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管理職のなり手不足はなぜ起きるのか|3つの構造要因と、次世代リーダーが育つ組織をつくる5ステップ

「管理職になりたい」人は2割に満たず、上場企業の課長の約95%はプレイングマネージャー。なり手不足は採用ではなく育成と組織設計の問題です。公的・民間調査から3つの構造要因を解き明かし、次世代リーダーが育つ組織をつくる5ステップを実施チェック付きで解説します。

公開日
2026/06/02
更新日
2026/06/02
読了時間
9
著者
WONDERFUL GROWTH 編集部
管理職次世代リーダー育成人材育成組織開発

「来期、あの部署の課長を誰に任せるか」。この問いに、すぐ複数の名前を挙げられる企業はどれくらいあるでしょうか。任せられそうな人材が思い浮かばない、あるいは打診しても固辞される——そうした声が、規模や業種を問わず増えています。これは一時的な人手不足ではなく、管理職という役割そのものが選ばれにくくなっている、構造的な変化です。

本記事では、公的調査と主要な民間調査をもとに、管理職のなり手不足が起きる3つの構造要因を整理します。そのうえで、外から探したり強く説得したりするのではなく、次世代リーダーが組織の中で自然に育つ仕組みを、5つのステップと実施チェックに分けて解説します。

データで見る「管理職のなり手不足」の現在地

まず、現場の感覚を裏づける調査結果を確認します。いずれも、特定の企業の問題ではなく、日本企業に共通する傾向であることを示しています。

  • パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」(2025年)では、管理職になりたいと考える人は16.7%にとどまり、約8割が昇進を志向していません。
  • 産業能率大学「上場企業の課長に関する実態調査」(2023年)では、課長の94.9%が自らを「プレイングマネージャー」だと認識しています。
  • 同調査では、50%を超える課長が年上の部下と働き、30%を超える課長が自身のリストラの可能性を感じながら仕事をしています。
  • 帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査」(2025年)では、女性管理職割合は平均11.1%、管理職が全員男性の企業は42.3%でした。

帝国データバンクの調査に寄せられた企業の声には、「社内制度を含めて女性の活躍を推進しているが、昇格する意欲がみられず、辞退する方がほとんどである」(情報サービス業)という回答もありました。

これらの数字が示すのは、「人がいない」のではなく「役割を引き受けたい人がいない」という現実です。つまり、採用を強化しても解決しにくい問題だということです。

なぜ管理職のなり手が不足するのか — 3つの構造要因

なり手不足の背景には、互いに関連し合う3つの構造要因があります。要因を切り分けて理解することが、有効な対策を選ぶ出発点になります。

構造要因1:プレイングマネージャー化による過剰負荷

前述のとおり、上場企業の課長の94.9%が自らをプレイングマネージャーと認識しています。自身の担当業務を抱えたままマネジメントを兼ねるため、業務量は増える一方です。加えて、年上の部下、在宅勤務の部下、勤務時間や勤務場所に制約のある部下など、多様なメンバーをまとめる難しさも増しています。結果として、本来注力すべき部下の育成に時間を割けないという悪循環が生まれています。

構造要因2:責任と処遇が見合わない「割に合わなさ」

働き方改革によってメンバーの残業が抑制される一方で、その業務が管理職に回り、負担が偏る構図が少なくありません。にもかかわらず、非管理職との処遇差は必ずしも大きくなく、責任の重さに見合わないと受け止められがちです。産業能率大学の調査で、3割を超える課長が自らのリストラの可能性を感じていたことも、「責任は重いのに立場は安泰ではない」という不安を象徴しています。

構造要因3:ロールモデルの不在とキャリア観の多様化

疲弊する上司の姿を間近で見ている部下が、「自分もああなりたい」と思うのは難しいことです。さらに、昇進だけがキャリアの成功という前提は崩れ、専門性を深めたい、自分のペースで働きたいといった価値観が広がりました。昇進が唯一の報酬ではなくなった今、管理職という選択肢は、数ある道のひとつとして相対的に魅力を比較される立場になっています。

なり手不足を放置するとどうなるか

管理職のなり手不足は、目の前の欠員にとどまらず、将来の経営人材が枯れていくことを意味します。帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査」(2025年)では、後継者不在率は50.1%まで改善した一方で、血縁によらない「内部昇格」での承継(36.1%)が「同族承継」(32.3%)を上回りました。社内で経営を担える人材を計画的に育てる重要性は、むしろ高まっているのです。

