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ストレス過多な中間管理職へ――人との関わり方を再設計する5ステップフレーム

中間管理職の疲弊は、もはや個人の資質や心がけの問題ではなく、組織構造の問題として可視化されつつあります。厚生労働省の「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」では、仕事や職業生活に強いストレスを感じる労働者は約7割に達しました。

公開日
2026/05/19
更新日
2026/05/19
読了時間
9
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
中間管理職マネジメント1on1

公開日:2026年5月19日 / 想定読者:管理職・人事・経営層 / カテゴリ:マネジメント・リーダー

はじめに――データが映す「中間管理職の臨界点」

中間管理職の疲弊は、もはや個人の資質や心がけの問題ではなく、組織構造の問題として可視化されつつあります。厚生労働省の「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」では、仕事や職業生活に強いストレスを感じる労働者は約7割に達しました。また、令和6年度の精神障害に関する労災認定件数は1,055件と初めて1,000件を超え、年齢別では「40〜49歳」が最多、原因のトップは「上司等からのパワーハラスメント」でした。

中間管理職に焦点を絞ると、状況はさらに鮮明になります。パーソル総合研究所「中間管理職の就業負担に関する定量調査」では、働き方改革が進んでいる企業群において、中間管理職自身の業務量が増加したと回答した割合は62.1%に上りました。負担感の高い管理職では、残業増加47.7%、転職意向27.0%、仕事の意欲低下23.8%といった指標が並びます。さらに、人事の約4分の1(24.0%)が、中間管理職への支援について「特に行っていない」と回答しています。

本稿では、こうしたデータをふまえ、ストレス過多な状況下にある中間管理職が「人との関わり方」をどう再設計すべきかを、3つの構造的要因の整理、陥りがちな関わり方の自己点検、5原則と5ステップの実装フレーム、90日ロードマップという形で具体的にお伝えします。

中間管理職のストレスを増幅させる3つの構造的要因

中間管理職の負荷は、本人の能力不足やマインドの問題に矮小化されがちですが、その背景には共通の構造があります。論点を3つに整理します。

2-1. 「プレイングマネジャー化」の常態化

人手不足と若手育成リードタイムの長期化により、自らもプレイヤーとして数値を背負いながら、同時にメンバーの育成と評価責任を負う構造が常態化しています。リクルートワークス研究所やパーソル総合研究所の指摘するとおり、業務量の純増がそのまま管理職に流れ込み、「マネジメントの時間」が確保できない構図が定着しています。

2-2. ハラスメント規制の強化と心理的安全性への要請の同時進行

改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)の全面施行以降、上司側の言動への要求水準は引き上げられています。同時に、人的資本経営や経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」で示された方向性として、心理的安全性の確保とエンゲージメント向上が求められます。指導の強度を抑制しつつ、成果と成長を引き出すという、一見両立しがたい役割期待が積み上がっているのが現状です。

2-3. 人事による支援の不足と「現場任せ」の継続

日本の人事部「人事白書2025」によれば、管理職に最も身に付けてほしい能力の1位は「部下を育成するスキル」(34.6%)です。一方で、パーソル総合研究所の調査が示すとおり、人事の4分の1が中間管理職向け支援を実施していません。現場任せの育成と評価が継続し、結果として「責任は重く、支援は薄い」非対称な状況が温存されています。

ストレス過多のときに陥りがちな「人との関わり方」3パターン

負荷が臨界点を超えると、管理職の関わり方は無自覚に偏ります。自身を点検する起点として、3つのパターンをご紹介します。

パターンA:指示の細密化と「マイクロマネジメント」

不安を打ち消すために指示の粒度を細かくし、確認回数を増やします。短期的には安心感が得られますが、メンバーの自律性と判断機会を奪い、結果として管理職の確認業務がさらに増えるという悪循環に入ります。

パターンB:感情の遮断と「機械的フィードバック」

感情労働の負荷を避けるため、対話を業務報告と事実確認のみに切り詰めます。一見効率的ですが、メンバーは「見られていない」「関心を持たれていない」という感覚を蓄積し、エンゲージメントが静かに低下します。

パターンC:自己犠牲による「抱え込み」

「自分がやったほうが早い」「メンバーに負担をかけたくない」という善意から、業務とリスクを自分の側に集約します。一定の評価は得られますが、管理職本人のキャパシティが先に枯渇し、突発的な離脱リスクが高まります。

人との適切な関わり方――押さえるべき5原則

関わり方の再設計にあたっては、次の5原則を起点に据えることをお勧めします。

原則

要点

現場での意味

原則1:役割の明示

成果責任と権限の境界を言語化する

「どこまで任せる/任せない」を明文化し、過干渉と放任の両方を予防

原則2:観察の習慣化

事実ベースの観察と記録を日常化する

印象や感情ではなく、観察可能な行動を起点に対話する

原則3:対話の構造化

1on1を「業務報告の場」から切り離す

業務/成長/健康/関係性の4観点で対話を設計する

原則4:フィードバックの偏りの是正

肯定と改善要請の比率を意識する

改善要請が連続する状態を避け、貢献の言語化を制度化する

原則5:自己ケアの先行投資

管理職自身の睡眠・運動・休息を最優先化する

判断力と感情の安定は、すべての関わり方の前提条件

関わり方を再設計する5ステップフレーム

原則を行動に落とすための実装フレームです。各ステップに「実施チェック」を添えました。

ステップ1:現在の関わり方を可視化する

最初の2週間、自身の対話と判断を簡易ログ化します。誰に・何分・どの観点で・どのような口調で関わったかを記録します。記録の目的は反省ではなく、現在地の客観把握です。

