✦ Interview · No. 0066

食品業界

株式会社大潟村あきたこまち生産者協会

伊藤 誠

2025/09/01

◈ Editor’s Note

『勉強好き』を大切にしている大潟村あきたこまち生産者協会。メンター制度や海外展示会への新人参加など手厚い人材育成で組織力を強化。若者が夢と希望を持てる農業の創造を目指す挑戦的な取り組みに注目です。

カイシャの育成論

――現在、御社で取り組まれている研修や育成制度について教えてください。

伊藤様:
当社では新入社員の育成に特に力を入れています。

内定後、入社前の10月から内定者研修を開始します。

これは入社までの期間が空くことによる不安を和らげるため、定期的な接触を通じて「会社に必要とされている」という実感を持ってもらうことを目的としています。

この研修はオンラインで実施していますが、同期同士が顔を合わせる機会となり、人間関係構築の場にもなっています。

また、早期離職防止も視野に入れており、入社前に会社の業務や業界の基礎知識を伝えることで、入社後のギャップを軽減する効果にも期待しています。

入社後は、OJT研修のほか、外部講師によるビジネスマナー研修・新入社員研修を実施しています。

お客様との接し方や電話対応などのビジネスマナーは、多くの新入社員が初めて経験するものです。

これらは社会人としての基礎であり、入社直後が最適な学習機会だと考え、最初に習得してもらいます。

――メンター制度についても詳しく教えてください。

伊藤様:
先輩社員(メンター)と新入社員(メンティー)がペアを組むメンター制度を導入しています。

月に1回以上、メンター・メンティーで面談を行います。

また、メンティーが企画した交流会も実施しています。

これにより新入社員の不安や悩みを軽減し、精神的なサポートが行えると考えています。

メンター制度はメンティーの不安解消だけでなく、メンター自身の成長にも繋がりますし、他の部署のメンバーと交流も生まれるため、社内コミュニケーションが活性化し、部署間の業務連携もスムーズになります。