制度面でも対応は待ったなしです。2026年4月施行の女性活躍推進法の改正により、女性管理職比率などの公表義務が従業員101人以上の企業へ拡大されます。多様な層から管理職を育てられるかどうかが、企業の評価に直結する時代になりました。

次世代リーダーが育つ組織をつくる5ステップ

ここからは、なり手不足を「説得」ではなく「育てる仕組み」で解くための5ステップを示します。各ステップに実施チェックを添えました。自社の現状を確認しながら読み進めてください。

ステップ1:管理職の役割を再定義し、過剰なタスクを棚卸しする

「管理職に何を期待するのか」が曖昧なままでは、負担だけが積み上がります。まずは求める役割を3〜5個に言語化し、現在の業務を「マネジメント」「プレイング」「廃止・移管できるもの」に仕分けます。役割を絞ることが、後続のすべての打ち手の土台になります。

実施チェック

  • 管理職に求める役割を3〜5個に言語化したか
  • マネジメント業務とプレイング業務の時間配分を可視化したか
  • 廃止・移管・委譲できる業務を1つ以上特定したか

ステップ2:マネジメントに集中できる環境を整える

役割を定義したら、それに集中できる環境を用意します。決裁や報告などの間接業務を減らし、権限を適切に委譲し、必要に応じて補佐役やチーム制を導入します。プレイング業務の比率に目安を設けるだけでも、管理職が育成や対話に向き合う時間を取り戻せます。

実施チェック

  • 管理職の決裁・承認業務のうち、委譲できるものを見直したか
  • 会議や報告書など、削減・簡素化できる間接業務を洗い出したか
  • プレイング業務比率の上限の目安を設けたか

ステップ3:管理職になる前から「小さなリーダー経験」を積ませる

ある日突然マネジメントを任されれば、誰でも不安になります。入社5〜10年目から、プロジェクトのとりまとめや後輩の育成といった小さなリーダー経験を計画的に積ませ、段階的に階段を上れるようにします。失敗が許容される小規模な権限委譲の場を意図的に設けることが、「やってみたら面白い」という実感につながります。

実施チェック

  • 入社5〜10年目にリーダー経験の機会を設計したか
  • 失敗が許容される小規模な権限委譲の場があるか
  • 候補者を早期に把握する人材会議などの仕組みがあるか

ステップ4:管理職の魅力を処遇とキャリアの両面から再設計する

責任に見合う処遇は、なり手不足対策の根幹です。管理職と非管理職の処遇差が役割に見合っているかを検証し、見直します。同時に、管理職一本ではなく専門職コースなどの複線型キャリアを用意し、「昇進しなくても評価される道」も示します。優れたマネジメントを正当に評価し、言葉で称賛する仕組みも欠かせません。

実施チェック

  • 管理職と非管理職の処遇差が、役割に見合っているか検証したか
  • 専門職コースなど、複線型のキャリアパスを用意したか
  • 優れたマネジメントを評価・称賛する仕組みがあるか

ステップ5:育成を「仕組み」にして属人化を防ぐ

最後に、育成を個人の頑張りではなく仕組みに変えます。厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」では、正社員に計画的なOJTを実施した事業所は61.1%、OFF-JT費用の労働者一人当たり平均額は1.5万円にとどまりました。投資はまだ薄いのが実情です。管理職候補向けの計画的なOJT、マネジメントを学ぶOFF-JT、1on1などの継続的な対話を、年間計画として運用しましょう。

実施チェック

  • 管理職候補向けの計画的な育成プログラムがあるか
  • マネジメントスキルを学ぶOFF-JTを年間計画に組み込んだか
  • 1on1など継続的な対話の仕組みを運用しているか

まとめ:なり手不足は「育てる仕組み」で解く

管理職のなり手不足は、採用やその場の説得では一時しのぎにしかなりません。役割の再定義から始め、負荷を軽減し、早い段階からリーダー経験を設計し、処遇とキャリアの魅力を整え、育成を仕組み化する。この5つを連動させることで、管理職が前向きに選ばれる組織へと変わっていきます。次の世代のリーダーは、探すものではなく、育てるものです。

主な出典

  • パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」(2025年)
  • 産業能率大学 総合研究所「第7回 上場企業の課長に関する実態調査」(2023年)
  • 帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査」(2025年8月)
  • 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査」(2025年11月)
  • 厚生労働省「令和6年度 能力開発基本調査」

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本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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