Practice

氷河期世代の学び直しを、現場の業務のどこに組み込むか

向上させたい能力があると答えた正社員は95.7%ですが、令和6年度に自己啓発を行った人は43.3%です。正社員の学びは仕事の忙しさに阻まれ、育てる側でも指導する人と時間が不足しています。学ぶ場面を日々の業務の流れに置けているかを確かめることから、学び直しは始まります。

公開日
2026/10/31
更新日
2026/10/31
読了時間
約 9 分
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
リスキリングOJTキャリア開発研修設計

厚生労働省の「令和7年度能力開発基本調査」(2026年7月31日公表)によると、向上させたい能力・スキルがあると答えた正社員は95.7%でした。ところが、令和6年度に自己啓発を行った正社員は43.3%、OFF-JTを受講した正社員は44.5%にとどまっています。学びたい気持ちがあっても、学ぶ場が仕事の外に置かれたままでは、行動に移す機会が限られます。就職氷河期世代の社員の学び直しでも、研修の回数を増やす前に、いまの業務の流れの中に学ぶ場面を置けているかを確かめることが先になると考えます。

向上させたい正社員は95.7%、自己啓発とOFF-JTは4割台

この調査の個人調査は、調査対象が20,127人、有効回答率が43.9%です。自己啓発とOFF-JTは、令和6年度の実績を聞いています。正社員と正社員以外を比べると、次のとおりです。

項目

正社員

正社員以外

向上させたい能力・スキルがある

95.7%

84.7%

令和6年度に自己啓発を行った

43.3%

15.9%

令和6年度にOFF-JTを受講した

44.5%

19.4%

正社員以外も、向上させたい能力・スキルがあると答えた人は84.7%ですが、自己啓発は15.9%、OFF-JTは19.4%です。意向があっても、実際の学びに届いていない状況は、どちらの区分にも見られます。

年齢階級別の数字も確かめます。次の数字は、正社員と正社員以外を合わせた労働者全体のものです。

項目

30〜39歳

40〜49歳

50〜59歳

令和6年度に自己啓発を行った

42.8%

37.0%

31.0%

令和6年度にOFF-JTを受講した

38.5%

38.5%

34.6%

調査の概要は、自己啓発について、30歳以上では年齢階級が高くなるほど割合が低いと整理しています。ただし、これは年齢階級別の集計であり、就職氷河期世代だけを切り出した数字ではありません。

図解01

向上させたい正社員は95.7%、自己啓発とOFF-JTは4割台

  • 向上させたい能力・スキルがある95.7%
  • 令和6年度に自己啓発を行った43.3%
  • 令和6年度にOFF-JTを受講した44.5%

記号1つが10%(正社員の割合)

令和6年度に自己啓発を行った正社員は43.3%、OFF-JTを受講した正社員は44.5%にとどまっています。出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」個人調査(2026年7月31日公表。調査対象20,127人。自己啓発とOFF-JTは令和6年度の実績)

学ぶ本人の最大の壁は、仕事の忙しさ

自己啓発を行う上で問題があるとした正社員は82.8%でした。内訳で最も高いのは「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」の58.5%で、「家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない」が27.4%、「費用がかかりすぎる」が26.2%と続きます。

最も大きな壁が仕事の忙しさなら、業務の外に新しい学びの時間を足す設計は、その壁に正面からぶつかります。研修の枠を増やしても、参加する時間を作れなければ、受講は進みにくいと考えます。

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育てる側にも、指導する人と時間が足りない

育てる側の事情も、同じ調査で確かめられます。能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所は80.1%で、内訳は「指導する人材が不足している」が59.5%、「人材を育成しても辞めてしまう」が51.6%、「人材育成を行う時間がない」が45.5%でした。

学び直しの伴走を現場の上司に任せきると、指導する人の不足と時間の不足が、上司一人に重なります。上司が毎回付き添う形にせず、すでにある業務の節目に学びを置き、上司の関わりは節目での確認に絞ると、負担を抑えられます。

学びの成果は、いまの仕事の幅の広がりとして実感されている

令和6年度に行った自己啓発が役に立ったとした正社員は95.7%でした。役に立ったとした人の内訳では、「現在の仕事の幅が広がった」が56.6%で最も高く、「現在の仕事の課題が解決できた」が36.2%、「仕事に対するモチベーションが向上した」が29.9%でした。

