厚生労働省が2026年7月31日に公表した令和7年度「能力開発基本調査」によると、教育訓練費用を支出した企業は54.4%でした。労働者1人当たりの平均額は、OFF-JTが2.0万円、自己啓発支援が0.4万円で、費用の出し方に開きがあります。研修と自己啓発支援への配分は、金額より先に、目的と対象者から順に決めると見直しやすくなります。
OFF-JTに費用を出す企業は50.1%、自己啓発支援は25.9%
OFF-JTは、通常の仕事を離れて受ける研修を指します。自己啓発支援は、労働者が自発的に学ぶ活動に対して、企業が費用や時間を支える取り組みです。企業調査では、費用を支出した企業の割合が次のように示されています。
区分 | 今回 | 前回 |
|---|---|---|
OFF-JTに費用を支出した企業 | 50.1% | 49.4% |
自己啓発支援に費用を支出した企業 | 25.9% | 27.2% |
OFF-JTか自己啓発支援のどちらかに費用を支出した企業は54.4%です。OFF-JTには企業の半数が費用を出している一方、自己啓発支援に費用を出す企業は、4社に1社ほどです。
1人当たりの費用は、OFF-JTが2.0万円、自己啓発支援が0.4万円
労働者1人当たりの平均額は、OFF-JTが2.0万円で、前回の1.5万円から0.5万円増えました。自己啓発支援は0.4万円で、前回と同じ水準です。公表値が万円単位のため目安ですが、当社の計算では、OFF-JTの平均額は自己啓発支援のおよそ5倍に当たります。
この平均額には、読むときの条件があります。令和6年度の1年間に費用を支出した企業だけが対象で、費用を支出していない企業は含まれません。全企業の平均額ではないため、自社の1人当たりの費用と比べるときは、費用を支出した年度と、対象にした社員の範囲をそろえる必要があります。
費用に何を含めるかは、公表資料の概要の本文には書かれていません。自社の費用と並べるときは、厚生労働省が公表している用語の説明で確かめてください。
受講料の補助が74.7%で最多、就業時間の配慮は39.2%
自己啓発支援には、費用を出す形と、時間を支える形があります。事業所調査では、労働者の自己啓発を支援している事業所は81.9%でした。正社員への支援は81.4%で、前回の85.4%から4.0ポイント下がり、正社員以外への支援は63.9%です。支援の内容は、次のとおりです。
支援の内容 | 正社員 | 正社員以外 |
|---|---|---|
受講料などの金銭的援助 | 74.7% | 57.6% |
資格取得に対する報酬 | 40.5% | 29.6% |
就業時間の配慮 | 39.2% | 37.8% |
教育訓練機関、通信教育等に関する情報提供 | 36.7% | 32.2% |
社内の自主的な勉強会等に対する援助 | 36.5% | 31.7% |
人事考課での考慮 | 29.0% | 18.4% |
教育訓練休暇の付与 | 16.5% | 13.5% |
受講料の補助が最も多く、就業時間の配慮は、正社員の39.2%と正社員以外の37.8%の差が小さい項目です。時間の面の支援は、雇用形態を問わず届けやすい手段だと読み取れます。
ただし、事業所調査と企業調査は、調査の単位が違います。自己啓発支援を行う事業所が81.9%であることと、自己啓発支援に費用を支出した企業が25.9%であることは、同じ尺度では比べられません。二つの数字の差が何によるものかは、公表資料の概要からは読み取れません。
OFF-JTの実施率は小規模ほど低く、30〜49人で53.0%
正社員に対するOFF-JTの実施率は、事業所の規模で開きます。30〜49人は53.0%、50〜99人は65.5%、100〜299人は79.6%、300〜999人は85.2%、1,000人以上は85.4%です。
費用の支出割合を規模別に示した数字は、公表資料の概要の本文にありません。ここで言えるのは、規模が小さい事業所ほどOFF-JTの実施率が低いという点までです。費用の面でも同じ傾向かどうかは、この概要からは確かめられません。調査の対象は常用労働者30人以上の企業と事業所のため、30人未満の姿も含まれていません。
金額の大小から、効果の大小は読み取れない
