令和8年版の過労死等防止対策白書(2026年10月9日公表)は、労働安全衛生総合研究所が令和7年度に行った、建設業、自動車運転従事者、IT産業の労働者アンケートの結果を載せています。「うつ・不安障害の疑い」の割合は、建設業の全体で31.9%ですが、技術職の現場監督に限ると46.3%でした。業種ごとの平均だけを見ていると、負荷が集まる職種を見落とします。自社の数字も、職種や持ち場に分けて並べることが出発点です。
うつ・不安障害の疑いは、建設の現場監督で46.3%、バスで42.5%
白書の概要版には、三つの業種について、「重度のうつ・不安障害の疑い」と「うつ・不安障害の疑い」を合わせた割合が示されています。業種全体と、最も高かった区分を並べると次のとおりです。
業種 | 回答者数 | 業種全体 | 最も高かった区分 |
|---|---|---|---|
建設業 | 1,400人 | 31.9% | 技術職(現場監督)46.3% |
自動車運転従事者 | 1,239人 | 30.7% | バス42.5% |
IT産業 | 概要版に記載なし | 24.9% | 専門的・技術的職業26.0% |
現場監督の46.3%は、建設業全体を14.4ポイント上回ります(当社の計算)。バスの42.5%も、自動車運転従事者全体を11.8ポイント上回ります(当社の計算)。IT産業は専門的・技術的職業が26.0%で、全体との差は1.1ポイントにとどまります(当社の計算)。平均からの離れ方は、業種によって違います。
区分ごとの回答者数を見ると、技術職(現場監督)は119人、バスは207人です。人数が限られるため、数字には幅があると考えられます。
図解01
うつ・
- 建設業の
技術職(現場監督)46.3% - バス42.5%
- 建設業の
全体31.9% - 自動車運転従事者の
全体30.7% - IT産業の
全体24.9%
記号1つが10%(うつ・不安障害の疑いがある人の割合)
「疑い」は診断ではなく、質問票の点数による目安
この「疑い」は、医師の診断とは別のものです。概要版の注記によると、判定にはK6質問票が使われています。K6は、米国のKesslerらが精神疾患のスクリーニング用に開発した質問票です。質問は6項目で、それぞれ0点から4点の5段階で答え、合計点が高いほど精神的な問題が重い可能性があるとされています。
概要版は、「疑い」とする点数の基準、調査の時期、回答の集め方を示していません。三つの業種の数字は、同じ条件で集めた順位表としては読めません。IT産業の数値は、国勢調査の情報サービス業にある男女・年齢別の構成比に合わせて重みを付けた集計値で、建設業や自動車運転従事者の数値とは集計の方法が異なります。
この数字から言えるのは、各業種の中で、職種や業態によって高さが違うという点までです。スクリーニングの結果が高い人の割合であり、実際に不調を抱える人の割合や、その原因を示すものではありません。
ハラスメントの経験は、バスとタクシーのカスタマーハラスメントが目立つ
同じアンケートでは、ハラスメントを経験した割合も尋ねています。業種全体の数値は次のとおりです。
業種 | パワーハラスメント | カスタマーハラスメント | セクシュアルハラスメント |
|---|---|---|---|
建設業 | 19.2% | 10.6% | 6.9% |
自動車運転従事者 | 24.4% | 23.4% | 9.1% |
IT産業 | 14.1% | 6.9% | 3.6% |
自動車運転従事者のカスタマーハラスメントは、全体で23.4%でした。内訳は、トラック(緑)が18.0%、トラック(白)が12.7%、バスが36.7%、タクシーが40.1%で、旅客を乗せる業態が高くなっています。パワーハラスメントも、バスが29.5%、タクシーが28.0%でした。
カスタマーハラスメント対策は、2026年10月1日から事業主の義務になりました。顧客や乗客と直接接する仕事がある企業は、社内の上司や同僚からのハラスメントに加えて、社外から受ける側の経験も、数字で確かめる必要があります。概要版には、ハラスメントを経験した期間の条件が書かれていないため、他の調査の割合とそのまま比べることは避けてください。
自社の数字を、職種と持ち場に分けて並べる
白書の数字を自社に当てはめるには、全社の平均ではなく、職種や持ち場ごとの数字が要ります。当社の整理では、次の資料を同じ区分で並べると、高い持ち場が見えてきます。
確かめること | 使える資料 | 並べ方 |
|---|---|---|
ストレスの状態 | ストレスチェックの集団ごとの分析結果 | 職種や持ち場ごとの、高ストレスとされた人の割合 |
働く時間 | 勤怠記録の時間外労働 | 同じ区分ごとの平均と、長い人の人数 |
社内のハラスメント | ハラスメント相談窓口の記録 | 相談の件数と内容を、上司や同僚との間の件に分けて数える |
顧客や取引先との関係 | 顧客対応の記録、苦情の記録 | カスタマーハラスメントに当たりうる件数を、持ち場ごとに数える |
集団が小さいと個人が特定されるおそれがあります。区分の切り方は、産業医や衛生委員会など、社内の相談先と話し合って決めます。
高い持ち場は理由を決めつけず、話を聞くことから始める
数字が高い持ち場が見つかっても、理由は白書の概要版から読み取れません。現場監督で高かった理由も、概要版には書かれていません。原因を決めつけず、まず該当する立場の人から、日々の業務の負荷や相談のしにくさを聞く場を設けます。
当社の見方では、聞く場は管理職自身にも必要です。部下の相談を受ける立場の人が、自分の悩みを話せる相手を持っているかを、あわせて確かめるためです。顧客対応の多い持ち場では、カスタマーハラスメントを受けたときの報告先と、その後の対応の流れを先に決めておくと、現場が迷いません。
まとめ
建設業の現場監督では46.3%、バスでは42.5%に「うつ・不安障害の疑い」が示され、業種全体の平均を大きく上回りました。自動車運転従事者では、バスとタクシーのカスタマーハラスメントの経験が36.7%と40.1%です。まず、ストレスチェックの集団分析、時間外労働、相談窓口の記録を、職種と持ち場の区分でそろえて並べてください。
出典:厚生労働省「令和8年版 過労死等防止対策白書」(2026年10月9日公表。2026年10月21日に確認)報道発表資料/同「令和8年版 過労死等防止対策白書 概要版」(アンケートは労働安全衛生総合研究所の令和7年度調査。建設業1,400人、自動車運転従事者1,239人。2026年10月21日に確認)概要版(PDF)
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Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
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