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越境学習とは?社外での学びを人材育成と組織活性化につなげる5つの実践ステップ

経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」は社外での学習機会の戦略的な提供を推奨しています。越境学習の経験者の多くが学びを本業に生かしたいと考える一方、実行できない人も少なくありません。人材育成に組み込むための5つの実践ステップを解説します。

公開日
2026/08/24
更新日
2026/08/24
読了時間
9
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
越境学習人材育成人的資本経営リスキリングキャリア自律

経済産業省が2022年5月に公表した「人材版伊藤レポート2.0」は、サバティカル休暇や留学の提供、社内起業や出向を通じた起業への挑戦の支援など、社員に社外での学習機会を戦略的に提供することを企業に求めています。一方、リクルートマネジメントソリューションズが社外活動の経験者401名を対象に行った「越境活動実態調査」では、経験者の76.6%が、社外で得た知識やスキル、人的ネットワークを積極的に本業へ生かそうと考えていると回答しました。しかし、越境学習に関心があっても、実際に一歩を踏み出せずにいる人は少なくありません。個人の意欲だけに委ねていては、越境学習は一部の社員の自発的な活動にとどまってしまいます。本記事では、越境学習の考え方と、これを人材育成の仕組みとして組織に組み込むための5つの実践ステップを解説します。

越境学習とは

越境学習とは、社員が所属する組織の外に身を置き、そこでの経験を通じて学ぶことを指します。越境学習研究の第一人者である法政大学大学院の石山恒貴教授は、越境学習をホームとアウェイの往還による学びと位置づけています。ここでいうホームとは、居心地がよく気心の知れた仲間がいる一方で刺激の少ない環境を指し、アウェイとは、勝手が通じず居心地は悪いものの、新しい発見や刺激に満ちた環境を指します。越境学習者は、アウェイの場で戸惑いや葛藤を経験しながらも、それを乗り越える過程で自らの前提や固定観念を問い直し、不確実な状況に対応する力を養っていくとされています。

具体的な越境の形には、副業・兼業、社外プロジェクトへの参加、他社への期間限定の出向、ボランティア活動や地域貢献活動、社会人大学院やビジネススクールでの学び、異業種の勉強会への参加などがあります。前述の調査では、経験者が実際に行った活動として、ボランティア活動(33.2%)、地域貢献活動(26.7%)、副業・兼業(17.2%)、ビジネススクール・大学院(10.5%)、異業種勉強会(9.5%)が挙げられており、活動の幅は一様ではないことがわかります。

なぜ今、越境学習が注目されるのか

「人材版伊藤レポート2.0」は、人的資本経営を実践するための取り組みの一つとして、社外での学習機会の戦略的な提供を挙げています。社員が一定期間職場を離れて学習に充てるサバティカル休暇や留学を用意することに加え、社内起業や出向を通じて起業に挑戦する社員を支援することで、知識や経験の多様化を図り、人材育成の効果を高められるという考え方です。

終身雇用や年功序列を前提に、社内での経験の蓄積だけでキャリアを形成してきた日本企業の「自前主義」は、事業環境の変化が速まる中で徐々に限界を迎えつつあります。組織の内側だけでは得にくい発想や人脈を取り込み、次世代のリーダーやイノベーションの担い手を育てる手段として、越境学習への関心が高まっています。

越境学習がもたらす効果

越境学習の効果は、経験者自身の実感からもうかがえます。前述の調査によると、社外活動を経験した人の約8割が「新しい人的ネットワークができた」「新しいものの見方ができるようになった」「人間的に成長できた」「新しい知識や能力が獲得できた」と回答しました。また約6割は、「仕事をする目的や意味について深く考えるようになった」「自分の仕事の範囲をより広く捉えるようになった」といった、仕事のとらえ方の変化も報告しています。

越境経験者の76.6%が、社外活動で得たもの(知識・スキル・ノウハウ・人的ネットワークなど)を積極的に本業に生かそうと思っている。(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「越境活動実態調査」)

一方で、越境活動を経験していない人が今後挑戦してみたい活動として挙げたのは、副業・兼業(26.5%)、ボランティア活動(18.1%)、異業種勉強会(18.1%)でした。挑戦できていない理由としては、「本業の時間が忙しくて時間がないから」が62.5%、「どうやって始めてよいかわからないから」が35.4%を占めています。意欲があっても、時間の確保や機会へのアクセスという壁に阻まれている実態がうかがえます。

越境学習を人材育成に組み込む5つの実践ステップ

越境学習の効果を一部の社員の自発的な活動にとどめず、組織全体の人材育成に生かすには、経験を個人任せにせず、企業が制度として設計することが欠かせません。以下の5つのステップで、越境学習を仕組みとして組み込む方法を解説します。

