Practice

高年齢雇用継続給付の上限が10%に下がった後の、60代の処遇設計

2025年4月に、高年齢雇用継続給付の支給率の上限が引き下げられました。3月31日以前に要件を満たした人は従来の率のままで、同じ職場に二つの率が並びます。給付を前提にした再雇用の賃金を、給付を除いた水準で見直すことが、処遇設計の土台になります。

公開日
2026/11/01
更新日
2026/11/01
読了時間
約 8 分
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
シニア人材報酬制度人事制度法改正

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の人の賃金が60歳時点の75%未満に下がったときに、賃金の一定率を雇用保険から支給する制度です。厚生労働省の審議会資料(2023年12月)によると、令和4年度の1人あたりの月平均給付額は27,371円で、60〜64歳の所定内給与額は55〜59歳の79.9%でした(令和4年、賃金構造基本統計調査)。2019年の雇用保険部会報告書は、この給付が継続雇用時の処遇の決まり方に影響している実情を挙げ、段階的な縮小を求めました。これを受けて、2025年4月1日から、新たに要件を満たす人の支給率の上限は賃金の10%になっています。給付を前提に決めてきた再雇用の賃金と役割は、一対で組み直す時期にあります。

2025年4月から、新たに要件を満たす人の上限は賃金の10%になった

支給の対象は、60歳以上65歳未満の一般被保険者で、被保険者であった期間が5年以上あり、60歳以後の賃金が60歳時点の75%未満に下がった人です。支給額は、賃金の低下率が64%以下なら各月の賃金の10%です。64%を超えて75%未満のときは、低下率に応じて10%未満の額になります(ハローワーク「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」)。

給付率は、1995年(平成7年)4月の創設時は賃金の原則25%でした。2003年(平成15年)の改正で15%になり、2020年(令和2年)の改正で10%への引下げが決まり、2025年(令和7年)4月に実施されました。給付率は段階的に引き下げられてきました。新旧の違いは次のとおりです。

項目

2025年3月31日以前に要件を満たした人

2025年4月1日以降に新たに要件を満たす人

支給率の上限

賃金の15%

賃金の10%

上限の率になる低下率

61%以下

64%以下

給付額の逓減が始まる、賃金と給付の合計

60歳時点の賃金の70.15%

60歳時点の賃金の70.4%

図解01

給付率は段階的に引き下げられてきた

1995年4月創設時は賃金の原則25%25%

2025年4月新たに要件を満たす人の上限は10%

  1. 1995年4月創設時は賃金の原則25% 25%
  2. 12003年改正で賃金の原則15%平成15年の改正
  3. 22019年雇用保険部会が段階的な縮小を求めた報告書
  4. 32020年改正で10%への引下げが決まった令和2年の改正
  5. 2025年4月新たに要件を満たす人の上限は10%
2025年3月31日以前に要件を満たした人は、従来の15%のままです。出典:厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会(第188回)資料5「高年齢雇用継続給付について」(2023年12月11日)/ハローワーク「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」

以前の率が続く人と、新しい率の人が、同じ職場に並ぶ

2025年3月31日以前に受給資格の要件を満たした人は、4月1日以降も、支給率の上限は15%のままです。新しい率の対象になるかどうかは、60歳に達した日(その時点で被保険者であった期間が5年に満たない人は、その期間が5年になった日)が、3月31日以前か、4月1日以降かで分かれます。給付は65歳に達する月までの支給なので、従来の率で受け取る人は、時間とともに入れ替わっていきます。

つまり当面は、60歳になった時期によって、同じ再雇用の賃金でも給付の額が違う人が、一つの部署に並びます。ハローワークの例では、60歳時点の賃金が月30万円で、60歳以後の賃金が18万円(低下率60%)のとき、10%の対象の給付は1万8千円です。同じ賃金で従来の15%が続く人なら、18万円の15%で2万7千円になり、月に9,000円の差が出ます。実際の額は、欠勤による賃金の減額(みなし賃金)や支給限度額によっても変わります。

