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デジタルスキル標準(DSS)とは?DX人材育成の体系を作る5ステップ

DX人材をどう定義し、どう育てるか。2026年4月にver.2.0へ改訂されたデジタルスキル標準(DSS)は、その共通言語です。6つの人材類型をふまえ、自社の育成体系と研修マップを作る5つのステップを解説します。

公開日
2026/07/19
更新日
2026/07/19
読了時間
9
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
DXリスキリングデジタルスキル標準

なぜ今、デジタルスキル標準が重要なのか

デジタルスキル標準(DSS)とは、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が、個人の学習指針および企業の人材育成・確保の指針として策定した公式のスキル体系です。2022年12月にver.1.0が公表され、その後、生成AIの普及を踏まえて2023年8月と2024年7月に改訂されました。そして2026年4月には、AXと呼ばれるAIトランスフォーメーションの進展やデータ活用の重要性を反映したver.2.0が公表されています。自社のDX人材をどう定義し、どう育てるかに悩む企業にとって、共通言語となる枠組みです。

DXを担う人材の不足は年々深刻になっています。IPAが2024年7月に公表した調査分析ディスカッション・ペーパー「DX動向2024 深刻化するDXを推進する人材不足と課題」では、DXを推進する人材の不足がIT企業よりも事業会社で深刻化しており、とりわけビジネスアーキテクトやデータサイエンティストの不足感が高いことが示されました。経済産業省とIPAの「IT人材需給に関する調査」でも、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると推計されています。

同じ調査は、必要な人材像や評価基準を持たない企業ほど人材不足がより顕著になると指摘し、自社のDXに必要な人材を定義し評価基準を持つことの重要性を示しています。ここで有効なのが、ゼロから人材像を考えるのではなく、公式標準であるDSSを土台に自社の育成体系を組み立てる方法です。本記事では、DSSを使って研修マップまで落とし込むための5つのステップを解説します。

デジタルスキル標準(DSS)の全体像

DSSを活用するには、まずその構造を正しく理解することが出発点になります。DSSは大きく2つの標準で構成されています。

全員が対象:DXリテラシー標準

DXリテラシー標準は、職種を問わず全てのビジネスパーソンが身に付けるべき知識・スキル・マインドを定義したものです。DXの背景を理解する「Why」、活用されるデータや技術を知る「What」、それらを使う「How」、そして新たな価値を生み出す土台となる「マインド・スタンス」の4つの視点で整理されています。特定の専門人材だけでなく、組織全体の底上げを図るための共通基盤という位置づけです。

専門人材が対象:DX推進スキル標準と6つの人材類型

DX推進スキル標準は、DXを推進する専門人材の役割(類型)と必要なスキルを定義したものです。当初は5つの人材類型でしたが、2026年4月のver.2.0で「データマネジメント」が新設され、現在は6つの類型で構成されています。すなわち、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、データマネジメント、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティです。各類型の下には具体的なロールが定義されており、たとえば新設のデータマネジメント類型には、データスチュワード、データエンジニア、データアーキテクトの3ロールが置かれています。

生成AI・データ活用時代への対応

ver.2.0では、AI活用の広がりを受けてデータサイエンティスト類型にAI実装・運用やAIガバナンスに関するスキルが加わり、ビジネスアーキテクト類型のロールも新事業開発などの観点からビジネスアーキテクト、ビジネスアナリスト、プロダクトマネージャーの3ロールへ再定義されました。デザイナー類型ではコミュニケーションデザイナーが新設されています。標準そのものが技術の進化に合わせて更新され続けている点は、自社の育成体系を設計するうえで押さえておきたい特徴です。

デジタルスキル標準で育成体系を作る5つのステップ

  • ここからは、DSSを土台に自社の育成体系・研修マップを組み立てる手順を5つのステップに分けて説明します。各ステップに現場で使える実施チェックを添えます。

ステップ1:自社のDX戦略から必要な人材類型を特定する

最初に、自社がどのDXを目指すのかという戦略に立ち返り、6つの人材類型のうちどれが自社に必要かを見極めます。新規事業でデジタルサービスを立ち上げるのか、既存業務をデータで効率化するのかによって、重点を置くべき類型は変わります。全ての類型を一度にそろえる必要はありません。まずは戦略の実現に直結する類型を絞り込むことが、育成投資の的を外さないための出発点になります。

  • 実施チェック:自社のDX戦略と結びつけて、優先的に確保すべき人材類型を2つか3つに絞り込みましたか。
  • 実施チェック:絞り込んだ類型が、経営層の描くDXの方向性と一致しているか確認しましたか。

