非正規雇用は雇用者の36.5%を占める中で、教育訓練は届いているか
総務省「労働力調査」によると、2026年(令和8年)4〜6月期平均で非正規の職員・従業員は2,146万人にのぼり、正規の職員・従業員との合計に占める割合は36.5%です(総務省統計局「労働力調査(基本集計)2026年(令和8年)6月分及び4〜6月期平均」)。雇用者の3人に1人以上が非正規雇用という構成は、多くの企業にとって既に前提となっています。人手不足が続くなか、非正規人材をどれだけ戦力として育てられるかが、事業の継続力を左右する局面に入っています。
しかし、厚生労働省の調査は、教育訓練の実施状況に大きな開きがあることを示しています。次の章で、その内容を具体的に見ていきます。
能力開発基本調査が示す、正社員とそれ以外の教育訓練格差
厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」(令和7年6月27日公表、事業所調査は全国7,218事業所を対象に実施、有効回答率54.1%)は、企業における人材育成の実施状況を毎年調べています。同調査によると、計画的なOJT(職務を通じた計画的な訓練)を実施した事業所の割合は、正社員に対しては61.1%(前回調査より0.5ポイント上昇)であるのに対し、正社員以外に対しては27.1%(前回調査より3.9ポイント上昇)にとどまりました。
計画的なOJTを実施した事業所の割合:正社員61.1%、正社員以外27.1%(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」、令和7年6月27日公表)
同じ調査の個人調査では、OFF-JT(通常の業務を離れて行う研修)を受講した割合が正社員44.6%に対して正社員以外は18.4%、キャリアコンサルティングを利用できる制度がある事業所の割合が正社員49.4%に対して正社員以外は31.4%という結果も出ています。いずれの指標でも、正社員以外への実施率は正社員の半分以下にとどまっています。
この差は、前年からの伸び幅で見ると正社員以外のほうが大きく、改善の動きは進んでいます。それでも、実施率そのものの水準には、依然として大きな開きが残っています。
教育訓練は「配慮すれば良い」ものではなく、法律が定める義務です
この開きを、単なる企業ごとの方針の違いとして片付けることはできません。パートタイム・有期雇用労働法は、教育訓練を事業主の努力目標ではなく、条件つきの義務として定めています。
同法第9条は、職務の内容と配置の変更範囲が通常の労働者と同じであるパートタイム・有期雇用労働者について、待遇の差別的取扱いを禁止しています。この対象者には、教育訓練を含めて正社員と同じ待遇が求められます。
同法第11条第1項は、通常の労働者と職務が同じパートタイム・有期雇用労働者に対して、既にその職務に必要な能力を身につけている場合を除き、能力を付与するための教育訓練を通常の労働者と同様に実施するよう事業主に義務づけています。職務が異なる場合についても、同条第2項が、通常の労働者との均衡を考慮しながら、職務内容・成果・意欲・能力・経験等に応じた教育訓練を行う努力義務を定めています。
つまり、正社員以外への教育訓練は、対象者の職務内容によって実施義務または配慮義務のいずれかが必ず生じます。27.1%という実施率は、この義務を果たせていない事業所が相当数残っている可能性を示しています。
非正規人材を戦力化する三つの設計
法律の要求を満たしながら、非正規人材の戦力化にもつなげるには、次の三つの設計が有効です。
設計1:対象者の職務内容を棚卸しし、義務の区分を明確にする
まず、非正規社員一人ひとりについて、職務内容と配置の変更範囲が正社員と同じかどうかを確認します。これにより、第9条の差別的取扱い禁止の対象者(教育訓練の実施義務あり)と、それ以外の対象者(教育訓練の配慮義務あり)を区分できます。区分をせずに一律の対応にとどめると、実施義務のある対象者への教育訓練が漏れるリスクが残ります。
- 実施チェック:全非正規社員の職務内容と配置変更範囲を一覧化し、法律上の区分(実施義務・配慮義務)を人事台帳に記録したか。
設計2:OJTを「現場任せ」から「計画的」に切り替える
計画的なOJTとは、育成目標・内容・期間をあらかじめ定めたうえで実施する訓練を指します。現場の先輩社員に一任するだけでは、指導内容や進捗が担当者によってばらつき、実施したかどうかの記録も残りません。非正規社員向けにも、正社員と同じ様式の育成計画書を用意し、習得すべきスキルと確認のタイミングを明記します。
- 実施チェック:非正規社員向けの育成計画書を作成し、習得目標と確認時期を上長と本人の双方が把握しているか。
設計3:キャリアコンサルティングの機会を非正規社員にも開く
キャリアコンサルティングは、本人の適性や希望を踏まえて今後の育成方針をすり合わせる機会です。正社員向けにのみ制度化されているケースが多く見られますが、非正規社員にも同じ機会を提供することで、本人の意欲を確認しながら、どの範囲まで戦力化を進めるかを判断できます。全員に一律の投資をする必要はなく、本人の希望と組織の必要性をすり合わせたうえで、教育訓練の範囲を決めていく進め方が現実的です。
- 実施チェック:非正規社員が年に一度以上、上長または人事とキャリアについて話す機会を持てる制度があるか。
まとめ:非正規人材の育成は、雇用者の3人に1人以上に関わる経営課題です
非正規雇用が雇用者全体の36.5%を占める現在、その育成体制は一部門の課題ではなく、事業の継続力そのものに関わる経営課題です。パートタイム・有期雇用労働法が定める教育訓練の実施義務・配慮義務を出発点に、対象者の区分、計画的なOJTの仕組み化、キャリアコンサルティングの機会という三つを整えることで、法令順守と人材の戦力化を同時に進められます。
自社の非正規社員向け育成体制の設計についてご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
Editor’s Note
本記事は WONDERFUL GROWTH 編集部が、現場の人事・経営者の方々への取材と 自社支援データを元に作成しています。
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