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副業を認める企業は64.3%、実施する社員は11.0%――解禁を人材育成につなげる三つの設計

社員の副業を認める企業は64.3%に達した一方、実際に副業を行う正社員は11.0%にとどまります。認めるだけでは労務リスクと人材の流出が残ります。副業を人材育成の機会に変えるため、目的の明示・実態の把握・学びの還流という三つの設計を、公的資料と民間調査、越境学習の知見から解説します。

公開日
2026/07/20
更新日
2026/07/20
読了時間
11
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
副業人材育成越境学習

副業を認める企業は6割を超え、実施する社員は1割にとどまる

パーソル総合研究所が2025年10月28日に公表した「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」によると、社員の副業を認めている企業の割合は64.3%でした。副業・兼業に関する規定の整備が進み始めた2018年の50.9%から、13.4ポイント上昇したことになります。制度としての解禁は、すでに多数派の選択です。

一方で、正社員のうち実際に副業を行っている人は11.0%にとどまります。この数字は調査開始以来の最高値であり、前回調査から4.0ポイント上昇してはいるものの、容認率との間には50ポイント以上の開きが残っています。性年代別に見ると20代男性の実施率は20.2%と平均を大きく上回っており、若い層ほど副業を現実的な選択肢として捉えている様子がうかがえます。

企業の副業容認率は64.3%。しかし正社員の副業実施率は11.0%。「認める」と「使われる」の間には、なお大きな距離があります。(パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」2025年10月28日公表)

この差を「社員の関心が低いだけ」と片付けてしまうと、実態を見誤ります。同じ調査では、副業を行う理由として「副収入を得たい」「本業の収入だけでは不十分」といった収入補填にあたる項目が前回調査より低下し、代わりに「副業で好きなことをやりたい」「自分のスキルが他の場所でも通用するか試したい」といった項目が上昇していました。副業の動機は、家計の補助から自分の可能性の検証へと重心を移しつつあります。人材育成の観点から見れば、これは見過ごせない変化です。

「解禁しただけ」の状態が生む三つの問題

1. 制度があっても使われない

就業規則を改定し、副業許可の申請様式を用意しただけで運用を止めてしまう例は少なくありません。社員の側から見ると、何を基準に許可されるのか、申請した事実が評価や配置にどう影響するのかが分からない状態です。判断の基準が示されなければ、申請そのものが心理的な負担になります。容認率と実施率の開きの一部は、この不透明さに起因すると考えられます。

2. 「見えない副業」が労務リスクになる

同じ調査では、雇用契約を結ぶ副業実施者について、本業の残業時間と副業の活動時間を通算した合計が月45時間以上に達している人が34.1%を占め、そのうち50.9%が本業先に副業を行っていることを知らせていないという結果が出ています。さらに、副業によって過重労働となり仕事に支障が出た、または体調を崩したと回答した人は26.9%で、2021年調査の20.7%から増加しました。企業側でも、副業を認めたことが従業員の過重労働や、疲労による業務効率の低下につながったと感じる割合が、2021年の13.5%から18.5%へ上昇しています。なお、1か月あたりの副業活動時間は平均23.0時間でした。

雇用契約を伴う副業では、本業と副業の労働時間を通算して法定労働時間の遵守状況を確認する必要があります。申告されない副業が広がるほど、企業は自社で把握できない領域に健康上のリスクと法令上のリスクを抱えることになります。

3. 学びも人材も社外へ流れる

副業人材を受け入れている企業のうち、他社の副業人材が自社に転職してきた経験があると回答した割合は55.6%で、2023年調査の48.6%から7.0ポイント上昇しました。副業をきっかけとした転職は、すでに珍しい経路ではありません。加えて、副業を経て転職した人は、通常の転職者と比べて働くことを通じた幸福感やワーク・エンゲイジメントが高いという結果も示されています。

ここに、見落とされやすい分岐点があります。社員が副業先で得た手応えは、放置すれば社外へ持ち出されます。しかし本業の中でその経験を受け止める仕組みがあれば、同じ手応えは自社の資産に変わります。分かれ目は、副業を認めたかどうかではなく、認めたあとを設計したかどうかです。

設計1 副業の目的を言語化し、判断基準とセットで示す

最初に取り組むべきは、「なぜ自社は副業を認めるのか」を経営の言葉で定めることです。人材の定着のためか、社外での経験を通じた能力開発のためか、あるいは収入面の選択肢を広げるためか。目的が定まらないまま規程だけを整えると、判断の基準が担当者ごとにぶれます。

  • 副業を認める目的を、経営会議で一文にまとめて文書化する
  • 禁止・制限する範囲(競業にあたる場合、情報漏えいのおそれがある場合、本業に支障が出る場合)を具体例で示す
  • 許可の可否を判断する責任者と、判断にかかる標準日数を決める
  • 申請の有無を人事評価に用いないことを明文化し、社内へ周知する

