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仕事の学び直し、意欲があっても女性71.5%・男性62.3%が学べていない――障壁の違いに応じた三つの支援設計

内閣府「令和8年版男女共同参画白書」によると、仕事の学び直しに意欲を持つ人のうち、女性の71.5%、男性の62.3%が実際には学べていません。障壁は金銭・時間・情報不足と男女で異なります。企業が取るべき三つの支援設計を解説します。

公開日
2026/08/19
更新日
2026/08/19
読了時間
7
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
リスキリング学び直し人材育成人材開発支援助成金

「何歳になっても、能力を伸ばし続けることができる」と思う人は、女性で47.5%、男性で37.9%にのぼります。学び続けることへの前向きな意識は、決して低くありません。それにもかかわらず、実際の行動には大きなギャップが存在します。

「学ぶ意欲はある」のに、7割が動けていない現実

内閣府は令和8年7月、「令和8年版男女共同参画白書」を公表しました。今回の白書は、特集として「仕事や職業キャリアに関する女性の学び直し・暮らしを充実させる男性の学び直し」を取り上げています。特集の基になった「令和7年度人生を豊かにするための学びに関する調査」によると、仕事や職業キャリアに関する学び直しについて「学ぶ意欲がある」と答えた人は、女性で33.7%、男性で39.7%でした。

注目すべきは、その先の数字です。学ぶ意欲があると答えた人のうち、実際に過去1年以内に学んだ人は、女性で28.5%、男性で37.7%にとどまります。裏を返すと、学ぶ意欲を持ちながら過去1年以内には学べていない人が、女性で71.5%、男性で62.3%を占めるということです。

人事担当者や経営層からは、「社員に学ぶ意欲がない」という声が聞かれることがあります。しかし、この調査結果が示す実態は異なります。多くの社員は、本当は学びたいと思っています。問題は意欲の有無ではなく、意欲を行動に変えられない構造にあるのです。

学び直しを阻む壁は、男女で種類が異なる

同白書は、学ぶ意欲があるのに行動できない理由、つまり障壁についても調べています。仕事や職業キャリアに関する学び直しへの障壁として女性で最も多かったのは「金銭的余裕がない」で、次いで「学んでも収入アップにつながらない」、「何を学んでいいか分からない」の順でした。男性で最も多かったのも「金銭的余裕がない」ですが、次点は「仕事が忙しくて時間がない」、その次が「学んでも収入アップにつながらない」となっています。

さらに、男女差が大きい項目もわかっています。「金銭的余裕がない」「家事・育児・介護等が忙しくて時間がない」「何を学んでいいか分からない」は女性に多く、「仕事が忙しくて時間がない」は男性に多いという結果です。

学ぶ意欲があっても、経済的事情や時間的制約、情報不足など様々な学び直しへの障壁を感じ、行動に移せていない者も少なくないことが明らかになった。また、学び直しへの障壁は男女によって傾向に差がみられた。
(出典:内閣府「令和8年版男女共同参画白書」)

ここから見えてくるのは、「研修の機会さえ用意すれば、社員は自然と学ぶはずだ」という前提の限界です。障壁の種類が社員によって異なる以上、支援の設計も一律であってはならないのです。

障壁の違いに応じた三つの支援設計

ここでは、学び直しへの障壁を「金銭」「時間」「情報」の三つに整理し、それぞれに対応する支援策を解説します。

金銭の壁を制度で下げる

学び直しにかかる費用は、女性・男性ともに最も多く挙げられた障壁であり、なかでも女性でその割合がより高くなっています。個人の意欲や家計の余裕だけに委ねるのではなく、企業が制度として費用負担を軽くする仕組みを整えることが有効です。国の助成金制度を活用すれば、企業側の負担も抑えられます。人材開発支援助成金は、中小企業の場合、コースに応じて訓練経費のおよそ45〜75%が助成される制度です。社内の研修費用補助制度とあわせて活用すれば、費用を理由に学びをあきらめる社員を減らせます。

実施チェック

  • 人材開発支援助成金など、活用できる公的助成の対象コースを確認したか
  • 学び直し費用の補助や立て替えの制度を、社内規程として明文化したか
  • 制度の存在と利用方法を、対象者本人に周知しているか

時間の壁を制度で下げる

「仕事が忙しくて時間がない」は男性に、「家事・育児・介護等が忙しくて時間がない」は女性に、それぞれ多く挙げられた障壁です。学ぶ時間を各自の努力だけに委ねている限り、忙しい社員ほど学べないという構造は変わりません。同白書も、学び直し支援の方向性として「仕事や育児等との両立が可能なプログラムの提供」や「単なる講座の実施にとどまらない、伴走型の支援」を挙げています。業務時間内に学習の枠を設ける、オンデマンド形式で受講時間を選べるようにする、上司が1on1で学習計画の進捗に伴走するなど、時間を個人の努力で「捻出させる」のではなく、組織として「確保できる」設計への転換が求められます。

実施チェック

  • 業務時間内に学習を行える枠や制度を設けているか
  • オンライン・オンデマンド形式など、時間や場所を選ばない学習手段を用意しているか
  • 管理職が部下の学習計画を1on1等で継続的に把握し、伴走できているか

情報の壁をなくす――「何を学べばいいか分からない」への対処

女性に特に多く挙げられたこの障壁は、学ぶべき内容や方法についての情報が本人に届いていないことから生じています。学びたい気持ちがあっても、自分のキャリアにとって何が必要かが分からなければ、行動は始まりません。社内のスキルマップや等級要件と学習内容を結び付け、上司との面談等で「次に学ぶべきこと」を具体的に示すことが有効です。あわせて、マナパスやマナビDX、教育訓練給付金といった公的な学習支援制度の情報を社内向けに整理し、いつでも参照できる状態にしておくことも、情報不足による足踏みを減らします。

実施チェック

  • スキルマップや等級要件と、学習コンテンツの対応関係を明示しているか
  • 上司との面談等で、学習の方向性を具体的に示す機会を設けているか
  • 公的な学習支援制度の情報を、社内向けにまとめて共有しているか

学び直し支援への投資が、育成の効果を高める

学び直しへの支援は、社員個人のキャリアだけでなく、企業の人材育成投資の効果そのものを左右します。同白書は、仕事や職業キャリアに関する学び直しの意義として、「女性の経済的自立を含めた経済的豊かさ」、「経済成長を支える成長分野や地域の主力産業への人材供給」、「男女の格差是正、女性の活躍推進」を挙げています。学ぶ意欲を持つ社員がすでに多数存在するということは、言い換えれば、障壁さえ取り除けば育成投資の効果が現れやすい土壌がある、ということでもあります。

まずは自社の社員が、どの障壁によって学びを止めているのかを把握することから始めてみてはいかがでしょうか。金銭・時間・情報という三つの切り口で現状を点検するだけでも、次に着手すべき支援策が具体的に見えてきます。

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Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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