ステップ2:現状のスキルを棚卸しし、あるべき姿との差を把握する

次に、DX推進スキル標準が示すスキル項目を物差しにして、自社の従業員が現在どこまでのスキルを持っているかを棚卸しします。標準にはロールごとに求められるスキルとその重要度が示されているため、自社独自の基準を一から作らなくても、共通の尺度で現状を評価できます。目指す水準と現状の差(スキルギャップ)を可視化することで、どこに育成の力を注ぐべきかが明確になります。

  • 実施チェック:対象者のスキルを標準の項目に沿って評価し、目標水準との差を一覧にしましたか。
  • 実施チェック:評価は自己申告だけでなく、上司や実務の成果とも照らし合わせましたか。

ステップ3:DXリテラシー標準で全社員の底上げを図る

専門人材の育成と並行して、DXリテラシー標準を使い、全社員の基礎的なリテラシーを引き上げます。DXは一部の専門家だけで進むものではなく、現場の従業員がデータや技術の価値を理解してこそ推進力が生まれます。Why・What・How・マインドスタンスの4つの視点に沿って、階層や職種に応じた学習内容を用意することで、組織全体でDXを受け入れる土壌が整います。

  • 実施チェック:全社員向けのリテラシー学習を、4つの視点を網羅する形で設計しましたか。
  • 実施チェック:管理職層が率先して学び、現場に働きかける仕組みを組み込みましたか。

ステップ4:標準に紐づけて研修マップを設計する

把握したスキルギャップをもとに、どの類型・ロールの誰に、どの研修をいつ受けてもらうかを整理した研修マップを設計します。ここで役立つのが、経済産業省とIPAが運営するデジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」です。研修事業者などが提供する学習コンテンツがDX推進スキル標準に紐づけて可視化されているため、自社に必要なスキルに対応する学習手段を探しやすくなっています。標準という共通軸で研修を体系立てることで、場当たり的な研修の寄せ集めを避けられます。

  • 実施チェック:研修マップの各項目が、標準のどのスキルを高めるためのものか対応づけられていますか。
  • 実施チェック:内製と外部研修、資格取得などの手段を、目的に応じて使い分けていますか。

ステップ5:スキルを可視化し、定期的に見直す

最後に、育成の成果を可視化し、定期的に見直す仕組みをつくります。個人が持つスキルを標準に紐づけて記録・可視化することで、育成の進捗や配置の判断に活かせます。IPAは個人のスキル情報を蓄積・可視化する「デジタル人材スキルプラットフォーム」の構築も進めています。DSS自体がver.2.0のように改訂され続けているため、自社の育成体系も一度作って終わりにせず、標準の更新や事業環境の変化に合わせて定期的に見直すことが重要です。

  • 実施チェック:育成の進捗を測る指標と、振り返りの頻度を決めていますか。
  • 実施チェック:標準の改訂情報を確認し、自社の育成体系に反映する担当と時期を定めていますか。

デジタルスキル標準を活用する際の留意点

DSSはあくまで共通の指針であり、そのまま自社に当てはめれば済むものではありません。標準が示す類型やロールは網羅的であるため、自社の規模や事業に合わせて必要な部分を取捨選択することが前提です。全ての類型を無理にそろえようとすると、育成投資が分散し、かえって成果が出にくくなります。

また、標準は定期的に改訂されます。2022年のver.1.0から、生成AIへの対応を経て2026年のver.2.0でデータマネジメント類型が加わったように、求められる役割やスキルは技術の進化とともに変わります。最新版を確認したうえで自社の体系に反映する運用を前提にしておくことが、標準を形だけの導入に終わらせないための鍵になります。

まとめ

デジタルスキル標準(DSS)は、DXリテラシー標準とDX推進スキル標準の2つで構成される公式のスキル体系です。DX人材の定義や評価基準を持たない企業ほど人材不足が深刻になるという調査結果が示すとおり、自社のDXに必要な人材を定義することは急務であり、その土台としてDSSは有効な共通言語となります。

自社のDX戦略から必要な類型を特定し、現状のスキルを棚卸しして差を把握し、全社の底上げを図りながら標準に紐づけて研修マップを設計し、成果を可視化して見直す。この5つのステップを踏むことで、場当たり的な研修から脱し、戦略と結びついた育成体系を築くことができます。まずは自社に必要な人材類型を見極めるところから、体系づくりを始めてみてください。

WONDERFUL GROWTHでは、デジタルスキル標準を土台にしたDX人材育成の体系づくりや、リテラシー向上から専門人材育成までを結ぶ研修プログラムをご提供しています。自社のDX人材育成の設計にご関心のある方は、ぜひ資料をご請求ください。

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Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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