費用が多い企業ほど成果が出ている、とは言えません。公表された概要には、費用の水準と成果の関係を示す数字が含まれていないためです。1人当たり2.0万円という平均額は、配分を考えるときの材料のひとつにとどまります。
人材育成の問題点として「育成を行うための金銭的余裕がない」を挙げた事業所は14.3%でした。「指導する人材が不足している」は59.5%、「人材育成を行う時間がない」は45.5%です。金額より、教える人と時間の不足を挙げる割合のほうが高くなっています。
配分は、目的、対象者、学ぶ時間の順に決める
当社の見方では、配分は金額の大小より先に、次の順で決めると整理しやすくなります。
- 会社として全員にそろえたい知識や技能は、OFF-JTに向きます。階層別や職能別の研修のように、内容と時期を会社が決められるためです。
- 個人のキャリアや資格のように、学ぶ内容が人によって違うものは、自己啓発支援に向きます。受講料の補助や就業時間の配慮は、内容を会社が一つに決めなくても使えます。
- 対象者が正社員に偏っていないかを確かめます。正社員以外について、過去3年間に費用の実績がない企業は、OFF-JTで72.2%、自己啓発支援で83.7%でした。
- 費用を出すだけで終わらせず、学ぶ時間の確保を同時に決めます。就業時間の配慮を行う事業所は、正社員で39.2%にとどまります。
目的と対象者が決まらないまま金額を決めると、研修の費用は前年の実績どおりに引き継がれやすくなります。配分の見直しは、まず自社の費用をOFF-JTと自己啓発支援に分けて書き出し、それぞれの対象者と目的を横に並べるところから始められます。
どちらにも支出しない企業が45.5%、両方に支出する企業は21.5%
二つの費用の組み合わせを企業調査で見ると、どちらにも支出していない企業が45.5%で最も多く、OFF-JTのみが28.5%、両方が21.5%、自己啓発支援のみが4.4%です。
今後3年間の見込み(正社員)では、OFF-JTの費用を増やす予定の企業が34.3%、自己啓発支援の費用を増やす予定の企業が28.0%です。減らす予定は、それぞれ1.7%と0.5%にとどまります。一方、今後3年間は実施しない予定の企業は、OFF-JTで41.0%、自己啓発支援で58.9%でした。
自社がどこに当たるかを確かめたうえで配分を動かすときは、両方を同時に増やさず、対象と目的を決めた研修か補助のどちらかから始めるほうが、変化を確かめやすいと考えます。
図解01
どちらにも
OFF-JTのみ
両方に支出
どちらにも支出していない
自己啓発支援のみ
OFF-JT
支出あり
支出なし
自己啓発支援
支出なし
支出あり
縦の軸:OFF-JT(下が支出なし、上が支出あり)横の軸:自己啓発支援(左が支出なし、右が支出あり)
- OFF-JTのみ企業の
28.5% - 両方に支出企業の
21.5% - どちらにも支出していない企業の
45.5% - 自己啓発支援のみ企業の
4.4%
まとめ
教育訓練費を支出した企業は54.4%で、OFF-JTは50.1%、自己啓発支援は25.9%でした。1人当たりの平均額は、OFF-JTが2.0万円、自己啓発支援が0.4万円です。まず、自社の教育訓練費をOFF-JTと自己啓発支援に分けて金額と対象者を書き出し、目的に照らして配分を確かめてください。
出典:厚生労働省「令和7年度「能力開発基本調査」の結果を公表します」(2026年7月31日公表。2026年10月20日に確認)報道発表資料/同「令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要」(2026年7月31日公表。調査時点は2025年10月1日。企業調査の対象は7,452企業、有効回答率52.6%。2026年10月20日に確認)概要(PDF)/同「用語の説明」(2026年10月20日に確認)用語の説明(PDF)
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本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
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