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実質賃金とは|名目賃金との違いと、物価の指数で変わる増減

毎月勤労統計調査の2026年8月分速報では、名目の賃金が前年同月比3.8%増となる一方、実質賃金は使う物価の指数によって増加率が変わりました。名目と実質の役割の違いと、産業や働き方による差を整理します。どの物価で測った数字かを添えることが、賃上げの説明の第一歩です。

公開日
2026/10/22
更新日
2026/10/22
読了時間
約 7 分
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
報酬制度人事データ人事制度

厚生労働省の毎月勤労統計調査(2026年8月分速報、10月7日公表)では、現金給与総額が前年同月比3.8%増でした。物価の変化を除いた実質賃金は、使う消費者物価指数によって1.5%増にも1.9%増にもなります。賃上げを社員に説明するときは、名目と実質の違いを分け、どの物価の指数で測った数字かを添えて示すことが要になります。

名目賃金は3.8%増、物価は2.2%上昇で、実質賃金は1.5%増

調査の対象は事業所規模5人以上、調査産業計です。現金給与総額(一人平均)は311,364円で、前年同月比3.8%増でした。内訳は、きまって支給する給与が298,358円(3.9%増)で、そのうち所定内給与が277,861円(3.8%増)です。特別に支払われた給与は13,006円で、前年同月と同水準でした。

消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は、前年同月比2.2%の上昇でした。厚生労働省は、現金給与総額の指数を消費者物価指数で除して実質賃金を算出しており、この物価の指数で実質化した前年同月比は1.5%増です。名目の伸びが物価の上昇を上回ったため、平均で見ると、給与で買えるものは前年の同じ月より増えたことになります。

この数字は速報値で、確報で改訂される場合があります。今回の調査は33,045事業所が対象で、22,241事業所が回答しました(回収率67.3%)。

名目賃金と実質賃金は、答える問いが違う

名目賃金は、受け取る給与の金額そのものです。実質賃金は、名目の賃金を物価で割り、給与で買えるものの量がどう変わったかを見る数字です。たとえば、同じ3.8%の増加でも、物価が上がる幅が大きければ、実質では目減りします。当社の整理では、二つの数字は次のように使い分けます。

項目

名目賃金

実質賃金

見ているもの

受け取る給与の金額

給与で買えるものの量(購買力)

2026年8月分の数字

311,364円、前年同月比3.8%増

指数83.7(2020年平均=100)、前年同月比1.5%増

向く場面(当社の整理)

賃金表や昇給額の改定、人件費の見通し

賃上げの水準を物価と並べて説明する場面

注意すること

物価の上昇が反映されない

物価の指数の選び方で値が変わる

実質賃金の指数は、2020年平均を100とした相対的な値です。特別に支払われた給与は支払われる月に偏りがあるため、月ごとの水準ではなく、前年同月比で読むのが基本です。

物価の指数の選び方で、実質賃金は1.5%にも1.9%にもなる

厚生労働省は、実質賃金を2種類の消費者物価指数で作成しています。賃金の購買力を示す用途には、実際に取引が行われている財・サービスに限定した「持家の帰属家賃を除く総合」を使い、国際比較には「総合」を使います。2026年8月分の数字は次のとおりです。

項目

持家の帰属家賃を除く総合

総合

消費者物価指数の前年同月比

2.2%上昇

2.0%上昇

実質賃金の指数(2020年平均=100)

83.7

85.6

実質賃金の前年同月比

1.5%増

1.9%増

厚生労働省の位置づけ

賃金の購買力を示す

国際比較用

物価の上昇率が小さい「総合」で割ると、実質賃金の指数は85.6となり、伸びも大きく出ます。自社の資料に実質賃金を載せるときは、基準にした指数の名前を書かないと、別の資料の数字と食い違って見えます。当社の見方では、賃金の購買力を伝える場面は、厚生労働省が購買力の用途としている「持家の帰属家賃を除く総合」に合わせると、読み手に誤解を与えにくくなります。

図解01

物価の指数の選び方で、実質賃金は1.5%にも1.9%にもなる

購買力持家の帰属家賃を除く総合

国際比較用総合

  • 購買力持家の帰属家賃を除く総合
  • 国際比較用総合
項目購買力国際比較用
消費者物価前年同月比2.2%上昇前年同月比2.0%上昇
実質賃金前年同月比1.5%増前年同月比1.9%増
指数83.785.6
同じ現金給与総額でも、割る物価の指数が変わると、実質賃金の増加率が変わります。出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年8月分結果速報」(2026年10月7日公表。事業所規模5人以上、調査産業計)

平均の数字に、産業や働き方の違いは映らない

同じ調査でも、産業によって結果は大きく違います。就業形態計の現金給与総額の前年同月比は、金融業・保険業が9.7%増、電気・ガス業が7.7%増で、製造業は4.7%増、卸売業・小売業は4.5%増、医療・福祉は4.1%増でした。一方、生活関連サービス等は2.1%減です。名目で減っている以上、物価が上がっている局面では、実質でも目減りしていることになります。

就業形態では、一般労働者の現金給与総額が399,849円(3.7%増)、パートタイム労働者が115,905円(4.1%増)でした。パートタイム労働者の時間当たり給与は1,472円で、4.3%増です。パートタイム労働者比率は31.20%でした。

この調査は、事業所規模5人以上の平均です。自社の産業、規模、就業形態の構成が違えば、全体の平均とは別の動きをしている可能性があります。名目と実質を分けても、平均値のままでは、自社の賃金が妥当かどうかは判断できません。

自社の説明は、昇給率と物価の基準をそろえて示す

まず、自社の改定率を名目の数字として確定します。毎月勤労統計の現金給与総額には賞与や残業代が含まれるため、月例賃金の改定率と並べるなら、所定内給与(3.8%増)のほうが近い数字です。これは当社の見方です。

次に、比べる物価の指数と期間を決め、資料に書きます。前年同月比なのか、年平均なのか、どの指数なのかを添えておくと、後から数字を確かめ直せます。そのうえで、平均の数字は産業や規模の違いを含むと断り、自社の区分に近い産業の動きを並べます。

社員向けの説明では、額(名目)と、物価を考慮した購買力(実質)を、別の数字として伝えます。世の中の平均の数字だけを示すと、社員の生活実感との食い違いが生まれるおそれがあります。自社の昇給率と物価の動きを同じ基準で並べて見せることが、納得のいく説明につながります。

まとめ

2026年8月分の速報では、現金給与総額が3.8%増、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)が2.2%上昇で、実質賃金は1.5%増でした。「総合」で実質化すると1.9%増となり、基準の違いで値が変わります。賃上げを説明する資料には、名目と実質を分け、物価の指数の名前を添えてください。

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年8月分結果速報」(2026年10月7日公表。事業所規模5人以上、調査産業計。2026年10月22日に確認)結果速報のページ/同「概況」(PDF)

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