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フリーランス新法の行政措置が年間1,552件|業務委託先との取引を守る発注企業の5つの実践ステップ

2024年11月に施行された「フリーランス新法」(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、施行から2年目を迎え、運用が本格化しています。公正取引委員会は2025年度に1,552件の勧告・指導を行いました。業務委託先を持つ企業が整えるべき対応を解説します。

公開日
2026/09/18
更新日
2026/09/18
読了時間
9
著者
WONDERFUL GROWTH編集部
フリーランス新法業務委託取引適正化人事戦略コンプライアンス

2024年11月に施行された「フリーランス新法」(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、施行から2年目を迎え、運用が本格化しています。公正取引委員会は2025年度に1,552件の勧告・指導を行いました。業務委託先を持つ企業が今から整えるべき対応を解説します。

フリーランス新法、施行2年目の行政措置は年間1,552件

公正取引委員会は令和8年6月10日、フリーランス新法第2章の令和7年度(2025年度)運用状況を公表しました。同法は、企業がフリーランスに業務委託を行う際の取引条件明示や報酬支払などを定めた法律で、令和6年11月1日に施行されました。公表資料によると、令和7年度に新規着手した違反被疑事件は1,626件、処理件数は1,597件にのぼり、このうち1,552件について、同法第8条に基づく勧告(10件)または第22条に基づく指導(1,542件)の措置が講じられました。業種別では情報通信業が575件(37.0%)と最も多く、学術研究・専門技術サービス業の326件(21.0%)が続いています。

出典:公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況及びフリーランスに係る取引の適正化に向けた取組」(令和8年6月10日公表)

フリーランスへの業務委託は、外部の専門人材を機動的に活用できる手段として、多くの企業が採用しています。制度への対応が後回しになりやすい分野だからこそ、行政の運用実績を押さえておく価値があります。

何が違反に問われているのか、上位3類型を知る

同じ公表資料は、措置件数を違反行為の類型別にも集計しています。全体で2,727件のうち、最も多いのは期日における報酬支払義務違反で1,135件(41.6%)、次いで取引条件の明示義務違反が1,126件(41.3%)、買いたたきが250件(9.2%)となっており、この3類型で全体の9割を超えます。特定受託事業者が被った不利益についても、令和7年度に総額1,734万円の原状回復が行われました。

上位2類型に共通するのは、悪質な搾取よりも、契約や支払の事務体制が法律の要求水準に追いついていない点です。取引条件を書面で明示していない状態や、支払サイトが60日を超えている状態は、意図的な違反行為に限らず、既存の業務フローを見直していないことによっても生じます。発注企業にとっては、まず事務体制の点検から着手することが、行政措置を避ける近道になります。

フリーランス新法とは何か、義務の全体像を整理する

フリーランス新法は、業務委託の相手方であって従業員を使用しない事業者を「特定受託事業者」、その相手に業務委託をする、従業員を使用する事業者を「特定業務委託事業者」と定義しています。取引の適正化に関する規定は公正取引委員会と中小企業庁が、就業環境の整備に関する規定は厚生労働省が、それぞれ執行を担います。発注企業に課される主な義務は、次のとおりです。

  • 特定受託事業者に業務委託をした場合、給付の内容や報酬の額などの取引条件を、書面または電磁的方法により明示すること
  • 給付を受領した日から60日以内の報酬支払期日を設定し、期日までに支払うこと(再委託の場合は、発注元から支払いを受ける期日から30日以内)
  • 1ヶ月以上の業務委託については、受領拒否・報酬の減額・返品・買いたたき・購入や役務利用の強制など、特定受託事業者の利益を不当に害する行為をしないこと
  • 募集情報を広告等で提供するときは、虚偽の表示等をせず、正確かつ最新の内容に保つこと
  • 6ヶ月以上の継続的な業務委託については、育児介護等と業務を両立できるよう申出に応じて配慮し、ハラスメント相談体制を整備し、中途解除等の30日前までに予告すること

違反した場合、公正取引委員会・中小企業庁長官・厚生労働大臣は、助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令を行うことができます。命令に違反した場合や検査を拒否した場合は、50万円以下の罰金の対象となり、法人には両罰規定が適用されます。

下請法は、発注側の資本金規模に応じて適用の有無が決まりますが、フリーランス新法には発注側の資本金要件がありません。相手が「従業員を使用しない事業者」であれば、発注企業の資本金規模を問わず適用されるため、下請法の対象外だった小規模な発注企業も、対応が必要になる点に注意が必要です。