向上させたい能力・スキルの内容も、正社員では「マネジメント能力・リーダーシップ」が40.2%、「課題解決スキル(分析・思考・創造力等)」が33.5%、「ITを使いこなす一般的な知識・能力」が32.5%の順でした。どれも、日々の業務の中に使う場面がある能力です。学んだあとに使う場面を探すより、使う場面の中で学ぶほうが、仕事の幅の広がりに結びつきやすいと考えます。

学ぶ場面は、すでにある業務の流れの中に置く

業務の節目には、学ぶ場面に使えるものがあります。次の例は当社の考え方であり、公的な調査が示した手順ではありません。自社の業務に合わせて組み替えてください。

引き継ぎと後輩への説明を、学ぶ機会にも使う

引き継ぎや後輩への業務の説明は、すでに業務時間の中で行われている場面です。説明する側は、自分が身につけてきたやり方を言葉にし直すことになり、足りない知識に気づく機会にもなります。説明のあとに、本人が確かめたい点を一つ書き出してもらうと、次に学ぶ内容が業務から決まります。書き出された点が、業務の中で調べられる範囲に収まっていれば、この場面は学びとして働いています。

定例会議に、試した方法を共有する時間を置く

部署の定例会議の最後に、担当業務で試した新しいやり方を数分で共有する時間を置きます。共有が決まっていれば、試すことと共有の準備が業務の一部になり、別枠の学習時間を確保する必要が減ります。共有された内容が翌週の担当業務で使われているなら、続ける価値があります。

担当範囲を少し広げ、終わったあとに振り返る

調査で上位に挙がったマネジメントや課題解決は、担当範囲を少し広げる仕事の中で身につけやすい能力です。期間を決めて任せ、終わったあとに本人と上司が短い振り返りの時間を取ります。振り返りでは、新しく身につけたことと、次に補いたいことを一つずつ書き出します。広げた範囲が本人の担当業務として認められていれば、学びが仕事に戻ったといえます。

組み込めたかは、担当業務での使われ方と時間の扱いで見る

組み込みが進んだかどうかは、受講した人数では分かりません。学んだ内容が担当業務で使われた場面を、本人と上司がそれぞれ一つ挙げられるかで見ます。挙げられないときは、学ぶ場面が業務の流れから切れています。

時間の扱いも確かめます。学びの時間が業務時間として認められていなければ、最大の壁である仕事の忙しさは、そのまま残ります。時間の扱いを人事が部署ごとにそろえておくと、同じ立場の社員の間で差が出ません。振り返りの進め方を人事が用意しておけば、上司は同席に集中できます。

世代や雇用形態の違いは、自社の記録で確かめる

就職氷河期世代は、内閣官房の資料で「概ね1993〜2004年の間に就職活動を行った世代」と整理されています。能力開発基本調査は、雇用形態別と年齢階級別の集計で、世代別の集計はありません。このため、氷河期世代の学びの状況は、この調査からは読み取れません。

調査から分かるのは、正社員以外の自己啓発が15.9%、OFF-JTが19.4%と、正社員より低いことです。氷河期世代の中には、正社員として働く人も、不本意ながら非正規雇用で働く人もいます。業務の中に学びを組み込むときは、雇用形態にかかわらず、会議や振り返りの場面に参加できているかを、自社の記録で確かめてください。確かめる項目は、担当業務の範囲、会議や振り返りへの参加、上司との面談の有無です。

まとめ

向上させたい能力・スキルがあると答えた正社員は95.7%でしたが、令和6年度に自己啓発を行った人は43.3%、OFF-JTを受講した人は44.5%でした。学ぶ本人の最大の壁は仕事の忙しさで、育てる側も指導する人と時間が足りていません。最初に、引き継ぎ、定例会議、担当範囲の見直しのうち、すでに業務時間の中にある場面を一つ選び、そこで学ぶ内容を決めてください。

出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」(2026年7月31日公表。2026年11月2日に確認)報道発表/同「令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要」(2026年11月2日に確認)概要/就職氷河期世代等支援に関する関係閣僚会議「新たな就職氷河期世代等支援プログラムの基本的な枠組み」(2025年6月3日決定。2026年11月2日に確認)資料

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Editor’s Note

本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。ご質問・取材のご依頼は お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

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