実施チェック:副業を検討している社員が、規程を読んだだけで「自分の場合は認められそうか」を自力で判断できる状態になっているか。

設計2 申告・労働時間の通算・健康確保を一体で運用する

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2018年1月策定、2020年9月改定、2022年7月改定)は、労働時間の通算が必要となる場合の考え方と、通算する際に適用される規制を整理しています。あわせて、簡便な労働時間管理の方法として「管理モデル」が示されています。これは、本業と副業のそれぞれで労働時間の上限をあらかじめ設定し、その範囲内で労働させることによって、相手先の実際の労働時間を都度把握しなくても法令を遵守できるようにする運用方法です。

ここで重要なのは、申告してもらうこと自体を目的にしないことです。申告が不利益につながらないと社員が確信できて初めて、実態が見えるようになります。

  • 申告事項を、健康確保と法令遵守に必要な範囲(就業先の業種、契約の形態、想定する時間帯と月間時間)に絞る
  • 雇用契約を伴う副業か、業務委託かを申告の時点で区別する(労働時間を通算する必要があるかどうかが変わるため)
  • 管理モデルを採用するかどうかを検討し、採用する場合は本業側の上限時間を先に決める
  • 合計の労働時間が一定の水準を超えた場合の面談と、業務量を調整する手順を定める
  • 申告内容の変更を届け出る時期(契約を更新するとき、月間時間が想定を超えたときなど)を明示する

実施チェック:直近3か月に副業を申告した社員について、合計の労働時間の水準を人事が把握し、必要な面談を実施できているか。

なお、業務委託の形をとる副業には、別の注意点があります。同じ調査では、業務委託で副業を行う個人のうち、実態としては労働者と判断される可能性が高い類型が全体の55.2%を占めていました。また、業務委託で副業を行っている人の71.5%が雇用形態を「理解している」と回答した一方で、事例問題の正答率は42%にとどまり、2問すべてに正解した割合は2割に届きませんでした。自社が副業人材を受け入れる側になる場合は、契約の形態と働き方の実態が一致しているかを確認する必要があります。

設計3 越境の学びを本業へ還流させる場をつくる

法政大学大学院の石山恒貴教授は、越境学習を、個人が自分にとってのホームと感じる場とアウェイと感じる場を行き来することによる学びとして説明しています。副業は、この往還が自然に生じる機会です。慣れた環境では通用していた進め方が通じない、前提の説明から始めなければ話が進まないといったことが起こります。そうした違和感こそが、本人の視野を広げ、前提を組み替えます。

ただし、往還は自動的に学びになるわけではありません。経験を言葉にし、意味づける場が必要です。石山教授は「被越境学習」という概念も示しています。これは、越境した本人だけでなく、その人を受け入れる側や、戻ってきた職場の側が受ける学びを指します。つまり、還流の場を設けることは、副業をしていない社員にとっても学習の機会になるということです。

実際、副業を認めている企業が副業を行う社員に対して実施しているサポートの割合は、2023年調査の27.4%から9.0ポイント上昇しました。認めるだけの段階から、支える段階へ移る企業が増えつつあります。

  • 副業を行っている社員に、半年に一度の振り返り面談を設定する(評価面談とは切り離す)
  • 面談では成果ではなく、「本業との違い」「うまくいかなかったこと」「持ち帰りたい進め方」を聞く
  • 本人の同意を前提に、部署内の勉強会などで経験を共有する機会を設ける
  • 共有された内容のうち、自社の業務に取り入れられるものを一つ決めて試す
  • 管理職に対して、部下の副業経験を引き出す聞き方を研修で扱う

実施チェック:副業経験を共有する場が、年間の育成計画に日程として組み込まれているか。個人の善意による報告に依存していないか。

「容認」を「育成の資産」に変えるために

副業の解禁は、もはや先進的な取り組みではありません。64.3%という容認率は、副業の解禁が標準的な選択になったことを示しています。差がつくのは、その先です。

申告されない副業は、健康上のリスクと法令上のリスクとして企業に残ります。振り返る場のない副業経験は、社員個人のものにとどまり、やがて本人の転職とともに社外へ出ていきます。逆に、目的を明示し、実態を把握し、経験を還流させる設計があれば、副業は社外の学習機会を自社に取り込む仕組みになります。

三つの設計は、いずれも大がかりな制度改革を必要としません。目的を一文にすること、申告の様式を見直すこと、振り返りの場を年間計画に入れること。着手できる順に一つずつ進めることが、確実な前進につながります。

参考にした調査・資料

  • パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」(2025年8月調査、2025年10月28日公表)
  • 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2018年1月策定、2020年9月改定、2022年7月改定)および「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」(2025年3月)
  • 石山恒貴(法政大学大学院政策創造研究科教授)による越境学習および被越境学習に関する研究

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本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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