広告

給付を見込んで決めてきた賃金は、給付を除いた水準で見直す

2019年の雇用保険部会報告書は、この給付が継続雇用時の処遇決定に影響を与えている実情を挙げています。そのうえで、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を進める観点から、給付率を縮小することが適当だとしました。給付は雇用保険から本人に支給されるもので、会社が払う賃金ではありません。給付が減れば、本人が受け取る総額も減ります。

確かめたいのは、再雇用の賃金表が、給付で補われることを前提に作られていないかどうかです。見るのは、給付を除いた賃金が、担当する仕事の範囲と責任の重さに見合っているかです。賃金を上げるか、据え置くかは、仕事の内容と会社の状況から決めることで、制度が答えを出すわけではありません。

目安として、55〜59歳の所定内給与額を100とすると、60〜64歳は79.9%でした(令和4年)。自社でも同じ比を出し、全国の数字と並べると、再雇用の賃金の位置が見えてきます。

賃金と役割は、60歳の前の面談で一対にして示す

ハローワークの案内では、給付の申請は事業主を経由して行うよう案内されています。賃金証明書や受給資格確認票の提出が遅れると、本人が給付を受けられなくなることがあります。提出の段取りは、会社の側で先に決めておく必要があります。

役割の組み直しは、賃金とあわせて本人に示します。担当する仕事の範囲、責任の重さ、評価のしかた、勤務日数と時間を、再雇用後の賃金と一緒に、60歳になる前の面談で伝えます。賃金だけを先に示すと、仕事の中身が見えないまま、金額の大小だけが受け止められます。

再雇用の処遇は、60歳時点の賃金との比で人ごとに点検する

点検は、次の順に進めます。

  • 60歳に達した時期で、従来の15%の対象者と、10%の対象者に分けます。
  • 人ごとに、60歳時点の賃金に対する、再雇用後の賃金の比を出します。
  • その比が64%以下か、64%を超え75%未満かを見ます。75%以上の人には、給付は支給されません。
  • 給付を除いた賃金で、担当する仕事の範囲と責任の重さを並べます。
  • 給付を含めた受け取り総額と、給付を除いた賃金を、別々に本人へ示します。

この一覧が人ごとに埋まれば、賃金の水準を見直す対象と、役割の組み直しを先に進める対象が分かれます。比が75%に近い人は、給付の影響が小さく、賃金そのものの設計が処遇を決めています。

今後の見直しは、審議会の議論とハローワークの案内で確かめる

2019年の報告書は、縮小の状況を見たうえで、廃止も含めて更に検討を行うべきだとしています。ハローワークの案内(2026年11月2日に確認)には、現行の支給率として、10%と、2025年3月31日以前に要件を満たした人向けの15%が載っています。

制度の変更が決まったときは、通達とハローワークの案内の改訂を確かめて、賃金表と面談の資料を直してください。

まとめ

2025年4月1日から、高年齢雇用継続給付の支給率の上限は、新たに要件を満たす人で賃金の10%になりました。3月31日以前に要件を満たした人は15%のままで、60歳になった時期によって、同じ職場に二つの率が並びます。給付を除いた賃金と、役割の範囲を一対で組み直すことが、再雇用の処遇設計の土台になります。最初に、60歳に達した時期と、60歳時点の賃金に対する現在の賃金の比を、人ごとに一覧にしてください。

出典:厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会(第188回)資料5「高年齢雇用継続給付について」(2023年12月11日。2026年11月2日に確認)資料/ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」(2026年11月2日に確認)案内ページ/厚生労働省・ハローワーク「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」(2026年11月2日に確認)リーフレット/厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」(2024年8月27日)資料

再雇用の賃金や役割の見直し、60代社員の処遇設計についてのご相談をご希望の方は、下記より資料請求ページへお進みください。

資料請求はこちら

Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

Next step

記事の内容を、自社に当てはめてみませんか。

GrowthSurvey は、心理的安全性・エンゲージメント・行動変容を定量化し、組織の現在地を可視化するサーベイです。 まずは3分診断で、おおよその現在地をつかむこともできます。

広告

✦ SHARE with カイシャの育成論

メディアでも、深く発信しています。

自社メディア『SHARE with カイシャの育成論』では、企業インタビューと人事用語辞典を通じて、より深い知見をお届けしています。