発注企業が整える5つの実践ステップ

違反行為の上位2類型が「明示」と「支払」に集中していることを踏まえると、まずこの2点から着手し、順に体制を広げていく進め方が現実的です。

ステップ1 取引条件の明示をテンプレート化する

業務委託契約ごとに担当者が個別に条件を伝える代わりに、給付の内容、報酬の額、支払期日、業務委託をした日など、明示すべき事項を盛り込んだ書面または電子データのひな形をあらかじめ用意します。口頭やチャットでのやり取りのみで契約条件を伝えている状態は、明示義務違反に直結します。

  • 取引条件明示のひな形を、書面または電磁的方法で用意したか
  • ひな形に、給付の内容・報酬の額・支払期日等の必要事項が漏れなく含まれているか
  • 口頭やチャットのみで契約条件を伝えている取引がないか、既存の委託先を点検したか

ステップ2 支払サイトを60日以内に設定し、システムで管理する

自社の標準的な支払サイトが60日を超えている場合、フリーランスへの業務委託分は例外的に短縮するか、支払サイト自体を見直す必要があります。60日という基準の起点は、検収日ではなく受領日である点に注意が必要です。

  • 自社の標準支払サイトが60日を超えていないか確認したか
  • 支払期日の起点を「受領日」に統一し、経理システムで管理しているか
  • 再委託取引について、発注元からの支払期日から30日以内というルールを別途管理しているか

ステップ3 契約更新・単価改定の運用を点検する

1ヶ月以上の業務委託では、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないまま報酬を減額したり、通常相場に比べて著しく低い報酬を定めたりする行為が禁止されています。一律の減額といった慣行的な単価改定や、発注側の都合のみによる仕様変更・やり直しの依頼が、意図せず違反行為に該当していないかを見直します。

  • 単価改定や契約更新の際の減額に、客観的な理由を説明できるか
  • 発注側都合による内容変更・やり直しの依頼に、追加の報酬や納期調整を伴わせているか
  • 受領拒否や返品の判断基準を、担当者の裁量に委ねず社内ルールとして明文化したか

ステップ4 6ヶ月以上の継続委託先には配慮と予告のルールを整える

6ヶ月以上にわたって継続的に業務委託をしている相手には、育児や介護等との両立に関する申出への配慮義務、契約の中途解除や不更新をする際の30日前予告義務が加わります。継続委託先の一覧を洗い出し、契約期間が6ヶ月を超えるものから優先的にルールを適用します。

  • 6ヶ月以上の継続的業務委託先を一覧化したか
  • 育児介護等との両立に関する申出を受け付ける窓口と手順を定めたか
  • 契約を解除・不更新とする場合の30日前予告と、理由開示請求への対応フローを整えたか

ステップ5 ハラスメント相談窓口をフリーランスにも開放する

自社の労働者向けに設置している既存のハラスメント相談窓口を、フリーランスの特定受託業務従事者も利用できる体制に広げます。窓口の存在を、契約時の案内文書や発注担当者からの説明を通じて、委託先に周知することも義務の一部です。

  • 既存のハラスメント相談窓口が、フリーランスからの相談も受け付ける体制になっているか
  • 窓口の連絡先を、契約書やオンボーディング資料に明記したか
  • 相談を理由に取引条件を不利益に変更しない旨を、社内方針として明文化したか

2026年1月からの運用見直しにも注意する

公正取引委員会は、フリーランス新法の運用の透明性を高めるため、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」等の改正案を令和7年7月16日に公表し、意見募集を経て、令和8年1月1日に施行しました。実質的に60日以内の現金化が難しい支払方法や、換金性の低い手形による支払は、報酬支払義務との関係で問題になり得ることが、この改定で明確にされています。手形や電子記録債権など、支払実行までに日数を要する決済手段を使っている企業は、運用の見直しが必要かどうかを確認することをお勧めします。

フリーランス新法への対応は、罰則を避けるための守りの取り組みにとどまりません。取引条件が明確で支払が確実な発注企業は、優秀な個人事業主から選ばれやすくなります。外部人材の活用を人材戦略の一部として位置づけている企業ほど、早めの体制整備が競争力につながります。自社の委託契約の運用点検や社内規程の整備について相談したい場合は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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