ステップ1:越境学習を導入する目的を人材戦略に接続する

まず、何のために越境学習を取り入れるのかを明確にします。次世代リーダーの育成なのか、イノベーションの種を持ち帰ることなのか、社員のキャリア自律を支援することなのか、目的によって適した越境の形や対象者は変わります。経営戦略・人材戦略との接続を曖昧にしたまま制度だけを用意すると、参加そのものが目的化し、効果を測定することも難しくなります。

実施チェック

  • 越境学習を導入する目的を、経営戦略・人材戦略の言葉で説明できるか
  • 対象とする社員層(次世代リーダー候補、若手、特定部門など)を定めたか
  • 目的を人事だけでなく、経営層や現場の管理職とも共有したか

ステップ2:多様な越境の選択肢を制度として用意する

副業・兼業の許可、複業留学のような外部プログラムの活用、他社への期間限定の出向、社会人大学院への進学支援、プロボノや地域貢献活動への参加、異業種勉強会への参加支援など、社員が選べる越境の選択肢を複数用意します。すべてを自社で運営する必要はなく、外部の越境学習プログラムやマッチングサービスを活用すれば、運用の負荷を抑えられます。

実施チェック

  • 自社の目的に合った越境の形式を、複数の選択肢として整理したか
  • 就業規則上、副業・兼業や出向を可能にする規定が整っているか
  • 外部サービスの活用と自社運営、どちらで進めるかを検討したか

ステップ3:参加のハードルを下げる仕組みをつくる

前述の調査結果が示すとおり、越境学習に踏み出せない最大の理由は「時間がないこと」と「始め方がわからないこと」です。業務時間の一部を越境活動に充てられるルールを設けたり、上司の理解を得やすいよう推薦や承認のフローを簡潔にしたりすることで、参加のハードルを下げます。公募制にする場合は、応募条件や選考基準を明確にし、社内に周知することも欠かせません。

実施チェック

  • 越境活動に充てられる時間や休暇の枠組みを制度化したか
  • 上司の承認や推薦のフローを簡潔にし、周知しているか
  • 公募情報や参加条件を社員が容易に確認できる状態にしているか

ステップ4:学びを本業に還元する場を設計する

越境学習は、経験して終わりにせず、そこで得た知識や気づきを本業やチームに還元することで、初めて組織全体に価値が広がります。社内での報告会や共有会、越境経験者同士が学び合うピアラーニングの場を設け、得た知見を実際のプロジェクトや業務改善に適用する機会をつくります。

実施チェック

  • 越境経験を社内に共有する場(報告会・社内報など)を設けたか
  • 学びを実際の業務やプロジェクトに適用する機会を用意したか
  • 経験者同士がつながり、学び合えるネットワークをつくったか

ステップ5:効果を測定し、継続的に改善する

制度を導入した後は、参加者の意識やキャリア自律度の変化、エンゲージメントや定着率との関連などを定期的に把握し、制度の改善につなげます。参加者へのアンケートやインタビューを通じて何が有効で何が障壁になっているかを把握することが、越境学習を一過性の取り組みで終わらせないための鍵になります。

実施チェック

  • 参加者の意識やスキルの変化を把握する仕組み(アンケート等)があるか
  • 参加者と非参加者とで、キャリア自律度やエンゲージメントに違いがあるかを確認しているか
  • 得られた気づきをもとに、制度の対象者や運用方法を見直す機会を設けているか

導入にあたっての注意点

越境学習を進める際は、いくつか留意すべき点があります。副業や出向を認める場合は、就業規則における情報管理や競業避止の規定を整備し、労務管理上のリスクに備える必要があります。また、越境そのものを目的化させず、経験を本業やキャリアにどう生かすかを参加者自身が言語化できるよう、事前・事後の対話の機会を設けることも重要です。制度を用意しても、上司や周囲の理解が不十分だと参加者が肩身の狭い思いをし、制度自体が形骸化してしまいます。経営層や管理職に対しても、越境学習の意義を丁寧に伝えることが求められます。

まとめ

越境学習は、社員個人の意欲や偶然の機会に委ねているだけでは、組織全体の力にはなりません。経済産業省が人的資本経営を実践するための取り組みの一つとして位置づけているように、越境学習は社外での学びを人材戦略に接続し、制度として設計してこそ効果を発揮します。選択肢の整備、参加のハードルを下げる仕組み、学びを本業に還元する場、そして効果測定という一連の仕組みを整えることが、越境学習を人材育成と組織活性化につなげる鍵になります。

貴社の人材育成制度の設計や、越境学習の導入でお悩みの際は、ぜひ一度WONDERFUL GROWTHへご相談ください。資料請求はこちら

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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