実施チェック

  • 毎日のメンバーとの対話を1日3行で記録している
  • 業務/成長/健康/関係性の4観点のうち、自分が偏っている観点を特定している
  • マイクロマネジメント/機械的フィードバック/抱え込みのいずれに傾いているかを言語化している

ステップ2:役割と権限の境界を再交渉する

自身の上長と、組織として期待される成果責任の範囲、判断権限の境界、人事評価の根拠を再確認します。「あれもこれも」を引き受ける構造を、組織として正す段階です。

実施チェック

  • 自分が担っている業務を「マネジメント/プレイング/突発対応」の3区分で棚卸ししている
  • プレイング比率が30%を超える場合の改善案を上長と合意している
  • 自分の決裁権限と、上申すべき案件の閾値を1ページで明文化している

ステップ3:1on1を再設計する

1on1を「業務進捗の確認会」から「相互理解と成長設計の場」へ転換します。月1回30分以上、業務/成長/健康/関係性の4観点を順番に扱う構成へ切り替えます。

実施チェック

  • 1on1のアジェンダを事前にメンバーと共有している
  • 業務の進捗確認に時間を割く比率を50%以下に抑えている
  • 対話のなかで、メンバー側の発話比率が60%以上になっている

ステップ4:フィードバックを設計し直す

肯定と改善要請の比率を意識し、改善要請が連続する状態を避けます。さらに、評価面談時のみのフィードバックから、観察直後の即時フィードバックへと頻度を引き上げます。

実施チェック

  • 週次で各メンバーの貢献を1件以上、具体的な事実とともに言語化している
  • 改善要請を伝える際は、行動と影響と期待を分けて構造化している
  • フィードバックの記録を残し、評価期末との整合を取っている

ステップ5:自身のケアと支援要請を制度化する

自己犠牲ではなく、組織資源として自身の状態を維持します。睡眠・運動・休息の最低基準を自分に課し、必要に応じて産業医・社外コーチ・人事へ支援を要請します。

実施チェック

  • 睡眠時間と運動頻度の最低基準を自分の手帳に明記している
  • 月1回以上、業務以外の対話の場(社外コーチ/メンター等)を確保している
  • ストレスチェック結果を放置せず、人事または産業医と共有する手順を持っている

失敗3パターンと回避策

再設計の取り組みは、運用設計を誤ると形骸化しやすい性質を持ちます。代表的な失敗を整理します。

失敗パターン

発生メカニズム

回避策

1on1の形骸化

業務報告の延長になり、内容が固定化する

アジェンダの4観点配分を毎回見直し、3か月ごとに対話設計を再設計する

管理職スキル研修の単発実施

研修後の現場運用設計がなく、行動変容が起きない

研修と1on1・評価制度・人事の支援を一体化し、90日伴走を組み込む

管理職の自己ケア軽視

「気合と根性」の文化が残り、自己ケアが後回しになる

経営層が自身の休息と睡眠を率先して開示し、評価項目に健康関連指標を加える

90日導入ロードマップ

関わり方の再設計は、3か月単位で取り組むのが現実的です。フェーズと主要アクションを示します。

フェーズ

期間

主要アクション

成果指標

Phase 0:診断

Day1〜14

管理職のストレス・関わり方診断、業務棚卸し、上長との役割再交渉

プレイング比率・対話偏りの可視化レポート

Phase 1:基盤再構築

Day15〜45

1on1再設計、フィードバック設計、自己ケア基準の明文化

1on1実施率・発話比率・自己ケア指標

Phase 2:定着

Day46〜75

週次フィードバック運用、月次1on1の継続、ストレスチェック連動

エンゲージメントサーベイ・離職意向指標

Phase 3:拡張

Day76〜90

他部門展開、人事による支援パッケージ整備、評価制度との統合

管理職評価への健康・育成指標反映

まとめ

中間管理職のストレスは、本人の根性や能力で乗り切る対象ではなく、組織として向き合うべき構造課題です。労安衛調査の「強いストレス約7割」、精神障害労災1,055件、業務量増加62.1%という数字は、現場感覚を裏付ける客観的なシグナルです。

一方で、関わり方の再設計は、特別な制度改革を待たずとも、管理職本人と人事の協働で今日から着手できます。役割の明示、観察の習慣化、対話の構造化、フィードバックの偏りの是正、自己ケアの先行投資という5原則を起点に、5ステップフレームと90日ロードマップで具体的な行動へ落としていただくことをお勧めします。

関わり方が変わると、メンバーの自律性と心理的安全性が上がり、結果として管理職自身の負荷が下がるという、構造的な好循環が生まれます。

資料請求のご案内

WONDERFUL GROWTHでは、管理職の負担構造の可視化と「関わり方」を中核に据えた人材育成プログラムをご支援しています。資料請求はこちら:https://wonderful-growth.com/contact

引用元一覧

厚生労働省『令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』(2025年8月公表)

厚生労働省『令和6年度「過労死等の労災補償状況」』(2025年7月公表、精神障害労災認定1,055件、原因トップはパワハラ)

パーソル総合研究所『中間管理職の就業負担に関する定量調査』(業務量増加62.1%/転職意向27.0%/人事支援未実施24.0%)

小林祐児『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(2024年2月、集英社インターナショナル)

リクルートワークス研究所『機関誌Works 特集:管理職が「罰ゲーム化」した10の要因』

日本の人事部『人事白書2025』(2025年7月発刊、管理職に身に付けてほしい能力1位「部下の育成スキル」34.6%)

経済産業省『人材版伊藤レポート2.0』(2022年5月)

厚生労働省『改正労働施策総合推進法(パワーハラスメント防止指針)』(厚生労働省告示第5号、令和2年)

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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