その結果、早期退職の防止にもつながり、離職率も低下してきました。

この成果を踏まえ、メンター制度を継続的に実施していく必要性を強く感じています。

――新入社員以外の方への取り組みはいかがでしょうか。

伊藤様:
各部署で業務に必要な資格の取得や、変化する制度に対応するための学習については、随時、教育を実施しています。

例えば、ハラスメント防止の教育は定期的に行っています。

最近では熱中症対策の研修も行いました。

また、新入社員以外の研修の場が少なかったため、社員から研修を行ってほしいとの要望を受け、オンデマンド学習サービスを導入しました。

希望者が自由に動画コンテンツを視聴し、自己啓発できる環境を整えています。

――これらの育成制度はもともとあったものでしょうか。

伊藤様:
もともと育成制度はあまりありませんでした。

新入社員に対する特別な教育もほとんどありませんでした。
本格的に手厚くなったのは、ここ3年ほど前からです。

それまではOJT研修は実施していましたが、その他の研修やメンター制度は導入していませんでした。

離職防止という目的もありますが、当社を選んで入社した新入社員には、社会人として立派に育ってほしいとの思いから、様々なサポート体制を整えるようになりました。

――実際に研修を通じた効果は感じられますか。

伊藤様: 正直なところまだ分からない部分もありますが、コミュニケーションが活発になり、職場の雰囲気が良くなったと感じています。

新入社員が集まって研修を受けたり、メンター制度を通じて他部署の先輩と交流したりすることで、社員のモチベーションが向上し、職場に明るい雰囲気が生まれています。

以前は「誰に相談すればいいか分からない」という状況で、気持ちが落ち込むこともありましたが、こうした課題が解決されつつあります。

このような小さな変化から、少しずつ効果を実感しています。

会社の理念や考え方

――御社の企業理念や大切にされている価値観について教えてください。

伊藤様: 会社が大切にしていることに「勉強好きであれ」ということがあります。

そうしたこともあり、社内には学習意欲が高く真面目な方が多いのかもしれません。

取り組むべきことに真摯に向き合い、知識を豊かにしていくという考え方が会社全体に浸透していると思います。

――活躍される社員の方にもこの学習意欲は共通思想ですね。

伊藤様:
そうですね。

学習意欲のある方は活躍しますし、仕事に真摯に向き合い、目的に沿って行動できる人です。

大切なのは、「なぜそれをするのか」という理解をしっかり持とうとする姿勢です。

単に指示されたことをこなすだけでなく、「なぜ」を理解して行動する人は問題意識も高く、自然と改善志向になります。

そういった方こそが活躍し、リーダーシップを発揮できる人材だと考えています。

会社の歴史

――御社の歴史の中で、大変だったエピソードを教えてください。

伊藤様:
当社はお米を原料にした商品を製造している食品メーカーです。

私は採用関係だけでなく、会社全体のお米の在庫管理も担当しており、どの商品にどのお米を使うのか、配分も考えています。

そして最も心配なのがお米の調達です。

今年のようにお米不足になったり、お米が非常に高騰したりすると、お米の仕入れが難しくなります。

お米の価格も上がり、製品の値上げを余儀なくされたり、出荷制限により製造量を減らさなければならなくなったり。

そうなると売上や、製造計画など、様々な面に影響が出てきます。

また単にお米と言っても品種や品質によって様々種類があります。

商品の原価、販売価格を考えながら、どの商品にどのお米を使うのか、値上げが必要なのか、お米の使い方については、いつも頭を悩ませています。

――現在進行形でも大変な状況ということですね。

伊藤様:
今年は特に深刻です。

お米が不足しているからこそお米の注文が増えるのですが、原料になるお米がないため出荷できません。

本当にジレンマです。

そうした中、出荷量を制限し新米が出るまで耐えようとしている状況です。

今年のお米の値上がりはこれまでの常識を超えるもので、相当な値上げをしなければ事業を維持できないほどでした。

――今後の打ち手としては、どのような方向性をお考えですか。

伊藤様:
今は備蓄米が放出されて価格は下がってきていますが、それでもその下落に見合った売価設定ではないため、今下がったお米を原料にしても利益は出せない状況です。

これまでは、お米をなるべく安く買いたいという考え方でしたが、今後は生産者が満足できる価格を提示し、お米を確保することが重要です。

生産者も当社も互いに利益を得られる仕組みが必要だと考えています。

しかし日本では高齢化が進み、農業の衰退、お米の消費も減少しています。

若者が夢と希望を持てる農業を創造するため、農業の活性化が必要であり、お米の増産が必要と考えます。

当社では農業へのドローンやAIの活用、農地の集約などを進め、若者が取り組みやすい農業の構築も進めています。

そして今後生産量が増えても、消費もあわせて増えなくてはいけませんので、白米そのものだけでなく、お米に付加価値を付けた加工食品の開発と製造、販売に力を入れています。

活躍する社員について

――具体的に活躍されている社員の方のエピソードがあれば教えてください。

伊藤様:
例えば広報課の齋藤さんですね。

当社では海外販路開拓のため、海外の展示会にも出展しています。

これまでは担当が一人でしたが、齋藤さんは昨年入社してすぐにその展示会業務に加わりました。

持っていた知識も素晴らしく、展示会に行くまでの短い期間で当社商品の勉強もしっかり行い、それを活かして海外展示会に参加できていることは素晴らしいと思います。

――齋藤さんご自身の、その展示会でのいい経験と大変だった経験を教えてください。

齋藤様:
いい面は、社歴が浅いにも関わらず、チャンスとして海外に送り出してくれる体制が会社にあることです。

展示会では他の会社の方と交流する機会もあるのですが、多くの方から「1年目から連れて行ってもらえることは貴重で、自分の会社だったら絶対できない」と言われます。

知識も経験も未熟でも、積極的に機会を提供して、これから先に活かしてほしいという会社の思いを感じています。

大変だったのは、会社の代表として自覚を持たなければいけないというプレッシャーがありながらも、十分に対応できない場面や自分の力だけでは補い切れない場面に遭遇することです。

