技能実習制度は2027年4月1日に「育成就労」制度へ切り替わり、転籍要件や監理団体の許可基準など受け入れの仕組みが大きく変わります。出入国在留管理庁の公表情報をもとに、外国人材を受け入れる中小企業が今から備えたい5つの実践ステップを解説します。
育成就労制度とは
技能実習制度は、2024年6月に公布された改正入管法および育成就労法に基づき、2027年4月1日をもって新しい在留資格「育成就労」制度へ切り替わります。出入国在留管理庁の公式Q&Aによると、育成就労制度は「人手不足分野において、我が国での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成し、人材を確保する制度」と定義されています。
技能実習制度が「技能等の修得を通じた人材育成による国際貢献」を目的としていたのに対し、育成就労制度は「人手不足分野における人材育成と人材確保」を制度目的として明確に掲げている点が、最も大きな違いです。この目的の転換にあわせて、技能実習では認められていなかった外国人本人の意向による転籍が、一定の条件のもとで可能になります。
施行に向けたスケジュールもすでに動き出しています。監理支援機関の許可に関する施行日前申請は2026年4月15日から既に受け付けが始まっており、育成就労計画の認定に関する施行日前申請も2026年9月1日から始まる予定です。現在技能実習生を受け入れている企業にとって、準備に使える時間は決して長くありません。
数字で見る外国人材受け入れの現在地
厚生労働省が2026年1月30日に公表した「外国人雇用状況」の届出状況によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人となり、過去最高を更新しました。人手不足を背景に、外国人材の受け入れは規模を拡大し続けています。
出入国在留管理庁は、2029年3月末(令和10年度末)までの受入れ見込数(受入れ上限数)として、1号特定技能外国人80万5,700人、育成就労外国人42万6,200人、合計で約123万人を設定しています。
育成就労制度は、人手不足分野において、我が国での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成し、人材を確保する制度です(出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」)
この受入れ規模の大きさから、育成就労制度は一部の大企業だけでなく、製造業・建設業・農業・介護など技能実習生を戦力としてきた中小企業にとっても無関係ではいられない制度改正だといえます。
技能実習と何が変わるのか
制度の詳細は多岐にわたりますが、受け入れ企業の実務に直結する変更点は、主に次の四つです。
- 転籍要件の緩和:技能実習では原則認められなかった本人意向による転籍が、一定の技能・日本語能力の修得や、分野ごとに定める転籍制限期間(1年から2年の範囲)の経過などを条件に、可能になります
- 監理団体から監理支援機関へ:監理団体は新たに監理支援機関としての許可を受け直す必要があり、外部監査人の設置や常勤役職員の増員など、許可基準が強化されます
- 育成目標の明確化:3年間で技能検定3級や特定技能1号評価試験、日本語教育参照枠A2相当の試験(日本語能力試験N4等)に合格できる水準まで育成することが、制度上の目標として位置づけられます
- 受け入れ企業の新たな義務:育成就労責任者・育成就労指導員・生活相談員の選任と、過去3年以内の指定講習の受講が義務化されます
なお、施行日である2027年4月1日の時点で在留している技能実習生や、2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請を行い一定期間内に実習を開始する技能実習生については、経過措置により、引き続き技能実習を継続できます。現在受け入れている技能実習生を今すぐ切り替える必要はありません。
中小企業が今から備える5つの実践ステップ
ステップ1:技能実習生の受け入れ状況と契約満了時期を棚卸しする
まず、現在受け入れている技能実習生について、在留資格の区分(1号・2号・3号)と在留期間の満了時期を一覧化します。2027年4月1日をまたいで実習を継続する人数と、それ以降に新規受け入れを予定している人数を分けて把握することで、経過措置の対象範囲と、新制度への対応が必要な範囲を切り分けられます。
実施チェック:現在受け入れている技能実習生の在留期間満了日を一覧化し、2027年4月1日をまたぐ人数を把握していますか。
ステップ2:監理団体の監理支援機関への移行状況を確認する
現在契約している監理団体が、監理支援機関としての許可取得をどのように進めているかを確認します。外部監査人の設置や体制要件の強化にともない、移行の準備が間に合わない監理団体が生じる可能性もあります。監理支援機関への移行見通しを早期に確認しておくことが、受け入れの継続性を左右します。
実施チェック:契約中の監理団体に、監理支援機関への移行時期と許可取得の見通しを確認しましたか。
ステップ3:育成就労責任者・指導員・生活相談員の選任と受講計画を立てる
育成就労制度では、育成就労責任者に加えて育成就労指導員と生活相談員についても、過去3年以内の指定講習の受講が義務になります。当分の間は技能実習制度の養成講習で代替できるとされていますが、対象者の選任と受講スケジュールの確保には時間がかかります。早めに候補者を決め、講習の受講計画を立てておく必要があります。
実施チェック:育成就労責任者・指導員・生活相談員の候補者を決め、指定講習の受講スケジュールを確認していますか。
ステップ4:待遇・住居・生活支援の運用を点検する
技能実習と同様に、育成就労制度でも日本人が同種の業務に従事する場合と同等以上の報酬とすること、適切な住居を確保することが求められるほか、出入国在留管理庁のQ&Aでは、雇用契約締結時に労働条件等の待遇を直接またはオンラインで説明することが、受け入れ機関(育成就労実施者)の新たな要件として明記されています。自社の現在の運用が、これらの要件を満たしているかをあらためて点検します。
実施チェック:報酬水準、住居の確保、雇用契約時の待遇説明の各項目を、新制度の要件に照らして点検しましたか。
ステップ5:転籍が起こりうる前提で、日本語教育と定着施策を計画に組み込む
本人意向による転籍が制度化される以上、育成就労外国人にとって「働き続けたい」と思える職場であることが、これまで以上に定着の分かれ目になります。3年間で特定技能1号水準に育てるという制度上の目標を踏まえ、日本語学習の支援体制や、技能の習得状況を確認する仕組みを、育成計画のなかに具体的に組み込んでおくことが重要です。
実施チェック:日本語学習の支援体制と技能習得の進捗確認の仕組みを、育成計画に具体的に盛り込んでいますか。
まとめ
技能実習制度から育成就労制度への切り替えは、外国人材を受け入れる中小企業にとって、監理団体との関係から受け入れ体制、日々の待遇管理までを見直す機会になります。施行日である2027年4月1日までの期間は限られていますが、経過措置により現在受け入れている技能実習生への影響は緩やかです。だからこそ今のうちに、5つのステップに沿って自社の受け入れ体制を点検し、新制度への移行を計画的に進めることが、将来にわたって外国人材から選ばれる受け入れ企業であり続けるための土台になります。
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Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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