う業務の有無 | 勤怠データ、シフト表、出張や運行の記録 |
面接指導の運用 | 月80時間を超えた人への案内が、本人の申出を待つだけになっていないか | 面接指導の実施記録、申出の記録 |
面接指導は、時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる人が申し出た場合に、事業者が実施する仕組みです。厚生労働省は、月80時間を超えた人には申出がなくても実施に努めること、月45時間を超えて健康への配慮が必要な人には面接指導などの措置を講じることが望ましいとしています。
年齢と時間外労働が重なる人から、働き方を確かめる
点検の結果は、年齢と時間外労働の両方が当てはまる人から順に使います。
- 50歳以上で、月60時間台の時間外労働が続いている人がいる場合は、上司が業務量を確かめ、本人に健診の結果と体調を尋ねる場を設けます。
- 月80時間を超えた人には、本人の申出を待たず、面接指導を案内します。
- 休日のない連続勤務や短い勤務間隔が続く部署では、シフトと業務の割り当てを見直します。
見直したあとは、3か月ほどを目安に、同じ並べ方で時間外労働と健診の状況を取り直します。60時間台が続く人が減っていれば、業務量の調整が届き始めています。減らない部署は、業務の割り当ての見直しに戻ります。
まとめ
令和7年度の脳・心臓疾患の労災請求は1,254件で、支給決定は217件でした。請求は50〜59歳が508件、60歳以上が452件と、50歳以上に集まっています。支給決定では、時間外労働が80時間を下回る例も最も多い区分に入っていました。自社では、年齢別の健診結果と時間外労働の記録、労働時間以外の負荷を並べ、年齢と時間外労働が重なる人から働き方を確かめることが出発点です。
出典:厚生労働省「令和7年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」(2026年7月15日公表。2026年10月17日に確認)厚生労働省の公表ページ/厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準」(2021年9月改正。2026年10月17日に確認)厚生労働省の資料/厚生労働省「こころの耳」長時間労働者への医師による面接指導(2026年10月17日に確認)こころの耳の解説ページ
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本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
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