また、上司の教育方針を理解しつつ、基本的なビジネスマナーの定着に加えて、展示会や商談での接客応対を実践しながら同時に身に着けていく必要があります。

しっかり吸収して実際に活かしていかなければならないと感じています。

会社の事業について

――御社の事業について教えてください。

伊藤様:
私たちの会社は、お米に様々な加工をして付加価値をつけ、全国・世界に販売している食品メーカーであり、6次産業化を行っている農業法人です。

「若者が夢と希望を持てる農業の創造」を理念とし、お米の付加価値を高めることで、お米の消費と生産の増加につなげるための様々な取り組みを行っています。

社内には農業を行う部門があり、お米の栽培を行っています。

農業のイメージ改革も積極的に進めており、その一環として若者が参入しやすいよう、ドローンやAIなどの先端技術の導入を推進しています。

従来のトラクターで汗を流す農業のイメージから脱却し、若者にとっても農業が魅力的な選択肢となるような環境づくりが急務だと考えています。

もう一つの課題は、農業を始めるには高いコストがかかるということです。

数ヘクタールの土地を借り農機具を準備するだけで何千万円もの費用がかかります。

このように農業を始めるにはハードルが非常に高いです。

会社員として働く場合、そのような初期投資は必要なく、初めから安定した収入が得られるため、リスクの差は歴然としています。

そうした状況を解決しなければ、農業が夢と希望を持てる業界に成長することは難しいと思います。

私たちは、お米そのものだけでなく、お米を原料とした付加価値の高い商品の開発、製造、販売も積極的に進めています。

発芽玄米やお米のめん、クッキー、パンなどの製品を提供することで、お米の消費を増やし、利益率の高い農業を実現できれば、若者にとっても参入しやすい魅力的な産業になると考えています。

未来への取り組み、今後やりたいこと

――今後、新たに取り組みたいことがあれば教えてください。

伊藤様:
現在、社内ではDX化を進めています。

DXを推進するには一定の専門知識が必要ですが、当社は食品製造が主力のため、製造部門ではデジタルスキルに不慣れな社員も少なくありません。

DX化を効果的に進めるには、各部署に知識を持った人材が必要です。

特に製造現場を理解している人がデジタル知識も持っていなければ、意味のあるDX推進は難しいからです。

そこで現在、人材育成の一環としてDXや業務改善に興味のある社員を募集し、システム的なDX知識を習得してもらい、各部署に展開する取り組みを行っています。

外部にシステムを依頼するのではなく、各部署内にDX推進役を育成し、課題解決を部署内で完結できる体制を目指しています。

こうした改善を全社的に広げていきたいと考えています。

各部署にDX人材がいれば、「こういった問題がある」という声に対して、その場で「解決できます」と対応できるようになります。

このような体制が定着すれば、これまで紙ベースで行われていた部署間の連携もデータ連携に置き換わり、会社全体の生産性向上と効率化につながると思います。

このような変革を広げていきたいと考えています。

――採用面ではいかがでしょうか。

伊藤様:
私たちの課題は新入社員の増員です。

採用体制も強化され、昨年までは訪問できていなかった高校への挨拶回りも行えるようになり、大学の就職説明会も今年から積極的に取り組んでいます。

今後もこうした学校訪問や就職説明会への参加を拡大していく予定です。

採用競争が厳しくなる中、当社の魅力をいかに伝えていくかが課題です。

会長や社長も前線で活動してくれていますので、私たちも質の高い採用を通じて組織力の向上を目指していきたいと考えています。

✺ Interviewees

お話を伺った方

  • 伊藤 誠

    2004年3月 入社 仕入・生産管理業務、総務・経理業務を経て、2024年10月より現職

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株式会社大潟村あきたこまち生産者協会

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